iRocketとデブリ除去・衛星サービスのTurion Spaceが地球低軌道へ10回の打ち上げ契約を締結

ニューヨークに拠点を置く再利用可能ロケットのスタートアップiRocket(アイロケット)は、最初の商用顧客を獲得した。同社は米国時間11月4日、Y Combinator(YC)の卒業生であり、軌道上デブリの除去や衛星サービスのための宇宙機を開発しているTurion Spaceと複数回の打ち上げ契約を締結したと発表した。

契約条件によると、iRocketは10回の打ち上げで、Turionが開発中のDroid衛星20基を軌道に乗せる予定だ。

iRocketは、完全に再利用可能なロケットの開発を進めており、まずShockwave(ショックウェーブ)打ち上げロケットを開発し、2年後には軌道に乗せることができるようになるとしている。自律的に3DプリントされたShockwaveは、最大で約300kg(661ポンド)および1500kg(約3300ポンド)のペイロードに対応することができる。同社は、NASAのマーシャル宇宙飛行センターで、インジェクターテストやロケットエンジンテストなどのハードウェアテストを開始した。次は完全な組み立てテストだと、CEOのAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchに語っている。

「開発は順調に進んでおり、Turionとのパートナーシップはそれを強化するものです」と同氏は語った。iRocketは、米国宇宙軍、M&J Engineering Group、VCのVillage Globalから資金提供を受けている。

再利用可能な上段を持つiRocketと、Droid宇宙機を持つTurionは、両社とも宇宙ゴミの除去に目を向けている。Droidは軌道上のゴミをロボットアームを使いドッキングして除去し、最終的には大気圏再突入で燃え尽きるよう、十分に低い軌道に引きずり込ことで、デブリを除去する。

Y Combinatorの2021年夏期コホートに参加していたTurionは、2022年10月にDroidのプロトタイプ1号機の打ち上げを目指している。同社はそのミッションのためにすでに別の打ち上げ契約を結んでいるが、どのプロバイダーを選択したかは明らかにしていない。

この最初の打ち上げでは、軌道上デブリを除去したり、衛星にサービスを提供することはできない。TurionのRyan Westerdahl(ライアン・ウェスターダール)CEOは「領域認識活動のみを行う予定です」と説明する。「私たちはこの衛星を『Just Get It Up There』と呼んでいますが、これはできるだけ早く軌道に乗せたいからです。なぜなら、当社がすべきことの大部分は、地上オペレーションを本当に強化することだからです」とも。

Turionは、YCに加えて、Soma Capital、Forward VC、Pi Campus、FoundersX Ventures、Harvard Management Company、Imagination VCからも資金提供を受けている。

ウェスターダール氏は「当社の最優先事項は、地球低軌道における持続可能な未来を築くことであり、積極的なデブリ除去はそのための大きな要素です」と述べている。

両社はまた、軌道上でのサービスに関する将来のコラボレーションの可能性についても示唆している。ウェスターダール氏は、TurionがiRocketと協力して、ロケット会社のペイロードの何分の一かで軌道上の最終デリバリーを行い、宇宙ゴミの除去と組み合わせる可能性を示唆した。

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

再利用可能ロケット開発iRocketがわずか2年以内の商業化を目指しNASAと新たに提携

再利用可能ロケットのスタートアップ、iRocket(アイロケット)は、わずか2年以内に商業化するという目標を掲げて、NASA(米航空宇宙局)と新たな提携を結んだ。

この提携によって、iRocketはNASAの試験施設と技術サポートを、主にアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターで利用できるようになる。会社は最初のロケットエンジンテスト(地上燃焼試験)をハンツビル施設で2021年9月に実施したいと考えている。

iRocketは今後5年間の再利用可能エンジンと打ち上げロケットの試験、開発のために5000万ドル(約55億円)を準備している。NASA施設を利用できるということは、エンジン試験のための制御された環境を提供する重要設備である試験台を利用できることを意味している。iRocketは、オハイオ州のグレン研究センターで真空試験(宇宙環境をシミュレートする)を、マーシャル宇宙飛行センターで海上試験を行う予定だ。

「当社はマーシャル宇宙飛行センターと、非常に綿密な検討を重ねてきました」とiRocketのCEOであるAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchのインタビューで語った。

このエンジンは最終的にiRocketの新しい打ち上げロケットShockwave(ショックウェーブ)の動力になる。ロケットは完全再利用可能な無人小型ロケットで最大積載能力は約300kgおよび1500kg。3Dプリンティングで作られたエンジンは、メタンと液体酸素を燃料とする。「メタンは深宇宙ミッションに最適な燃料になるでしょう」とマリク氏は言った。

ニューヨーク拠点のスタートアップはエンジンを極超音速(hypsesonic)にすることも目標にしている。野心的なゴールだ。そしてiRocketには野心的な計画がある。マリク氏は再利用可能ロケットエンジンとロケット自身、両方の主要サプライヤーになろうとしている。ロケットステージも再利用できる設計(他のロケット開発者との決定的な違い)なので、衛星や貨物の打ち上げミッションだけでなく、いずれ宇宙ごみの除去やバイオテク企業のための回収実験もできるとマリク氏は言っている。

Aerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイン)のLockeed Martin(ロッキード・マーティン)への売却(現在も連邦取引委員会が審査中)は市場に空白を作る、とマリク氏は指摘する。「そうなることで、海外製部品を避けるよう議会が強く押している今、独立系ロケットメーカーのいない米国市場が開放されます」と彼は言った。「つまりこれは、私たちが政府や国防省、NASAなどのパートナーと協力して、私たちに必要な次世代宇宙推進システムを開発するチャンスなのです」。

関連記事
ヴァージン・ギャラクティックのマイク・モーゼス社長が語る、成長を続ける同社の次なる展開
月着陸船開発を失注したベゾス氏がNASAに約2208億円の「インセンティブ」を打診
ブルーオリジン初の有人宇宙飛行後、ベゾス氏とクルーが記者会見「より重大なミッションの練習」

カテゴリー:宇宙
タグ:iRocketロケットNASA

画像クレジット:iRocket<

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook