アークエッジ・スペースがJAXA「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」委託先に選定

アークエッジ・スペース、JAXAの「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に選定、コンソーシアムにて開発計画を検討

アークエッジ・スペースは1月11日、JAXAの公募型企画競争(コンペ)「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に2021年12月22日に選定されたこと、同時にKDDIや東京大学などとコンソーシアムを組織し、月探査のための測位・通信システムの総合アーキテクチャーなどの開発検討を行うことを発表した。

アークエッジ・スペースは、超小型衛星の製作運用などを行う東京大学発の宇宙企業。コンソーシアムのメンバーは、アークエッジ・スペースの他、ispace、AAI-GNSS技術士事務所、清原光学KDDIKDDI総合研究所東京大学大学院工学系研究科三菱プレシジョンの7団体となっている。そこで、2022年1月初旬から3月25日まで、月探査の基盤となる測位・通信システムの総合アーキテクチャー、月測位衛星システム、月と地球を結ぶ超長距離通信システムなどの開発計画を検討する。これを通して、国際的な技術調整の場で提案できるアーキテクチャーの設定や、そのアークテクチャーに必要なキー要素技術の研究開発を加速するという。

アメリカが中心となって進められている国際宇宙探査計画「アルテミス計画」の中で、日本は測位や通信といった基盤を「早期に整備し、リードしていく」ことが求められているとのこと。産官学連携でスピーディに技術開発や実証を推進し、「日本の持続的な月・月以遠の深宇宙探査や月面産業の構築に貢献していきます」とアークエッジ・スペースは話している。

アラブ首長国連邦が2028年にアステロイドベルトに探査機打ち上げ、小惑星への着陸を目指す

アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙機関は、火星と木星の間にある小惑星帯に探査機を送り、2030年代初頭には最終的に小惑星に着陸させることを目指している。これはアラブ首長国連邦の民間宇宙企業にとって、大きな弾みがつくミッションとなることは間違いない。

このミッションは2028年に打ち上げが予定されている。そこから宇宙機は、長く曲がりくねった旅に出る。5年間で36億キロメートルの距離を移動し、金星と地球をブーメランのように回りながら十分な速度を得て、最終的には2030年に火星の先にある小惑星帯に到達する予定だ。UAEでは、2033年に探査機を小惑星に着陸させることを目指している。これは2014年に宇宙機関を設立したばかりの国にとって、野心的な目標だ。

これまで、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そして日本の宇宙機関であるJAXAが、宇宙機を小惑星に着陸させている。今度のミッションが成功すれば、UAE宇宙局はこれらの少数のグループに加わることになる。その明確な科学目標は来年発表される予定だが、探査機が収集するすべてのデータは、宇宙の起源についての理解を深めるのに役立つ可能性がある。これらの小惑星は、太陽系が形成されたときの天空の残り物であると考える科学者もいるからだ。

今回のプロジェクトは、国内の宇宙産業の発展を目指しているUAEにとって、最も新しく最も意欲的な取り組みとなる。重要なのは、UAEが契約や調達の優先権を与えるとしている首長国連邦の企業が、このプロジェクトから利益を得られる立場にあることだ。

UAEは2020年7月、Emirates Mars Mission(エミレーツ・マーズ・ミッション)の「Hope(ホープ)」探査機を打ち上げ、2021年の2月には火星周回軌道へ乗せることに成功した。この探査機は火星を1年(687日)かけて周回し、火星の大気に関するデータを収集することになっている。

また、UAEは2022年に「Rashid(ラシッド)」と名付けられた重量10キログラムほどの小型月面探査車を、月へ送ることも予定している。この探査車は、カナダの民間企業3社の技術とともにペイロードとして、日本の宇宙ベンチャー企業であるispace(アイスペース)の「HAKUTO-R(ハクトR)」ミッションのランダーで月面に輸送される予定だ。

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UAE宇宙庁のSarah Al Amiri(サラ・アル・アミリ)長官によれば、この最新のミッションは、火星へのミッションに比べて「5倍ほど複雑になる」という。その新たなレベルの難しさについて、UAEは声明の中で「宇宙機の設計とエンジニアリング、惑星間航行、複雑なシステム統合」に加えて、宇宙機の通信システム、電力システム、推進システムに求められる性能も高くなると述べている。

画像クレジット: ESA/Rosetta/NAVCAM Flickr under a CC BY-SA 3.0 license. (Image has been modified)

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本の宇宙ベンチャーispaceが月の夜にも耐えられる大型月着陸船のデザインを発表

月面の経済発展でリーダーとなることを目指す日本の宇宙ベンチャー企業、ispace(アイスペース)は、早ければ2024年に月へ行く大型着陸機のデザインを発表した。

東京を拠点とするispaceによれば、この「シリーズ2」と名付けられた次世代ランダーは、同社が計画する3回目の月探査ミッションで使用される予定とのこと。このランダーは、同社の最初のランダー「シリーズ1」よりも全体の大きさとペイロード(貨物)積載容量が大きく、着陸脚を広げた状態で高さ約2.7メートル、幅約4.2メートルとなっている。月面には最大500キログラム、月周回軌道には最大2000キログラムのペイロードを輸送することが可能だ。2022年と2023年に打ち上げ予定のシリーズ1は、ペイロード積載容量が30キログラムしかない。

重要なのは、この新型ランダーが極寒の月の夜にも耐えられるように設計されていることで、月面には2週間の滞在が可能であるという。また、このシリーズ2ランダーは、極地を含む月の表側と裏側のどちらにも着陸できるように設計されている。

この着陸機には他にもいくつかの特徴がある。複数のペイロードベイを備えたモジュール式のペイロードデザインを採用していること、そして高精度な月面着陸を実現するための高度な誘導・航法・制御(GNC)システムを搭載していることなどだ。このGNCの技術は、宇宙産業で実績のあるエンジニアリング開発会社のDraper(ドレイパー研究所)から技術協力を受けている。ドレイパー研究所は、NASAのCommercial Lunar Payload Services(CLPS、商業月面輸送サービス)イニシアティブに選定された14社のうちの1社でもある。

ispaceの発表によると、このシリーズ2ランダーは基本設計審査を完了しているとのこと。次の段階となる製造と組み立ては、防衛・航空宇宙技術会社のGeneral Atomics(ジェネラル・アトミクス)と協力して行う予定であるという。

このシリーズ2ランダーをNASAのプログラムに参加させたいと考えているispaceにとって、鍵となるのがCLPS契約企業であるドレイパー研究所とのパートナーシップだ。ispaceの米国子会社のCEOであるKyle Acierno(カイル・アシエルノ)氏は「今後数カ月間はドレイパー研究所やジェネラル・アトミクス社と連携し、次のNASA CLPSタスクオーダーに向けて準備を進めていきます」と語っている。

ispaceは、コロラド州にある北米オフィスで次世代ランダーの開発を行っており、製造も米国内で行う予定だ。その一方で、2022年と2023年に予定されている1回目と2回目の月面探査の準備も進めている。同社によると、シリーズ1ランダーは、宇宙打ち上げ会社のArianeGroup(アリアングループ)が所有するドイツの施設で、フライトモジュールの最終組み立てを行っているという。最初のミッションの顧客積荷目録はすでに満杯だが、ミッション2のペイロード容量にはまだ余裕があると、ispaceは述べている。

今回のランダー発表の数週間前、ispaceはシリーズC投資ラウンドで約50億7000万円の資金調達を実施したことを発表している。この資金は同社が計画中の第2、第3のミッションに充てられる予定だ。

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日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託
画像クレジット:ispace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本のispaceが2023、2024年の月面探査ミッションに向けて新たに約50.7億円を調達

日本の宇宙スタートアップ企業であるispace(アイスペース)は、3年以内に予定している3つの月面着陸機ミッションを完遂させるため、シリーズC投資ラウンドで約50億7000万円を調達した。

今回調達した資金は、2023年と2024年に計画されている2回目と3回目のミッションに充てられる。ispaceが2022年後半の実施を目指している第1回目のミッションは、これまでに調達した資金で賄われる。

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このシリーズCラウンドは、日本のベンチャーキャピタルであるIncubate Fund(インキュベイトファンド)が主導し、Innovation Engine(イノベーション・エンジン)が運営するパートナーシップ、SBI Investment Co.(SBIインベストメント株式会社)、佐護勝紀氏、Hijojo Partners(ヒジョージョー・パートナーズ)が運営する法人、Aizawa Investments(アイザワ・インベストメンツ)、Aizawa Asset Management(あいざわアセットマネジメント)が運営するファンドから追加投資を受けた。インキュベイトファンドは、ispaceのシード期にあたる2014年から同社を支援している。

ispaceの総調達額は現在約213億円となっている。

同社は2021年7月、2022年のミッションに向けた月面着陸機のフライトモデルの組み立てを、宇宙ロケット会社のArianeGroup(アリアングループ)が所有するドイツのランポルズハウゼンにある施設で開始したと発表した。ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」の最初のミッションでは、着陸機はコスト削減と推進剤による重量増加を主な理由に、3カ月かけて月に到達する予定だ。この着陸機は、サウジアラビアのMohammed bin Rashid Space Center(モハメド・ビン・ラシッド宇宙センター)から月面探査ローバー「Rashid」(ラシッド)を、日本の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から変形型月面ロボットを、そしてカナダの3つの企業からペイロードを、月へ届ける契約を受注している。この着陸機は、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで打ち上げられる予定だ。

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高さ約2.3メートルの着陸機は、2023年に予定されている2回目のミッションでも使用され、同社のその後のミッションをサポートするためにデータを収集するispaceの小型探査車を、月へ送り込むことになっている。2024年の3回目のミッションでは、米国でより大きな着陸機を開発する予定だ。

ispaceは、その長期的な目標を「民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなること」と表現している。同社は、月の水資源が「未開発の可能性」を秘めていることをウェブサイトで紹介し、宇宙ベースの経済を促進させることに特に関心を寄せている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ispace日本資金調達

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

JAXAが有人与圧ローバー実現に向け変形型月面ロボットによる月面データ取得の実施決定、タカラトミー・ソニー・同志社大と共同開発

JAXAが「有人与圧ローバー」実現に向け変形型月面ロボットによる月面データ取得の実施を決定、タカラトミー・ソニー・同志社大と共同開発

変形型月面ロボット(左:変形前、右:変形後)

JAXAは5月27日、月面での人の移動に使われる「有人与圧ローバー」の実現に向け、月面でのデータ取得を行うと発表した。これには、JAXA、タカラトミー、ソニー、同志社大学と共同開発する変形型月面ロボットが使われ、月面投入はispace(アイスペース)が2022年に打ち上げを予定している月着陸船が使われる。

JAXAは、2019年から有人与圧ローバーの概念検討を行っており、自動運転技術や走行技術の詳細を検討するためには月面の画像データなどが必要だと判断した。そこでispaceの月着陸船で変形型月面ロボット1機を月面に送り込み、レゴリス(月面の砂)の挙動や画像データを月着陸船経由で地上に送ることを決めた。取得したデータは、有人与圧ローバーの自己位置推定アルゴリズムの評価、走行性能へのレゴリスの影響評価などに用いられる。ispaceの月着陸船は、変形型月面ロボットを月に送り込みデータ通信を行わせる目的で、競争入札により選定され2021年4月に契約を締結したもの。

ispaceの月着陸船

変形型月面ロボットは、2016年に実施された第1回JAXA宇宙探査イノベーションハブ(Tansax)の研究提案公募でタカラトミーによって提案された重量約250gの自走型の超小型ロボット。月着陸船には、直径約8cmの球状になって搭載され、月面に展開された後に走行用の形状に変形して活動を行う。

2016年よりJAXAとタカラトミーが筐体の共同研究を開始し、2019年にソニー、2021年に同志社大学が参加した。タカラトミーと同志社大学の筐体の小型化技術、ソニーによるSPRESENSEを使った制御技術、JAXAの宇宙環境下での開発技術と知見がそれぞれ生かされている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ispace(企業)宇宙(用語)SPRESENSE(製品・サービス)Sony / ソニー(企業)JAXA / 宇宙航空研究開発機構(組織)タカラトミー(企業)同志社大学(組織)日本(国・地域)

日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

東京に本社を置くispace(アイスペース)は、カナダと日本のローバー(探査車)を月面まで届ける任務に選ばれた。2022年と2023年に予定されているミッションでは、最近公開された同社の月着陸船が使用され、SpaceX(スペースX)のロケットで打ち上げられる予定だ。

カナダ宇宙庁(CSA)は、それぞれ別の科学的ミッションを担当するカナダの民間企業3社を選定した。Mission Control Space Services(ミッション・コントロール・スペース・サービス)、Canadensys(カナデンシス)、NGCの3社は、いずれもCSAによるLunar Exploration Accelerator Program(LEAP、月探査促進プログラム)の一環であるCapability Demonstration(能力実証)プログラムで受賞した最初の企業だ。2020年2月にカナダ政府が発表したLEAPは、5年間で1億5千万ドル(約165億円)を計上し、カナダの民間企業が宇宙空間で行うデモンストレーションや科学ミッションを支援する。

ispaceは、2022年に予定されている「ミッション1」で、アラブ首長国連邦のThe Mohammed Bin Rashid Space Centre(ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター、MBRSC)が開発した重量約10キログラムの月面探査ローバー「Rashid(ラシッド)」を月に届ける予定だ。このローバーには、宇宙ロボティクス企業であるMission Control Space Servicesの人工知能フライトコンピューターが搭載される。同社の人工知能は、深層学習アルゴリズムを用いて、Rashidが月面を走行する際に取得する画像から月の地質を認識することができる。

また、ispaceはCanadensysのために「ミッション中の重要な事柄を撮影する」カメラを月面へ輸送し、さらにNGCが開発する自律航行システムのデモンストレーションのために、月面の画像データを取得する。

「CSAに選ばれた3社すべてが、それぞれ月面での活動を実現するための役割を、ispaceのサービスに託してくれたことを光栄に思います」と、ispaceの創業者でCEOである袴田武史氏は声明で述べている。「これは、ispaceがCSAとの間に築いてきた過去数年間の信頼の証であり、北米市場においてispaceが認められたものと考えています」。

ispaceはまた、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、変形型月面ロボットの「月面輸送・運用・データ取得」契約も締結したと発表。2023年に予定されている月面探査ミッション「ミッション2」で収集されるデータは、JAXAが研究している有人与圧ローバーの設計に活用される。

JAXAの月面ロボットは、展開形状に変形する前は直径が約80ミリメートル、重さは約250グラムしかない。ispaceは、競争入札で獲得したこの契約の金銭的条件を明らかにしていない。

画像クレジット:JAXA

JAXAは、このロボットを月面で走行させ「レゴリス(月の表面を覆う砂)の挙動や月面での画像データ等を月着陸船経由で地上に送信します。取得したデータを用いて、有人与圧ローバの自己位置推定アルゴリズムの評価や走行性能へのレゴリスの影響評価等に反映する予定です」と、ニュースリリースで述べている。

ispaceは2020年7月に、この月探査プログラム「Hakuto-R(ハクトアール)」で使用するランダー(着陸船)のデザインを公開した。Hakuto-Rは、人類初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」から生まれたプロジェクトだ。このレースは、探査機を月に送り、500メートル以上の距離を走行させ、写真や動画を地球に送り返すことを競うというものだったが、Hakutoを含む5つのファイナリストがいずれも期日内に打ち上げを完了させることができず、優勝者がないまま2018年に終了した

MBRSCとJAXAのローバーは、それぞれ異なる展開機構を持つはずだが、米国時間5月26日に行われたメディア発表会で、袴田氏は詳細を明らかにしなかった。

袴田氏によると、ランダーはドイツで組み立てられており、組み立ての段階は始まったばかりだという。「だからこそ、私たちはこのスケジュールを達成できると確信しています」と、袴田氏は付け加えた。

ispaceの長期的な目標の1つは、月面における水資源の活用だ。それによって将来的には持続性のある活動を実現するための能力を高めていきたいと袴田氏は語る。

ispaceのHakuto-Rプログラムは、SpaceXのロケットで打ち上げられるいくつかの月面ミッションのうちの1つに過ぎない。2021年4月、米航空宇宙局(NASA)は、そのArtemis(アルテミス)計画の一環で、月面に人間を送る有人着陸システムの開発企業に、SpaceXを選んだと発表。その受注総額は28.9億ドル(約3175億円)に上る。SpaceXはFirefly Aerosapce(ファイアフライ・エアロスペース)からもペイロード輸送を受注しており、2023年に同社の月面着陸船を運ぶ予定だ。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAが月試料収集プロジェクトに日本のiSpaceなど4社を選択、宇宙鉱業のパイオニア育成を目指す

NASAは、月の表土サンプルを収集し地球に持ち帰るプロジェクトへの参加企業を募集していた。多数の民間企業が応募した中からispace Japanなど4社が選択された。

選定された4社はNASAの月着陸ロケットへの機器の搭載をすでに予約している。NASAはペイロードに民間企業を加えることでプロジェクトのコストの大幅削減ができることを実証しようと考えている。またNASAは、月試料採集にあたって民間企業に支払いを行う。企業は取得した物質の一時的な所有権を持ち、独自の目的に使用した後でNASAに譲渡することとなる。今回のプロジェクトこうした方式の前例となるだろう。

選定は簡単な基準に基づいて評価された。つまり、まず技術的に実現可能かどうか、次にどれほどの費用がかかるかという2点だ。4社はそれぞれが異なる手法でNASAの要求条件を満たそうとしている。プロジェクトは50〜500g程度の月のレゴリス(要するに月の土だ)を採集して地球に持ち帰ることだ。地球での回収作業はNASA自身が実施する。2024年までにサンプルの取得を実現できるという点が要求仕様に含まれていた。これはNASAのアルテミスミッションに間に合うようにするためだ。NASAは実際にサンプルを購入する義務はないが、必要なら購入できるようオプションが設定されている。

選定された4社は以下のとおり。

Lunar Outpost:米国・コロラド州ゴールデン。契約金額はわずか1ドル(約104円)。2023年に完成予定のBlue Originの月着陸船を利用する。

ispace Japan:日本、東京。契約金額5000ドル(約52万円)。現在、2022年に設定されている最初のミッションでHakuto-R着陸船を利用して収集を行う。

ispace Europe:ルクセンブルグ。ispace Japanと同一のグローバル宇宙企業グループに属する。契約金額5000ドルで2023年の2回目のHakuto-Rミッションに参加予定。

Masten Space Systems:米国・カリフォルニア州モハベ。契約金額は1万5000ドル(約156万円)。2023年に自社開発のMastenXL着陸船を使用する予定。

NASAには16ないし17社から22の応募があった。このプロジェクトはNASAが官民パートナーシップという手法のメリットを実証することも重要な目的で、月のような地球外天体から試料を収集するための方式に1つの先例を作れるよう意図している。

NASAの国際関係・省庁間関係担当副長官代行のMike Gold(マイク・ゴールド)氏はこう述べている。

これが内部的にも外部的にも先例となり、民間企業とのパートナーシップというNASAのパラダイムを今後も前進させていくことと信じています。NASAはこれまでのようにシステム開発自体の資金を負担するのではなく、民間企業の事業に対して顧客として料金を支払う役割となります。

具体的にいえば、今回の契約は月試料の収集に関して民間企業が主導的役割を果たすこと、また試料の所有権を収集した企業が持つことについて重要な先例となるだろう。ゴールド氏はこう述べている。

宇宙開発においてロケット工学はむしろやさしい部分だと私は常々いっています。政府の政策、各種の法的規制、予算などの課題には対処することは非常に困難な課題です。こうした問題を事前に解決しておかないと公的部門と民間部門の協力によって生じる素晴らしい進歩がひどい遅延に見舞われかねません。民間セクターの能力を利用する先例を確立することは重要です。企業のリソースを使ってNASAがその成果物を購入利用できるようにすることはNASAの活動だけでなく、官民協力による宇宙開発、探査に新しいダイナミックな時代を開くでしょう。我々はまず月にやがて火星にたどり着くでしょう。

NASAは民間企業が月(将来は火星)に行き試料を収集し所有権を保持し後に、公的および民間の顧客に試料を売却することができるというビジネスモデルを確立することを望んでいる。

今回の選定にあたって入札価格が非常に低かったのはこれが理由の1つだ。ispaceやLunar Outpostのような企業は地球外天体の宇宙鉱業を含む未来的ビジネスモデルを持っていいる。さらに月着陸ミッションはすでに計画されており、NASAが今回の提案要項に明示したとおり、NASAは月着陸船の開発費を支払うことを考えていない点だ。 NASAは月に実際に収集された試料の料金だけを支払うというモデルとなっている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:NASAispaceLunar OutpostMasten Space Systems

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

日本発の月面探査スタートアップのispaceが米国オフィスを開設、元スペースX社員を次期着陸船開発リーダーに採用

月面探査を支援するランダー(着陸機)技術を開発する日本発のスタートアップのispaceは、オフィスをデンバーに開設すると米国時間11月9日に発表した。​コロラド州のオフィスは、地元の航空宇宙工学の才能にアクセスできるという理由から選ばれたもので、同社はすぐに同地でエンジニアリングチームのスタッフを配置する計画だ。​ispaceはまた、7年間SpaceX(スペースX)で働いたKursten O’Neill(コーステン・オニール)氏が、同社の次世代月着陸機の開発を監督にあたると発表した。

米国での事業拡大は、ispaceがCommercial Lunar Payload Services (CLPS) プログラムを通じてNASAとより密接に協力しようとしている中で行われた。ispaceは現在、NASA向けの月面着陸機輸送サービスを提供するため、米国を拠点とする宇宙専門組織のDraperと提携している。また同社はその国際的なネットワークを活用して、アルテミス計画全体で米国との国際的パートナーと戦略的連携を広げることを望んでいる。アルテミス計画は、人類が月に帰還するのを支援し、継続的な科学研究目的のためにより恒久的なプレゼンスを確立することを目的とした、NASAのミッションシリーズである。

​ispaceは2021年の初打ち上げを皮切りに、現在計画されているMission 1とミッション2で最初の月面着陸機の打ち上げを予定している。Mission 3ではオニール氏が率いるチームが設計・製造を担当し、より大きなサイズとペイロード容量を誇る次世代ランダーを搭載する予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter