携帯基地局シェアリングのJTowerが東証マザーズ上場、公開価格1600円、始値は2620円

携帯基地局のシェアリング事業を展開するJTowerは12月18日、東証マザーズ市場に上場した。主幹事証券会社は、SMBC日興証券、大和証券の2社。公募298万7000株、売り出し290万600株、オーバーアロットメント88万3900株。オーバーアロットメントとは、当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合に実施される株式の販売方法。主幹事証券会社が対象会社の株主から一時的に株式を借り、売出予定株数を超える株式を、募集・売出しと同じ条件で追加販売すること。

同社株の公開価格1600円だったが、初値はそこから1020円高い2620円となった。12月18日11時30分現在の最高値は11時1分に付けた2748円で、時価総額は466億600万円。現在は少し値を下げて2410円前後で株価が推移している。

同社の既存株主は、関連会社のカルティブが29.14%、NTTグループの持株会社である日本電信電話が21.21%、JTower社長の田中敦史氏が10.69%、JA三井リースが6.85%。以下、三菱UFJキャピタル(三菱UFJキャピタル4号投資事業有限責任組合)、日本郵政キャピタル、アイティーファーム(アイティーファームのぞみ投資事業有限責任組合)、INCJ、DBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル(SMBC戦略出資1号投資事業有限責任組合)、みずほキャピタル(みずほ成長支援ファンド)など通信・金融機関系ファンドが名を連ねる。社長の田中氏は、イー・アクセスで常務執行役員などを務めていた人物だ。

同社は、2012年6月設立のスタートアップ。携帯基地局の建設にかかわる基地局本体やアンテナ、工事などの設備投資を請け負い、国内のほかベトナムやミャンマーなどの海外の携帯キャリアへ屋内基地局のシェアリング事業を展開している。なお、2019年1月にはマレーシアの携帯基地局のシェアリング事業最大手であるedotco(イードットコ)グループとの戦略的事業提携を締結。そして9月には、第5世代移動通信システムでのシェアリングモデルの推進に向け、日本電信電話と資本提携と業務提携を結んでいた。

詳しくは同社のプレスリリース一覧で確認できるが、2019年だけでも病院や大学、ホテル、オフィスビル、商業施設、劇場など40件以上の建物で基地局のシェアリングサービスを提供している。

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そのほか、不動産事業者向けのクラウドWi-Fiソリューション、基地局の設置許可を得られたビルなどを所有する不動産事業者情報を集約したデータベース「SITE LOCATOR」などの提供している。

直近の業績は、2019年3月を決算期とする2019年度(2018年4月〜2019年3月)は売上高13億7700万円、営業損失1億6900万円、経常損失1億6600万円、当期純損失は2億1400万円。2020年度(2019年4月〜2020年3月)の予想は、売上高24億3900万円、営業損失1億6500万円、経常損失2億5800万円、当期純損失2億8900万円。

業績はすべて連結で、子会社・関連会社としては、ナビック、SOUTHERN STAR TELECOMMUNICATION EQUIPMENT JOINT STOCK COMPANY(ベトナム)、GNI MYANMAR COMPANY(ミャンマー)などがある。2019年3月期の連結売上高構成比は、国内事業62.7%、ベトナム事業33.0%、ソリューション事業4.3%となっている。

赤字状態でのマザーズ上場だが、初値の高さからも5G時代の同社に対する市場の期待値の高さがうかがえる。

 

携帯電話の通信設備を屋内に設置するスタートアップ、JTOWERが10億円の資金調達を実施

JTOWERは携帯電話事業者などの通信キャリアに基地局を設置するためのアンテナやケーブルといったインフラ設備を提供するスタートアップである。具体的には商業施設やオフィスビル、マンションなどで、JTOWERが設置するインフラ設備を複数の携帯電話事業者に共有してもらう事業をスタートさせようとしている。米国では同種の事業はAmerican Towerなどがあり上場も果たしていて、大きな企業に成長している。このJTOWERが産業革新機構JA三井リースアイティーファームを引受先とした総額10億円を上限とする第三者割当増資を実施した。

JTOWERのビジネスは、通信企業のインフラコストを抑えようというものだ。携帯電話などでは電波が確実に端末に届くことが重要になるが、屋内では電波の遮蔽が起こり、電波が届きにくいところがある。このために各通信キャリアは商業施設やオフィスビルなどの屋内に自前でアンテナや基地局を設置する必要があるが、それにはそれなりのコストがかかっている。たとえば、大きなビルでは数億円程度の設置費用がかかるのだという。このコストは通信キャリアだけでなく、商業施設やビルを所有する不動産事業者も負担を強いられることもあった。そこでJTOWERがその設備を敷設し、通信キャリアはその設備を複数社で利用することで、そのコストを抑えようというわけである(下記、産業革新機構の資料参照)。

通信業界のような大型の設備投資が必要な業界に新たな事業にチャレンジするスタートアップが登場するのはとても興味深いことだ。このアイデアを実現したJTOWERの代表取締役の田中敦史氏は、イー・アクセスの創業メンバーでイー・モバイルのCFOなどを務めていた人物である。通信業界に深く関わってきたからこそ、こういったビジネスの可能性が存在していたことに気がついたのだろう。田中氏は「この事業はこれまでの通信業界の枠組みに変化をもたらす可能性があると考えているが、実績がない中で大型の増資を実現するのには相当の努力をした」と語っている。今後は各通信事業者との継続的な調整を重ね、不動産会社各社と協業していく予定だとしている。また設備投資もさることながら、人員拡充、特に通信技術者を採用していく予定だという。