オンデマンド配車サービスのGettが同業のJunoを2億ドルで買収

オンデマンド・ライドシェアリング業界における競合関係が変化したようだ。Gettは米国時間26日、ニューヨークで同様のサービスを提供するJunoを買収したと発表した。Gettの創業者兼CEOであるDave Waiser氏は、TechCrunchとのインタビューの中で今回の買収金額が2億ドルであることを明かしてくれた。しかし、その金額が現金で支払われるのか、または株式で払われるのかなど、その他の詳細は明らかになっていない。

このニュースによって、TechCrunchが昨日発表した記事が正しかったことが証明された。この記事で私たちは、この2社が買収交渉を行っていること、そして買収金額は2億5000万ドル程度ではないかと伝えていた。

この買収の詳細をお伝えしよう:

― この買収により、GettはJunoの経営資産すべてを手に入れることになる。ライセンスを付与したドライバーのネットワーク、全従業員、共同創業者のTalmon Marco氏、Igor Magazinik氏、Ofer Samocha氏、Sunny Marueli氏らがそれに当てはまる。創業者たち4人はニューヨークに残り、買収後のチームを率いて米国でのビジネスを運営していくことになる。同社のサービスは現在ニューヨークでのみ利用可能だが、彼らはGettがこれまで進出してこなかったヨーロッパ100都市への拡大も目指している。

昨日の記事でもお伝えしたように、この買収によって同社はニューヨークにおいてはLyftに匹敵する規模をもつことになる。この街でUberに次ぐ2番手を競い合うことになるのだ。

昨年Volkswagenから3億ドルを調達したGettだが、その成長を加速するために新たな調達ラウンドを実施する可能性も大いにある。

「今回の買収で、ビジネス拡大に向けた大きなチャンスを手にすることができました。そのために必要な資金を今年中に調達する予定です」とWaiser氏は語る。「Volkswagenは私たちにとても協力的で、素晴らしいパートナーです。ですから、新たな調達ラウンドでは既存投資家と新規投資家の両方から資金を調達する可能性もあります」。また彼は、Gettは前四半期で乗車数と収益のどちらにおいても100%の成長を達成したと付け加えた。「すべての四半期でこのような成長を達成できるとは思っていませんが、これを達成できたことは重要な意味を持ちます。また、私たちの成長はオーガニックなものでもあります」。

Junoが昨年サービスをローンチしたとき、ドライバー・フレンドリーな同社のビジネスは世間からの注目を浴びた。特に、ライバルのUberがドライバーの扱いについて評判が悪かったからこそ、彼らの注目度は高かった。Junoはドライバーに制限付き株式(RSU)を与えている。そのため、Junoが成長すれば、ドライバーもその恩恵を受けることができるのだ。

私たちの取材によれば、この買収によってこのRSU制度は廃止され、ドライバーには株式取得時の金額に相応した現金が支払われることになる。しかし、話はここで終わらない:Gettは「long term value sharing」と呼ばれるを始めるという。これはJunoのRSU制度と同じようなものであるようだが、その詳細はまだ明らかになっていない。

ドライバーとの契約はそのまま維持される。GettとJunoは両社ともドライバーに10%のコミッションを支払っている ― 同社によれば、これは業界の最高水準だ。また、チップは全額ドライバーが受け取り、24時間のドライバーサポート体制も整っている。

概して言えば、この買収の動きは面白い展開だと言える。Uberに振りかかる苦難や裁判といった最近のニュースを見ると、新しい参入者がUberとは違うやり方でマーケットプレイスの両端であるドライバーと乗客のそれぞれを満足させられるサービスを提供するチャンスがあるのではないかとも感じる。ビジネスのスケールは成功を測る1つの指標でしかないことが明らかになるかもしれない。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Juno探査機の小さなセンサーが木星のまわりでビッグな科学を演じる…ASICの超小型軽量化に成功

nasa_chips_juno

木星探査機Junoのすごいところは、その作者の一人に申し上げたこともあるが、そのシンプルですっきりした設計だ…少なくとも、ほかの宇宙船と比べた場合、そう言える。技術者たちには通常、何でもかんでもそこに詰め込むだけの十分な時間がある。でも重要なセンサーは、食パンみたいなサイズであるよりも、スープの浮身に使うクラッカーぐらいに小さい方がよい。

今NASAのGoddard Flight CenterにいるNikolaos Paschalidisは、これまでの長年、チップの小型化に挑戦してきた。

The sensors are cute so they dance

かわいいセンサーたちはダンスができる

“これまでの宇宙船はすべて、電子回路がものすごく大きくて、2ポンド以上もあった”、と彼はNASAのニューズリリースで語っている。サイズが大きいと少しの計器類しか搭載できないし、重ければ宇宙船全体を重くする。この二つの制約が、VoyagerやGalileoのころの探測機の設計者たちを厳しく悩ませた。

これらのASIC(Application Specific Integrated Circuit)はその名のとおり、目的に合わせた特注製品だ。Junoの場合は、高度な放射線耐性が要求された。木星周辺までの旅路は、どっぷりと放射線漬けなのだ。

Junoの場合は、すでにPaschalidisらのこれまでの仕事の成果を踏まえていたため、設計者たちにかなりの自由があった。Junoが木星の起動に乗る〔木星を回る軌道?〕直前のインタビューで、主席研究員のScott Boltonは、サイズがSaltineぐらいに小さくなっても、‘何でもかんでもそこに詰め込む’ことは必要だし、たいへんな作業だ、と語った。

“それは、ピース数のものすごく多いジグソーパズルだ。何十人ものエンジニアやサイエンティストが寄ってたかって挑戦しても、完成までにすごい時間がかかる。そうやって、やっとボックスが完成したら、今度はそこにケーブルを入れないといけない”。

それでも結果は、大量の計器類を配置できた嬉しい出来栄えだ。Boltonはとくに、最新のマイクロ波測定器に興奮しているが、Junoの超小型のASIC群は、そのJupiter Energetic Particle Detector Instrument(JEDI, 木星エネルギー粒子検出計器)を構成している。このツール集合は、エネルギー粒子(energetic particles)というものを、あなたの小銭入れに入るようなセンサー群を使って10億分の1秒以上の精度で検出する。

Junoは今、木星の周りの大きな楕円形の軌道のいちばん遠いところにいる。でも測定計器類は準備万端だから、今月の終わりごろには、探査機がこの惑星の至近を初めて通るとき、いろんな科学的仕事ができるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

打ち上げから5年、Junoが木星の軌道に到達。

juno-and-jupiter

5年間の太陽系の旅を終え、Junoがついに最終目的地までたどり着いた。Junoは現在、時速約25万キロの速度で木星の軌道上を飛行中だ。

11億3000万ドルもの資金が投じられたこのプロジェクトにおいて、最も過酷ともいえるミッションが本日の東部標準時23時18分(日本時間で7月5日12時18分)に開始した。Junoが木星の軌道に突入する瞬間だ。Junoの機体を木星の軌道にのせるために(そして、惑星を通過してしまう、あるいは惑星に衝突してしまうことを避けるために)、メインエンジンを35分間逆噴射する必要があった。

現在、Junoは無事にそのミッションを成功させ、木星の軌道上を37周するという新しいミッションを開始したばかりだ。

jupiter-image

惑星探査機カッシーニによって撮影された木星の画像 / NASAによる許可により掲載

軌道を周回するあいだ、Junoは何度も木星の放射線帯に突入することになり、木星とJunoとの最短距離は3000マイル(約4830キロメートル)まで縮まる。Junoに搭載された最新設備が計測するデータによって、私たちの木星に対する理解がより深まることだろう。

「Junoによる木星の調査によって太陽系の歴史に対する理解をより深めることができ、銀河において惑星系がどのように形作られ、そして発達していくのかを知るための新しい手がかりとなるでしょう。」 – NASA ジェット推進研究所

ローマ神話に登場する神ユーピテル(ジュピター)の妻の名をとって命名された惑星探査機Junoは、木星の地表まで観測することができる。これは史上初めての試みだ。

Junoがここまで注目されている理由は、目的地である木星に到達するのが非常に困難だとされていたからだ。太陽系に存在が確認されている8つの惑星の中で、木星の磁場の強さと放射線量は最も高いとされている。木星という未知の惑星に関するデータを調査するためには、そのような過酷な環境下でのミッションにも耐えうることができる機体を開発する必要があったのだ。

その環境の過酷さを知るために、ある数字を比べてみよう。地球上における環境放射線量は0.39RADとされている。それに比べて、Junoが今回の調査によって浴びる放射線量は2000万RADだ。

それこそが、Junoのミッションに参加する科学者たちの間で木星が冷酷なモンスターと呼ばれている理由なのだ。

「木星が回転するスピードはとても速く、その巨大な重力によって周りにある岩、粉塵、電子、そして彗星までもが鉄砲玉のように吸い込まれていきます。木星に近づくすべてのものが、その武器と化してしまうのです」- NASA Juno Science Team

juno-spacecraft-dimensions

Junoとバスケットボール・コートのサイズ比較 / NASAとJPLからの許可により掲載

この過酷な環境下にも耐えうる宇宙船を開発する必要があったNASAが出した答えこそ、Junoだったのだ。総重量約3630キロの巨大な機体には全長9メートルのソーラーパネルが3つ搭載されている。

木星の軌道に突入する際、Junoには1232キロの燃料が搭載されていた。35分間の逆噴射のあと、その機体に残された燃料は447キロだけだ。Junoはその残りの燃料を使って木星の軌道上を37周し、最後は木星の大気圏に突入する予定となっている。

 

上に掲載した映像は、Junoが木星の軌道に突入する際に撮影された映像だ。6月29日にJunoCamで撮影されたこの映像では、木星と4つの衛星を確認することができる(カリスト、ガニメデ、エウロパ、イオ)。6月30日、JunoCamを含むすべての設備はシャットダウンされ、軌道突入という過酷なミッションに備えることとなった。

「Junoのミッションにおいて一番恐ろしいのは、未知の部分が多すぎることです。Junoがさらされることになる環境のほとんどが明らかになっていません。何が起こるのか、まったく予測することができないのです」– NASA Juno Science Team

過酷な道のりはまだ始まったばかりだ。しかし、すべてが計画通り進めば、ミッションが完了してJunoが木星に衝突するのは2018年の予定となっている。

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook