iZettleのカードリーダーでロンドンのストリートパフォーマーがキャッシュレスでチップをもらう

決済のデジタル化が進むにつれて、ロンドン名物ストリートパフォーマーたちの収入が現代化しつつある。

新市長Sadiq Khanの支援もあって、イギリスの首都のバスカーたち(buskers, 路上で音楽や芸をする人たちの総称)は、チップを伝統的なキャッシュやコインだけでなく、クレジットカードから受け取ることができるようになる。

この方式はスウェーデンの決済企業iZettle(近くPayPalが22億ドルで買収)を使い、バスカーたちにカードリーダーを与えておくと、通りすがりの歩行者や通勤者たちが寄付できる。最近行ったトライアルを、今度はロンドンの登録バスカーたち全員に拡大する、とBBCが報じている。テストに参加したバスカーのCharlotte Campbellは、非接触型の決済が加わったことによって、いただけるお金の額が相当増えた、と言っている。

“これまでよりもずっとたくさんの人たちが、私が歌ってるときに寄金をタップした。一人がすると、ほかの人たちもする”、とCampbellは言う。

これはiZettleにとっても、絶好のビジネスチャンスだっただろう。これまでも目立たない形で、イギリスの決済のデジタル化に貢献してきたのだが。

iZettleは決済の超大手PayPalにとって、最大の買収になる。同社はこれまで、ヨーロッパ、メキシコ、ラテンアメリカなど計12の市場で操業してきた。イギリスではモバイルによる新しいタイプのPOS方式でとくに強く、そこではスマートフォンやタブレットにつけたカードリーダードングルが活躍した。アメリカのSquareと似たやり方だが、こういうドングルがあれば従来型のPOSシステムを導入してない零細企業でも簡単にカード決済によるPOS処理ができるようになる。

これをベースにiZettleは零細企業への財務サービスを拡大し、今では在庫管理やローンなどの分野も手がけている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

PayPal、決済プラットフォームのiZettleを22億ドルで現金買収へ

PayPalが、米国外でのスモールビジネスやマーケット向けの店頭決済分野でこれまでになく大きな賭けに出る。それは、SquareやStripe、そのほかの決済サービスへの攻勢ととれる。というのも、PayPalはiZettleを買収すると発表したからだ。iZettleはストックホルム拠点の決済プロバイダーで、よく“欧州のSquare”と称される。そのiZettleを22億ドル全額現金で買収する。

2018年第三四半期までに経営権の移転が完了するとされているこの買収案件では、iZettleの創業者でCEOであるJacob de GeerがそのままiZettleを率いる。そしてPayPalのCOO、Bill ReadyがJacob de Geerの上司になると思われる。iZettleの経営幹部もそのまま残り、業務を継続する。これにより、欧州における実在店舗とオフライン決済の「中核拠点」となる、とPayPalは述べている。

この買収のタイミングというのはかなりわかりやすい。ビジネス拡大を目的にiZettleが今月初旬に行ったIPO申請のすぐ後だ。このIPOでは、iZettleはストックホルムナスダック証券取引所で2億2700万ドルもの資金調達を計画。そして株式公開でiZettleの企業価値はおおよそ11億ドルになると予想されている。

関係筋からの情報では、この2社は“何年も”話し合いを続けてきた。しかし、今回のIPO申請で状況は急展開したと予想される。本来ならこの買収案件は金曜日に発表される予定だったのだが、今日(木曜日)噂が広がり始め、結局正式に認めることにしたようだ。

PayPalの時価総額は約940億ドル。直近の収益では、78億円もの現金と現預金、投資金がある。つまり、今回の買収の資金はたっぷりある。

iZettle はPayPalにとってこれまでで最大の買収案件となる。2015年にPayPalは送金サービスのスタートアップXoomを8億9000万ドルで買収。そしてまだeBayの子会社だった2013年には、オンライン決済サービスのBraintreeと、Braintreeが買収したVenmo事業を8億ドルで取得した。

現在iZettle は北欧やメキシコを含む12のマーケットで事業を展開している。そのマーケットというのは、ブラジルやデンマーク、フィンランド、ノルウェイ、スペイン、スウェーデンなどPayPalがオフライン分野で劣勢となっているところが含まれている(中南米での事業拡大はスペインの銀行Santanderの戦略投資によるもの)。iZettle はまた、英国でも存在感を示している。つまり、競合するSquareが進出した場合でも、iZettleの力でPayPalは事業を推し進められるわけだ。

Squareと同様、iZettleもスマホやタブレットと接続するクレジットカードを読み取るドングルを活用して、店頭ビジネス分野で道を切り開いてきた。クレジットカード支払いを受けるにはコストがかかるため、それまでカード支払いを受け付けていなかったスモールビジネスの事業者や個人でも利用できるサービスを展開したのだ。そこから、スモールビジネス向けの在庫管理ローンといった他の金融サービスにも手を広げてきた。

PayPalの動きを追っている人ならご存知だろうが、PayPalは米国内外のマーケットで店頭決済サービスの拡大に注力してきた。しかし、すでに確立されているオンライン決済ほどに力を入れてはこなかったとみる向きもある。

iZettleのde Geerは、将来的には実在店舗を持たないような大きな事業所や企業向けにもサービスを拡大させたいと考えていたが、そのiZettleの現在の規模や運営状況こそがPayPalを惹きつけた。サービス拡大にあたり、その点を補えるからだ。

PayPalのCEO、Dan Schulmanは「スモールビジネスというのは世界経済のエンジンだ。オンラインや店舗、モバイルでのビジネスをサポートするため、引き続きプラットフォームを拡大していく」とコメントしている。「iZettleとPayPalは、ミッションや価値観、カルチャーを共有し、何よりもサービスの幅や地理的ビジネス分布面からいっても戦略的にいい補完関係にある。現代のデジタル社会では、消費者は好きな時に、どこからでも、好きな方法で購入できる。50万近くの事業者が利用するiZettle を育てたJacob de Geer氏と彼が率いるチームの最高の能力により、あらゆる販売チャネルにとってPayPalがワンストップソリューションとなる」とも述べている。

もちろんスタートアップのiZettleにとっても、世界的な決済サービスの巨人をパートナーとすることは、ビジネスを拡大させるまたとないチャンスとなる。

de Geerは「我々が培ったものや専門性を、この業界のリーダー的存在であるPayPalに注入することで、スモールビジネス事業者により価値のあるサービスを提供できる」「iZettleとPayPalの統合により、我々の顧客はスムースに決済や販売を行い、また成長できるようになる」とコメントしている。

IPO申請書類の中に、iZettleはまだ赤字であることが記載されているが、その赤字幅は減少しているようだ。2018年1~3月の税金及び減価償却前の赤字額は7300万スウェーデンクローナ(830万ドル)で、2020年までには黒字化が見込まれる。

PayPal によると、iZettleのプラットフォームを使った今年の決済額は60億ドル、それによる収入は1億6500万ドルを予想している。iZettleの収入は2015年から2017年にかけて年率60%成長と、ものすごい勢いで伸びている。

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(翻訳:Mizoguchi)