IoTを妨害する最大の敵は当のプロダクトのオーナーだ

[筆者: Lisa Jackson]

編集者注記: Lisa Jacksonはfrogの役員で戦略部長。

物のインターネット(Internet of Things, IoT)は、確かに大きな好機だ。それにより、企業の場でも生活の場でも、これまでよりも正しいデータに基づいて意思決定ができるようになるだろう。企業の役員や管理職にとっては、新しいツールにより職場における無駄と非効率を減らせるようになる。

でもそんな未来が実際に訪れるためには、IoTの財務的妥当性や、そのための戦略的パートナーシップ、そしてプラットホームの複雑性が、IoTの最大の天敵であるプロダクトのオーナーに与える影響を、よく知らなければならない。

財務的妥当性

これまでプロダクトは、いくつかの段階から成る製品開発の過程を経てローンチし、ROIやマージンの計算が意思決定をガイドした。このような従来的なレンズを通して見ると、IoTデバイスはそのほかの投資対象候補と比べて全然魅力的に映らない。IoTはプロダクトのコストを急騰させ、しかもそれは使われるセンサの費用だけではない。そのほかに、既存の製品が新しい工業デザインを必要とし、電力や(インターネットへの)接続性の要求に対応するために製造ラインも更新しなければならない。

たとえばWhirlpoolの試算では、皿洗い機にインテリジェンスを加えると一台あたりのコストが5ドル上昇する。それにソフトウェアの費用(開発、運用、資本支出)が加わると、古典的なCFOの目の玉が飛び出るような、とてつもない回収期間になる。

Clay ChristensenがHarvard Business Reviewに寄稿した記事“The Capitalist’s Dilemma”(資本家のジレンマ)の中で、成功の測度として一般的によく使われる財務指標が、成長への投資を妨げている、と指摘している。そこでIoTの分野では、役員たちはむしろ、決算報告のためのレンズではなく、エコシステムのレンズを使って価値創造の機会を見つけるべきだ。

Philips社が 照明システムHueを作ったとき、必要な投資を営業利益だけで正当化しなかっただろう。むしろ同社は、デベロッパコミュニティの参加性に期待し、結果的にそのコミュニティは今日まで、Hueのプラットホーム上で200近いアプリケーションをローンチした。

物やサービスやドルやデータのフローに対しては、長期的な評価が必要であり、そしてその予想利益は、エコシステム内のすべての機会可能性に基づいて算出されなければならない。そういう、対象視野範囲の広い試算技術によってのみ、IoTへの投資の真の事業価値が認められ、実現され、そしてその長期的な計量が可能になる。

戦略的パートナー

IoTデバイスそのものの直接的な売上は少ないし、それは最初から当然視されていることも多い。そしてパートナーシップによる売上は、新たな見込み客生成やデータの収益化により相当大きいことが多い。正しいパートナーシップを確立するためには、起業家的取り組みが必要である。そういう路線で、NestはMercedes-Benzと、JawboneはWhirlpoolと組んだのだ。このような事業展開は、飛び込み営業や、シリアスな交渉の積み重ねを必要とする。IoTに死をもたらす天敵であるプロダクトのオーナーは、そういうB2B方面のやる気や能力を完全に欠いていることが多い。彼らが、時間がない、を、言い訳にするのは、もってのほかだ。

プロダクトのオーナーは事業展開における自己のロール(役割)に関してあらためて自覚とやる気を出し、同じくエコシステムのレンズを活用して、重要なパートナーシップを築くための機会を見つける必要がある。関係の構築に関して能力と経験のあるスタートアップの人材を、スカウトするのもよい。その場合、技術や製造過程に関して彼らにオープンにするリスクを覚悟しないと、彼らもパートナーとしての十分な活躍はできない。プロダクトのオーナーには、それまでのノンコミュニケーションでぬくぬく快適な繭(まゆ)を破って、自ら外へ出てくる元気が必要である。

プラットホームの複雑性

IoTデバイスはソフトウェアとクラウドプラットホームを必要とする。ソフトウェアという言葉を聞いてビビるようなハードウェアメーカーは、ソフトやクラウドがからむ開発過程や組織展開を、登頂不可能なヒマラヤの高峰のように感じる。物づくりは上手だがソフトウェアの能力を欠いていた企業(通信事業者や家電メーカーなど)は、インターネットに接続されたデバイス(コネクテッドデバイス, connected devices)を商業化するために完全なリストラをやるべきである。Honeywellは、温度計の製造とセキュリティシステムの制作が別事業部だったが、シームレスなスマートホームソリューションを売っていくために、組織と製品開発計画の、思い切った整理統合を行った。

インターネットに接続されたデバイスの未来は、新しい前向きの仕組みに基づく価値の測度を必要とする。

プラットホームというハードルを克服するために、ほかの業界から学ぶのもよい。たとえば成功事例の一つであるMedtronicのCareLinkプラットホームは、医師がインターネット経由で患者の医療器具をチェックできるシステムだ。成功企業の共通点は、できるかぎりアウトソーシングすること、組織の設計に戦略的投資を行うこと、そして買収をためらわないことだ。IoTの世界には敏捷なスタートアップたちが迅速に行動して価値あるリソースを提供している。Samsungが最近買収したSmartThingsなどは、その好例だ。

あらゆる業界で、プロダクトのオーナーは、1)財務的妥当性と2)戦略的パートナーシップの構築、および3)プラットホームの複雑性というハードルに直面している。企業のデジタル部門は、単純素朴なプロダクトマージン(という伝統的な視点)と、中核的事業が築くべき新しい価値との、違いを理解してもらう必要性に(社内的に)迫られている。私が見てきた小売企業たちは、組織改変をせずに個々のインターネット接続プロダクトをその都度ローンチしてきたため、いつまでもスケーラブルなプラットホームを欠き、行き詰まってしまった。組織を整理統合して、十分に大きくてスケーラビリティのあるプラットホームを持つべきである。また資本調達力が十分にある公益企業は、しかし事業展開のスキルがないため、小規模で実験的なIoTしかできないところが多い。

搾乳器のメーカーMedelaの場合は、顧客である多くのママさんたちが、センサを内蔵してインターネットに接続された搾乳器による、適切な授乳の指導(授乳量など)を期待していた。MITの研究室がたまたま、そんなコンセプトのための搾乳器ハッカソンを開催した。しかしMedelaは、市場で噂されたにもかかわらず、そんなイノベーションに乗らなかった。それは、現状で十分利益が上がっており、マーケットシェアも大きく、既存のパートナーシップは主に流通方面だけだったからだ。同社にはIoTに向かうインセンティブがなく、そのハードルが高すぎた。

IoTプロダクトのオーナーたちよ、同情はするけど許しはしない。コネクテッドデバイスの未来は、その価値が、新しい前向きの仕組みによって測られるようにならないかぎり、開けない。自分の事業をエコシステムのレンズを通して見ることによってのみ、IoTの真のポテンシャルを探求できる。戦略的パートナーシップと、複雑なプラットホームへの思慮深い投資によってのみ、そのポテンシャルを実らせることができる。

コネクテッドデバイスのネットワークが大きくブレークする臨界質量に達するためには、プロダクトのオーナーがこのチャレンジに取り組み、われわれみんなが待ち焦がれている未来のヒーローになる必要がある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


疲れたらただ寝ればよい…部屋のコントロールをすべて自動化するスマートマットレスカバーLuna

Lunaの協同ファウンダMatteo Franceschettiは、まず、人間が寝るときに何をするかをデモする: ベッドに横になる、明かりと温度(ベッドと室内の両方)と音楽を自分の好みに調整する。これから完全に寝入るときには、もう一度調製して、たぶんすべてをoffにする。

Lunaのスマートマットレスカバーは、その調整作業を自動化する。ここまで読んで、欲しい!と思った人は、Indiegogoへ行って支援しよう。

上のビデオでお分かりのように、Lunaはベッドのマットレスにかぶせるカバーだ。上に人が横たわったこと、そしてその人が寝入ったことを検出して、そのデータをLunaのアプリと、インターネットに接続されたそのほかのデバイスに送る。

LunaのショウルームでFranceschettiが寝たふりをすると、部屋が睡眠モードになる。Nestのスマート温度計をサポートしているが、今同社はそのほかのスマートデバイスとパートナーシップする努力をしている。朝目覚めたらコーヒー沸かし器がonになるぐらいは、すぐに実現しそうだけどね。

“寝るときに人間がやることを、完全に自動化したいんだ”、とFranceschettiは言う。これからはいろんなインターネットデバイスが増えてくるから、このプロダクトがますます便利になるよ”、だと。

Lunaを使うようになると、何がいちばん変わるのか、Franceschettiに聞いてみた。すると:

男の場合は、スマートデバイスのコントロールだね。照明とか、聴きながら見ながら寝てしまうNetflixやSpotifyとか。女性と男性とでは、寝るときの部屋の温度の好みが違う。女性は温かいのが好きだが、男は部屋が冷えてる方が好きだ。でも今のスマートホームデバイスでは、一つの部屋のゾーンコントロールができるから、どっちの要望にもお応えできるね。

だと。デバイス上の個人データの保護については、データはデバイス上にローカルに保存され、Lunaのサーバには、それらが暗号化されて送られるそうだ。

スマートカバーLunaの予価は249ドルだ。でも今Indiegogoで支援すると、179ドルだ

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


オムロンのインキュベーションプログラムでは”ものづくりの匠”が技術支援をしてくれる

もはやIT系のメディアで「IoT」という単語を聞かない日はないんじゃないだろうか。実際IoTを含むハードウェア関連スタートアップのニュースに触れることは多くなっている。

そんな中、2014年に立ち上がった京都の老舗メーカー、オムロンのCVCであるオムロンベンチャーズがハードウェアに特化したインキュベーションプログラムを開催する。名称は「コトチャレンジ」。締め切りは週明けの2月2日。ちなみにプログラム名の「コトチャレンジ」だけれども、コトには事業の「事」、古都京都の「古都」、琴線に触れるものをという「琴」の3つの意味をかけているそうだ。

プログラムの参加対象となるのは、ハードウェアがキーになるようなサービスを作っているスタートアップ。プログラムが始まる3月からの3カ月でプロトタイプの完成を目指す。プログラムは京都での開催を前提としており、京都市内の「京都リサーチパーク」にオフィススペースを用意するほか、オムロンの事業企画担当者によるメンタリング、オムロンのものづくりの匠たちによる技術サポートなどが行われる。プログラムの最後にはデモデイを開催し、3カ月の成果を披露する。優秀なプロダクトに対してはオムロンベンチャーズからの投資も検討する。

ただ、「ディールソーシングのためのイベント」というよりかは、まずはテクノロジーを持つハードウェアスタートアップの掘り起こしという側面が強いのだそう。オムロンベンチャーズ代表取締役社長の小澤尚志氏は、「フルサポートするかというとまた違うかもしれないが、我々のようなメーカーの能力を持ったところがハードウェアスタートアップののエコシステム作りをしていきたい」と語る。

小澤氏はメーカーという立場から、「ホビーとしてはいいが、BtoB、BtoG(government:政府、官)に対してシビアに応えるには、さらなるテクノロジーの精度が必要。リアルなビジネスと組むのはこれからだ」と世のハードウェアスタートアップについて語る。プログラムでは、BtoB、BtoGのニーズにも応えられる製品の企画や設計での支援をするのだそうだ。

小澤氏いわく、オムロンにはスタートアップが簡単に使えない試験器もあるし、「歴史がある企業だからこそできるアドバイス」もあるそうだ。例えば今では一般的な血圧計も、ただ「血圧計を作りました!医療機器です」なんて言っても認められるワケではない。膨大な臨床試験や学会、WHOなどへの働きなど、さまざまなステップを経て初めて血圧計と認められたのだ。こういった経験に基づいたノウハウは、正直スタートアップだけではどうにもならないものだろう。

メーカーの技術者を巻き込んだハッカソンなどは時々見かけるようになったが、インキュベーションプログラムはそうそう多いものではない。スタートアップが集まる東京からすれば開催場所の遠さなどの課題はあるが、老舗メーカーだからこそできる支援には期待したい。


農地の土壌水分を自動測定して灌水量を適正化するTule

前世紀までの技術的進歩により、農家の仕事は以前に比べてずいぶん楽になった。でも、農地に対する水の管理は、まだ手作業によるところが大きい。大農場では多くの人を雇って車で圃場を巡回させ、作物の健康状態や土の湿り具合をチェックしている。

Y Combinatorが支援するTule(“トゥーリー”と発音する)は、その過程を、広い土地の上の植物の水分量を感知するデバイスを使って、より簡単な作業にしてくれる。そのデバイスは、植物から空気中に放出される水分の蒸散量ないし‘蒸発散量’(evapotranspiration)を測定する。そしてセンサが集めた蒸散量のデータは、同社のサイトのサーバへ送られる。

水管理は農家にとってますます重要になりつつある。農務省のデータによると、合衆国の水資源の大半が農作物向けであり、その90%以上は西部諸州で消費されている。

カリフォルニア州のようなところでは、水の管理がとくに重要だ。アーモンドやアボカド、いちご、ぶどうなどの作物は土壌中の水分の管理に細心の注意が必要だが、今州は干ばつに見舞われている。

そのため、わずか一滴の水でも農家とその農地にとっては重要だ。土壌中の水分は、多すぎても少なすぎても何千エーカーもの農地の作物に悪影響を与え、食糧の不足や価格の上昇を招くだけでなく、農家の所得に壊滅的な打撃を与える。

農家が広い圃場をチェックするために、今ではドローンという最新のツールがある。しかし、環境学の学位を持つTuleの協同ファウンダTom Shaplandによると、ドローンでは、農家の人が目で見て分かること以上のことは分からない。

“ドローンは作物の画像を農家の人に見せるが、それはすでに目で見て分かっていることであり、土壌中の状態までは分からない”、とShaplandは言う。

Edynのような土壌湿度センサでは、土壌のごく一部や、特定の植物に関してしか分からない。

Shaplandは、彼がカリフォルニア大学デイヴィス校でPhDを取得したときの研究を、実際に農業に生かしたい、と考えた。彼と協同ファウンダのJeff LaBargeは、Tuleを作って、Shaplandの言うことの方が作物の健康を維持するための灌水の方法として、正しくて実装可能なソリューションであることを、実証しようとした。

Tuleの技術の原理は19世紀からあるが、実装が高価につくため、実用化はされなかった。その、センサというものがない時代のシステムは一基が50万ドルもするもので、一世紀以上にわたり、大学の研究室の外に出ることはなかった。

Tuleのセンサは30分以下で据え付けられ、一度に最大10エーカーの農地を測定でき、センサ一台の費用は1500ドルだ。

農家の人が作物の状態をモバイルでチェックできるアプリも、もうすぐリリースできる。今はPCなどからTuleのWebサイトにログインして、作物の状態をリアルタイムでチェックする。画面にはその農家の作物のデータや、向こう一週間の天気予報が出る。それを見て、その週の灌水の量を調節する。

LaBargeとShaplandは、将来的には水分の測定だけでなく、必要な作物への必要な量の灌水を自動的に行うシステムを作りたい、あるいは、誰かがきっと作るだろう、と考えている。彼らの関心対象は、もっぱら、水だ。

このようなセンサは、未来の世界の食糧生産にも貢献するだろう。35年後(21世紀半ば)の世界の人口は90億と予想されている。国連の食糧農業機構(FAO)の予想では、そのときまでに食糧の生産量を60%増やす必要がある。Shaplandによると、彼のセンサによって農家が正しい灌水をするようになれば、世界の食糧生産量は少なくとも30%はアップする。

Tuleはこの技術を大学からライセンスされた、という形になっているので、‘大学のお墨付き’が農家に対するセールストークでものを言うかもしれない、とShaplandは考えている。一方LaBargeは、地元のトマト名人からのお墨付きの方が有効、と言う。“彼らが良いと言えば、その地域の農家全員が採用するからね”、と彼は言う。

Tuleは最近、Khosla VenturesとBloomberg Betaからシード資金を獲得している。額は公開されていないが、100万ドル以上、という説がある。

同社のセンサ装置は現在、同社のWebサイトで予約販売している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Ubuntu CoreのIoT用バージョンをCanonicalがローンチ

物のインターネット(Internet of Things, IoT)をLinuxで実装したい人は多いし、またその中には、裸のLinuxカーネルを自分でいじるのは面倒、と感じる人も多いだろう。そこでCanonicalは、同社のLinuxディストリビューションUbuntuのIoT用バージョンを出すことにした。それは前にもご紹介した、軽量快速バージョンUbuntu Coreがベースだ。これまでの数か月間同社は、そのUbuntu Coreの“さくっとした(snappy)”バージョンを、さまざまなクラウドコンピューティングサービス上でローンチしてきたが、Coreの基本概念は、要らないものをすべて削ぎ落としたぎりぎり痩身バージョンの、デベロッパが自分のニーズに合わせて自由にカスタマイズできるUbuntuだから、次の必然的なステップは、IoTやロボティクスに当然なる。

Ubuntu CoreではデベロッパがOSの基本部分をインストールし、その上に必要なアプリケーションやサービスを加える。それらのアプリケーションは自分専用のサンドボックス環境で動く。Ubuntu Coreは、アップデートの際のエラーリカバリを確実に行うトランザクション(的)アップデートをサポートしているから、ダウンロードエラー時のロールバックが確実に行われる。

Canonicalのファウンダで、ときどき宇宙カウボーイにもなるMark Shuttleworthが、今日の発表声明の中でこう言っている: “自律型ロボットという科学の大きな進歩により、防犯やエネルギーの効率的利用など、さまざまな分野で奇跡が実現した。世界はスマートマシンによって変わりつつあり、それらのマシンは過去にはありえなかった五感…視覚、聴覚、触覚等…を持ち、外部とコミュニケーションできる。Ubuntu Coreはそういう超スマートな連中のためのセキュアなプラットホームであり、また最新のソフトウェアをご自分のデバイスに簡単に実装してクラウドに容易に接続できるために、アプリストアもご用意している”。

このUbuntu Coreの初期の採用例の一つが、Ninja Blocksのホームオートメーション構築ブロックNinja Sphereだ。Ninja BlocksのCEO Daniel Friedmanは、“Ninja SphereのオープンなコントローラはUbuntu Coreをそのベースに使用しており、それは家庭内のデバイスやセンサと対話するアプリを構築するための、完璧な基盤だ”、と言っている。また教育用ドローンErle-Copter(上図)を作っている Erle Roboticsも、Ubuntu Coreの初期的ユーザの一つだ。そしてOpen Source Robotics Foundationの各種プロジェクトも、主にUbuntu Coreを使っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


明日のキッチンはこうなる―最新スマート調理ガジェット、8種類

IoT(モノのインターネット)がキッチンにも入り込みつつある。アプリから操作できるコーヒーメーカーからiPhoneに温度を伝えてきてステーキを完璧に焼きあげるフライパンまで最新のキッチン・ガジェット8種類を紹介しよう。

1. Palateのホーム・スマート・グリル

Palate Home製のSmart Grillは、さまざまな素材を種類、重量、火の通り具合の好みに応じて完璧に調理してくれる。コントロールは専用iPadアプリで行う。

2. Pantelligentのスマート・フライパン

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このフライパンはサーモン、ステーキ肉、その他の素材の内部温度を測定し、ちょうどよい焼け具合になったところで知らせてくれる。いちいちフォークを刺して試してみる必要がない。PantelligentのiPhone用アプリには現在の内部温度、焼き上がりまでの推定時間などが表示される。

3. Drop Connected Kitchen Scale

こちらはケーキ、クッキー、パンなどオーブンで焼く素材を簡単に軽量するためのスマート秤。専用iPadアプリでレシピを選び、Bluetoothを内蔵した秤にボールを乗せる。レシピにしたがって順に素材を入れる。適量を入れるとアプリがそれを知らてくれる。

4. LivBlends Smoothie Maker

こちらはY Combinator出身のスタートアップ、LivBlendsのプロダクト。同社の主な事業はベイエリアでのジュースの宅配だが、スマート・スムージー・メーカーも開発中だ。写真はプロトタイプ

5. Orange ChefのPrep Pad

Prep Padはボウルに食材を入れると栄養分を表示する。専用iPadアプリに脂肪、炭水化物、タンパク質、ミネラルなどがどれくらい含まれているかが表示されるだけでなく、1週間にそれらをどれほど摂取したか総計も表示される。またJawbone Upとも連動してダイエットの目標達成を助ける。

6. HAPIfork

HAPIforkは食生活をモニタしてダイエットを助けるスマート・フォークだ。このフォークは食事の時間や間隔、食物を口に運んだ回数などを記録する。データはUSBまたはBluetoothでスマートフォンに転送、表示される。

7. Siemensのインターネット接続コーヒーメーカー

Siemensは個々のガジェットというより統合されたスマート・キッチンのインフラを提供している。このキッチン・インフラに多数のスマート・ガジェットが接続される。このコーヒー・メイカーはその一部だ。朝、ベッドの枕元のスマートフォンを取り上げて、ボタンをクリックすると、シャワーを浴びて食堂に行く頃には朝のエスプレッソができているという仕組みだ。

8. LGのスマート・オーブン

このオーブンはスマートフォンからLG Smart Access Rangeアプリを通じて操作する。レシピを選択するとそれに合わせた自動的に適切な加熱パターンが実行される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Sony若手チームが「物のメッシュネットワーク」でクラウドファンディング…”事前知名度”をねらう

昨年、シンプルなeペーパースマートウォッチをクラウドファンディングしたSonyが、またIndiegogoにプロジェクトを出している。どうもSonyにとってクラウドファンディングは、新しいアイデアの有効性を、宣伝しながらテストする試験紙なのかもしれない。

その最新のプロジェクトMeshは、すでに目標額の半分近い22000ドルを集めている。それはセンサを使うDIYのためのプラットホームで、複数のデバイス上のセンサはBluetoothで互いに通信し、またiPadのアプリとワイヤレスで対話する。それら物のネットワークの機能を、アプリのドラッグ&ドロップインタフェイスで構成する。その用途例は、Indiegogoのページの最初の方に書かれている。

MeshのセンサコンポーネントはTagと呼ばれ(上図)、LEDと動き検出センサとワイヤレスのボタンとデジ/アナ入出力用のGPIOなどが用意されている。システムはそこから、対象デバイス(照明器具、モーターなど)のセンサと対話することになる。

またソフトウェアのTagもあり、たとえば天気予報のサービスからアラートを送ったり、カメラやマイクなどタブレット上のハードウェアを使ったりする。

複数のMesh Tagが接続され、iPadアプリで構成される。アプリのインタフェイスがシンプルなので、複数のTagが接続されたプロジェクトを技術者でない人でも作れる。またMeshのSDKがあるので、デベロッパは独自のソフトウェアTagを作って、より高度なカスタムプロジェクトを作れる。

いわば複数の多機能なTag群をメッシュネットワークで接続して一つのプロジェクトを仕上げるのだが、具体的にはどんなプロジェクトだろうか? Sonyが例として挙げているのは、たとえば、ドアが急に開いたらその瞬間に、びっくり顔の自己像を撮る写真撮影システムとか、何かが持って行かれそうになったら通知をするシステムなどだ。あるいはゲーマーの動きをTagが感知して、それにふさわしい効果音を発する、とか。要するにいろんなTagを組み合わせた作った一つのメッシュネットワークが、特定の、ユーザやデベロッパが狙った機能を発揮するのだ。アイデアやニーズは、無限にありえる。

クラウドファンディングの目標額が得られれば、Meshのキットは5月にまず、合衆国と日本で発売される。Indiegogoの支援者なら、ベーシックなキットが105ドル、GPIO Tagはやや高くて、別途55ドルだ。

過去に類似製品として、ワイヤレスのセンサキットSAMや、デベロッパ向けにはrelayrのWunderBar、健康とフィットネス専門のBITalinoなどがあった。しかし何よりも興味深いのは、今回のように消費者電子製品の大企業が、クラウドファンディングに頼るスタートアップのような形で、社内の創造性を育てようとしていることだ。

MeshのチームはIndiegogoのページ上で、“Sonyの社内起業育成事業から生まれた熱心な技術者たちの小さなチーム”、と言っている。Bloombergの記事によると、Sonyは昨年から、既存の組織分けになじまないような新しいプロジェクトを見つけて、スピーディーにそれらを育てるための、新しい部署を作った。いわばSonyの社内の起業家的社員たちが、Sonyという名の社内VCにアイデアを売り込んで、必要な資金とともにゴーサインをもらう、という形だ。最初のアイデア売り込み大会は、昨年6月に行われたそうだ。

このMeshも、その最初のピッチ大会から生まれて、その後のプロトタイピング等により実現のめどが立ったので、今年の前半までに製品化できる、という確信を持ったのだろう。クラウドファンディングの目標額は5万ドルで、期限まであと53日ある。

でも、Sonyほどの有名大企業が、なぜクラウドファンディングを頼るのか。それは、このところ企業イメージがひたすらダウンしている旧タイプの古参企業が、スタートアップ全盛のこの時代に、そういう新しい世界の一員になって、AppleやSamsungに負けないフレッシュな企業イメージを確立したいからだ。言い換えるとクラウドファンディングを利用することによって、Sony自身からも体にたまった垢が落ち、自分自身も、若い熱心な技術者チームが引っ張る若い企業になれる。少なくともイメージ的には。

しかもクラウドファンディングには、資金が得られるだけでなく、コミュニティが形成されるメリットがある。そこでは彼らは、エリート企業のエリート社員ではなく、ふつうの若者として、コミュニティの一員になれるのだ。しかも、忌憚のないフィードバックが、無料で得られる。

“Meshをさらに良くしていくための、どんなアイデアでも歓迎します。あなたならどんなものを作るか、それを知りたいのです”、とチームはIndiegogのページのオーディエンスに語りかけている。

Sonyという老朽企業が、滝に打たれて若返るための、謙虚な修行の場。それが、彼らにとってのクラウドファンディングと、スタートアップ界隈のコミュニティだ。それは、世の中に対して教える企業から、世の中から教わる企業への、180度の変身だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


電子回路のプロトを手軽に作成できるAgIC、1億円の資金調達を実施

昨年開催した「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルで見事に優勝に輝いたAgIC。同社が約1億円の資金調達を実施した。

調達した資金のうち3600万円は借り入れ、6000万円が第三者割当増資となっている。第三者割当増資の割当先はIoT関連の投資を手掛ける鎌田富久氏が率いるTomyKのほか、East Ventures、中国のYoren、その他事業会社と個人投資家6人となっている。なおTomyKは前回のラウンドでもAgICに出資しており、今回は追加投資となる。またYorenとは、中国での広告関連事業における業務提携を実施。ちなみに日本のスタートアップとしては珍しいのだけれども、同社はプレスリリースでプレマネーバリュエーション(増資前評価額)5億円、優先株での資金調達だとも発表している。

AgICは、導電性の銀ナノインクを使ったペンと専用紙を使って電子回路を描き、電子工作をしたりハードウェアのプロトタイプを作成したりできるキットを日米で販売している。このインクと家庭用プリンタでも回路の作成が可能だ。同社では今後、電子工作向けのキットを始めとした製品ラインナップの拡充、電子工作のレシピ共有サービスの開発などを進めるとしている。


IoT企業はプライバシーとセキュリティーに最優先で取り組め―FTC委員長がCES講演で強く警告

FTC(アメリカ連邦取引委員会) は、モノのインターネット(Internet of Things)に潜むプライバシーとセキュリティー上のリスクに対して関係者に強く注意を促した。インターネットに接続するさまざまなデバイスの数は2015年中に250億個に達すると予測されている。サーモスタットやドアロックなど、いわゆるスマートホーム・デバイスの数も今年は2500万になると見られる。

FTCは「ひとたびプライバシー、セキュリティー上の大規模な事故が発生すれば、消費者にIoT1への抜きがたい不信感を植え付けることになりかねない」と警告した。こうした破壊的シナリオを避けるために、IoTビジネスはセキュリティーおよびプライバシーのリスク対策に現在よりもずっと真剣に取り組む必要があるというのがFTCの考えだ。

FTCのEdith Ramirez委員長はラスベガスで開催中のConsumer Electronics Showを視察した後でIoTビジネスの将来に関する講演を行った。

「[モノのインターネット]は消費者に巨大な便益を与える一方、プライバシーとセキュリティー上のリスクも重大だ。IoTデバイスは、たとえばヘルス、医療関連分野で普及し始めているが、、膨大な個人情報を収集、転送することになる。こうした情報は極めてプラバシー性の高いもので、その処理には潜在的に非常に大きなリスクを伴う」とRamirez委員長は警告した。

3つの高リスク要素

Ramirez委員長は、プライバシー上、特にリスクの高い3つの要素について分析した。

(1) データ収集の遍在化; (2) 個人に不利益を与えるような個人情報の目的外使用; (3) 悪意による攻撃

データ収集の遍在化というのは、センサーやモニター・テクノロジーの発達にともなって「驚くほど大量かつ正確な個人的情報が蓄積される」という問題を指す。しかも収集されたデータを強力なツールによって分析することで、その影響力は一層拡大される。

しかもIoTデバイスは、家庭、自動車、さらには体表、体内にまで入り込み、きわめて個人的な情報を収集する。「IoTによってビジネスはわれわれの私生活のあらゆる側面を把握することができるようになる」とRamirezは述べた。.

そこで、収集されたデータが当初の目的や予期に反して使用されるというリスクが重大なものとなってくる。フィットネスや医療のために利用されるはずのデバイスから得られた個人情報が横流しされ、企業の採用選考に用いられるなどという例が考えられる。あるいは保険会社が健康保険や生命保険の料率を計算するために用いるかもしれない。消費者が便利なデバイスを購入したつもりで、実は知らないうちに自分の個人情報を売り渡す結果となるかもしれない。

「われわれは最終的な結果を慎重に考慮することなく無制限な個人情報の収集と流通を許すわけにはいかない」とRamirezは付け加えた。

またRamirezはIoTデバイスがハッカーの攻撃にさらされるセキュリティー上のリスクについて言及した。また侵入されたIoTデバイスがさらに広汎なネットワークへの侵入の突破口となる危険性にも注意を喚起した。

最近、いくつもの大規模なデータ漏えいがトップ・ニュースとなっている。データ・セキュリティーの困難性はますます高まっているといえる。しかしIoTはまた別種のセキュリティー上の問題を生じる。その一つは、伝統的インターネット業界はセキュリティーに対して数十年の経験を積んでいるのに対して、最近IoT市場に参入しているソフト、ハード企業の多くがセキュリティー問題に未経験であることだ。同時にIoTデバイスのサイズが小さく、処理能力に限界があることが暗号化その他の強力なセキュリティー施策を導入することを妨げている。また一部のIoTデバイスは安価な使い捨てモデルだ。こうしたことから、IoTデバイスに深刻な脆弱性が発見されてもソフトウェアをアップデートすてパッチを当てるなどの対策が難しい。それどころか脆弱性があることを消費者に周知することさえ困難だろう。

IoTデバイスには最初からセキュリティーを「焼きこむ」必要がある

こうした課題に対処するため、IoT企業はプライバシーとセキュリティーの重要性を認識し、ビジネスモデルそのものに「焼きこんでいく」必要があるとFTCは考えている。 それが企業自身、さらにはIoT市場全体への消費者の信頼をつなぎ止める道だという。

Ramirez委員長は具体的に3つの施策を挙げた。

(1) 「セキュリティー・デザイン」の採用; (2) データ収集、保存の最小化; (3) システムの透明性の確保、また予期せぬ情報漏えいや目的外使用が発生した場合の消費者に対する適切・迅速な情報開示

セキュリティー・デザインの採用とは、プロダクトやサービスのデザインにおいてセキュリティーを優先させることだ。「デバイスはデザインの段階でセキュリティーが作りこまれて居なければならない」としてRamirez委員長は次のように述べた。

デザインの過程でプライバシーとセキュリティーのリスクに関する十分な検討が行われる必要がある。プロダクトの市販、一般公開前に必ずセキュリティーがテストされなければならない。またデバイスのセットアップの段階で消費者がかならず独自のパスワードを設定しなければならい〔デフォールトのパスワードを使い続けることができない〕スマート・デフォールトを採用すべきだ。可能な限り暗号化を図る必要がある。またプロダクトのリリース後もモニターを続け、脆弱性の発見と修整に努めねばならない。 また社内にセキュリティー問題に関する責任者を置かねばならない。

これらはいずれも大企業では標準的に実施されている措置だが、小規模なスタートアップの場合、人的その他のリソース上の制限が厳しく、また新しいプロダクトをリリースすることを急ぐあまり、プライバシーとセキュリティーの保護がないがしろにされがちだ。

Ramirez委員長はまた「データ最小化」の原則についても触れた。これもまたスタートアップにとっては利益の相反となる分野だ。スタートアップのビジネスチャンスは取得するデータの種類や量に比例して向上する。そこで「サービス、デバイスが機能するために必要最小限のデータのみ取得する」、「取得後も必要のなかくなったデータは即座に破棄する」という方針は生まれにくい。 FTCの求めるこの原理は多くのスタートアップのビジネスモデルと衝突することになる。

「多量の個人データを取得、保持していればいるほど、その漏洩によるダメージは大きくなる。ビッグデータの恩恵を受けるために企業はできる限り多種多様なデータを取得、保持すべきだという議論がある。しかし私はこのような議論には疑問を持っている。将来もしかするとビジネスに役立つかもしれないというようなあやふやな理由で現在の業務に不必要な個人情報を持ち続けることは企業に大きなリスクを追わせるjものだ」とRamirezは述べた。

またRamirezは「個人識別情報を削除して保管する」という方法についても「そうして削除された情報はさまざまな方法で復元可能なので十分な対策にはならない」と警告した。また「企業は個人識別情報を削除された情報を再度個人識別可能にするような処理を行わない」と公式に約束すべきだとも述べた。

最後にRamirez委員長は透明性とユーザーに選択権を与えることの重要性を強調した。

IoT企業がユーザー情報を利用する場合、ユーザーはその内容を明示し、ユーザーが承諾ないし拒絶する機会を与えねばならない。この選択は長々しい利用約款の中に埋め込んでユーザーが一括して承諾するか拒絶する以外にないような方法で提示されてはならない。利用約款は一般消費者が通読する可能性がほとんどない。FTCは個人情報の利用に関する選択は一般の利用約款とは別に提示されるべきだと考える。

つまり「スマート薬缶」を販売する企業が、ユーザーが1日に何杯、いつ湯を沸かすかについての情報を地元のスーパーマーケットに売りたければ、そのことを別途、明示してユーザーの承諾を得なければならないということだ。

「IoTデバイスの場合、通例ユーザーインタフェースがきわめて限定されているか、そもそも存在しない。そのため消費者から明示的承諾を得ることが技術的に難しいことは私も理解している。それであっても、私は消費者に目的外使用を承諾するか否かについて選択の余地を与えることは必須だと考える。問題はそうすべきかどうかではなく、いかにしてそれをするかだ」とRamirez委員長は結論づけた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Cerevoの新デバイス「Listnr」は、常時「音を聞く」プラットフォーム

正月明け早々にスノーボード用バインディングで面白いデバイスを発表したCerevoだが、今日また米国で開催中のCESにおいて、新しいデバイス「Listnr」を発表した。部屋に置いておくと「音」を認識して、クラウド経由で何らかのサービスやデバイスをコントロールできるハブのようなもののようだ。すでにKickstarterでキャンペーンを開始している。

ListnrはInterphenomCerevoの共同開発によるもので、音声認識エンジンについてはパナソニックの研究開発部門が提供している。DMM.make AKIBAを拠点として新たに立ち上がった日本のハードウェア・スタートアップに対して大手電機メーカーが技術提供する事例としても注目だ。Cerevoは電子回路、組み込みソフトウェア、筐体設計を担当したそうだ。

Listnrは、ネット接続とマイクを搭載したデバイス。リビングやオフィスに設置することを想定している。設置場所付近で鳴った音を解析して、音に応じた指示をサーバーを介して遠隔地のスマートフォンやネットに接続した機器へ指示を送ることができるという。本体サイズは高さ68mm、幅112mm、奥行き68mm、重量は100g前後となる予定というから、小型のWiFiルーターぐらいだろうか。結構小さい。

音声認識エンジンは、当初は乳児の泣き声から「泣く」「笑う」「叫ぶ」、あるいは喃語(乳児が発する意味のない声)といった4パターンの感情を認識してスマートフォンへ通知する機能、スマートフォンからコントロールできる照明システム「Philips hue」をフィンガースナップの音で操作できる機能を提供するという(指をパチンと鳴らして電気をつけるってことだね)。APIを公開して、開発者がListnrに対応した製品やサービスを開発できる環境を整えるという。

常時音を「聞いていて」、それを何らかのコマンドとする汎用のプラットフォームということで、Amazonが2014年末に発表したAmazon Echoが似ている。EchoがSiriに似て人間が声で発する言語を認識するのに対して、Listnrは音や感情を認識するという違いがある。Echoが一般エンドユーザーをターゲットとしているために、やや唐突感があるのに対して、Listnrは当初は開発者に訴求するだろうから、そこも違いかもしれない。汎用的すぎて、まだぼくらのライフスタイルに入ってくる何かになるのかどうか分からない。そもそも赤ん坊の4つの感情が分かって、それが何っていうのもある。でも、ホームオートメーション市場が興隆してくるときに「音」がインターフェイスとして重要性を増すのなら、こうしたデバイスが活用される場面は増えていくのだろうし、開発者なら接続してみたいデバイスやサービスが思い浮かぶんじゃないかと思う。


インキュベイトファンドが110億円の新ファンド――IoTに注力、FoFも

2014年にも様々なスタートアップと出会うことができたが、その中で2015年により注目が集まることが確信できたテーマの1つが「IoT」だ。そういえば11月に開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルで優勝したのもインクジェットプリンターや専用のペンで回路製作を実現するAgICだった。そして今回インキュベイトファンドが組成した新ファンドでも、IoT関連の投資積極的に進めていくという。

新ファンドは総額110億円、IoTに特化

インキュベイトファンドが1月5日に組成完了を発表した「インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合」は、総額110億円のベンチャーキャピタルファンドとなる。出資するのは産業革新機構、ヤフー、三井住友銀行、Tencent Holdings、セガサミーホールディングス、Mistletoe、東京放送ホールディングス、ミクシィ、日本政策
投資銀行のほか、個人投資家など。聞いたところによると、ヤフーや三井住友銀行が独立系VCに出資するのは今回が初になるそうだ。

インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである村田祐介氏に聞いたところ、今回のファンドでは「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」をキーワードに、IoTを軸としたイノベーションを創出するスタートアップへの投資を進めるという。具体的には、次世代メディア、エンターテイメント、ゲーム、コマース、物流、 医療、金融、不動産、自動車、住宅などの領域に注力していくとのことだ。すでに米国で車載用アプリの開発を進めるDrivemodeに出資をしている。

1社あたりの投資金額は、3億〜5億円を想定しているという。ただ村田氏は「大きな金額をコミットするが、この金額でシード投資をやっていく」と強調する。これまでインキュベイトファンドは、起業家育成プログラムの「Incubate Camp」を開催するなどしてシード期の投資に注力してきたところがある。同プログラムの参加者はもともと3000万円のバリュエーションで300万円を出資というスキームだったし、プログラム以外の出資では数千万円前半の出資というケースが多かったが、同じステージに対して桁1つ大きな金額を出資する計画だという。

村田氏は2012年以降に新設されたファンドを取りまとめた金額が約2700億円と説明する(中でも金融系VCなどに比較すると、独立系VCがファンドの担い手として活躍しているそうだ)。しかし、増えたファンドはシリーズAを対象としたものばかりで、シリーズAの手前のシードファイナンスを手掛けるファンドは増えていないと語る。もちろん山田進太郎氏率いるメルカリのように、シリアルアントレプレナーがシードで大型調達をして勝負をするというケースはあるが、「結局大きな勝負をできるスタートアップはほとんどいなかった」(村田氏)と語る。

ではそんな大型調達した資金を使ってきっちり成長できる起業家をどうやって見つけるのか? 村田氏はその1つの取組みとして、インキュベイトファンドが手掛ける「Fellow Program」について教えてくれた。このプログラムはインキュベイトキャンプ ゼネラルパートナーの和田圭佑氏が中心となって立ち上げたもので、大企業の成績優秀者や外資系金融マン、何かしらのプロフェッショナルなど、本業を持ちつつスタートアップについて調査・研究し、毎月1回発表を行うというもの。これによって商社やメーカーから士業、官公庁まで、広く優秀な人材を集めているのだそうだ。「特にこの半年はIT・ネット業界以外でも人と会うようにしてきた。プログラムでも他業界の中堅、エースと出会えたと思っている。IoTはインターネットの人たちだけでは作れない。既存産業側のプレーヤーと一緒になって立ち上げていきたい」(村田氏)。

ファンドオブファンズでシード投資を更に活性化

村田氏は「シードファイナンスを増やす」という観点からインキュベイトファンドが取り組んでいる活動についてさらに教えてくれた。インキュベイトファンドでは、若手キャピタリストのファンドに対して出資(ファンドオブファンズ:FoF)も行っているという。

実はサムライインキュベートについては1号ファンドから出資をしているし、前述のIncubate Campで優勝したサムライト代表取締役の柴田泰成氏の「ソラシード・スタートアップス」、インキュベイトファンドのアソシエイトでもある佐々木浩史氏の「Primal Capital」のほか、スタートアップ支援を行うインクルージョンジャパンが立ち上げるファンドにも出資している。さらに海外でもFoFでファンドの立ち上げを準備中だそうだ。

「赤浦(インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである赤浦徹氏)がいつも言っているが、日本でスタートアップが増えない理由の1つはキャピタリストが増えないことにある。そしてそれはサラリーマンVCではなく、腹をくくっているキャピタリストでないといけないと思っている」(村田氏)


ヤフーがIoT領域に参入――2015年春に”IoT向けのBaaS”を提供

ヤフーがIoT領域の新サービスを提供する。京都で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 fall Kyoto」の中で、ヤフー イノベーションサービスユニット ユニットマネージャーの松本龍祐氏が明らかにした。

Yahoo! IoTプロジェクト(仮)」と呼ぶ新サービスは2015年春にリリースの予定。IoTのハードウェアそのものではなく、SDKやデータベース、解析、IDといったバックグラウンド環境をサービスとして提供するというものだ。

発表後、松本氏は「例えばイケてる時計型のプロダクトを作ったとして、(機能面では)単体での価値は1〜2割だったりする。でも本当に重要なのはバックエンド。しかしユーザーから見てみれば時計というプロダクトそのものに大きな価値を感じることが多い。そうであれば、IoTのバックエンドをBaaS(Backend as a Service:ユーザーの登録や管理、データ保管といったバックエンド環境をサービスとして提供すること)のように提供できればプロダクトの開発に集中できると思う。クラウドが出てネットサービスの開発が手軽になったのと同じような環境を提供したい」とサービスについて語ってくれた。

松本氏はまた、IFTTT(さまざまなウェブサービスを連携して利用できるようにするサービス)を例に挙げ、バックグラウンドで複数のサービスが連携できる仕組みも提供していくとも語った。「パーツとしてヤフーのサービスを使ってもらってもいいし、他社のサービスと連携してもいい。全くコードを書けないと簡単な事しかできないが、ライブラリも用意して手軽に利用できるようにしたい」(松本氏)。イベントでは、ネットに連携する目覚まし時計とYahoo!天気、Pepperを連携させて、「Yahoo!天気でその日の天気をチェックして、雨ならば予定より30分早く目覚ましを鳴らす。目覚ましで起きなければPepperが起きるように呼びかける」というデモを披露した。

このサービスは当面無料で提供していく予定。ではどうやってマネタイズするのかと尋ねたところ「ヤフーはビッグデータカンパニー。そのデータを生かせればいい。例えばYahoo! IDを使っているユーザーが増えることはメリットになる。ウェラブルデバイスのデータを取れれば広告の制度を高めることだってできる」(松本氏)とのこと。

また、このサービスを利用する開発者に対しては、ヤフーグループとして販売やマーケティング面でも支援をしたいと語る。「例えばY! Mobileの店頭での販売、Yahoo! ショッピングでの販売なども検討できる」(松本氏)。松本氏は現在ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルのパートナーも務めているため、YJキャピタルでIoT分野のスタートアップに投資し、このサービスを導入したいと語っていた。「ヤフーはPCの戦いで勝ったが、スマホでは圧倒的なナンバーワンではない状況。IoTでまた圧倒的なナンバーワンを取っていく」(松本氏)

余談だが、ヤフー執行役員の田中祐介氏もこのタイミングでYJキャピタルのパートナーに就任している。田中氏いわく、同氏や松本氏など起業経験を持つヤフーの役職者がYJキャピタルのパートナーとして活動していくことになったそうだ。またヤフー執行役員でYJキャピタル代表取締役小澤隆生氏によると、YJキャピタルは現在200億円規模のファンドを準備しているそうだ。


PepperとRingの共演に見る近未来のUI

「Ring」との共演も見せた「Pepper」

TechCrunch Tokyo 2014の1日目、2014年11月18日に開催されたセッション「ロボットのいる生活と近未来のUI」では、ソフトバンクロボティクスでPepper事業を手がける吉田健一氏、ユカイ工学の青木俊介氏、指輪型デバイス「Ring」を作るログバーの吉田卓郎氏がロボットとともに登壇した。

壇上には、ソフトバンクが2014年6月に発表したロボット「Pepper」が登壇者とともに立っている。そしてユカイ工学のコミュニケーションロボット「BOCCO」がテーブルの上にスタンバイしている。これらロボットと人間が、どのようなUIでコミュニケーションを取っていくのか。それはソフトウェア開発者にとっても、ベンチャー起業家にとっても、新たなフロンティアとなる領域だ。

Pepperが「マホウノツエ」で家電を制御、「Ring」で人とコミュニケート

ソフトバンクが2014年6月に発表したPepperは、プラットフォームとして開発されたロボットだ。PepperをめぐるテクニカルカンファレンスであるPepper Tech Festival 2014の場で、ユカイ工学はPepperに対応するソリューションとして「マホウノツエ」を公開した。赤外線通信機能を備えたマホウノツエをPepperが手に持ち、Pepperがテレビやエアコンを魔法でコントロールしているかのような光景を作り出した。

「魔法」をイメージしたというデバイス、ログバーのRingもPepperのためのUIとして活用可能だ。会場で見せたビデオでは、Ringのを付けた指の動き、つまりジェスチャーによりPepperを呼ぶ様子や、今日の予定をPepperに聞く様子が描かれていた。ログバーの吉田氏によれば、RingでPepperに指示を出すデモは、「3日ほどでつなぎ込みができた」そうだ。

ログバーの吉田卓郎氏

家庭を結ぶタイムライン、コミュニケーションロボット「BOCCO」

壇上に置かれていたもう1つのロボットBOCCOは、家庭のためのコミュニケーションロボットだ。公開したビデオでは、両親が共働きで帰りが遅い家庭をイメージしたユースケースを紹介した。子どもが帰宅した際、ドアに付けたセンサーを通じて職場の父親に通知がなされる。それを受けて親が子どもにメッセージを送ると、BOCCOは送られたテキストを読み上げてくれるのだ。

もちろんスマートフォンでテキストメッセージを送ることは容易なのだが、「小さな子どもにスマートフォンを持たせたくない親は多いはず」と青木氏は言う。自由度が大きなスマートフォンを小さな子どもに与えると、YouTubeで時間を使いすぎたり、怪しいサイトを開いてしまったりすることはいかにもありそうだ。BOCCOはロボットとしての個性、つまり人とコミュニケートするための性質を備えたデバイスとして作られているのだ。

Pepperを教育に、人にインプットするのではなくエンゲージする

ソフトバンクロボティクスの吉田健一氏

 

ソフトバンクロボティクス吉田氏は、Pepperにはパソコンやスマホにはない「人との関係」、エンゲージメントがあると強調する。「Pepperに入っているデバイスの技術は、実はそれほど革新的というわけではない。何が(今までのデバイスとの)違いかというと、生き物に見えるかどうか。社長(ソフトバンクロボティクス代表取締役社長の冨澤文秀氏)の2歳の子どもは、Pepperに一所懸命パンを食べさせようとする。子どもが見て生き物だと思うという関係性はパソコンやタブレットではありえない」。

ユカイ工学の青木氏もBOCCOの見た目が「ロボットっぽい」ことは重要だと考えている。自動販売機も自動改札機も、例えばユーザーの年齢を判別して挙動を変える高度な動作をする点ではロボットと呼べるかもしれないが、ユーザーは人とコミュニケートする機械とは認識しない。このセッションの文脈での「ロボットらしさ」とは、人とコミュニケートするデバイスとしての個性のことだ。

ユカイ工学の青木俊介氏

ソフトバンクロボティクスの吉田氏は、人間との関係の例として、 教育へのPepperの応用について話した。Pepperが子どもに教えるというやり方では、タブレットによる学習となんら変わらない。だが子どもと一緒に学習するスタイルだと関係が変化する。例えばPepperがわざと間違えて、子どもがそれを指摘する方が、子どもの学習スピードは上がるという。「インプットじゃなくエンゲージする、一緒に間違える」――そのようなコミュニケーションがロボットには可能なのだと吉田氏は言う。

セッションの最後で語られたのは、セキュリティ問題だ。Pepperは人と濃密なコミュニケーションをする目的のロボットだが、それは裏を返せばソーシャルハッキングの道具として使われる可能性があることを示している。「Pepperが子どもに『好きな人はいる?』などと聞くと、思わず答えてしまうかもしれない」(ソフトバンクロボティクス吉田氏)。Pepperのアプリストアでは、手作業でセキュリティチェックを実施する方針という。


物のインターネット(IoT)をRaspberry Piの簡便なデフォルト機能にしてしまうWeaved

Raspberry Piで遊ぶのはすごく楽しいけど、何か本格的な仕事をさせたいときはどうするか? RaspPiのボードにクールなことをさせるのは難しくなくても、それが広い外界とコミュニケーションするのは簡単ではない。そこで、Ryo KoyamaとMike JohnsonとDoug Olekinの三人はWeavedを作った。

Koyamaが述べる同社の目標は、やや漠然としている: “Weavedは物のインターネット(IoT)を誰でもできるようにして、究極的にはすべての電子製品がIoTの機能を持つようにしたい”。でも、そのねらいは単純だ。RaspPiにデフォルトでIoTの機能を持たせ、このハードウェアの可能性をぐっと大きく広げるのだ。

要するにこのサービスとWi-Fiを使って、RaspPiのボードがプライベートなIoTネットワークのセキュアなノードになるのだ。そのPiにログインすると、そのボード上のいろんな入力からの通知が得られる。それは従来、Raspberry Piにかぎらず電子製品プロジェクトのいちばん面倒な部分だった。そこでいわばWeavedは、そのためのAWSのような役を演じようとしている。

“IoTの便利屋/何でも屋のようなサービスがあるべきだ、とずっと思っていた。サーバのこともネットワーキングもモバイルもセキュリティも、ファームウェアの開発も何も知らない人が、気軽にIoTできるために”、とKoyamaは言う。

無料バージョンではPiを一つしか使えないが、有料なら何基でもよい。サービスの利用はここで申し込む。Raspberry PiからiPhoneに通知が行くなんて、なんか新しい世界が開けたみたいだが、そもそも完全なコンピュータを小さな名刺ケースに〔原文: Altoidsの缶に〕収めるなんてことも、ちょっと前までは狂人の戯言(たわごと)だった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Webデベロッパの電子工作にはとどまらない――超小型ボードEdisonが切り開く未来

11月18日に開催された「TechCrunch Tokyo 2014」の1日目に実施されたセッション「超小型開発ボード、EdisonがWeb開発者に開くIoTへの道」では、インテルの永井寿氏とTechCrunch Japanの西村賢によるトークが繰り広げられた。

Webベースのサービスカンパニーや、「モノづくり」系ベンチャーたちの熱気で溢れるTechCrunch Tokyoは、あるいは巨人インテルにとっては必ずしも居心地がいい場所ではなかったかもしれない。西村からの質問には、米Intelの2014年第3四半期決算で売上高が前年同期比7.9%増の145億5400万ドルと過去最高を記録する一方、「タブレットや携帯電話などのモバイル部門が10億4300万ドルの損失を出したが?」という厳しい内容も含まれていた。

Intelは2014年の1年間にタブレット向けに4000万台分のプロセッサ出荷を目標にしていて、今のところその目標を突破するペースで順調に推移している。すでにタブレットに搭載されるプロセッサでは、数量ベースでIntelはAppleに次ぐ世界2位のメーカーだという。Atomプロセッサを搭載したAndroid/Windowsタブレットの総数はiPadに次ぐ数が出ているそうだ。それにも関わらず、事業としては赤字拡大のフェーズだということだ。

質問を受ける側の永井氏は「苦しい中も乗り越えるのがインテル。データセンター向けのサーバーもあり、食いっぱぐれはない」と率直に回答する。

セッションでの中心的な話題は、Intelの組み込み分野での最新の動き、特に超小型のボードコンピュータ「Edison」を中心とした取り組みについてだ。セッションのタイトルからくみ取れるように、IntelはEdisonの投入により「流れ」を作り出そうとしているのだ。

昨年のTechCrunch Tokyo 2013ではインテルはQuarkプロセッサ搭載のボード「Galileo」を披露したが、今年披露したEdisonはGalileoより小さく高性能だ。500MHz動作のデュアルコアAtomプロセッサを搭載しLinuxも普通に動く。Arduino互換ボードも用意し、豊かなArduinoエコシステムも味方に付ける。

西村は「(Edisonは)アキバだと7000円とかで売ってるんですよね。10月25日から」と語る。この指先でつまむようにして持たないといけないほど小さなボードは、Linuxが走るx86マシンなのだ。

TechCrunchでは、TechCrunch Tokyoに先駆けるかたちで11月15〜16日にハッカソンを開催していた。西村はそれを振り返って「ハッカソンでNode.jsを使っている人がいて。組み込み系のI/OをNode.js経由でWebから使える。まったく別世界だと」と話を振ると、永井氏は「Webデベロッパに、スマホだけでなくIoT(Internet of Things)のハードウェアまでいじって遊んでいただこう、というところは期待している」と返した。

Edisonは、工夫すればウェラブルなデバイスに組み込めそうなほど小さく、それでいてLinuxが動き、Node.jsのような高レイヤーのソフトウェアスタックも動く本物のコンピュータだ。マイクロコントローラを核としたArduinoボードがMakerたちに盛んに使われている中、より高度なEdisonの可能性に期待するのは自然なことだ。

Linuxが動く超小型ボードと聞くと、どうしてもRaspberry Piのことを思い出す。EdisonはRaspberry Piとは異なりビデオ出力は付いていない。「Edison自体から絵を出す(モニターに出力する)ことは考えてない」と永井氏は言う。「HTML5ベースのWebアプリという形ならUIもできますよね?」と西村。「スマホ側からコントロールするかたちのアプリを作りれます」と永井氏。

ここで「Webデベロッパへの間口を開くのが大きな戦略ですか?」と西村が聞く。永井氏はこう答える。「Webデベロッパが電子工作系に取り組むというだけでなく、もっと期待できるものがあります。今までネットにつながっていなかったシステムにも、Edisonとセンサを載せて、情報を集めて分析できる。これが従来型の開発だとコストが大きいが、そこにWeb開発の知見を持ち込んで、より合理的に作れるようになると期待しています」。

Edisonが組み込まれた多種多様な仕掛け。それを高レイヤーのソフトウェアスタックを駆使してWebデベロッパが生命を吹き込む――そんな未来像への期待がこのセッションからは伝わってきた。

最後に永井氏が紹介したのは、Web APIをマネージするソリューションを持つMasheryだ。最近Intelは同社を買収した。「プログラムレスでWeb APIのマネージができる」と永井氏はメリットを語る。西村は、「Webデベロッパには、これから仕事がいっぱいある」とまとめ、セッションを締めくくった。


IoT実現環境の有望株? Seed Labがディベロッパーキットをリリース

数カ月前、Seed Labsからなかなか面白そうなInternet of Things(IoT)実現ツールが発表された。未だ開発段階であるが、ライトのバルブ、電気ポット、あるいはトースターなど、さまざまなデバイスに組み込んで利用することを意図して開発されたローパワーのBluetoothチップだ。面倒な初期設定操作をできる限り省いているのも特徴だ。チップを組み込んだ電化製品を買ってくれば、ただちにスマートフォンと連携し、家庭内IoTネットワークを構築することになるのだ。

発表からしばらくは表立った動きがなかったが、ついに開発キットが公開されるはこびとなった。トースターや電球など、さまざまなものをスマートフォンから簡単に操作できるようになるのだ。開発キットはこちらでプレオーダーを受け付け中だ。

Seedのプラットフォームでは、WeMoのようにデバイスのペアリングに手間取ることもないし、またSparkのように細かい設定をする必要もない。スマートフォン側にSeedアプリケーションをインストールしておけば、直ちに連携して利用可能となる。またパブリックモードとプライベートモードが用意されていて、無用なアクセスを防ぐ機能もついている。チップを搭載した電化製品をグループ化して一括管理したり、あるいは設定を記憶させておくこともできる。状況に応じて好みの照明をワンタッチで作り出すこともできるのだ。

冒頭にも記したように、このSeedプラットフォームは開発段階にあるものだ。しかしプロダクトの説明を聞いたり、あるいは実際に動作する様子を確認したりする中で、来たるべきIoT環境の中で、なかなか有力なプレイヤーであるように思える。Rafal Hanの率いるSeedチームによると、数年のうちにはモノとのコミュニケーションを実現するプロダクトを生み出すべく、アプライアンスパートナーとの作業を続けているところなのだそうだ。

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(翻訳:Maeda, H


19ドルのSpark Photonでそこらのものを何でもWebにつなごう

Spark Labsの、物のインターネット(Internet of Things, IoT)デバイスを作るための汎用開発キットSpark CoreKickstarterでヒットしたが、しかし致命的な欠点があった。電子工作のベテランでないと、使いこなせないのだ。しかし今度出たSpark Photonなら、それほどベテランでなくても使えそうだ。

Photonは兄貴のCoreにそっくりだが、やや速くてコンパクトだ(切手サイズ)。使い方はセンサやモーターを接続してから、シンプルなプログラミングインタフェイスを使ってそれと対話する。Photonの目標トは、ホビイストやアーチストやハードウェアマニアなどに19ドルという格安のお値段で気軽に物づくりを楽しんでもらうことだ。

予約が10000に達したら生産を開始するというやり方は、なかなか巧妙だ〔日本時間11/14午後で4000弱〕。この新しいキットが元のCoreと似ているところといえば、面白いからこれでいろいろ遊んでいるうちに、ワイヤレスロボットたちによる黙示録がきっと訪れることだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


省エネチップで大手と勝負するIndice Semiconductorが$6Mを調達、本社を合衆国へ移す

独自のアルゴリズムにより、各種応用器具の省エネを可能にするチップを作っているIndice Semiconductorが、マーケティングの拡充を主な目的としてシリーズAで600万ドルを調達した。このラウンドを仕切ったのはPixelworksのファウンダで元CEOのAllen Alley、これにオーストラリアのVC Rampersandが参加した。

資金は合衆国とアジア太平洋地区における営業チームの拡大に充てられ、各地域のOEMや製品設計者たちへの売り込みを強化する。これまでIndiceは、そのContinuous Sigmaアルゴリズムを用いたチップを主に照明業界に売ってきたが、今後は増幅器や電気自動車、IoT(物のインターネット)などの分野へターゲットを広げたい意向だ。

Indice Semiconductorはオーストラリアのメルボルンで創業され、最近、オレゴン州Tualatinへ本社を移して、Alleyを執行会長に迎えた。

Indice Semiconductorの競合相手はTexas InstrumentsやAnalog Devices、Cirrus Logicなど大物ばかりだが、同社は特許を取得したContinuous Sigmaアルゴリズムで十分に差別化を図れる、と考えている。同社はこれまで、このアルゴリズムによるチップを約100万売ってきた。

Continuous Sigmaアルゴリズムは、DAC/ADCアプリケーションのパフォーマンスを高める。したがって、インターネットに接続されるデバイスや、電気自動車、照明、増幅器などに適している。

同社によると、“Continuous Sigmaは、多くのウェアラブルデバイスで使われているSuccessive Approximation Registar(SAR)よりもシンプルなエンコーディングアルゴリズムであり、またオーディオ機器や電源装置、モーター制御などに1970年代から今日まで使われているDelta Sigmaエンコーディング法よりもパフォーマンスが高い。このことは、エンドユーザにとっては、たとえば、今あるものよりずっと性能の良いノイズキャンセルヘッドフォーンを作れたり、よりエネルギー利用効率の良いウェアラブルデバイスを作れることを意味する”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


猫の健康状態をウォッチする電脳猫トイレTailio…複数飼養でも個体を識別

猫を飼ってる人はみんな知ってるが、猫の生活の中には一定の習慣がある。たとえば排泄は、砂などのある一定の場所、“猫トイレ”でする。そして、一定の習慣があるため、コンピュータのアルゴリズムでモニタするのにも適している。ここでご紹介するTailioは、ありふれた猫トイレボックスを、猫の健康をモニタする電脳器具に変える。それは、センサがキャッチした信号とその変化を、スマホなどの通知機能へ伝えるのだ。

Tailioは既存の猫トイレをその上に置くスタンドで(下図)、猫がトイレに来たときに、体重や排泄物の重量、トイレにいた時間、その時刻、トイレ使用の間隔などを記録する。そしてアルゴリズムがこれらのデータをすべて使って、まず猫の個体を識別し、それから健康状態をチェックする。複数の猫を飼っているお家(うち)でも、十分に使える。

メイドインUSAの最新電脳機器Tailioを使うと、一体何が分かるのだろう? 同社によると、健康状態の変化が早めに分かる、という。たとえば体重の減少。また、おしっこの間隔が変われば、腎臓疾患の疑いがある。

猫は好奇心旺盛な動物だけど、自分の健康に関しては比較的無口だ。気分がすぐれないときは、隅っこでじっとしてるだけだろう。だから、深刻な病気なのか、昼寝をしているだけなのか、区別できないことが多い。それだけ慎み深い動物だから、コンピュータのアルゴリズムによる健康チェックは妥当なアイデアだ。ただしそれは信号を時系列で伝えるだけだから、その意味を判断するのはあくまでも人間の仕事だ。

スマホ(iOS、Android)に搭載するTailioアプリは、データの変化を警報として伝えるので、重大な疾患で早めに獣医さんに診ていただくことも可能だ。アプリには、症状をチェックする機能もある。

今はまだTailioはプロトタイプで、Kickstarterで資金募集中だ。目標額は30000ドルで、早めに99ドル以上出資した人には来年4月に完成品が届く。99ドルが一定数に達したら、それ以降は149ドル以上となる。

Tailioによると、プロトタイプといってもほぼ完成品で、今はアプリの磨き上げが主な作業だ。アルゴリズムの分析機能の改良が中心だが、それは、個々の猫個体の習慣パターンを学習するのに最初、3日かかるそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ベンチャーキャピタル、IoT(モノのインターネット)に狙いを定める―過去1年で投資3億ドルに急増

編集部: この記事の筆者、Christine MageeはCrunchBaseのアナリスト

日本発のパーソナル・モビリティ、Whillからワイヤレス充電のuBeamまで、家庭や自動車やオフィスにイノベーションを起こそうとするIoT〔Internet of Things=モノのインターネット〕のスタートアップが何百万ドル単位の資金調達に成功する例が相次いでいる。Kickstarterなどのクラウンドファンディング・プラットフォームではスピーカーやバッテリー充電器にもなるスマート・クーラーボックスとかカスタマイズできるスマートウォッチなどがヒットを飛ばしている。

それにとどまらず、最近ベンチャーキャピタルもホームオートメーションやホームセキュリティーの分野への投資を急増させている。GoogleのNest買収SamsungのSmartThings買収といった大型買収に刺激されて、この分野へのベンチャーキャピタリストの関心がかつてなく高まっている。

過去1年でベンチャーキャピタルは97回のラウンドで3億ドルをIoTスタートアップに投資した。しかも案件の半数は最近の四半期に実施されている。四半期での シードラウンドの件数は過去最高を記録している。

この件数急増の一因はIoTを対象としたアクセラレーターの整備によるものだ。R/GA、TechstarsのニューヨークのIoTアクセラレーター、Microsoft Venturesがシアトルに開設したホーム・オートメーション・アクセラレーター、 グローバルなアクセラレーターのHAXLR8Rなどがその目立つ例だ。ベンチャー投資家がIoTスタートアップの動向を注視していることはシードラウンドだけでなくSeries Aラウンドの数も新記録だったことでも推測できる。

Galvanize VenturesのNick Wymanは「この分野への投資を決断したもっとも大きな理由はIoTこそ将来だというコンセンサスが出てきたことだ。ビッグデータの取得と利用、スマート・ホーム、ホーム・セキュリティー、いずれもIoTテクノロジーが中心的な役割を果たすことになる」と説明する。

先週、GalvanizeはIoTスタートアップのKeen Homeへの投資ラウンドを実施した。これには損保のAmerican Family Insuranceやコミュニケーション企業のComporiumが戦略的投資家として参加している。Keenの最初の製品はスマート換気システムで、家の所有者は部屋ごとに換気をコントロールすることで室温を快適に保ちながら省エネを実現できる。「われわれは今後新しく現れてくる市場に投資している」とWymanは言う。Galvanizeは室内ガーデニングのスタートアップ、Grove Labsや家庭でビールを醸造するキットを開発したBrewBotにも投資している。

Keen Home自体はパズルの小さなピースかもしれないが、家のスマート化というその全体像は巨大だ。個別システムが多数登場すると、それらを協調させるハブの存在が強く求められるようになる。

BoxGroupDavid Tischは現在の状況を「Apple (Homekit)にせよ、 (Nest)、(SmartThings)、GE (Wink)にせよ、こうしたホームオートメーション・プラットフォームが最終的にどのような形を取るのか、まだ見えていない。今のところIoTエコシステムはまったく不透明な状況だ」と考えている。

Tischは去る7月のSamsungの買収に先立って、SmartThingsの1500万ドルのラウンドに参加していた。しかしそれ以後はホームオートメーションの分野で大きな投資の決断をしていない。先行きへの不透明感が、件数は多いものの大型投資案件が比較的少ないという傾向を招いているようだ。IoT分野での大勢が決まるまではあまり大きなリスクを取りたくないというのが投資家の心理なのだろう。ただGoogleなりAppleなりによってホームオートメーションのハブの事実上の標準が成立すれば、投資家には朗報だが、一部の消費者は、そういった巨大プロットフォームにもっとも重要なプライバシー情報をコントロールされたくないと反発するかもしれない。

HAXアクセラレータから巣立ったForm Devicesはそういった懸念に答える形で、 「ソフト・セキュリティー」を提唱している。これは従来のセキュリティーがカメラやセンセーといったデバイスに依存する「ハード・セキュリティー」だったのと対照的なアプローチだ。今週、 Kickstarterでプロジェクトを公開しているが、このシステムは24時間常時セキュリティー情報を記録するのではなく、ソフトウェアによって「何らかの異変」が感知されたときのみ、情報の記録を開始する。ユーザーは大量のプライバシー情報が外部のシステムに蓄積されてしまうことに対する不安を覚えずにすむわけだ。

「いずれにせよ、IoTの進展によって収集されるデータの量は飛躍的に増加する。それにともなってこのデータを効果的に処理、分析することから大きなチャンスが生まれ、ビジネスのあり方に革新が起きる。家庭、自動車、オフィスからIoTが始まろうとしている。その影響はドミノ倒しのようにあらゆる分野に急速に広がっていくだろう。インパクトは巨大だ」とR/GAのConnected DevicesプログラムのJenny Fieldingは予想する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+