スタートアップとVCの合宿「Incubate Camp」、IVSの学生向けワークショップ–起業、グロース向けイベント続々

起業、そして起業後のグロースには様々な方法があるが、先輩起業家や識者の生の声を聞き、可能であれば一緒になってプロダクトを磨いていくことは重要だ。そんな機会を提供してくれるイベントがまた開催される。

投資家との合宿でサービスを磨く「Incubate Camp」

まずは起業家向けのイベントを紹介する。インキュベイトファンドが手がけるインキュベーションプログラム「Incubate Camp 8th」が7月10日〜7月11日にかけて開催される。3月16日から参加を希望するスタートアップの募集を開始した。

Incubate Campは2010年にスタートしたインキュベーションプログラムだ。数カ月間「Morning Session」と呼ぶメンタリングを行った後、その集大成となる合宿を実施。ゲストであるベンチャーキャピタル(VC)各社と1対1でサービスをブラッシュアップし、発表を行う。

もともとは、インキュベイトファンドの投資先の発掘、育成を目的にしたものだったが、現在では参加するVCの数も増加。エコシステムとして大きく育ってきた。前回のIncubate Camp 7th(その様子をレポートした記事はこちら)では参加条件も変更し、インキュベイトファンド以外からの資金調達を経験したスタートアップが参加可能になった。

またこれまで成績優秀者へのシードマネー(300万円)をインキュベイトファンドから提供したが、参加スタートアップ全社に対して参加VCがタームシート(投資の概要書)を提案可能にしている。8thでは、これまで合宿開催後にのみ設定していた資金調達オプションを、合宿前にも提供する予定だ。

7thまでの参加者は130人弱。これまで約60 社がスタートアップしている。調達額だけでのその是非を問えるかはさておき、7thに参加したスタートアップについては、「ママリ」を提供するConnehitoが1億5000万円の調達を実施したのを筆頭に、合計4億6000万円の資金調達に成功している。

申し込みはプレエントリーフォームから。3月30日には説明会を実施し、4月3日よりMorning Sessionの開催を予定する。

IVSのワークショップは学生以外も参加可能に

インフィニティ・ベンチャーズLLPは3月28日、起業を志す学生や若手社会人向けに「IVSスプリングワークショップ2015」を開催する。会場は 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス θ(シータ)館。申し込みは前述のリンクから。

このイベントは、招待制イベント「Infinity Ventures Summit」の学生版といった立て付けのもので、幅広い年代に起業家教育の機会を提供することを目的としている。グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長の青柳直樹氏やコロプラ取締役副社長 次世代部長の千葉功太郎氏らが登壇する予定。

またインフィニティ・ベンチャーズLLPでは、起業家向けの少人数プログラム「IVSスタートアップ・スクール2015 Spring」も開催する予定だ。

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ヤフーがIoT領域に参入――2015年春に”IoT向けのBaaS”を提供

ヤフーがIoT領域の新サービスを提供する。京都で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 fall Kyoto」の中で、ヤフー イノベーションサービスユニット ユニットマネージャーの松本龍祐氏が明らかにした。

Yahoo! IoTプロジェクト(仮)」と呼ぶ新サービスは2015年春にリリースの予定。IoTのハードウェアそのものではなく、SDKやデータベース、解析、IDといったバックグラウンド環境をサービスとして提供するというものだ。

発表後、松本氏は「例えばイケてる時計型のプロダクトを作ったとして、(機能面では)単体での価値は1〜2割だったりする。でも本当に重要なのはバックエンド。しかしユーザーから見てみれば時計というプロダクトそのものに大きな価値を感じることが多い。そうであれば、IoTのバックエンドをBaaS(Backend as a Service:ユーザーの登録や管理、データ保管といったバックエンド環境をサービスとして提供すること)のように提供できればプロダクトの開発に集中できると思う。クラウドが出てネットサービスの開発が手軽になったのと同じような環境を提供したい」とサービスについて語ってくれた。

松本氏はまた、IFTTT(さまざまなウェブサービスを連携して利用できるようにするサービス)を例に挙げ、バックグラウンドで複数のサービスが連携できる仕組みも提供していくとも語った。「パーツとしてヤフーのサービスを使ってもらってもいいし、他社のサービスと連携してもいい。全くコードを書けないと簡単な事しかできないが、ライブラリも用意して手軽に利用できるようにしたい」(松本氏)。イベントでは、ネットに連携する目覚まし時計とYahoo!天気、Pepperを連携させて、「Yahoo!天気でその日の天気をチェックして、雨ならば予定より30分早く目覚ましを鳴らす。目覚ましで起きなければPepperが起きるように呼びかける」というデモを披露した。

このサービスは当面無料で提供していく予定。ではどうやってマネタイズするのかと尋ねたところ「ヤフーはビッグデータカンパニー。そのデータを生かせればいい。例えばYahoo! IDを使っているユーザーが増えることはメリットになる。ウェラブルデバイスのデータを取れれば広告の制度を高めることだってできる」(松本氏)とのこと。

また、このサービスを利用する開発者に対しては、ヤフーグループとして販売やマーケティング面でも支援をしたいと語る。「例えばY! Mobileの店頭での販売、Yahoo! ショッピングでの販売なども検討できる」(松本氏)。松本氏は現在ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルのパートナーも務めているため、YJキャピタルでIoT分野のスタートアップに投資し、このサービスを導入したいと語っていた。「ヤフーはPCの戦いで勝ったが、スマホでは圧倒的なナンバーワンではない状況。IoTでまた圧倒的なナンバーワンを取っていく」(松本氏)

余談だが、ヤフー執行役員の田中祐介氏もこのタイミングでYJキャピタルのパートナーに就任している。田中氏いわく、同氏や松本氏など起業経験を持つヤフーの役職者がYJキャピタルのパートナーとして活動していくことになったそうだ。またヤフー執行役員でYJキャピタル代表取締役小澤隆生氏によると、YJキャピタルは現在200億円規模のファンドを準備しているそうだ。


Infinity Ventures Summitのプレゼンバトル、登壇13社を紹介

京都にて12月3日から4日にかけて開催中の招待制イベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2014 Fall Kyoto(IVS)。同イベント2日目の朝8時45分からは、毎回恒例となっているプレゼンバトル「Launch Pad」が開催中だ。

これまでクラウドワークス、スマートエデュケーション、freee、WHILLなどが優勝してきたLaunch Padだが、今回登壇するのは以下の13社。なお、Ustreamおよびスクーでもその様子は生中継される予定だ。

baton「マッチ

「高校生向け対戦型問題集」をうたうこのサービスは、大学入試問題集に出てくるような問題を対戦型のクイズとして楽しむことができる。

ザワット「スマオク

スマホアプリで利用できるオークションサービス。これまで24時間以内の入札に対応していたが、アプリをアップデートし、入札時間5分限定の「フラッシュオークション」にリニューアルしている。

ギャラクシーエージェンシー「akippa(あきっぱ)

駐車場などの空きスペース、空き時間がある人と駐車したい人をマッチングするパーキングシェアサービス。プレゼンでは、人に車を貸して、空きスペースを探してもらう「akippa+」も発表された。

落し物ドットコム「MAMORIO

Bluetooth LEを使った追跡用タグ。スマホと一定の距離が開くとアラートが鳴って置き忘れを未然に防ぐ。バッテリー交換なしで1年利用が可能。自転車が盗難にあった場合などに利用できる機能として、ユーザーが相互にタグをトラッキングする「クラウドトラッキング」を備える。

ビズグラウンド「Bizer(バイザー)

弁護士や会計士などさまざまな士業への相談サービスを提供していたBizer。今後はバックオフィス業務をサポートするクラウドサービスを提供していく。

Socket「flipdesk

スマートフォンECサイト向けの販促・接客ツール。ユーザー属性をリアルタイムに解析して、ダイレクトメッセージの送信やクーポンの発行ができる。年商100億円規模の起業でCVR5.6bai ,客単価15%アップという実績がある。

プレイド「KARTE

こちらもECサイト向け(flipdeskとは異なりPCにも対応する)の販促・接客ツールだ。ECサイトへの来客をリアルタイムに解析。ユーザーに合わせて商品のレコメンドやクーポン発行などができる。現在はクローズドベータ版として25社に限定して提供中。

オープンロジ「オープンロジ

CtoCコマースや小中規模ECサイトなどをターゲットにした物流アウトソーシングサービス。通常大規模ECサイトでないと利用しにくい物流サービスだが、同社があらかじめ物流業者と契約することで、少ない商品でも定額(サイズによる)、かつすぐに利用できるようになる。

フクロウラボ「Circuit(サーキット)

スマートフォンウェブからアプリにスムーズに遷移するための「ディープリンク」。その設定を容易できるグロースツール。シームレスなアプリ間移動を実現する。

ミニマル・テクノロジーズ「WOVN.io(ウォーブン・ドット・アイオー)

ウェブサイトに1行のスクリプトを足すだけで、ウェブサイトの多言語化を実現するサービス。翻訳は機械翻訳、人力翻訳に対応。リリース4ヶ月で登録ドメイン数は3000件、6万ページ。海外ユーザーが6割となっている。

セカイラボ・ピーティイー・リミテッド「セカイラボ

世界中のエンジニアチームに仕事を発注できるサービス。中国やベトナムなどのエンジニアチームに対して、日本語で大規模な開発を依頼できる。

YOYO Holdings Pte. Ltd.「PopSlide

新興国向けモバイルインターネット無料化サービス。スマホのロック画面に広告を表示し、それにスライドしてアクセスしたり、動画を閲覧したりすることでポイントを提供する。ポイントはロード(プリペイドの通信料金)と交換できる。

ファームノート「Farmnote(ファームノート)

酪農・肉牛向けのスマートフォンアプリ。タブレットやスマホを使って、リアルタイムに個体管理が可能。

以上が登壇する13社となる。11月に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「スタートアップバトル」でも登壇してくれた企業がいくつかあるが、Launch Padは来場者、審査員とも経営者が中心のイベント。またプレゼンの内容も変わってくるかもしれない。個人的に応援しているスタートアップもあるのだけれど、ひとまずは各社のプレゼンを楽しみにしたい。


「日本でうまく行ったことは、ぜんぶ外れた」、ネット企業海外進出の成功と挫折

12月3日〜4日に京都にて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Fall Kyoto(IVS)」。1つ目のセッションは「グローバルで活躍するプロフェッショナルの条件」がテーマ。インフィニティ・ベンチャーズ共同代表パートナーの小林雅氏がモデレーターを務める中、indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏、グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏、PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏がそれぞれの海外進出の状況について語った。

日本でうまく行ったことはことごとく外れた

グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏

小林氏がまず3人に尋ねたのは海外進出での苦労話。青柳氏は「まず、日本でうまくいったから米国でもワークすると思ったことは、ことごとく外れた」と振り返る。ソーシャルゲームが好調だったグリー。だが同社が日本で手がけてきたゲームやそのマーケティングノウハウといった成功の体験やパターンというのがほとんど通用しなかったという。同社が米国進出した2011年といえばグリーが強かったブラウザゲームからスマートフォンにプラットフォームが変わる過渡期。さらにはビザの取得や人材採用などのさまざまな課題があり、ビジネスの違いを学ぶまで1、2年かかったそうだ。

indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏

出木場氏はリクルートの出身で現在は同社が買収したindeedのCEOを務めている。当初indeedのファウンダー2人に出会ったのが「まるで恋だった」と、振り返る。そこで、本来(買収元である)リクルートという会社を紹介するというよりも、自身がどんなことをやってきたか、またどんなことをやりたいか。さらにファウンダーらが何をやりたいのかを話したのだそうだ。

そういった会話からはじめた結果、(ロックアップの外れる)買収後2年でファウンダーも従業員もやめることなく共に働いている状況なのだという。「『お前はどんなマジックを使ったんだ』なんて周囲に聞かれる」(出木場氏)

事業面だけでなく、そんな人材面での成功もあった一方で苦労したのは英語。出木場氏は、本人曰く「『オマエコレタベルカ』というレベル」の英語だったのだそうだ。そこで英語のレベルを上げるための勉強をするのではなく、現状の英語でどう経営できるかを考えるようになったそうだ。「『お前とはこの数字でこれをやって』と任せた(コミットメントを求めた)」(出木場氏)。

出木場氏は米国は日本以上にレポートラインを重視するとも語ったが、青柳氏もこれに同意し、さらに「部下とのワンオンワンでの会話や、『握り』が重要」と語る。ただ一方で青柳氏は、日本的なマネジメントにもチャレンジしたそうだ。買収先の会社では、約200人の社員全員との個別面談をしたこともあるという。「半年かかった。最初は非効率だとも言われたが、それによって徐々に見方が増えて、『いろいろ教えてやるよ』という人が出てきた」(青柳氏)。そして何より、成果が出ることで会社の状況が変わったそうだ。「成果が出ると(社員は)ついてくる。逆に出ないということ聞いてくれない。成果が出てからの2年は比較的楽だった」(青柳)

PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏

川村氏のPARTYはニューヨークと日本に少数精鋭のチームを置いているが、「みんなで決めていく」ということを重視しているそうだ。特にニューヨークの拠点は設立して1年未満。マネージングパートナーといった立場でなくとも、ある程度の判断に参加してもらい「オーナーシップを作り、DNAを育てているところ」(川村氏)だそうだ。ただ川村氏本人はデザイナーであり、マネジメントに向いていないのでビジネスディレクターが必要だという意識があるとした。

リーガル、HR、バックオフィスの重要性

ここで小林氏が「仁義やリーガルといった点で何か問題があったのか」と尋ねる。

出木場氏と青柳氏は、パテントトロール(特許やライセンスを持ち、権利を侵害する企業から賠償金やライセンス料を得ようとする企業の蔑称)について触れた。出木場氏曰く「ハイパーリンクをクリックすればウェブサイトが遷移する」というレベルのパテントを持った会社を法律事務所が買収し、訴訟を起こすというようなケースが有るという。

実際に両氏も裁判を経験し、ほぼ勝ってきたという状況だそうだが、この経験を踏まえて、「うまく行ったのはHR(人材)とリーガル、バックオフィスを雇えるようになってから。それらのバイスプレジデントが揃って、やっと組織と数字に集中できるようになった」(青柳氏)そうだ。indeedについても、「7月にHRのヘッドを雇えた。CxOを採用するには、CEOが口説かないといけない。そうなるとカタコトのCEOだとめちゃくちゃ不安になるじゃないですか。それがやっとちゃんと出来るようになってきた」(出木場氏)と語る。

ピカピカ人材を獲得するコツは?

ここで会場とのQ&Aとなったが、その一部を紹介する。会場からの質問は「ピカピカの人材を採用するコツは」というもの。これに関して青柳氏は、進出した地域にコミットしていると伝えることだという。

社員数人でサンフランシスコに拠点を立ち上げたグリー。青柳氏は採用の際に「今サンフランシスコに住んでいる。成功するまで帰らないし、失敗したらクビだろう」と語って、自身が現地で「ハシゴをはずさない」ということをアピールしたそうだ。また後任となった現地のマネージャーについても出会ってから1年半かけて関係を構築したこと、周囲から「グリーに行くことがいいオポチュニティになる」と思ってもらうようにするということも重要と語った。出木場氏もローカルへのコミット、またミッションの共有なども重要だと語る。

川村氏も創業者が現地にコミットしていることは大事だとしながら、PARTYはクリエイティブエージェンシーという特殊性もあって「面白いものを作れているかどうかしか評価されない」と語った。クリエイティブ系の人材は自らが作ったものを見てPARTYに来るので、何よりもアウトプットが大事だとした。

青柳氏の折り返し地点は「2年前のサンクスギビング」

最後に小林氏は3人に世界に出る人たちへのメッセージを求めた。川村氏は「とりあえず出てから考えよう」と語る。目的があって、ノウハウも持っているからなんでやらないのかとなる。失敗したら失敗したで日本があるのだから、何よりまず飛び込んでみるべきだという。

青柳氏は、ちょうど2年前に米国で事業をいくつかやめて、社員にも辞めてもらうことになった時期を振り返る。その時期はサンクスギビングということもあり、街で先週まで社員だった人間が家族と歩いていた時に表現できない気持ちになったという。「そこが折り返し地点。そこから絶対成功してやろうとなった。最初は『まず行ってみる』ということで良かったが、買収では300億円くらい使って、社員を雇っている。そんな責任をもって今がある」。そう青柳氏は語った。

そして新ためて世界に出る意味について「マーケットは凄く大きい。こんな僕でも出来ましたというのがメッセージだ。日本の調達環境は良い、バブルとも言われるがこれをどう使うか。ここで出たアドバンテージ、キャピタルを是非グローバルに使ってもらいたい。いちボランティアとしてアドバイス、サポートしたい」(青柳氏)

出木場氏は「心意気というのは世界共通言語。『これがしたいんだ!』というのは分かり合える。『日本の良い物を世界に出す』という考え方もあるが、やっぱりネットビジネスやってるなら世界で勝負することはこの先10年考えると避けて通れない。だからやるなら早くやった方がいい」と語った。


ユーザーの声を疑え!イケてるスタートアップがプロダクト開発で重視する3つの法則

freee代表取締役の佐々木大輔氏

イケてるプロダクトを作るために「ユーザーの声」を金科玉条のごとく扱うことは、時として問題の本質を見失ってしまうかもしれない――。こう指摘するのは、クラウド会計ソフト「freee」を運営するfreee代表取締役の佐々木大輔氏。札幌で開催中の「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」で23日に行われた、「プロダクト・イノベーション」をテーマにしたセッションの一コマだ。

freeeは、簿記の知識がなくても会計処理を可能にするクラウド型会計ソフト。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、記帳を自動化することで、面倒な手入力の手間を省いてくれる。5月19日には給与計算機能をリリースし、7万事業者が導入するまでに成長したfreeeだが、創業前、ユーザーに要望をヒアリングした結果をそのまま反映していたら、今のプロダクトは生まれなかったかもしれない。

「ユーザーのフィードバックの多くは『会計ソフトの入力を早くしたい』という声だったが、問題の本質は『入力しなければならないこと』。入力をなくすことが問題解決につながるはずだと、プロダクトをローンチするまでに何度もメンバーと議論した」。こうした体験を経て佐々木氏は、優れたプロダクトを生み出すにあたっては、次の3つの法則を大事にするようになったのだという。

1)本質的な価値があるか
2)まず手を動かす
3)柱(ゴール)を建てて、やらないことを決める

1)は前述の通り、ユーザーの求めるものが本質的な価値を生み出すかどうかを精査しなければならないということだ。

2)に関しては、アウトプットする前に議論をしていると、「うまくいかない理由」ばかり出てきてネガティブになりやすいが、いっそのことローンチしてから出てきた課題を解決すべきだと、佐々木氏は語る。「ローンチは仮説検証プロセスの一部。そうすれば『これを削らないとね』ということが見えたり、場合によってはピボット(方向転換)もできる」。

3)については、会計ソフトのようにユーザーから求められる機能が多い場合は、優先順位付けが欠かせないという。例えば、確定申告の需要に応えるために、1月までに機能強化を図ることを「柱」とする。逆に言えば、確定申告に結びつかない機能は、どれほどユーザーから要求されても実装を遅らせるというわけだ。


Kickstarterのようにプロジェクト調達が楽? 「3年前までそう思ってました」Cerevo岩佐氏

すでに別に記事にしているとおり、札幌で開催中のInfinity Ventures Summit 2014 Sprintのパネルディスカッションで、ハードウェアスタートアップの現場にいる4人のパネラーが、日本でハードウェアスタートアップをやる理由について議論した。

このパネルの最中、聴衆でありながら積極的に議論をしていた家電スタートアップのCerevo代表の岩佐琢磨氏が、ハードウェアスタートアップのファイナンスについて「プロジェクト単位か、会社単位か?」という点について興味深い持論を展開していた。

Cerevoは経営体制の変更と社員を約4倍にするということを昨日発表したばかりだが、takram desigin engineering代表の田川欣哉氏が「プロジェクト単位のファイナンスのほうが楽ですよね?」と水を向けると、岩佐氏はこう切り返した。

「3年前まで、そう思っていました。最初のファイナンスはシードも入れて1.2ミリオン(約1.2億円) 。そのときはワンプロダクトで、これが売れなきゃ終わりっていう感じだった」

2008年頃、ハードウェアスタートアップはプロダクトに投資するということはあっても、会社としての投資を受けるということは日本では難しかったと振り返る。そうしたこともあって、当初はプロダクトで投資を受けるプロダクト・ファイナンスだったが、今では「コーポレートファイナンスでいいと思っている」という。

Cerevoは、単体でUtream生放送をする「Live Shell Pro」やタブレットでライブ配信の映像スイッチをする「LiveWedge」など、市場自体はニッチだが、グローバルで見れば十分な規模となるような「グローバル・ニッチ」でやっていける手応えをここ2年ほど感じてるという。

「昨日、韓国の映像系イベントに行っていたんですが、ぼくらのファンが会場でCerevo製品を売ってくれたりしているんですね。あれ? オレたち卸してないよって」

Cerevoの個別製品というようりも、そのブランドにファンが付いているという。かつて「ソニーだったらワクワクするものを作ってくれるはず」というイメージがあったように、再び30年でグルっと回って、コーポレート単位のブランドで戦うのが有利ではないかという論点だ。最近、Kickstarterがプロジェクト・ファイナンスの典型として多くの華々しい成功が出てきているように見えるが、岩佐氏によれば、実際にはKickstarterから出てくるスタートアップの多くがブランドやコーポレートとして離陸していくところで苦労しているのだそうだ。

この岩佐氏のコメントに対して、「ひとりメーカー」のBsize代表取締役社長の八木啓太氏は、「ほかの産業だと、音楽にしても、ファッションにしても、ブランドを応援して、好きになって、そのコミュニティーの住人になりたいっていうのが大きい。ユーザーにコミットできるかというのが大事だと思っている。ハードウェアも同じ。繰り返せるかが重要と思っている」と応じた。Bsizeはたった一人の家電ベンチャーとして、最初はデザイン性に優れたLED照明をリリースしたが、その後も、木材を使っていて部屋に溶け込むワイレス充電器「REST」を2つ目のプロダクトとして発売。現在は、ソニーやパナソニックの技術者も入り、3つ目のプロダクトを準備しているという。「これまで家電は大きな投資をして、それを回収するビジネス。今は小ロットでスモールスタートできるようになったことが大きい」。

今後、Cerevoは人員を4倍に拡大してウェアラブルデバイスも開発すると発表したばかりだが、現在主力の映像系プロシューマ向け製品だけでなく、多様な製品ジャンルについて「グローバル・ニッチ」の開拓を進めていくことになりそうだ。


■随時更新■スタートアップのプレゼンバトル「Launch Pad」、14社が火花を散らす

5月22日から23日まで北海道・札幌で開催されている招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Spring」。2日目となる5月23日の朝には、同イベント恒例のプレゼンバトル「Launch Pad」が開催される。すでに登壇者は公開されているので各社を紹介していく。プレゼンに合わせて内容は随時アップデートしていく予定だ。

WHILL Inc
次世代パーソナルモビリティ「WHILL」
既存の車いすの「かっこ悪い」という心理的な問題、坂道や路面状態により行動できないという物理的な問題を解決するべく作られた次世代パーソナルモビリティ。第1弾モデル「WHILL type-A」は現在予約発売を受け付けている。

WHILL代表取締役の杉江理氏によれば、カリフォルニアで50台を限定販売した後、3カ月で70台の予約、100以上のディストリビューターを獲得している。今後は台湾で製造することで、現在約95万円のモデルが約60万円程度にコストダウンできる見込みだという。今夏には日本で販売する。

https://whill.jp/ja/

RINN
留守番中のペットの食事をサポート 自動給餌器「PETLY」他
インテリアとしての美しさを兼ね備えた自動給餌器。最大1kg相当のえさを1日4回まで給仕できる。発売は2014年夏を予定しており、現在サイト上で予約を受付中だ。

RINNは、インテリア性の高いペット向け自動給餌器「PETLY」を2014年7月28日発売予定だが、今回のLaunchPadでは2つの新製品と、これらを組み合わせた同社の狙いを説明した。ペットフードやペット用品、動物病院を含むペット関連市場は約1兆4233億円。このうちRINNが目を付けたのは自動給餌器。いま市場で手に入る給餌器には、餌づまりや、清掃がしづらい、複数ボタンがあることで操作が難しいなどの問題があるという。これをPETLYでは、ダイヤルを回すだけの直感的なUI、餌の残量をLEDで伝えるなどで解決。

自動給餌器「PETLY」に加えて、ペットの首に巻きつけるウェアラブルデバイス「COLOR」とコミュニケーションプラットフォーム「DOOR」を発表した。COLORは、愛犬の健康管理ができるウェアラブルデバイスで、首輪として3つの情報が取れる。「歩数、移動距離」、「起床時間、就寝時間」、そして「位置情報」だ。GPSで迷子を防ぎ、活動状況をモニターできるという。さらに、スマフォアプリとして「DOOR」を提供することで、最終的にはペットと飼い主のコミュニケーションプラットフォーム作りを目指す。「3つを組み合わせて、これまでにない体験を生み出したい」。これによってペットビジネスに横断的にアクセス可能になるという。

http://petly.jp/

ライフスタイルアクセント
日本初のファクトリーブランド直販サービス「ファクトリエ」
日本初のファクトリーブランド専門の通販サイト。世界ブランドを手掛ける国内の工場と提携して商品を製造。中間マージンを省くことで、品質やデザインにこだわりながらも、安価に商品を提供する。

現在扱っている商品はシャツやデニムパンツなど13カテゴリー、100アイテム。提携する国内の工場でどんな職人が作っているかがわかる商品が人気なのだという。ファクトリエを運営するライフスタイルアクセントはこれまで、国内の211工場を訪問し、世界のトップブランドを手がける13工場と提携している。

http://factelier.com/

ベントー・ドット・ジェーピー
毎日のランチをボタンひとつで20分以内にお届け! 「bento.jp」
iPhoneアプリでオーダーを受付した後、20分以内に指定の場所までお弁当を届けてくれるサービス。開始に注文が殺到したため、現在配送エリアを渋谷に限定し、料金を期間限定で500円に値下げしてサービスを展開中だ。

http://bento.jp/

FiNC
あなたに合ったダイエットを専門家がサポート!オンラインダイエット家庭教師「REPUL」
遺伝子検査、血液検査、生活習慣や食習慣のデータをもとに、スマートフォンアプリを通じて人それぞれに最適なダイエット方法をアドバイスする。価格は30日間の「ライトプラン」で2万9800円からとなっている

https://repul.jp/

ジーンクエスト
日本初一般消費者向けゲノム解析サービス「ジーンクエスト」
日本初の個人向け遺伝子解析サービス。米国では2006年創業の23andMeが有名で法整備の議論も進んでいる分野。価格は4万9800円。届いたキットを返送するだけで生活習慣病など疾患リスクや体質など約200項目についての遺伝子を調べてくれる。

https://genequest.jp/

FROSK
スマホアプリの品質改善ツール「SmartBeat」
スマフォアプリ向けのエラー検知・解析ツール。SDKとして提供され、リアルタイムでクラッシュ情報を把握できる。クラッシュ発生までの画面キャプチャも最大3枚取得できるほか、一定回数以上のエラーが発生した場合のメール通知も。UnityとCocos2d-xにも対応。

http://smrtbeat.com/

トランスリミット
己の頭脳を武器に世界中のプレイヤーと戦え!対戦型脳トレ「BrainWars」
リアルタイム対戦型「脳トレ」。非言語依存で世界中のプレイヤーと四則演算やパターン認識、正しい記号を選択するといった反射神経を使うミニゲームでスコアを競う。ゲームは10種類以上だが、1回のプレーは数分と手軽。成績が上がるとランクに応じたバッジがもらえる。

http://translimit.co.jp/services/brainwars.html

Emaki
みんなのカメラを自分のカメラに「Emaki」
撮影した瞬間に共有アルバムに写真が保存されるアルバムアプリ。共有アルバムを事前に作っておくことで旅行や結婚式などの写真をグループ全員で同期できるため、後から共有するという手間がない。カメラの種類は問わず、写真はクラウドにもバックアップされる。

https://play.google.com/store/apps/details?id=me.emaki

ラクーン
クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」
企業間の受発注を管理できるクラウド受発注サービス。現状、多くの企業が受発注にファクスや電話、対面などアナログな手段を用いている。CORECは商品やサービスの受注用フォーム、発注用フォームを用意してもらいチャンネルを一元化することで受発注の処理コスト削減、効率化を目指す。

https://corec.jp/

リクルートライフスタイル
つながりのハブとなる無料POSレジアプリ「AirREGI(Airレジ)」
スマートフォンやタブレットで小売店や飲食店のレジ業務が行える無料のPOSレジアプリ。モバイル決済サービス「Square」と連携し、クレジットカード決済も導入できるようになった。運営はリクルートライフスタイル。

http://airregi.jp/

スペースマーケット
世界中のユニークなスペースをネットで1時間単位で簡単に貸し借り「スペースマーケット」
企業の持つ遊休スペースが1時間単位で貸し借り可能なマーケットプレイス。遊休スペースは貸し会議室やオフィススペースにとどまらず、結婚式場から、古民家、映画館、お寺、球場、お化け屋敷などユニークな施設もある。

https://spacemarket.jp/

イタンジ
1人で内見してお得に部屋選びができる。仲介要らずの内見サービス「セルフ内見」
不動産会社と対面せずに不動産内見ができるサービス。ユーザーは内見したい物件を選び、申込みフォームから希望時間と身分証明書を送付する。その後、貸主・管理会社から日程調整の連絡・内見方法の案内を受けたうえで内見できる。

http://heyazine.com/

ietty
待ってるだけであなたにピッタリなお部屋がやってくる「お部屋探されサイトietty」
賃貸物件探しにおける“借り手”と“営業マン”をマッチングするサービス。サイト上で住みたい物件の条件を登録しておくと、ぴったりの部屋を教えてくれるため、能動的に情報を探す手間を削減できる。

https://ietty.me/


CtoCサービスが成長する”カギ”は何か? Baixing、メルカリ、Stores、ジモティーが語る

冒頭の画像を見てほしい。この写真は何か?これは米国のクラシファイドサービス(「売ります」「買います」をはじめとした個人広告を掲載するサービス)「craigslist」の1ページである。craigslistでは様々な分野の個人広告が掲載されているが、その1つ1つが、実は今、スタータップが提供する特化型のCtoCサービスに置き換えられつつある、ということを示している。

北海道・札幌で5月22日から23日にかけて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」の第3セッションAでは、そんなCtoCサービスの事業者4社——Baixing.com CEOのJianshuo Wang氏、ジモティー 代表取締役社長の加藤貴博氏、メルカリ 代表取締役社長の山田 進太郎氏、ブラケット 代表取締役の光本勇介氏が登壇。インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナーの田中章雄氏がモデレーターを務める中で、それぞれのビジネスについて語った。セッションの前半は各社のサービスが紹介されたが、ここではセッションの後半のディスカッションについて紹介していきたい。

CtoCサービスはどうやって集客するのか

メルカリが手がけるのは、スマートフォン向けフリマサービス「メルカリ」だ。先日14.5億円の資金を調達し、現在テレビCMも開始している。山田氏は、CMでユーザーが増加したこと自体は否定しないが(CM効果について他社の事例を挙げると、先日調達を終えたアカツキなどは、2週間のテレビCMで70万ユーザーが増加したという話だった)、「プロダクトこそが非常に重要」と断言した。当然と言えば当然かもしれないが、やはりプロダクトが命となる。メルカリではスマートフォンに特化し、素早く手軽な操作で出品、購入できるフリマサービスを目指しているという。誰もが迷わず操作できるプロダクトを作ることこそが重要だと語る。

オンラインショップ構築サービス「STORES.jp」を提供するブラケットの光本氏は、「まだ自分たちでも答えが見つけられていない」と語る。STORES.jpの出展数は10万店舗。単純に店舗数だけを比較すれば4万店舗超の楽天を超えている数字だ。しかし店舗の性質も違うし、SEOやリスティング広告などを含めて、コストをかけたマーケティングを展開している。なので同じことをしてもどこまで成果が出るかというと難しい。そのためStores.jpでは、店頭販売できるパッケージ商品を作るということから、さまざまな集客の施策を作っているそうだ。

craigslistのようなクラシファイドサービス「ジモティー」を展開するジモティーの加藤氏は、そもそも「クラシファイド」という言葉自体が日本で一般的ではないため、言葉としては「(売ります買いますを投稿できる)掲示板」としてアピールしていった方がユーザーとの親和性が高いと判断したという(ちなみにジモティーのユーザーは40代以上が62%となっており、ITリテラシーも比較的低いそうだ)。サービス開始当初は,「社員の友人に声をかけてサービスを紹介する」といった人海戦術で集客を始めた時もティーだが、結局重要なのは「リピーターをどれだけ作るか」ということだと思い、ユーザーがどうやって成功体験を得られるかに注力しているそうだ。

中国でクラシファイドサービス「Baixing.com」を展開するWang氏も、口コミの重要性を語る。広告経由のサイト流入は実は全体の5%程度で、ほとんどはオーガニックなサイト流入なのだという。ちなみにBaixing.comで最も人気のある商品は中古車で、実に中国で流通する中古車の30%が同サービスを通じてやりとりされているそうだが、中国の中古車市場では安価な部類に入る1万ドル以下のものを取り扱っているそうだ。こういった商品は安価すぎて中古車ディーラーだと扱いたがらないそうだ。

リリース時期、ユーザーヒアリング、機能——カギになる施策は?

セッション後半、会場から「どういった施策が成功のカギになったのか」という質問が4社に投げられた。

アプリを4月に提供したメルカリ。先行するサービスとしては、女性に特化したFabricのフリマアプリ「Fril」などもあったが、「競合も出てきたが、タイミング的にも早く動けたことがよかった」(山田氏)と語る。

ユーザーインタビューの重要性を語るのは加藤氏だ。「社内の意見とユーザーの声は実は合っていなかったりする。例えばサービスのリッチ化は、実はユーザーのニーズと乖離していることもある」(加藤氏)。この話はなにもCtoC領域に限ったことではないだろう。

光本氏は、1つに絞れないとしながら、これまでの常識を超えるようなサービスの付加がポイントだったと語る。Stores.jpでは、ユーザーが複数店舗で商品を購入する場合でも、一括での決済ができるようにしたし、商品撮影や倉庫利用も基本無料で提供を開始した。こういった施策も、集客のフックになっているそうだ。

「シンプル」こそが大事だとするはWang氏だ。加藤氏の話にも近いが、サービスが複雑になりそうなとこには、まず原点に戻ってシンプルにするのだという。Baixing.com自体も、ユーザーに4つのテンプレートを作るだけで個人広告を出せる仕組みを導入しているのだという。


ヤフーが大赤字でも「2時間配送」にこだわる理由


ネットショッピングで翌日配送や当日配送といった「短時間配送」は当たり前。もっと早く欲しいというニーズを満たすためにヤフーが5月8日に試験的に始めたのが、注文後2時間以内に商品を届けるYahoo!ショッピングの「すぐつく」だ(関連記事はこちら)。アメリカだけでなく日本でもにわかに注目が集まる「数時間配送」だが、なぜヤフーはこのジャンルに参入したのか。札幌で開催中のInfinity Ventures Summit2014 Sprint(IVS)でヤフー執行役員の小澤隆生氏がその狙いを語った。

すぐつくは、巨大な物流拠点から配送する従来型の物流ではなく、近隣にある実店舗から利用者に直接商品を届けることで「2時間配送」を実現する。実証実験では東京・豊洲のスーパーマーケットなど3店舗と提携している。この動きには、ブロガーのやまもといちろう氏が「戸別配送を手がけたチェーン店は死屍累々」などと指摘。この点について小澤氏は「はっきりイイましょう。大赤字です」と言い放った上で、すぐつくを始めた理由を次のように話した。

なぜやっているかというと、やっぱり商流の中に1枚入るのが重要なんですよ。どこの誰が何をいくらで買ったかがわかれば、広告配信に使える。地元のスーパーはチラシを打っているけれど、その間に僕らが入る。そうすると、チラシのビジネスが取れるかもしれない。プラットフォームになるには、いかに砂時計の真ん中を作り出して取るか。購入の直前、家までのラストワンマイルをいかに取るか。

これは喋りたくなかったなあ……と反省気味の小澤氏だったが、話は止まらずさらに続いた。

どんなに赤字でもこの情報が欲しい。どこの誰が何をいくらで買っているかがわかれば、ヤフーとしては広告配信に使えるデータになる。こうした情報は今までスーパーマーケットしか取れていなかったのですが、すぐつくはリアルの購入に完全に食い込んでいるんですよ。そういうことをやろうとしているのは、言うつもりがなかったんえすけどねえ。ECで考えると、ヤフーや楽天は販売店が自由に使えるプラットフォームになりがち。でも私としては、楽天と同じ戦いをしても難しいし、つまらないので、砂時計の真ん中をギュッと掴む。


日本にハードウェアスタートアップの芽はあるか? IVSで当事者たちが議論

テク業界にいるとIoTという言葉を聞かない日がないぐらい、ハードウェアのスタートアップに注目が集まっている。日本にもいくつも登場してきているが、果たして日本はハードウェアプロダクトで起業するのに向いているのだろうか? 輝かしかった電機系製造メーカー時代が不調をきたして長いが、次世代のハードウェア企業が出てくる土壌はあるのだろうか?

今日札幌で始まったInfinity Ventures Summit 2014 Sprintのパネルディスカッションの中盤、モデレーターを務めたITジャーナリスト林信行氏が発した問いかけに、ハードウェアスタートアップの現場にいる4人のパネラーが回答した。

まず最初にこの問いに答えたのは、優しい明かりと独特のミニマルなフォルムを持つLED照明「STORKE」で2011年に起業し、「ひとりメーカー」で知られるBsize代表取締役社長の八木啓太氏。

「日本にハードウェアスタートアップの芽はいっぱいあると思います。何年か前まで日本の製造業は世間を席巻していましたよね。その企業群の下には工場がいっぱいあった。町工場がいい技術を持っています。彼らはまだデジタル化されていなくて、ネットとも繋がっていないという問題があります。だけど、Bsizeは、町工場とコラボしながら高度な製品を提供できていると思う。日本は町工場が優れていて、ハードウェアスタートアップをアクセラレートすることができる」

「ネットと繋がっていない」と八木氏が指摘するのは、たとえば起業時の次のような経験のこと。元々八木氏は富士フィルムで医療機器の設計や開発を行っていた。レントゲンや、胎児の超音波エコー検査機などを担当していた。そんなとき、ある商社の担当者がLEDを紹介してくれた。手術灯にどうですか、と。このLEDモジュールを富士フィルムは不採用とした。八木氏は、自宅でプロトタイプを作ってみて、「これはいいな、量産すれば売れる。1年間、1000万円あればできる」と、会社を辞めて全財産をはたいて作り始めた。こういうLEDモジュールはネットで検索しても出てこない。その後、町工場の協力を得てプロトタイピングを進めたが、どこの町工場が良い加工技術を持っているかということについても、詳しいヒトに聞くしかないのが現状という。一方、Bsize創業時はハードウェアスタートアップ一般に吹く追い風を背景としている。「電子基板も電灯自体も設計は無料のCADソフトを使っている。いまはデータを送れば基盤にして送り返してくれるサービスもある。3Dプリンタもあり、完全に家内制手工業で最初は作った」。2014年現在はソニーやパナソニックの技術者を採用しているが、「ひとりメーカー」と呼ばれるように、今の時代は個人で家電スタートアップをすることもできるのだと改めて指摘した。

日本にハードウェアスタートアップの芽はあるか? 次にこの問いに答えたのは、ユカイ工学代表の青木俊介氏だ。ユカイ工学は、実は多くのスタートアップ企業のプロトタイピングを請け負うなど、関係者の間では裏方としても知られる。たとえば、テレパシー・ワンの最初のモックアップや、スマフォでロック・解除ができる南京錠の「loocks」(ルークス)などは、ユカイ工学が請け負ったそうだ。大企業とのコラボも多くこなすユカイ工学の青木氏は、実は創業時に本社を置く場所を日本を選んだ理由を次のように話す。

「今の会社を作る前には中国に住んでいました。中国で会社を作ることもできたんですが、そうしなかった。日本社会には凄くいい製品がたくさんある。住んでる人が、いい暮らしをしている。そういうところでこそ、いちばん良い物って生まれるはず。大量生産するだけなら、中国にいたほうが有利かもしれません。でもプロダクトって、みんながいいなって思うような、ライフスタイルと結び付いているので、(今の中国からは)良い物って生まれないと思う。米国西海岸って、まさにそうなんだと思うんですね。夏休み中サーフィンをしている人がいる場所だから、GoProが生まれてくる」

パネルディスカッションの聴衆側にいたハードウェアスタートアップのCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏が、会場から同様の意見を投げ入れた。

「豊かな国で作るべきというのはぼくも言ってます。世界でいちばん巨大家電メーカーが多い国は、どこですか? 韓国にはサムスンがあるかもしれないけど、それだけ。家電業界に従事してる人の数がいちばん多いのはどこか? それは日本です。(製品は)人が作るもの。優秀な人がいる国が強いと思うんですよね。先ほどネットで検索しても出てこないって言ってましたけど、確かにそう。出てこない。結局、人の中にノウハウが眠っている。そういう人の数がいちばん多い国って日本ですよ。いまCerevoの売上は、すでに半分が海外だけど、本社を国外に動かす気はないですね」

ロボットの向けの汎用の制御ソフトウェアを開発するスタートアップ、V-Sido代表の吉崎航氏は、ちょっと違うアングルからの回答を持っていた。

「(新しい技術は)ちゃんと使ってる姿が想像できるのが重要だと思ってる。スマフォって使うのがイメージしづらい。最後までガラケー使ってた人たちってそういう人たちだったわけですよね。使ってみたら、何だ案外使えるじゃんと。じゃあ、ロボットがいる生活に馴染む、そういう生活が思い描けるのはっていうと日本人。世界で最もロボットアニメを見ている国民」

V-Sidoはマウスや身振りで人型を動かせるロボットのための「ロボット用のOS」。ロボットは物理的実装ごとに重心やアームの自由度が違うが、V-Sidoを間に入れると、種類の違いを超えて動作を直接的にロボットに伝えて操ることができる。「人間の動きを見ているので、人間が動かしているように見えるけど、実際は人間の動きに合わせてロボットが動いてあげている。大小のロボットが同じバイナリで動く」(吉崎氏)という。V-Sidoで動くロボットの動画が会場に流れると聴衆から歓声が湧いた。

吉崎氏は「ロボットの開発競争が始まった」という。愛知万博を始め、日本国内では過去に何度か(あるいは何度も?)ロボットブームがあって、そのたびにブームは去った。しかし「今回はホンモノ」という。GoogleがAndroidの次にやろうとしていることの1つがロボットで、一挙に7社の買収が話題になることもあったように、世界中が「そろそろ作ってみるか」という状況にあるからだ。その吉崎氏が目指すのは「用途を狭めない、全ての分野でロボットが活躍できる下地を作ること」。今だと、すでに工事現場のショベルカーのような重機をヒューマノイドロボットで操作するという検証を始めていたりするそうだ。人型だから応用範囲は広い。ひょっとすると自分の分野でも活躍するロボットがあるのではないかと想像できる国民が全国にいるのが日本、ということだろう。

ロボットの開発はまだ売れる段階にない。これはロボット開発の課題が人間を作るのに近いからで、ソフトウェアも力学もネットワークも人工知能もと多岐にわたる専門知識が必要になるが、そういうものを全て併せ持つ企業はまだ存在しないからだという。一方、V-SidoはPCにおける汎用OSのようなものを作ることで、誰もが全ての開発をする必要がない世界を作るという。

ハードウェアのプロトタイプやテクノロジーを使った空間演出などデザイン面から企業とのコラボやコンサルティングを多く手がけるtakram desigin engineering代表の田川欣哉氏も、創業時の会社設立の地として、明示的に東京を選択したという。

「どこで会社やるか悩んで、シリコンバレーじゃなく東京にした。それはハードウェアから離れたくなかったから。インテグレーションをやるのは東京がいいな、と。日本人の特性として、いろんな物事をすりあわせて作るって好きというのがありますよね。ハードウェアを作れる国に日帰りで行けるっていうことも含めて東京が良かった」

田川氏は、ネットやソフトウェアが必ずしも得意でない上の世代の製造業の人々ときちんとコミュニケーションする新しい世代が出てきてムードが変わってくると、アメリカとはニュアンスの違うものが出てくるのではないか、という。