GoogleのFuchsia OSは製品としてのオペレーティングシステムを目指していない?

GoogleのProject Fuchsiaは、今でもときどきテクノロジー関連記事で取り上げられる。Googleが新しいオープンソースのカーネルとオペレーティングシステムを開発するのはこれが初めてだから、人びとの関心は消えない。でもそれはきわめてオープンに開発されているから、秘密のようなものはほどんどなく、誰でもちょっと勉強すればPixelbookの上で動かせる。プロジェクトのドキュメンテーションも、たくさんある。

Bloombergの最近の報道によると、約100名のエンジニアがGoogleでFuchsiaを担当している。しかしこのプロジェクトは、GoogleのCEO Sundar Pichaiも正式に承認しているが、まだその位置づけがはっきりしない。Androidを置換する、という説もあるが、それはないだろう。それは、Chrome OSとAndroidをマッシュアップして一本化したオペレーティングシステム、でもないと思う。

むしろ、たぶんそれは、いくつかの新しいアイデアを試してみるための実験的なシステムだろう。将来、正式なプロダクトになるのかもしれないが、そのためにはもっと大きなチームと投資が必要なはずだ。あるいは、Google Homeなどのハードウェアに載るのかもしれない。そうなるとそれは、Googleが100%完全にコントロールできる組み込みOSになる。

Googleのような企業が次世代オペレーティングシステムに取り組んでいても不思議ではないし、重要なのはFuchsiaがAndroidやChromeOSと違ってLinuxのカーネルをベースにしていないことだ。FuchsiaのカーネルはZirconと呼ばれ、Googleのほかのオペレーティングシステムを動かしているモノリシックなLinuxカーネルと違ってマイクロカーネル方式だ。そして、新しいカーネルの構築は大仕事だ(それはGoogle自身の組み込みカーネル“littlekernel”(LK)プロジェクトをベースにしているらしいが)。

Microsoftも数年前から、マイクロカーネル方式の実験的なオペレーティングシステムプロジェクトSingularityに取り組んでいたが、それは結局立ち消えになったようだ。

でもこれらのプロジェクトの目的は、必ずしも最終製品を作って市場に出すことではない。それは、何らかの技術の可能性を探る実証的実験であったりする。そこで得られた結果が、既存のプロジェクトに役立つこともある。そこから、新しいパテントがいくつか得られることもある。それは、シニアエンジニアが好むタイプの仕事だ…Bloombergの記事はそれをほのめかしている。Bloombergが取材した某氏は、それは“シニアエンジニアのつなぎ留めプロジェクトだ”、と言っている。新しいオペレーティングシステムを本当に作るのなら、100名では少なすぎる。でもその100名は今、AppleやMicrosoftの仕事ではなく、Googleの仕事をしている。それは、Googleにとって良いことだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Linux、25歳の誕生日おめでとう

Linus Torvalds was the designer of the open-source operating system Linux.

Linuxは8月25日で25歳になる。Linus Torvaldsが新しいオペレーティングシステムへの協力を求める運命的メッセージを送った日だ。「386(486)AT互換機用に(フリーの)オペレーティングシステムを作っています(単なる趣味でgnuのように大きくてプロフェッショナルなものにはならないでしょう)。4月から作り始めて、そろそろ準備が整うところです。minixの好きなところ嫌いなところを教えてもらえたら幸いです。なぜなら私のOSはいくらかminixに似ているからです(例えば、ファイルシステムの物理的配置は(現実的な理由から)minixと同じです)」と、Torvaldsは comp.os.minix にメッセージを送った。後は、みなさんご存じの通りだ。

Torvaldsのメッセージで特に興味深いのは、みんなが興味をもって迎え、悪意のコメント等がなかったことだ。それはTorvaldsが、潜在ユーザーに見せられる製品を既に持っていたからだとも言えるが、1991年のインターネットが今とは全く違っていたことも思い出すべきだろう。

つい最近Linux Foundationは、Linux OSに関する詳細なレポートを公開し、そこには過去25年間のハイライトも載っている。それによると、プロジェクトが2005年にGitで公開されて以来、1300社、1万3500人のデベロッパーがカーネルの開発に寄与してきた。もっと面白いデータ?

「3.19から4.7リリースの間、カーネルコミュニティーは1時間当たり平均7.8件のパッチを発行して修正を加えた。この報告書の前の版に書かれていた7.71件からわずかに増えており、パッチの量は長期的に増加傾向を続けている」。つまりそれは、Linuxカーネルにはほぼ定常的にパッチが当てられていて、そうした修正はみな、インターネットのつながりを発展させることに専心する多くの有志プログラマーによってなされていることを意味している。

報告書全文はここで読むことができる。

今やLinuxは、訪問するほとんどのウェブサイトで走り、ガソリンスタンドのポンプからスマートウォッチまであらゆる物の中で動いでいる。Raspberry Piのおかげで、子供たちにプログラムを教えるにのも使われ、フランス警察が数百万ユーロ節約するのにも役立った。 何しろあのMicrosoftでさえLinuxのコードを公開しているのだから。勝てないなら、仲間になれ、だ。

Linuxの歴史をもう少し深く知りたい人には、”Rebel Code” と “Just For Fun” をお薦めする。この2冊はLinuxが有名になり始めた頃に発行され、Torvaldsの魅力的な逸話と、「大きくてプロフェッショナル」でない側面が描かれている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

コンテナを超えてマイクロサービス技術の広い世界を目指すDockerがUnikernel Systemsを買収

docker_whale_dockerconeu

Dockerが今日(米国時間1/21)、Unikernel Systemsの買収を発表した。この、イギリスのケンブリッジのスタートアップは、unikernel(ユニカーネル)の普及を目指している(少なくとも、デベロッパに対する普及を)。

Dockerは、同社のツールやサービスにユニカーネルのサポートを統合する計画だ。最近の同社は、デベロッパがさらに効率的なマイクロサービスアーキテクチャを構築できるための、コンテナ以外の技術にも着目し始めている。買収の価額は公表されていない。

ユニカーネルとは、オペレーティングシステムを最小限ぎりぎりまでそぎ落として、特定のアプリケーションだけを動かす、というものだ。それ以上のものでも、それ以下のものでもない。アプリケーションが必要とするライブラリも、コンパイルしてオペレーティングシステムのカーネルに置く。

[ユニカーネルによる隔離と専門化]
specialisation

アプリケーションがその上で動くマシン(仮想マシン)は極端に小さく、かつ、高速になり、通常のオペレーティングシステムのようなセキュリティの問題が少ない(攻撃を受け入れるインタフェイス〜入り口がほとんどない)。

そのため、ユニカーネルはセキュリティと効率が重視されるアプリケーションに向いている(セキュアであるべき政府のシステム、リアルタイムのトレーディングプラットホーム、IoTのアプリケーションなど)。

Dockerはなぜ、ユニカーネルに関心を持ったのか? DockerのファウンダでCTOのSolomon Hykesによると、確かにこれは、Dockerが行った買収の中では“いちばん分かりにくい”ものかもしれないが、しかし同時に、彼らにとっては、これまででもっともエキサイティングな買収なのだ。

Unikernel Systemsの13名のチームは、その多くが、Xenハイパーバイザーを手がけたデベロッパだ。Unikernel Systemsはユニカーネルのエコシステムと、そのオープンソース部分に対する、主要な貢献者だ。Hykesによると、Dockerもそのコミュニティへの貢献は積極的に継続していく。

この買収により、Docker自身も大量の深い技術的知識をユニカーネルの世界に持ち込むことになる。“Dockerプラットホームがスタックのずっと下の方〔カーネルレベル〕でも問題解決に向けてきわめてアグレッシブであることを、お分かりいただけるだろう”、とHykesは述べる。“今回の買収はわれわれに、これらの問題を解決するための、さらに多くの能力を与える”。

でもそれは、この買収のひとつの側面にすぎない。Dockerといえば誰もが“コンテナ”を連想するが、しかし同社自身はDockerをコンテナに限定されないエコシステムと考えているようだ。その見方に立てばDockerは、マイクロサービスを推進する中心的な力であり、したがってユニカーネルの採用も、きわめて論理的な次のステップだ。

コンテナによってデベロッパは、“小さいことの味を知った”、とHykesは語る。彼のこの見方では、ユニカーネルは、ペイロードをVMからコンテナへ、コンテナからユニカーネルへと縮小していく路線の上にある。

しかし彼は、それが必ずしも、後者が前者を置換する過程であるとは考えていない。ユニカーネルの利用には、トレードオフが伴う…主に互換性やツールの部分で。Dockerは近い将来、同社独自のツールにユニカーネルのサポートを統合する計画だ。“誰も求めていないのは、三つの完全にばらばらなツール集合だ”、と彼は指摘する。“これはVM用、これはコンテナ用、そしてこれはユニカーネル用、なんてね”。

実は、昨年のDockerCon Europeで気づいた方もおられるかもしれないが、そのときからユニカーネルはすでにDockerの予定表に載っていた。Dockerはある短いデモで、同社のツールを使ってユニカーネルのデプロイメントを管理する例を見せたが、そのデモをステージ上で行ったのは、Unikernel SystemsのCTOで、MirageOSのプロジェクトリードAnil Madhavapeddyだった。MirageOSは、ユニカーネルを構築するための、オープンソースのライブラリオペレーティングシステムだ。

 

参考記事。〕

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。