SpaceXが有人宇宙船「Crew Dragon」の新規製造を終了、今後は製造済み機体の再利用に注力

SpaceX(スペースX)は、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を送迎する宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」の新規製造を終了し、代わりにすでに製造済みの4機を再利用することに注力すると、Reuters(ロイター)が米国時間3月28日に報じた

SpaceXでは、改修用にCrew Dragonのコンポーネントの製造を継続する予定であり、必要があればこの宇宙飛行士カプセルをさらに製造することも可能であると、SpaceXのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)社長は、ロイターに語った。

Crew DragonはSpaceX初の有人宇宙船で、ISSへの物資輸送サービスに使用されているDragon(ドラゴン)貨物カプセルの設計を流用している。Crew Dragonは2020年のデビュー以来、5つのミッションで人間を宇宙に連れて行った。その中には、億万長者のJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏が出資した初の民間人のみによる有人飛行ミッション「Inspiration4(インスピレーション4)」も含まれる。

また、Crew Dragonは、NASAがISSとの間で宇宙飛行士を往復させるために使用する唯一の再利用可能な乗り物でもある。SpaceXは2014年に同機関と「Commercial Crew Transportation Capability(CCtCap、商業乗員輸送能力)」契約を締結し、6つのミッションを受注していたが、2022年2月にはNASAがSpaceXにCrew Dragonを使う3つのミッションを追加発注している。SpaceXは合計9回のミッションで総額約35億ドル(約4300億円)を手にすることになる。

現在、ISSへの有人宇宙飛行はSpaceXの独占状態にある。Boeing(ボーイング)もNASAからCCtCap契約を獲得しているが、同社の提案する有人宇宙船「Starliner(スターライナー)」は技術的な遅延に悩まされ、テスト飛行さえ中止されている。

SpaceXは、Crew Dragonの生産を終了する一方で、超重量級の次世代ロケットシステム「Starship(スターシップ)」の開発に引き続き力を注いでいく。SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOはTwitter(ツイッター)で、この新型宇宙船の最初の軌道飛行試験を5月に実施することを目指していると語ったが、同社はその前に米連邦航空局から重要な規制上の承認が得られるのを待っているところだ。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXとノースロップ・グラマンが2026年までISSへの商業補給サービスを行うことに

NASAがSpaceX(スペースX)に新たな注文を出した。

同局は米国時間3月23日、商業補給サービス2(CRS-2)契約に基づく補給ミッション6件を、SpaceXに追加発注したと発表した。

NASAは、ISS(国際宇宙ステーション)への補給サービスを請け負うもう1つの主要プロバイダーで、航空宇宙産業の主要企業であるNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)にも、さらに6つのミッションを発注している。

NASAは2016年、SpaceXとノースロップの両社に、2024年までの商業補給契約を付与した。3番目に選ばれたサプライヤーはSierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)だ。CRS-2では、各サプライヤーに最低6回のミッションを保証し、さらにNASAが必要に応じて追加ミッションを発注するオプションが設けられている。3社が獲得した契約の潜在的最大値はそれぞれ140億ドル(約1兆7000億円)だが、NASAが支払う最終的な金額は発注数によって異なると、同局は述べていた。

今回の受注によって、CRS-2のミッションは、ノースロップが14ミッション、SpaceXが15ミッション、シエラ・ネヴァダが3ミッションとなり、合計32ミッションとなった。

現在までに、SpaceXはこのようなフライトにかなり慣れている。同社は以前のCRS契約であるCRS-1で、20の補給ミッションを完了させた。NASAの監察官によると、これらのミッションのためにSpaceXに支払われた総額は30億4000万ドル(約3700億円)で、1ミッションあたり約1億5200万ドル(約185億円)になるという。

SpaceXは、同社の「Dragon(ドラゴン)」宇宙貨物船と「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットを使ってISSに物資を届けており、2012年にISSへの最初の補給ミッションを実施して以来、これを続けている。地球を出発した後、Dragon貨物船はISSとランデブーし、自律的にステーションにドッキングする。

SpaceXは、貨物船のDragonをベースにした有人宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」を使って、ISSへの商業乗員輸送サービスも提供している。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポーラ・オルビスとANAによるCosmoSkinプロジェクトが開発中のスキンケア化粧品、JAXAの生活用品アイデア募集に選定

ポーラ・オルビスとANAによるCosmoSkinプロジェクトが開発中のスキンケア化粧品、JAXAの生活用品アイデア募集に選定

ポーラ・オルビスホールディングスANAホールディングスは3月22日、JAXAの「第2回宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」において、両社が「CosmoSkin」(コスモスキン)プロジェクトとして開発している宇宙で使えるスキンケア化粧品が選定されたと発表した。国際宇宙ステーション(ISS)の搭載を目指し、開発を進めるとのこと。

CosmoSkinで開発されているのは、宇宙船内の特殊な環境を想定したスキンケア製品。極度に乾燥していること、水が貴重であること、微小重量といった環境に対応するために、スキンケア製品にはこれまでにない機能性や使用法が求められるという。宇宙の生活では、全身にさまざまな変化が起き、精神的な健康の維持も重要になる。そのため、肌を美しく保つ機能だけでなく、「スキンケア行為を通して心も健やかに保つ体験価値」の追究を目指す。

また、資源が極端に限られ、ゴミを最小限にしなければならないといった制約に合わせて技術開発を行えば、それがそのまま地上でのサステナビリティー向上にもつながるとポーラ・オルビスホールディングスは話す。

両社は、それぞれ宇宙に目を向けている。ポーラ・オルビスホールディングスは、2018年に化粧品の枠を超えた新価値創出のための「マルチプルインテリジェンスリサーチセンター」(MIRC)を発足し、宇宙への取り組みを開始した。2020年からは、JAXAが推進する宇宙生活の課題から宇宙と地上双方の暮らしをより良くするビジネス創出プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」での活動を開始している。

ANAホールディングスは、2018年に宇宙事業化プロジェクトを発足し、衛星データ活用事業、宇宙物資輸送事業、宇宙旅行事業といった宇宙事業の検討を開始している。

CosmoSkinでは、ポーラ・オルビスホールディングスが「肌の知見や製剤技術を活かし宇宙ライフに適した化粧品の研究開発」と、ANAホールディングスが「地上よりも宇宙環境に近いとされる航空機内を実証実験の場として提供」することになっている。

NASAがSpaceXの商業乗員輸送契約を延長、3ミッション追加で約1036億円

NASAは米国時間3月1日、国際宇宙ステーション(ISS)への乗員輸送サービスを、SpaceX(スペースエックス)にCrew-7、Crew-8、Crew-9ミッションとして正式に追加発注したことを発表した。これによって、SpaceXが受注した商業乗員輸送能力(CCtCap)契約の総額は34億9000万2904ドル(約4018億円)となる。

当初の26億ドル(約3000億円)の契約は、Space Shuttle(スペースシャトル)の退役に伴い2011年に終了した米国の乗員輸送能力を開発するために、2014年にSpaceXが獲得したものだ。この民間宇宙航空会社は、2020年以降、Crew Dragon(クルードラゴン)宇宙船とFalcon 9(ファルコン9)ロケットで、ISSへ向けてCrew-1からCrew-3(+有人試験飛行1回)まで、3回の乗員輸送ミッションを行い、打ち上げを成功させている。

修正前の契約では、SpaceXは2022年にCrew-4とCrew-5、2023年にCrew-6と、さらに3つのISSへの飛行ミッションを受注していた。NASAの声明によると、今回の延長契約は「固定価格、無期限納入/無期限数量」であるとのこと。SpaceXの契約期間は2028年3月31日までとなり、成長中の打ち上げ・宇宙事業会社にとってはうれしい定期収入となった。

NASAの宇宙オペレーション本部副長官を務めるKathy Lueders(キャシー・リーダース)氏は、2021年12月に発表されたSpaceXの契約修正を意向する通知の中で「宇宙ステーションにおける米国の存在感を維持するために必要になったときにすぐに準備が整うように、ステーションへの追加フライトの確保を今すぐ始めておくことが重要です」と述べている。「米国の有人打ち上げ能力は、私たちが軌道上における安全な運用を継続し、地球低軌道で経済を構築するために不可欠です」。

NASAはこの通知の中で、SpaceXが現在ISSに乗員を輸送するために認定されている唯一の米国企業であることを認めた。Boeing(ボーイング)も、2014年にNASAから6回のミッションで総額42億ドル(約4800億円)のCCtCap契約企業として選定されたが、同社のStarliner(スターライナー)宇宙船はまだ人を乗せずに行う無人の試験段階だ。2022年5月に予定されている次のテスト飛行では、Atlas V(アトラスV)ロケットで打ち上げられ、ISSとランデブーする計画になっている。

最終的にNASAは、SpaceXとボーイングの商業乗員輸送プログラムを連携させ、ISSに宇宙飛行士を送り込むことを考えている。スペースシャトルの退役からSpaceXの商業乗員輸送プログラム認定までの間、NASAはステーションへの乗員輸送をロシアの国営宇宙機関であるRoscosmos(ロスコスモス)だけに依存してきた。NASAの監察総監室(OIG)による2019年の報告書によると、NASAは2006年から2020年の間に、RoscosmosのSoyuz(ソユーズ)打ち上げシステムに、1席あたり平均5540万ドル(約63億8000万円)を支払っている。このコストは年々上昇し、2020年には1席あたり8600万ドル(約99億円)になっていたという。同じOIGの報告書では、SpaceXの1席あたりの平均コストは5500万ドル(約63億3000万円)、ボーイングでは9000万ドル(103億6000万円)になると推定されている。

画像クレジット:NASA

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

3DSculptor via Getty Images

ロシアの宇宙機関Roscosmosを率いるドミトリー・ロゴージン氏は、米国政府がロシアに対する制裁を厳しくするとの報道を受けてTwitterで激しくそれを非難、バイデン米大統領が木曜日に、制裁が「ロシアの宇宙計画を含む航空宇宙産業を衰退させる」と発言したことに対して、ロシアの宇宙産業に打撃を与えるようなことがあれば、ISSが米国、欧州、インド、中国に落下することになるかもしれないと述べています。

ロゴージン氏は「バイデン大統領は理解していないかもしれないから、ISSの軌道修正や某国のビジネスマンが軌道上にまき散らしているスベースデブリとの接近を回避するのにはロシアのプログレス補給船のエンジンで行われていると誰か説明してやってくれ」「もし我々との協力関係を損なえば、誰がISSを制御不能にして米国や欧州に落下させるのか、インドや中国に500tもある構造物を落とすのか。ISSはロシア上空を飛ばないからリスクを負うのはお前たちだけだ」とツイートを連投しました。

まるで某SFアニメにある”コロニー落とし”を地で行くようなことをするのかとも思える発言ではあるものの、これがまったくの絵空事かといえばそうでもありません。ISSは低軌道に浮かんではいるものの、地球の重力にゆっくりと引き寄せられており、定期的に軌道を押し上げる必要があります。現状ではその押し上げ操作が、ISSにドッキングしたプログレス補給船のエンジンを使って行われているため、ISSはその巨体を軌道にとどめるためにロシアに頼らざるを得ないのが実際のところです。

このことに対して、SNSではSpaceXのドラゴン宇宙船やノースロップ・グラマンのシグナス補給船を利用してプログレスと同じことができないかとの意見が出ています。現在、ISSにはシグナス補給船がドッキングしており、4月にはこれを使った軌道修正のためのテストも計画されています。ただ、そうしたオプションはあくまでオプション以上の、長期的な解決策としての機能を持つものではありません。

ただ、ロシアもロシアで、ISSでの活動はNASAに大きく依存しています。NASAはISSの電力供給を一手に引き受けており、軌道上の位置制御もNASAの協力の上で成り立っています。つまり、ISSにおいてはロシアも米国も、互いに互いの力を必要としているわけです。

もちろんどちらかが一方的にISSを放棄してしまえばそれを維持することはできなくなりますが、いまのところはバイデン大統領が発表したロシアへの制裁措置も、米露の宇宙での協力関係を崩すことがないように組まれており「RoscosmosとNASAの現場はISSの安全な運用のために各国のパートナーとともに協力を継続している」とNASA広報は述べています。

さらに、もし今後もISSに関する計画が予定どおり行われるならば、やはり米露は協力関係を維持し続ける必要があります。3月18日にはソユーズ宇宙船が3人のロシア人飛行士を乗せてISSへと向かう予定であり、現在ISSに滞在するロシア人飛行士2名、NASA飛行士4名、ESAのドイツ人飛行士1名に合流します。そして、3月30日にはNASA飛行士1名とロシア飛行士2名が地上に帰還します。

ちなみに、ISSはすでに2030年での退役を見据えた時期に入っており、最近ではISSをいかにして安全に大気圏に降下させるかという計画の概要も発表されていました。ただ、その計画はプログレス補給船の推進力を利用することを念頭に作られており、仮に一方的にロシアがISSを放棄してしまった場合は、NASAはシグナスを利用する方向に計画を練り直すことになりそうです。

バイデン大統領は、今後米露関係の「完全な断絶」もあり得ると発言しており、そうなったときはロゴージン氏もISSに関ししかるべき対応を打ち出してくると考えられます。今後しばらくはウクライナで起きていることの一方で、軌道の上にいる人たちのことも頭の片隅に覚えておく必要がありそうです。

蛇足。ロゴージン氏は米国の制裁において金融資産凍結対象とされるロシアの重要人物リストに個人として名前が掲載されているとのことです。

(Source:Via the VergeEngadget日本版より転載)

ISSに宇宙初の映画スタジオを2024年までに接続する計画を米エンターテインメント会社が発表

国際宇宙ステーションに、映画スタジオやスポーツアリーナを備えたモジュールが、2024年12月までに接続される可能性が出てきた。このプロジェクトは、宇宙で一部撮影を行うTom Cruise(トム・クルーズ)の映画を共同制作しているSpace Entertainment Enterprise(スペース・エンターテインメント・エンタープライズ、SEE)が発表したものだ。Variety(バラエティ)によると、このSEE-1と呼ばれるモジュールが稼働すれば、テレビや映画の制作だけでなく、音楽イベントやある種のスポーツなどを開催し、それらを撮影したりライブ配信することができるようになる計画だという。

関連記事:NASAがトム・クルーズの映画に協力、ISS宇宙ステーションで撮影

実際にこのモジュールを建造するのは、2年前にNASAからISS初の商用モジュールの建造を受注したAxiom Space(アクシオム・スペース)が担当することになっている。すべてが順調に進めば、SEE-1はISSのAxiom Spaceが建造したアームに接続される。Axiom社のステーションは、SEE-1を取り付けたまま、2028年にISSから分離する予定だ。

関連記事:国際宇宙ステーションの商用化に向けてNASAが居住モジュールの設計をAxiom Spaceに発注

SEEとAxiomがこの計画を実行できるかどうかはまだわからない。なぜなら、SEEは施設の建造費用を明らかにしておらず、現在はその資金調達を計画している段階だからだ。

2021年、ロシアのクルーが初めて宇宙で長編フィクション映画を撮影し、トム・クルーズやDoug Liman(ダグ・ライマン)監督を出し抜いた。その映画「The Challenge(ザ・チャレンジ)」は2022年中に公開が予定されている。一方、クルーズとライマン監督は、2022年後半にISSで映画の撮影を行う予定だ。

関連記事:ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Space Entertainment Enterprise

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9でJAMSS実験装置Kirara 3号機を本日打ち上げ

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9・ドラゴン補給船でJAMSS実験装置Kirara 3号機打ち上げ

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の運用・利用支援などを行う有人宇宙システム(JAMSS。ジャムス)は米国時間12月21日、SpaceXのドラゴン補給船に宇宙工場モデル「Kirara」3号機を搭載しFalcon 9ロケットで打ち上げる(CRS-24・SpX-24ミッション。記事掲載時点では打ち上げ成功)。Kiraraは主に、創薬分野で利用される高品質タンパク質結晶生成を宇宙で行うサービスのための実験装置として、複数の企業や団体からの宇宙実験を請け負っているのだが、今回新たに「Kiraraシェアサービス」を開始し、初めての試みとして、日本国内の学校や学習塾から募った宇宙教育ミッションも行うことになっている。

今回の打ち上げに参加する団体は、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部、欧州コンフォーカルサイエンス、静岡大学電子工学研究所、米国のBayer、ハンガリーのInnoStudio、フランスのInstitut Laue-Langevin、スペインのCSISとIACT、そして教育関連では、茨進、日本旅行(ミライ塾)、柳川高等学校、東京都立小石川中等教育学校、みどりの学園義務教育学校、Nikkei宇宙プロジェクト。

なかでも、市進教育グループの茨進では、JAMSSと共同でISSでの宇宙実験教育を実施する予定となっており、その材料の準備を子どもたちが行った。柳商学園柳川高等高校は、高校主催による宇宙でのタンパク質結晶生成実験を行う。みどりの学園義務教育学校は、持続可能な社会の実現に向けて学んだ成果であるデータやメッセージをSDカードに納めて宇宙に打ち上げる。

Kirara 3号機を載せたSpaceXのFalcon 9は、米国時間12月21日にケネディー宇宙センターから打ち上げられ、翌22日午前4時半ごろ(米国東部標準時間)にISSにドッキングする予定。

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

以前お伝えしたとおり、JAXAは13年ぶりとなる宇宙飛行士候補者の募集の受け付けを12月20日正午から開始した。今回は、月面有人探査ミッションへの参加も予定されている。募集要項は以前に比べて大幅に緩和され、学歴も問われない。

選抜は、書類選考、第0次選抜から第3次選抜まで行われる。その中では、英語、一般教養、STEM(理工系)分野の試験、小論文、適正検査、医学検査、面接、資質特性検査などの審査が行われる。JAXAが宇宙飛行士に求める人物像は、国際共同事業で多様性を尊重しつつリーダーシップがとれる人、極限環境でも柔軟な思考と着眼点で適時的確な判断ができる人、ミッションで得た経験を人々に伝える発信力のある人。

選抜で評価されるポイントは、明確な目的意識と達成意欲、任務と訓練に耐えうる健康状態、STEM分野の知識と論理的思考力、英語力、実務経験から得られた専門性、緊急事態にも的確に対処できるミッション遂行能力、環境や技術の変化に適用できる身体能力、精神的適応性、強靱性、未経験の知識や技量を速やかに習得できる能力などとなっている。

予定されている宇宙活動には、ISSでのシステム操作や保全・実験研究・船外活動、月周回ステーション「ゲートウェイ」での操作保全・実験研究・船外活動・月面での滞在・実験研究・船外活動などが含まれる。

カシオ計算機とJAXA、月面基地建設に向け高精度位置測位システムpicalicoによる位置測位の実験を開始

月面基地イメージ ©JAXA

申し込みには、エントリーシートの入力と健康診断書の提出が必要となる。

募集および選抜の実施概要

  • 採用人数:若干名
  • 受付期間:2021年12月20日から2022年3月4日まで
  • 選抜結果発表:2023年2月ごろ

12月1日に行われたオンライン説明会の様子は、こちらから見ることができる。

詳細はこちらを。

 

宇宙ステーションの運用ギャップ回避のためにNASAがBlue Origin、Nanoracks、Northrop Grummanと450億円以上の契約を締結

NASAは、2030年までに国際宇宙ステーション(ISS)を商用ステーションに置き換える予定であることを公式に(かつ静かに)認めてからわずか2日後に、今度は民間ステーションの計画のさらなる推進のために、3社と4億ドル(約450億円)以上の契約を結んだ。

NASAと商用低軌道(LEO)目的地プログラムの下で契約を結んだ3社は以下のとおりだ。

  • Nanoracks(ナノラックス)、1億6000万ドル(約180億5000万円)
  • Blue Origin(ブルーオリジン)、1億3000万ドル(約146億7000万円)
  • Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、1億2560万ドル(約141億7000万円)

NASA商用宇宙飛行のディレクターであるPhil McAlister(フィル・マカリスター)氏は米国時間12月2日に、NASAは合計11件の提案書を受けとったと語った。彼は、選択された3つの提案には、多様な技術的概念と、ロジスティックならびに打ち上げロケットのオプションが提供されていると付け加えた。「この多様性は、NASAの戦略の成功の可能性を高めるだけでなく、高度なイノベーションにもつながります。それは、宇宙に対するほとんどの商用の取り組みの中で重要なのです」と彼はいう。

3社はすでに、提案に関わるいくつかの詳細を発表している。Blue Originは、そのステーションコンセプトを「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と呼び、Boeing(ボーイング)やSierra Space(シエラ・スペース)、その他と共同で設計している。チームは、2027年にステーションを打ち上げたいと述べている。一方Nanoracksは、親会社のVoyager Space(ボイジャースペース)ならびに航空宇宙業界の雄Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で開発中のステーションを「Starlab(スターラボ)」と呼んでいる。Northropはステーションの提案に派手な名前を付けていなかったが、Dynetics(ダイネティクス)と協力して、Cygnus(シグナス)宇宙船をベースにしたモジュラー設計を提供しようとしている。

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NASAがISSの廃止と新しいステーションの導入の間にギャップがないようにしようとしている中で、今回の重要な契約は2フェーズプロセスの最初のフェーズに相当する。NASAは、議会ならびに最近の監察総監室の報告書の両方で、LEOにおける経済的繁栄の全体的な成功は、このギャップを回避することにかかっていると繰り返し強調してきた。

関連記事:NASA、2030年までに国際宇宙ステーションを民間に置き換える意図を詳述

画像クレジット:Blue Origin

NASAは報告書の中で「ISSが廃止された後に、低軌道(LEO)に居住可能な商用目的地がない場合、NASAは、月と火星への長期にわたる人間の探査ミッションに必要な、微小重力健康研究と技術実証を実施できなくなり、それらのミッションのリスクが高まったり遅延したりするだろう」と述べている。

この潜在的なシナリオを回避するために、NASAは、1つ以上の商用LEO「目的地」(ステーションと呼ばれることもある)を2028年までに運用可能にすることを提案した。これによって2030年に引退する予定のISSと2年間の並行運用期間が生じる。その報告書はそのタイムラインを達成できる可能性についての疑問は投げかけているものの、今回の3社とNASAの幹部はそれぞれ、ステーションの運用ギャップを回避できることに自信を持っていた。

「商用貨物便が打ち上げられてから10年経った今でも、人びとは商用航路の堅牢性とアイデアと柔軟性に疑問を抱いています」とNanoracks CEOのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)氏は述べている。「確かに、今後の課題は残っています、【略】しかし私たちには堅牢性があり、一緒に取り組んでいるプロバイダーが多数います。これは、リスクの軽減を進め、商用航路に複数のプロバイダーを配置するためのまさに正しい方法なのです」。

この最初の一連の契約は、2025年まで続くと予想される設計や作業を各企業が遂行するのに役立つだろう。

NASAは、2026年の開始を目標とするプログラムの第2フェーズでは、このグループの企業または他の参加企業から人間が使用するステーションを1つ以上認定し、最終的には軌道上サービスを購入しステーションを利用する多くの顧客の1つになる予定だ。NASAは声明の中で、これにより、人間を再び月に送り、最終的には有人宇宙飛行を火星に送り込むことを目的とするArtemis(アルテミス)計画に集中できるようになると述べている。

今回のフェーズにいないことで目立っているのはAxiom Space(アキソム・スペース)だ、同社はISSに取り付けるためのモジュール(自社のステーションとして自己軌道を回り分離する)を打ち上げるための別契約を獲得しているが、今回のプログラムには参加しなかったことを明かしている。

もちろん、大きな問題は、これらのステーションの最終コストがどれだけになるか、そしてNASAが最終的に全体のコストのどれ位を支払うかということだ。マカリスター氏は、NASAが「入札の方々がこれらの活動への財政的貢献を最大化することを奨励しています」と述べ、現在NASA以外の投資が約60%を占め、NASAの貢献は40%未満であると述べた。しかし、3社とNASAは、ステーションの設計、立ち上げ、運用にどれだけの資本の投下が必要なのかと予想しているのかという点はあまり語ろうとしなかった。

画像クレジット:Nanoracks

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

NASA、2030年までに国際宇宙ステーションを民間に置き換える意図を詳述

NASAのOffice of Audits(内部監査室)は、国際宇宙ステーション(ISS)が退役した後、ISSを1つまたは複数の商業宇宙ステーションに置き換えるというNASAの取り組みについて、詳細な報告書を作成した。ISSの運用終了は2024年に予定されているにもかかわらず、すべて2030年まで延長されることを示している。つまりそれが、軌道上で人間が滞在するための科学施設を民間企業に引き継ぐことができる時期であると、NASAでは想定しているようだ。

今回の監査では、基本的に現在のISSの維持・運用コストを詳細に説明するとともに、人間が長期間宇宙に滞在するための実験場となる研究施設や、月面における恒久的な駐留の確立や火星探査を含む深宇宙探査の鍵となる技術を開発・実証するための施設が、今後も必要不可欠であると考えている理由を説明している。

結論として、NASAは2028年までに商業宇宙ステーションの運用を開始し、予想されるISSの退役・離脱の前に2年間のオーバーラップ期間を設けたいと考えている。しかし、このスケジュールには明らかなリスクがある。NASAによれば、それは「市場の需要が限られていること、資金が不足していること、コスト見積もりが信頼できないこと、まだ要求条件が進化し続けていること」などだ。

一方、良いニュースも報告されている。それは最近、多くの企業が軌道上の商業ステーションの開発に興味を持っているようだということだ。Nanoracks(ナノラックス)とその親会社であるVoyager Space(ボイジャー・スペース)、そしてLockheed Martin(ロッキード・マーチン)のパートナーシップは、2027年までに商業宇宙ステーションを製造し、運用開始することを目指している。Blue Origin(ブルーオリジン)はSierra Space(シエラ・スペース)とBoeing(ボーイング)とともに、遅くとも2030年までにOrbital Reef(オービタル・リーフ)と名付けられたステーションを打ち上げたいと望んでいる。Axiom Space(アクシオム・スペース)では、退役前のISSに取り付けるモジュールを打ち上げ、それを2028年までにISSから分離させ、独自のステーションとして自力で軌道に乗せるという計画をすでに進めている

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NASA Office of Auditsによる報告書の全文は以下で読むことができる。

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

花王の衣類用洗浄シートと洗髪シートが国際宇宙ステーション・ISSに搭載決定、水を使わず清潔に

花王は11月22日、衣類の汚れや匂いを取る衣類用洗浄シート「Space Laundry Sheet」(スペースランドリーシート)と、簡単に頭皮や髪の汚れを拭き取れる洗髪シート「3D Space Shampoo Sheet」(スリーディースペースシャンプーシート)が、JAXAの「宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集」に採用され、2022年頃に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されることになったと発表した。

水が貴重な宇宙ステーションでは、衣類の洗濯ができず、宇宙飛行士は同じ服を何日も着ることになる。汚れがひどい衣類は廃棄するしかない。また洗髪も、ごくわずかな水と特別なシャンプーを使い、シャンプーが飛散しないよう注意しながら行う必要がある。こうした状況を改善しようと、花王はこれらの製品を開発した。

Space Laundry Sheetは、衣類用の洗浄液を染み込ませた不織布シート。水を使わず、汚れや匂いのある場所を拭き取ることができる。部分的ながら、洗濯機で洗ったときと同等の洗浄力があるという。抗菌、消臭成分も含まれている。

3D Space Shampoo Sheetは、洗髪用の洗浄液を染み込ませた、凹凸のある不織布シート。凸部で頭皮をマッサージしながら、頭皮と毛根部分の汚れを拭き取ることができる。水を使わないため、飛散の心配がない。「さわやかなみずみずしい香り」が付いている。

試作段階に宇宙飛行士に使ってもらいアンケートをとったところ、「地上より期待度を下げて適応していたISSでのやや不便な生活を、本品は快適にしてくれる可能性が高い」「運動後、短時間でリフレッシュするには効果的」などといった良好な反応が得られた。

この開発から得られた知見は、宇宙空間のみならず、「被災時や入院時、さらには水不足の国や地域への応用も期待されます」と花王では話している。

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

現在、日本の宇宙飛行士7名の平均年齢は51歳。今のままでは月周回ステーション「ゲートウェイ」の搭乗が開始される2025年には、定年退職のために人数は4人となり、月面活動が本格化する2030年には2人に減る。そこでJAXAでは、月面探査などの新たなミッションに備えて、宇宙飛行士を若干名募集することになった。だが今回は、これまでと応募資格が大きく緩和された。

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

申し込みには、エントリーシートの入力と健康診断書の提出が必要となる。

募集および選抜の実施概要

  • 採用人数:若干名
  • 募集開始:2021年11月19日
  • 受付期間:2021年12月20日から2022年3月4日まで
  • 選抜結果発表:2023年2月ごろ

応募資格

  • 2021年度末(2022年3月末)の時点で3年以上の実務経験を有すること。ただし、修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす
  • 以下の医学的特性を有すること
    身長:149.5〜190.5cm
    視力、遠距離視力:両眼とも矯正視力1.0以上
    色覚:正常(石原式による)
    聴力:正常(背後2メートルの距離で普通の会話可能)

JAXAが宇宙飛行士に求める人物像は要約するとこうなる。

  • 国際共同事業において多様性を尊重しつつ協調性とリーダーシップを発揮できる人
  • 国際宇宙探査ミッションに備えて、適応能力があり、極限環境でも柔軟な思考と着眼点で適時的確な判断ができる人
  • ミッションで得た経験を世界中の人々と共有する表現力や発信力があり、人類の持続的な発展に貢献できる人。

選抜において評価されるポイントは次の8つ。

  • 宇宙飛行士の職務に対して、明確な目的意識と達成意欲の強さ
  • 宇宙飛行士に求められる任務・訓練に耐えうる健康状態
  • STEM分野の知識や論理的思考力、円滑な意思の疎通が図れる英語能力とともに、教育や実務経験等の中で取り組んできたことにおける専門性
  • ミッション遂行能力(自己管理、コミュニケーション、状況認識、リーダーシップ、問題解決、チームワーク、マルチタスクなど)とともに、緊急事態にも迅速かつ的確に対処する能力
  • 業務環境、技術、社会の急速な進歩や変化に適用する身体能力、精神心理的適応性、強靭性を有し、未経験の知識や技量を速やかに習得する能力、未経験の作業に知識や技量を柔軟に活用して対応する能力
  • 日本人としての誇りを持ち、人文科学や社会科学分野を含む広範な素養と知識を有し、異文化、伝統、価値観に敬意を払う国際的なチームの一員にふさわしい態度
  • 自らの体験や成果などを外部に伝える豊かな表現力と発信力
  • 国内外で求められる高いコンプライアンス意識

今回の宇宙飛行士候補者募集に向けて、JAXAでは一般から意見を募った。そこでは、学歴、専門性を問わないでほしい、女性枠を設けてほしい、任期制やクロスアポイントメントなど働き方を多様化してほしい、選考過程を透明化してほしい、落選者への対応がほしいといった意見が寄せられ、これらを反映しつつ、募集の方針は次のように決められた。

  • 学歴、専門は問わない。泳力、自動車運転免許証などは応募資格から除外
  • 募集人数が少ないので女性枠は設けず、女性応募奨励のための広報関連施策を行う
  • 働き方の多様性は、訓練の従事割合がほぼ100%、海外での訓練もあり難しい
  • 選考過程の透明性は、個人情報保護などを考慮しつつ、可能なものは積極的に公開する
  • 落選者へのフィードバックを検討する

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

選抜は、書類選考、第0次選抜から第3次選抜まで行われる。その中では、英語、一般教養、STEM(理工系)分野の試験、小論文、適正検査、医学検査、面接、資質特性検査など数々の審査が行われる。JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

選抜後の予定

  • JAXA入社、基礎訓練開始:2023年4月
  • JAXA宇宙飛行士の認定: 2024年度末ごろ(2025年3月ごろ)

選抜された宇宙飛行士候補者は、次の流れで訓練を行うようになる。

  • 国内を中心に宇宙飛行士候補者訓練を受け、宇宙飛行士に必要となる科学や技術の知識、ISS「きぼう」システムの概要などを学ぶ。英語、ロシア語も習得する
  • 候補者訓練の修了後、これらの訓練結果の評価によりJAXA宇宙飛行士に認定される
  • ISS計画に参加する日本、米国、ロシア、欧州、カナダの宇宙機関にてISSの各システムとその操作技術などを学ぶ
  • ISS搭乗が決定すれば、ミッション遂行に必要なISS操作手順、実験操作手順などの訓練と、有人輸送機の操作訓練などを行う
  • 米国が提案する国際宇宙探査(アルテミス計画)、有人輸送機(米国新型宇宙船)、ゲートウェイに関連した訓練を行う

宇宙飛行士として予定されている宇宙活動は、以下のようなものだ。

  • 米国商業宇宙船などへの搭乗、 ISSでの滞在(長期)、ISSおよ「きぼう」システムの操作保全、実験研究、船外活動
  • 米国新型宇宙船への搭乗、ゲートウェイでの滞在(短期)、操作保全、実験研究、船外活動
  • 月面着陸船への搭乗、月面での滞在(短期)、月面での実験研究、月面での船外活動

募集説明会が、「JAXA公式YouTubeチャンネル」において、2021年12月1日18:00〜20:20(予定)に行われる(ライブ配信後はアーカイブ配信)。
JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学は11月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に1カ月滞在したマウスを解析し、宇宙旅行の際には、腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見した。また1カ月の宇宙旅行では血中の脂質が増え、腎臓で余った脂質の代謝や排泄に関わる遺伝子が活性化していることもわかった。

東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授と山本雅之教授らの研究グループは、JAXA筑波大学と共同でこの実験を実施した。同グループは、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在した12匹のマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調整に関わる遺伝子群の発現量が変化していることを突き止めた。また、血液中の脂質が増加していて、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していることもわかった。

地上では、重力に逆らって姿勢を保ったり血液を体中に押し出す必要があるが、それらを必要としない微小重力環境では、体の基礎的なエネルギー消費量が低下する。これまで、宇宙では重力の変化により、血圧と骨の厚さに変化が起きることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。今回の研究で、そこに腎臓の遺伝子群が関わっていることが判明したわけだ。

この結果から、宇宙旅行の際には、腎臓の健康状態を確認したり、薬剤などで腎臓の機能を調整するなどの腎臓の管理が重要になるとことが示された。今回得られたデータは、東北メディカル・メガバンク機構とJAXAが共同で整備する公開データベースに登録され、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

窓型スマートディスプレイのアトモフが1.5億円を追加調達、CG制作や世界展開を加速

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリースアトモフ(Atmoph)は11月16日、国際宇宙ステーション(ISS)からの独自映像を撮影し、窓型スマートディスプレイ「Atmoph Window 2」の風景としてリリースを開始した。Space BD協力のもと、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の制度を利用して、アトモフのためだけに撮影された映像となっている。

ISSからの映像は、Atmoph Windowでも用意していたが、今回のAtmoph Window 2用映像は、ISSから見えるオーストラリア・ケアンズを定点で捉えた映像のため、まさに「窓から見える宇宙の風景」を再現しているという。

アトモフがこだわる、映画のような迫力のある構図でオリジナル撮影ができたことについて、同社代表の姜京日(かん きょうひ)氏は「SF映画の世界ではなく、もう人類の宇宙居住は始まっているということを感じてもらいたい」とコメントしている。窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

Space BDは、日本の宇宙ビジネスを、世界を代表する産業に発展させることを目指す「宇宙商社」。創業以来、宇宙への豊富な輸送手段の提供とともにISSを初めとする宇宙空間の利活用において、ビジネスプランの検討から技術的な運用支援までをワンストップで取り組んでいる。またJAXAと複数のパートナーシップを組む唯一の民間事業者として、ISS「きぼう」日本実験棟からの衛星放出事業、船外プラットフォーム利用事業などを核に事業開発を推進している。

Atmoph Window 2は、アトモフが独⾃に4K/6K撮影した世界各地1000カ所以上の風景とリアルなサウンドを楽しめる、27インチ窓型スマートディスプレイ。Wi-Fi(11ac)、Bluetooth 4.0を利用可能で、3Wフルレンジスピーカー×2を搭載。Googleカレンダー連携や、スマートスピーカーからの音声操作などIFTTT連携機能も採用している。Basicタイプのサイズは638×372×57mm。3台をつなげることで、パノラマ表示も可能。

 

グーグラーが宇宙をマネタイズ、Axiom Spaceの民間宇宙ステーションが提供するさまざまなサービス

次期国際宇宙ステーションを建設するAxiom Space(アクシオム・スペース)は、2021年初めに10億ドル(約1148億6000万円)規模の評価を受けた後、Google(グーグル)出身のTejpaul Bhatia(テジポール・バティア)氏を同社初のCRO(最高収益責任者)に採用した。同氏は宇宙エコシステムの成長と収益化を担うことになる。

2017年、バティア氏はCiti Ventures(シティ・ベンチャーズ)でエグゼクティブ・イン・レジデンスを務めていた際にAxiomを紹介され、同社がNASAとの1億4000万ドル(約159億円)の契約を獲得した後の2020年にエンジェル投資家として投資。その後7月、リーダーシップチームの一員として参加することになった。

Axiom SpaceのCRO(最高収益責任者)であるTejpaul Bhatia(テジポール・バティア)氏(画像クレジット:Axiom Space)

しかし、宇宙分野におけるパイオニアはAxiomだけではない。NASAとの契約金4億ドル(約454億円)をめぐって、宇宙空間に進出しようと目論む宇宙ベンチャー企業のゴールドラッシュは始まっている。

十数社のコントラクターがこの競争への参加を表明しており、2021年10月には2社が発表された。10月22日には、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)がVoyager Space(ボイジャー・スペース)およびNanoracks(ナノラックス)と提携して2027年までに宇宙ステーション「Starlab」を打ち上げるという入札を行っており、また10月25日には、Blue Origin(ブルーオリジン)がSierra Space(シエラ・スペース)およびBoeing(ボーイング)と提携して、2025年から2030年の間に宇宙ステーション「Orbital Reef」を打ち上げるという計画をJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が発表している。

Axiomの役割はというと、2028年に退役する予定のISSからシームレスに移行するために、ISSに増築を行いながら段階的にAxiom Stationを建設するという計画をNASAが承認している。

最初のモジュールである「Hub 1」は2024年にドッキングする予定で、研究施設と4人のクルーのための居住区があり、タッチスクリーンの通信パネルと大きな窓が設置される予定だ。2025年には同様の設備を備えた2番目のモジュール「Hub 2」が計画されている。2026年には微小重力実験室の建設が続くという。そして2027年には、太陽電池アレイを搭載したパワータワーが3つのモジュールに取り付けられ、ISSのキャパシティを2倍にするAxiom Stationが形成される。2028年にはAxiom Stationが切り離され、自己軌道に乗り始めるという計画である。

WeWorkの地球外リトリート施設や研究機関の研究ハブとして機能するだけでなく、小国が独自の宇宙プログラムを立ち上げるための手段になる巨大な工業施設を今後7~10年の間に地球低軌道上に建設するという野望について、TechCrunchはバティア氏に話を伺った。

これが同氏の考える、Googleの戦略を見習った最後のフロンティアをマネタイズする方法だ。

Axiom Stationのタイムライン(画像クレジット:Axiom Space)

究極の旅を予約

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションの元マネージャーであるMichael Suffredini(マイケル・スフレディーニ)氏とIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)の共同創業者であるKam Ghaffarian(カム・ガファリアン)氏によって2016年に設立された。2月にはC5 Capital(C5キャピタル)が主導する1億3000万ドル(約147億7000万円)のシリーズBラウンドをクローズし、リードインベスターであるBlue Originの元社長Rob Meyerson(ロブ・マイヤーソン)氏が取締役に就任。これまでに総額1億5000万ドル(約170億4000万円)を調達している。同社はヒューストンに本社を置き、300人以上の従業員を擁している。

Axiomの主な収入源は、ISSでの短期滞在向けのエンド・ツー・エンドのミッションプロバイダーとなることによるものだ。つまり宇宙飛行士訓練とSpaceX(スペースエックス)による往復輸送(食料、水、酸素、通信、データ、電源などの必需品を含む)をパッケージ化し、7~10日間のオールインクルーシブ滞在を民間に販売するというわけだ。また、ISSの微小重力実験室で行う実験のためのリサーチミッションを販売する他、コンテンツやメディアのスポンサーシップの販売にいたってはすでに開始されている。

2022年には2つのミッションが予定されている。NASAの元宇宙飛行士でAxiomの副社長であるMichael López-Alegria(マイケル・ロペス=アレグリア)氏が、2月21日に予定されている最初のミッション「Ax1」を指揮し、投資家のLarry Connor(ラリー・コナー)氏、Mark Pathy(マーク・パシー)氏、Eytan Stibbe(エイタン・スティッベ)氏がクルーを務めるという。ワシントン・ポスト紙は、チケット価格を乗客1人当たり5500万ドル(約62億5000万円)と報じている。

2つ目のミッション「Ax2」は2022年後半に計画されており、宇宙滞在時間の米国最長記録を持つNASAの引退宇宙飛行士Peggy Whitson(ペギー・ウィットソン)氏と、米国の投資家でレーシングカーのドライバーおよびパイロットでもあるJohn Shoffner(ジョン・ショフナー)氏が参加する予定だ。まだ2つの席が空いているはずだが、Elon Musk(イーロン・マスク)氏とともに2億ドル(約227億1000万円)のユニバーサル映画を製作中で、NASAからも飛行すると噂されているTom Cruise(トム・クルーズ)氏がこのフライトに参加するのか否かは、Axiomは明らかにしていない。

3回目と4回目のミッションは2023年に計画されており、いずれかのミッションにはDiscovery Channel(ディスカバリーチャンネル)の競争型リアリティテレビ番組「Who Wants To Be An Astronaut?」の優勝者が参加する予定だ。

この分野におけるAxiomの競合他社には、1998年にBOLD Capital(ボールドキャピタル)のPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏が共同設立したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)がある。同社はこれまでに、Cirque du Soleil(シルク・ドゥ・ソレイユ)の共同創設者であるGuy Laliberté(ギー・ラリベルテ)氏を含む7人の民間人を、ロシアの宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)を通じてISSに輸送してきた。2023年に予定されている同社2回目のISSへのミッションは宇宙遊泳だ。SpaceNews(スペースニュース)によると、同社は2021年後半にSpaceXによる軌道旅行を計画していたものの、需要の少なさのためにキャンセルされている。

億万長者のRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が、スタートレックのWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏などの民間人を宇宙の果てまで連れて行くという話がここ数カ月湧いていたが、実際市場はチケット代を払える人に限られている。

幸いなことに、億万長者らはAxiomのターゲットではない。

  1. Render-Axiom-Station

    画像クレジット:Axiom Space
  2. Axiom-Station-rendering-2

    画像クレジット:Axiom Space
  3. Axiom-Station-rendering

    画像クレジット:Axiom Space
  4. Axiom-featured

    画像クレジット:Axiom Space

 

 

スカイシティへようこそ

ネオン輝く天空のビルの周りをスペースカーが疾走するThe Jetsons(宇宙家族ジェットソン)のようにはいかないかもしれないが、2024年にAxiomが最初の居住施設をISSにドッキングさせるとき、事態はかなりおもしろくなるだろう。

バティア氏によるとAxiomは今後ISSの容量制限を受けなくなるため、さらに多くの部屋や研究施設を建設することができ、より多くのミッションを提供できるようになるという。Axiomは需要に応じて、BoeingのStarlinerを含む、SpaceXのような他のロケットプロバイダーとの協力も承認さえおりれば考慮したいと考えている。

バティア氏は2024年が収益成長の重要な変曲点になると考えている。

「Axiomステーションが稼働し始めれば、企業や機関、政府が物理的スぺースやデジタルスペースをカスタムメイドで構築、購入、リースできるハイブリッドモデルになるでしょう」と同氏。

「私たちの物理的スペースのクールな点は、ラボ、データセンター、居住スペースなどのモジュールが、レゴのように切り離され飛び回り、再構築できるということです」。

しかしバティア氏は、アプリで部屋を予約できるような宇宙ホテルなどとは決して呼ばれたくないようだ。Axiom Stationは独自の宇宙プログラムを構築しようとしている政府から、微小重力実験室やコロケーション製造施設を必要としている企業や機関まで、さまざまな顧客を想定した巨大な産業用宇宙施設であると同氏は考えている。

「私たちは食料、水、酸素、生命維持システム、帯域幅、データ、インサイト、エッジコンピューティング、通信、電力など、あらゆる企業、機関、政府が軌道上で運営するために必要なものが完備された物理的スペースを提供します」と同氏。

「さらにエキサイティングなことに、iPhoneのセンサーを使ってアプリケーションを開発するのと同じように、開発者が船上のセンサーやその他の機器を使ってビジネスを構築することができる、インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスとして販売するデジタルプラットフォームを提供することもできます」。

Axiomのクルーステーション・クォーターのレンダリング画像(画像クレジット:Axiom Space)

Axiom StationのOSをサードパーティが開発できるようなソフトウェア開発キットを実際に制作するかどうかは不明だが、バティア氏はAxiom Stationのセンサーの用途として、スペースデブリや地球の気候のモニタリングが考えられると話している。

またバティア氏は、宇宙開発の予算がある国とまだ予算がない国の両方の市場を想定している。

「私たちの目標は、ISSが寿命を迎えたときに、すべての人のための完全なサービスと機能を備えたプライベートステーションを提供してギャップが生じないようにすることです。ある国の予算が数十億ドルであろうと、その数分の一であろうと、私たちはその国のニーズに合ったソリューションを作ることができるでしょう」。

NASA、ESA(欧州宇宙機関)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、Canadian Space Agency(カナダ宇宙庁)、Roscosmosが、ISSの後継機として年間20億ドル(約2256億7000万円)から30億ドル(約3385億5000万円)の収益をAxiom Stationに移すことをバティア氏は期待している。Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)のレポートによると、商業宇宙部門は2020年に3500億ドル(約39兆4683億円)、2040年には1兆ドル(約112兆7370億円)になると予想されており、Axiomとしては長期的にこの数千億ドル規模の市場にサービスを提供できるようになりたいと考えている。

グーグラーの出番

シリアルアントレプレナー、投資家、そしてGoogle Cloud(グーグルクラウド)のスタートアップエコシステムの構築に貢献した技術者として、バティア氏は宇宙経済にはベンチャーキャピタルの考え方が必要だと伝えている。

「最高収益責任者である私の使命は、今後7年から10年の間にビジネス、産業、市場が飛躍的に成長するための発射台となる超成長ビジネスプラットフォームを構築することです。これは、政府の税金で運営されてきたこれまでの宇宙産業とはまったく異なるモデルであり、民間企業の方がこれを達成するのにはるかに適しています」。

バティア氏はStarlabやOrbital Reefとの競争を歓迎すると同時に、Axiomがこれらの数年先を行っていると同氏は確信を持っている。

イタリア、トリノのThales Alenia(TASI)の工場でAxiom Hub 1を製作中(画像クレジット:Axiom Space)

「仕事を始めて100日ちょっとですが、このプロジェクトが理屈上の話だけではないことがわかりました。金属が曲げられ、人々が集まり、契約が結ばれています。最初のモジュールはすでにイタリアのThales Alenia(タレス・アレーニア)の工場で建設中です。これはサイエンスフィクションではなく、実際に起こっていることなのです」。

また当分の間、収益性については心配する必要がないという。

「資金調達は非常に重要です。私たちは世界で最も価値のある5つの企業(Facebook、Apple、Amazon、Microsoft、Google)が創業時に赤字で運営していたことをモデルにしています。できるだけ多くの株主価値を創造し、必要不可欠なインフラを構築するために資本を得て、安全性に焦点を当てながらスピード感を持って革新していくというのが計画です」。

編集部注:本記事の執筆者Martine Paris(マルティーヌ・パリ)氏はフリーランスの技術レポーターとして、宇宙、電気自動車、気候変動対策、ロボット、AI、コンシューマーテック、eコマース、ストリーミング、ゲーム、ベンチャーキャピタル、スタートアップカルチャーなどを取材している。

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Martine Paris、翻訳:Dragonfly)

ロシアの対衛星兵器実験により追跡可能なだけでも1500個以上のデブリが発生、ロシア人飛行士も滞在のISSに襲来

ロシアの対衛星兵器実験により追跡可能なだけでも1500個以上のデブリが発生、ロシア人飛行士も滞在のISSに襲来

NASA

11月15日、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士はスペースデブリの接近のためステーションにドッキング中の帰還用カプセルに避難しなければなりませんでした。ISSは90分周期でこのデブリ空域を通過したため、飛行士は何度も退避を余儀なくされたとのこと。

このようなデブリが発生したことに関して、米国国務省はロシアがミサイル実験によって同国の人工衛星を破壊し、ISSが通過する低軌道上に追跡可能なだけで1500個以上のデブリを撒き散らしたことだとしています。国務省のネッド・プライス報道官は「ロシアの行為はISSに滞在する宇宙飛行士やその他の有人宇宙飛行へのリスクを著しく高めるものだ」と述べ「ロシアの危険で無責任な行動は宇宙空間における長期的持続可能性を危機にさらし、宇宙の平和利用を掲げるロシアの声が弱々しくしかも偽善であることを明確にしている」と非難しました

一方、NASAのビル・ネルソン長官は、ロシアの対衛星兵器事件で発生したデブリのために、ISS滞在中の飛行士は安全確保の緊急手順の実施を強いられた。アントニー・ブリンケン国務省長官とともに「私もこの無責任かつ危険な動きに憤慨している。有人飛行の長い歴史を持つロシアがISSに滞在中の米国やパートナー国、さらに自国の飛行士までもを危険に晒すことは考えられない。彼らの行動は無謀でなおかつ危険であり、中国の宇宙ステーションやそこに滞在する飛行士までも脅かしている」と強く批判。さらに「あらゆる国は対衛星兵器によるデブリの意図的な発生を防止し、安全で持続可能な宇宙環境を育成する責任がある」としました。

米国はこの事態に対応するため、同盟国と協力していくと述べています。一方ロシアはこの件について沈黙したままです。

NASAとRoscosmosは、2007年にも中国がミサイルの実験のために破壊した人工衛星の破片を避けるために、ISSの位置をずらすなどの対応をさせられてきました。普段我々はその存在を忘れてはいるものの、当時に発生した破片はいまも継続して追跡されており、先週にはそのうちのひとつがISSに衝突する可能性があることがわかり、やはりISSを移動させる措置を強いられています。現在追跡されているデブリの数は約2万個に及んでいます。

今回のロシアの行為もこうした継続監視しなければならないデブリを大量に発生させる行為であり、ISSに自国の飛行士を滞在させている国として理解に苦しむ行動と言うほかありません。

(Source:ReutersAPNASAEngadget日本版より転載)

東京の宇宙ベンチャーGITAIが国際宇宙ステーション内で自律型ロボットアームの技術実証に成功

東京の宇宙ベンチャー企業であるGITAI Japan(ギタイジャパン)は、日本時間の2021年10月13日から10月17日にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)内で行われた自律型ロボットアームの技術実証に成功した。これは、同社が宇宙でサービスとしてのロボット技術を提供する準備に向けた重要なマイルストーンとなる。

「GITAI宇宙用自律ロボットS1」と呼ばれるこのロボットアームは今回、ケーブルやスイッチの操作と、構造物やパネルの組み立てという2つの作業を行った。これらの作業は、一般的にクルーが行う作業だが、宇宙におけるさまざまな活動で汎用的に使用することができる。今回の実証が成功したことで、NASAはGITAIロボットの「技術成熟度(Technology readiness levels、TRL)」をTRL7に引き上げた。TRLは全部で9段階まであり、GITAIがロボットを商業化するには、すべてのTRLを満たすことが重要になる。

この技術実証は、宇宙企業であるNanoracks(ナノラックス)の「Bishop(ビショップ)」エアロック内で行われた。Bishopエアロックは、ステーションの外装に取り付けられた世界初(かつ唯一)の商用エアロック・モジュールだ。Nanoracksは今回、打ち上げ機会の提供、軌道上での運用管理、データのダウンリンクも担当。同社は先週、Voyager Space(ボイジャー・スペース)およびLockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で完全民間の商業宇宙ステーションを起ち上げる計画を発表している。

関連記事:民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

GITAI宇宙用自律ロボットS1は、8月末に実施された23回目の商業補給サービスミッションで、SpaceX(スペースX)の「Cargo Dragon(カーゴ・ドラゴン)」カプセルに搭載されて軌道へ輸送された。日本のスタートアップ企業であるGITAIは、軌道上での宇宙船の整備や建設・製造作業など、宇宙における一般的な作業を行うためのロボットを開発している。次のステップは、ISSの外で、GITAIロボットの試験を行うことだ。

「今回の実証の成功は、GITAIロボットが、汎用性があり、器用で、比較的安全(人間の生命を脅かすリスクが少ない)で、安価な労働力を求める宇宙機関や商業宇宙企業のソリューションになり得ることを証明するものです」と、NASAは技術実証の最新情報を更新し「このオプションの提供は、宇宙の商業化という目標達成を促進させることになります」と述べている。

しかし、GITAIは単にロボットアームを作ることだけを目指しているわけではない。同社の長期的なビジョンでは、ロボットは月や火星の表面にスペースコロニーを建設するための重要なツールになると考えている。このようなロボットによる労働力は、地球外の環境で人間が生存できるようになるのを加速させるために役立つ可能性が高い。2021年3月、同社は総額18億円のシリーズB資金調達を完了し、2023年に予定されている軌道上船外技術実証に向け、人件費と開発費に投じている。

先週行われた技術実証の映像はこちら

画像クレジット:Gitai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

密閉した袋内で栽培されたレタス。写真左は収穫前の様子、写真右が地上に回収する前の様子

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月22日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」にて、将来の月面探査などにおける長期宇宙滞在時の食料生産を目指した、世界初となる袋型培養槽技術の実証実験を実施したことを発表した。これは、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の共同研究提案公募の枠組みで、JAXA、竹中工務店、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学によって2017年から行われてきた共同研究の一環だ。

袋型培養槽技術とは、小さな袋の中で植物を増殖させるというもの。密閉した袋の中で栽培されるため、雑菌の混入がなく、外に臭いが出ない。設備が簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギーで、人数に合わせた数量調整も簡単に行えるコンパクトなシステムという特徴がある。今回の実験は、微小重力環境、閉鎖環境での有効性、水耕栽培や土を使った栽培と比べた優位性を確認するため実施した。

実証実験用栽培装置

実証実験用栽培装置

「きぼう」内の実験装置の設置場所

「きぼう」内の実験装置の設置場所

実験装置は、44×35×20cm、重量5kgという小さなもの。この中で、3袋のレタスの栽培が行える。内部にはISSの飲料水を無菌化して培養液を作り供給する装置と、生育状況を定期的に自動撮影する装置が組み込まれている。また袋の中の空気交換も行われる。

実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行われた。9月10日にはレタスの本葉が確認され、その後、順調に成長して収穫に至った。今後は、レタスと培養液、生育記録を回収して、宇宙での適用可能性やこの栽培方式の優位性を評価するという。また、レタスが食用に適しているかを調べるとともに、培養液を分析して、ISSの環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かを確認する。

月面農場モデルイメージ

月面農場モデルイメージ

JAXAでは、地球からの補給に頼らず、月面に農場を設営して長期滞在のための食料を生産する研究を行っている。将来的には、この袋型培養槽技術を用いた宇宙船や滞在施設での大規模栽培により、持続的な宇宙活動に貢献できるよう研究を続けると話している。

民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

民間宇宙ステーションの時代が正式に到来する。Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社は先日、2027年に商用ステーションを起ち上げる計画を発表した。しかし、これは新しい宇宙経済を発展させるための次の論理的ステップに過ぎないと、各社は述べている。

関連記事:Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

「過去10年間は宇宙へのアクセスを構築する時代でしたが、次の10年は宇宙に行き先を構築する時代になります。それが、この業界における我々の重要な命題の1つです」と、VoyagerのDylan Taylor(ディラン・テイラー)CEOは述べている。

米国が初めて打ち上げた宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」に敬意を表して「Starlab(スターラブ)」と名付けられたこの新しい宇宙ステーションは、膨張式の居住モジュール、ドッキングノード、ロボットアームを備えたものになる。3社は官公庁と民間企業の両方からの強い需要を見込んでいるものの、NanoracksのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)CEOは「Starlabの中核は科学です」と強調した。

Starlabは最終的には観光客も受け入れることができるが、観光を第一に考えたプロジェクトではないと、マンバー氏は付け加えた。「宇宙観光旅行は話題になりますが、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、それ以上のものが必要です」と、同氏はいう。

3社は、NASAの「Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)」プロジェクトへの入札として、Starlabを同宇宙局に提出した。このプロジェクトでは、宇宙ステーションを開発する民間企業に最大で4億ドル(約454億円)の契約が割り当てられる。

このようなプロジェクトには莫大な公共投資が必要となるものだが、この資金提供は、特に国際宇宙ステーションの離脱が間近に迫っていることを考慮すると、NASAが地球低軌道における存在感を維持することに関心があると世界に示す意味でも重要であると、テイラー氏は述べている。

マンバー氏も同様の意見を述べている。「私たちは宇宙ステーションの空白期間を作りたくありません」と語る同氏は「業界や社会の誰もが、米国が低軌道に宇宙ステーションを持たない期間があってはならないことを理解しています」と続けた。

しかしながら、全体的には民間の資金が鍵となる。そこでVoyager社の出番だ。2021年、Nanoracksの過半数の株式を取得した同社は、プロジェクトの資金調達と資本配分を監督することになる。

「現実的には、米国議会から十分な資金を得ることはできません」と、マンバー氏はいう。「そんな時代は終わりました。これは商業的なプロジェクトです」。

LEO(地球低軌道)経済の将来については、企業や公的機関が設計の標準化と競争力の維持をどのように両立させるかなど、未だ不明な点が多い。

テイラー氏は、いくつかの重要な技術を標準化するには、コンソーシアムを起ち上げる方法が有効であると提案している。NASAからの投資も居住システムの共通化に役立つだろうと、Lockheed Martinの民間宇宙部門VPであるLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、TechCrunchによるインタビューの中で語っている。

「NASAは顧客として、宇宙輸送におけるこの並外れた革命を解き放ちました」と、マンバー氏は語る。「NASAがカーゴで成功したように、商用クルーで成功したように、宇宙に興味を持つ市場があれば、小規模な民間宇宙ステーションにも同じようなことが起こると予想できます」。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

NASA(米航空宇宙局)は以前から、老朽化した国際宇宙ステーション(ISS)に代わる商業運用の後継ステーションを民間企業に奨励してきた。Axiom Space(アクスアム・スペース)はすでにその意向を表明しているが、Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)で構成される新たなコンソーシアムは「史上初の自由飛行の商業宇宙ステーション」を建設し、2027年に運用を開始する予定だと発表した。

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この新しい宇宙ステーションは、米国で3番目に建設された宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」にちなんで「Starlab(スターラブ)」と名づけられる予定だ。Starlabには4人の宇宙飛行士が滞在する。その規模は国際宇宙ステーションよりもはるかに小さく、人間が居住できる加圧空間は国際宇宙ステーションの3分の1程度だ。そのため、ISSや中国の宇宙ステーションのように分割して軌道に乗せるのではなく、1回の打ち上げで軌道に乗せられると期待されている。

Voyagerが株式の過半数を保有するNanoracksは、現在ISSで使用されている多くの部品を設計・製造しており、この3社のチームは宇宙での運用においては豊富な経験を持つ。Voyagerはこのプロジェクトに戦略的指導と資本投資を行い、Lockheed MartinはStarlabの主要メーカーであると同時に、さまざまなテクニカル部品をつなげるインテグレーターでもある。

宇宙ステーションの主な構成要素は、Lockheedが製作した膨張式の居住モジュールで、貨物や乗組員を運ぶ宇宙船のドッキングカ所や、ステーションの外で貨物やペイロードを操作するための宇宙ステーションにあるようなロボットアームを備えている。

クルーとして想定されるのは、官民の研究者、メーカー、科学者で、宇宙旅行者などの商業的な顧客も含まれるという。NASAが民間ステーションを導入する意図は、公的資金を最大限に活用しながら、NASAにとって継続的な宇宙空間の占有をより持続可能なものにするために、多くの顧客の中の1人になることだ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi