人工衛星のKeplerがトロント新施設で小型衛星製造へ

人工衛星スタートアップのKepler(ケプラー)は、カナダのオンタリオ州トロントにある5000平方フィートの新しい施設で、今後小型衛星を製造する。同社はカナダ宇宙庁やトロント大学などのパートナーと共同でこの新施設の建設に取り組んでおり、製造だけでなく衛星の設計や開発も行う予定だ。

Keplerはすでに2機の人工衛星を軌道上で運用しており、2019年末には初の高速インターネット接続を北極に提供し、その技術力を実証した。これらの衛星はKeplerによって設計されたものだが、サードパーティーが製造している。今回の発表にともない、Keplerは「将来の衛星の開発、生産、試験を垂直統合する」と述べている。

これによりKeplerは農業、運輸、海運、物流などの幅広い産業での利用を目的とした広帯域接続を提供する合計140機の衛星群を製造、打ち上げ、運用するという目標を達成することができる。新しい施設は衛星群を構築するために必要な小型衛星の大量生産をサポートし、同時に長期のアウトソーシングと比較してコスト面でのメリットを提供する。

小型衛星産業は、特にSpaceX(スペースX)のFalcon9のような比較的手頃な価格のロケットが、衛星や衛星群の潜在的な市場を拡大して以来、最も需要が増加した宇宙産業の分野である。衛星製造を社内に移行することで、Keplerは全スタックを社内に所有する数少ない小規模な宇宙開発企業の1つとなり、今後、同社に大きな優位をもたらすはずだ。

Keplerによる今後の衛星打ち上げについては、すでに製造を請け負っている実証衛星が2020年春に打ち上げられる予定だ。その後、この新施設で製造された最初の商用衛星を2020年夏に打ち上げ、それ以外にも年内に2回の打ち上げを予定している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Keplerが2機の小型ネットワーク衛星をSpaceXのFalcon 9で打ち上げ

小型衛星スタートアップのKepler Communications(ケプラー・コミュニケーションズ)はSpaceX(スペースX)と協力して、初の小型衛星コンステレーションの目標を達成しようとしている。SpaceXはFalcon 9ロケットにて、Keplerの小型衛星を2つに分けて打ち上げる予定だ。

トロントに拠点を置くKepler Communicationsは、人工衛星を利用した低電力かつIoTに直接接続するネットワークと高速データ転送機能を提供する、より大容量なネットワークを構築する。

KeplerはElon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceXが今年発表したライドシェアプログラムを利用して、合計400kgのペイロードを打ち上げる予定だ。今回の打ち上げでは、Keplerの人工衛星は太陽同期軌道へと投入される。これは、人工衛星が毎日同じ時間に太陽からみて地球上空の同一地点を通過するという意味だ。

Keplerは2020年から2023年までの3フェーズにて合計140機の人工衛星を軌道に投入する計画で、この衛星コンステレーションを中継システムとして運用し、軌道上の他の衛星群にデータを転送することを目指している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

北極圏での100Mbps衛星ブロードバンド接続に世界初成功

小型衛星のスタートアップであるKeplerは、これまで衛星によるブロードバンド接続としては誰も成し得なかったことに成功した。北極圏での高帯域幅接続だ。Keplerのナノ衛星は、ドイツの砕氷船に対して100Mbps超のネットワーク接続速度を達成するデモに成功した。この砕氷船は、MOSAiCの研究遠征の移動研究室として機能している。

画像クレジット:Stephan Hendricks

Keplerによれば、北極圏中央部の地上で高帯域幅の衛星ネットワークが利用できるようになったのは今回が初めてだという。また今回の接続は、単なる技術的なデモではなく、実際にMOSAiCチームの研究者が利用している。同チームには、数百人のメンバーがいて、船と陸地にある基地との間でデータをやり取りしている。この高速接続によって、チームが収集する大量のデータの処理に関して、あらゆる面が改善される。

バルクデータ転送は、北極や南極における科学探査にとって長年の課題だった。そうした場所では、地上波による高帯域ネットワークを利用するのは現実的ではなく、従来の衛星ベースのネットワークでは極地に対して、そのような速度での接続を実現することができなかった。Keplerは、極軌道上にある2機の低高度地球周回衛星を使って極地に対して独自のサービスを提供している。つまり、気候変動の影響について現場で研究する科学者にとってうってつけのサービスというわけだ。そうした研究は、気候変動の影響が最も深刻に、かつ早期に現れやすい極地において、多くの専門分野にまたがるチームによって実施されている。

砕氷船ともなっている調査船上で、Keplerは下りは38Mbps、上りは120Mbpsのリンクを実現した。これは偶然にもGoogleが最高品質のStadiaゲームストリーミング用として推奨している最大スペックを上回っている。ただし、これは科学のためのものであってゲーム用ではない。お間違えのないように。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Keplerが引退前に撮影した「最後の光」をNASAが公開

NASAのKepler宇宙望遠鏡の「最後の光」の写真

NASAは9月にKeplerが撮った最後の写真を公開した。これは、この宇宙望遠鏡が引退する直前のもの。われわれの太陽系の外側の宇宙についての、ほぼ10年間にわたる前例のない発見の最後を締めくくるものだ。

「この宇宙探査機が最初に空に目を向け、その『最初の光』の画像を捉えたときから、9年半におよぶ感動的な時間を締めくくりました」と、NASAエイムズ研究センターの広報担当官、Alison Hawkesは述べた。「ケプラーは、私たちの太陽系の外に2600を超える世界を発見し続け、私たちの銀河には恒星よりも惑星が多いことを統計的に証明しました」。

この「最後の光」の写真は、Keplerが引退する約1か月前の、9月25日に撮影された。宇宙望遠鏡は水瓶座の方向を向いていて、この画像はTRAPPIST-1系全体をカバーしている。そこには、「7つの岩石惑星が含まれていて、少なくともそのうち3つは温和な世界だと信じられています」と、Hawkesは書いている。また、GJ 9827系は 地球型の太陽系外惑星を持つ恒星で、「今後、他の望遠鏡による観察によって、遠く離れた世界の大気がどのようなものなのかを研究するための、絶好の対象と考えられています」とのことだ。

Keplerの視野は、その惑星探査の後継機であるNASAのTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite=トランジット系外惑星探索衛星)のものとも、わずかながら重複していたので、天文学者は2つの観測データを比較することができるはずだ。TESSは昨年打ち上げられ、1500を超える太陽系外惑星を探査する予定となっている。

Keplerの主要な任務の期待寿命は、元々3.5年に過ぎなかったので、その遺産はさらに特別なものとなった。この、17世紀のドイツの天文学者であり数学者のJohannes Keplerにちなんで名付けられた宇宙探査機は、9年間も仕事をしてくれたのだ。それは、頑丈な構造と予備の燃料のおかげだった。その間に、3912の太陽系外惑星を含む、4500以上の確認済の惑星と惑星の候補を発見した。

特に重要なのは、Keplerが発見した惑星の多くが、地球と同じくらいの大きさの可能性があることだ。NASAの分析によれば、空にある恒星の20〜50パーセントは「小さな、おそらく岩石でできた惑星、それも表面に液体の水をたたえた、その恒星系の中で生命が存在可能な領域にある惑星」を周回軌道上に持っているという。実際に生命が存在する可能性もある。

Keplerは、さらに「最後の光」を撮影した後の数時間も、30秒ごとに指定したターゲットを記録し続けた。「Keplerの送信機の電源は切られ、もはや科学的情報を収集していませんが、これまでに蓄積されたデータからは、今後何年にもわたって有効な情報を引き出すことができるでしょう」と、Hawkesは書いている。

画像クレジット:NASA

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASA、太陽系外惑星1284個を発見

exoplanets

NASAは、ケプラー宇宙望遠鏡で作業している天文学者らが、1284個の新惑星を発見したと発表した ― これまでにケプラーで確認された惑星の2倍以上の数だ。事実、この新しい惑星グループは、これまで新たに検証された惑星グループとして最大である。

天文学者らは、ケプラー宇宙望遠鏡が2015年7月に収集した、4302個の惑星〈候補〉から成る惑星カタログの統計分析を行った。彼らは、候補のうち1284個が99%以上の確率で「惑星」の条件を満たすことを確認した。

これは、新たに確認された惑星のいくつかは、今後分析を進めた結果惑星ではなかった、という場合もあることを意味している。それでも、ほぼ確実に惑星とみられるものが、驚くほど多く同時に確認されたことに違いない。

Timeline of exoplanet discovery / Chart courtesy of NASA

太陽系外惑星発見の時系列記録/提供:NASA

分析が進めば、2015年7月のケプラー惑星カタログから、さらに多くの惑星が確認されるかもしれない。NASAは、1327の候補が「実際に惑星である可能性はある」が、追加研究に必要な99%の基準は満たしていないと言っている。

4302の候補群のうちの残る候補は、「何らかの天体物理現象である」か、他の手法で既に惑星として検証されている可能性が高い。

確認された1284惑星のうち、550個は地球のような岩石惑星でありうる大きさだ。ここからの話は結果が非常に楽しみだ。岩石惑星候補の9つは、属する恒星の「居住可能区域」内を周回している。これは、惑星が液体の水 ― われわれの知る生命に必要な成分 ― を保持できる表面温度を持つ可能性のある領域だ。

Illustration courtesy of NASA

居住可能区域、別名ゴルディロックスボーン/提供 NASA

この9つの特別な惑星を加え、岩石惑星の可能性が高く、それぞれの系で居住可能区域に位置する太陽系外惑星は、これで計21個が確認された。

Illustration of the Kepler space telescope / Image courtesy of NASA

Illustration of the Kepler space telescope / Image courtesy of NASA

科学者らは、この太陽系外惑星の「居住可能」カテゴリーに特に注目しており、それは生命の探求に最も適した場所だからだ。ケプラーが2009年3月に打ち上げられるまで、天文学者は宇宙の中で、地球型惑星はもちろん惑星がどの程度ありふれたものかを知らなかった。

「ケプラー宇宙望遠鏡ができるまで、銀河系の中で太陽系外惑星が稀なのかありふれているのか知らなかった。ケプラーや研究コミュニティーのおかげで、現在われわれは惑星の方が恒星よりも多いかもしれないことを知っている」と、NASA本部の天文物理学部門長のPaul Hertzは語った。

われわれの宇宙で新世界を発見することは、地球外生命の探求と密に結びついている。天文学者が太陽系外惑星は宇宙にたくさんあることを確認した今、エイリアン生命が存在する可能性はいよいよ高くなったようだ。

今後数年のうちに新たな宇宙望遠鏡が増えれば、天文学者は優れたツールとデータを得て、居住可能な地球型惑星と地球外生命の探求を続けることができる。

ケプラーは、地球サイズ以下の惑星を探す1回の天空観測で、15万個の恒星を監視する。ケプラー計画の主要目標の一つは、 恒星にとって、地球のような岩石惑星が周回していることが、どの程度ありふれているかを知ることだった。

NASAの次の太陽系外探査望遠鏡、トランジット系外惑星探索衛星は、2018年に打ち上げられる予定で、ケプラーから得た知見に基づき、20万以上の星の中からさらに地球に近い地球型惑星を探す予定だ。

そして同じ年のその後には、 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられ、天文学者は居住可能太陽系外惑星を研究し、表面に生命が存在する化学的特徴を探せるようになる。

この数年間で、科学コミュニティーは宇宙における惑星の出現頻度を想定するところから、確認された地球型世界で生命を探索するために、技術を投入し計画を進めるところまで来た。

新惑星群の正体を見極わめるまでには、まだ多くの努力が必要だが、今は宇宙を研究するには実に興味深い時である。特に天文学者や惑星科学者、そして次の質問の答を待っている人たちにとって:“Are we alone?”[われわれは宇宙で唯一の存在なのか?]

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook