家族と幼児教育者をつなぎ、子育ての多様な支援も行うラーニングポッドサービス「Guardians Collective」

子育てを楽にする技術的なソリューションの必要性に異議を唱える人はほとんどいないだろうが、その需要に実践が追いついていないのは明らかだ。子育ては大変で、子どもがボタンを誤って食べてしまったときや、リモートでの授業の間うつ病の初期症状が出たときなど、さまざまな瞬間にサポートが必要だ。親が直面する問題の多様性は、顧客サービスにとって悪夢のようなものなのだが、それこそが創業者のSaurabh Kamalapurkar(サウラブ・カマラプルカール)氏がGuardians Collective(ガーディアンズ・コレクティブ)を構築することに強い思いを抱く理由だ。

Guardians Collectiveでは、少人数の家族を集め、その家族と早期学習・開発プログラムでの勤務経験があるか、州の認可を受けてデイケアを運営している専門家である幼児教育者とを引き合わせる。この会社の使命、そしてより大きな目標は、正式なデイケアに頼らざるを得なかった家族にとって、幼児教育者をより身近な存在にすることだ。同社は早朝や深夜も含めたピア・ツー・ピアの学習を、サポート付きで提供している。

米国時間11月5日、Guardians Collectiveは、Impact America Fund(インパクト・アメリカ・ファンド)とGary Philanthropies(ゲイリー・フランソロピー)が参加し、Reach Capital(リーチ・キャピタル)がリードした、350万ドル(約3億9700万円)のシード投資ラウンドを発表した。

私の見解では、Guardians Collectiveは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行初期段階から話題となった「ラーニングポッド」というトレンドに新しい風を吹き込んでいる。マイクロスクール、パンデミック・ポッド、スモールグループ・ラーニングと同義のこの言葉は、学校での学習を代替または補完する目的で、個人指導員とペアを組む同年齢の子どもたちの小さな集団を指す。この傾向は、低所得層の生徒にとっては脅威であり、結果的に学習教材へのアクセスにさらに大きな格差が生じることになると批判されている。

Reach Capital(リーチ・キャピタル)で投資を担当したChian Gong(チアン・ゴン)氏は、Guardians Collectiveは単なる学習ポッドではなく、他の保護者とのWhatsApp(ワッツアップ)グループでもないと考えている。

「WhatsAppはすでに知っている人同士をつなげるものですが、Guardians Collectiveでは3〜5家族と幼児教育者が安全な空間に集まり、他では聞けないような質問をすることができます」とゴン氏は言った。「何千人もの子どもたちと接し、同じ年齢の子どもを持つ他の家族との対話を導くことができる教育者の知恵や洞察力、共感を得ることができるのです」。

画像クレジット:Guardians Collective

ゴン氏は、このプラットフォームの魅力は、専門知識、コンテンツ、コミュニティが一体となっていることだと考えている。ベンチャー企業が出資する幼児分野のスタートアップであるWinnie(ウィニー)は、親が近くのデイケアや幼稚園を探すのに利用できるチャイルドケアのマーケットプレイスだ。KaiPod Learning(カイポッド・ラーニング)は、ホームスクールをしている子どもたちに、地元の、補完的で、社会的な学習拠点を提供するために、数百万ドル(数億円)の資金を調達した

これらのスタートアップ企業は、それぞれ実行方法や戦略が異なるが、子どもたちの能力を高めるためのリソースへのアクセスを提供するという点では同じビジョンを持っているようだ。

Guardians Collectiveの戦略には、より多くの幼児教育者にプラットフォームに参加してもらうことも含まれている。ほとんどの州では、デイケアセンターを運営するためにはライセンスを取得する必要があり、その価格や偏見が、実際にそのプロセスを踏める人に影響を与えることを考えると、これは政治的な問題だ。このスタートアップは、免許を持っていないが何世代にもわたって子どもたちをサポートしてきた人たちと、品質保証のバランスをどうとるかを考えているところだ。

「多くのシステムでは、これらの人々を教育者とは呼びません」とカマラプルカール氏はいう。「しかし、彼らはただのおむつを交換する人なのではなく、教師でもあるのです」。教師の組織は、非同期型の仕事に参加するという考えに同意しており、Guardians Collectiveでは、40人の教育者を募集したところ、数日で470人の応募があった。

これまでにデトロイト、ニューオーリンズ、アラスカ、ナバホ・ネイション、オクラホマ、カリフォルニアのセントラルバレーなどで暮らす家族がGuardians Collectiveのアプリを利用している。カマラプルカール氏は、顧客の半数以上が低所得者であると述べている。このスタートアップでは、利用したい家族に手頃な価格を提供するために、スライディングスケールを用いたサブスクリプションモデルを採用している。

ベンチャー企業の資金を得たGuardians Collectiveは、ユーザーの維持と新たな成長への期待のバランスを取る必要がある。ベイエリアでは700以上の家族が同社のプラットフォームを利用しているが、2020年初頭からの全国的な成長率は16倍に達している。また、ユーザーの維持率は94%で、平日は94%のユーザーが毎日アプリを利用しているとしている。

カマラプルカール氏が注目している大きな指標は、家族が何について話しているのか、どこで会話が行われているのか、メッセージの何パーセントが有益な方法で回答されているのか、という捉えどころのないものだ。

「規模の拡大とは、利用者の数だけでなく、利用者にとって私たちのサービスが何を意味するのかということです」と彼は語った。

画像クレジット:Lisitsa / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Yuta Kaminishi)

KaiPod Learningは今後も「ラーニングポッド」が定着すると考えている

「ラーニングポッド」はその登場以来.EdTechの世界で議論の的となってきた。これはマイクロスクール、パンデミックポッド、少人数グループ学習などと同義で、同じ年齢層の子どもが少人数で集まり、そこに指導員がついて、学校教育の代替または補完を目指すものだ。

2020年、学校の授業がビデオ中心になり、働く保護者が子どもにとってもっと魅力的で1人ひとりに合わせた教材で補いたいと求めたことから、ラーニングポッドのコンセプトがスタートした。一部のEdTechの起業家は、在宅で学ぶ子どもたちの新しい波が到来しラーニングポッドを利用できる裕福な家庭に恩恵があるだろうと予測した。Tyton Partnersの推計によると、2020年に700万人が補習ラーニングポッドに申し込み、家庭学習の支出は120億ドル(約1兆3000億円)になったという。

最初のラーニングポッドが登場してからおよそ1年が経った今、Yコンビネーター出身のスタートアップがこの急成長した学習モデルで学校教育のような役割を担い始めている。Pearson Online Learningの最高製品責任者だったAmar Kumar(アマール・クマール)氏が創業したKaiPod Learningは、在宅で学ぶ子どもを対面式の補習ラーニングポッドとつなぐサービスを開始した。

ボストンを拠点とするKaiPodは、対面でのやりとりをカリキュラムに取り入れた、オンラインで学ぶ子どもとラーニングポッドのための頼れるプラットフォームを目指している。同社はまず既存のカリキュラムのテコ入れを必要としている在宅学習の家族をターゲットにする。

KaiPodは、Sora Schoolsのようなバーチャルのマイクロスクールや地域が用意する在宅学習プログラムなど、子どもにとって最適なオンラインスクールを選ぶ保護者のサポートからサービスを開始している。これにより、子どもたちはこれまでの学校の代替として最低限の要件を満たすオンラインスクールを利用できるようになる。さらに同社は、オンラインスクールを利用する子どもにとってのコワーキングスペースのようなサービスを提供しようとしている。

クマール氏は「クラウドで社会性を育むことはできず、クラウドで子育てをすることもできません。これらは保護者が学校に期待することです。すべてをオンラインに移行したためにこうしたことが排除され、優先順位が適切でなかったことが明らかになっています」と述べた。

子どもたちは近隣のKaiPodセンターに行き、そこでラーニングコーチとコミュニケーションをとる。ラーニングコーチとは、教員でありキャンプカウンセラーでもあるとクマール氏が定義する役割だ。

コーチはオンラインの学習課題を通じて支援する一方、学校生活における社会性を取り戻す活動も指導する。ラーニングコーチはセンターでさまざまなカリキュラムを担当するが、KaiPodが成長するにあたってはこのことが品質を保証する上での難題になるかもしれない。

広い意味ではKaiPodはバーチャルスクールで学ぶ子どもが実際の学校に行く支援をしているが、状況に応じて柔軟性と多様性を持たせている。例えばある子どもは別の子どもとはまったく異なるカリキュラムで学んでいるかもしれない。つまり物理的な場所は講義のために使われるのではなく、子どものモチベーションを上げて個別の学びを共有するソクラテス式問答スタイルのゼミに使われるかもしれない。

教育におけるWeWorkなのか

クマール氏はこうしたことをラーニングポッドのインクルーシブなアプローチであると考えている。教育と同時に子育てでもあるからだ。センターは週に5日、朝8時から夕方5時30分までオープンしている。

同氏は、校外の補習モデルが学びの豊かさにつながる例として公文式を挙げた。公文式は1カ所のセンターから始まり、最終的にはフランチャイズモデルによって放課後に指導をする企業として世界最大級になった。

KaiPodの成功に関して重要なのは、コロナ禍によって関心が高まった在宅学習が今後定着するかどうかだ。National Center for Education Statistics(全米教育統計センター)によると米国で2020年から2021年に在宅学習をしている家庭の割合は3倍になったが、この数字は学校に戻ることによる変化を完全に反映しているわけではない。

KaiPod Learningは2021年に8人の子どもを集めたパイロットプログラムをボストンで実施した。クマール氏は、あるラーニングコーチがゲーム中にミドルスクールの生徒1人に学習障害が疑われる兆候を見つけ、これは少人数制で指導者が「講義形式の授業よりも子どもたちと深く関わっている」ことの表れだとした。KaiPodは今後数カ月以内にさらに5〜7カ所のセンターを開設する予定だ。

クマール氏は「我々の知名度が上がれば他の州の起業家も我々のプレイブック(つまりフランチャイズモデル)を利用したセンターの開設を希望すると考えています。愛情を込めて『KaiPod OS』というコードネームで呼んでいる我々のテクノロジーレイヤーでそうした人々を支援できます」と述べた。センターを開設する場所は、KaiPodが誰に販売をするのか、また社会経済学的にさまざまなバックグラウンドの家族が利用するかどうかを示すことになるだろう。

同氏は「現時点では教育におけるWeWorkのようなものになることに関心はありません。センターは家庭が子どもを預け、立ち寄り、ポッドで何をしているかを知ることのできる便利な場所であると考えてください」と語った。

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画像クレジット:Witthaya Prasongsin / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)