ランサーズがパーソル、新生銀行から10億円を資金調達——派遣や融資など、働き方を広げる新サービスも

クラウドソーシングサービスの「Lancers」などを提供するランサーズは12月18日、総額約10億円の資金調達と資本業務提携の締結を行ったことを発表した。第三者割当増資の引受先はパーソルホールディングス(旧テンプホールディングス)と新生銀行

米UpworkとFreelancers Unionの発表によれば、2017年現在の米国のフリーランス人口は5730万人で、2027年にはフリーランス人口が過半数を超えると予測されている。また、ランサーズの調査では、日本のフリーランス人口は1122万人。前年比で5%の増加を示しているという。

ランサーズでは、雇用・非雇用の境界が曖昧になり、両者の間を自由に行き来する時代が今後来る、として、ネットによる請負業務のマッチングを行うLancersから、スキルのシェアリングやより専門性の高いタレントの準委任契約などへサービスの範囲を広げている。今回のパーソルグループとの業務提携により、この動きをさらに推し進め、派遣契約や雇用契約の仕事を含めた多様な働き方の選択肢を提供していく、としている。

また、働き方の選択肢が広がることで、働き手に「信用力の担保」や「金銭面の安定」などの課題が生じるとして、新生銀行との業務提携により、まずは金融ニーズに応える融資サービスを開発・提供していくという。ランサーズにおける仕事の実績と評価データによるスコアリングを行い、与信情報を生成。設備投資や学習費用などの投資に対応した融資サービスを提供し、フリーランスの活動を費用面でサポートしていく考えだ。

さらに今後の展開についてランサーズでは、タレントスコアによる個人の評価経済を構築し、横断的な働き方の実現につなげていく、と述べている。タレントスコアを活用して”個人の信用力”の査定を行うことで、経済圏モデルの展開へ繋げ、自由な働き方が選択できる土壌を作る、としている。

機械学習によるマッチング精度向上、新事業の展開──ランサーズが新成長戦略を発表

クラウドソーシングサービス「Lancers」を提供するランサーズは4月19日、新成長戦略「Open Talent Platform(オープン・タレント・プラットフォーム)」構想を発表した。スキルを持った個人(タレント)と仕事を効率的にマッチングさせ、生産性の向上を目指すこの構想でランサーズは、独自テクノロジーとAIによる高精度のマッチングを基盤に、既存のクラウドソーシング事業の強化に加え、デジタルマーケティング支援事業「Quant(クオント)」、オフラインでのスキルシェアリングサービス「pook(プック)」を3本柱として展開していく。

機械学習でスキルと仕事のマッチング精度向上を目指す

ランサーズは、4月から京都大学大学院 情報学研究科 知能情報学専攻の集合知システム分野(鹿島研)と産学協同研究を開始。機械学習によって、ランサーズが持つ「個人の働くデータ」を解析し、スキルや仕事のマッチング精度を向上させる仕組みづくりに取り組む。

オープン・タレント・プラットフォームは、これら研究の成果と、これまでのクラウドソーシング事業で蓄積された仕事やフリーランス個人に関わるデータをAIや機械学習で解析し、スキルや仕事のマッチングを行う独自のテクノロジー「LANCERS SMART DATA TECHNOLOGY(ランサーズ・スマート・データ・テクノロジー)」を核として展開される。

デジタルマーケティング支援事業は新会社クオントとして独立

これまで法人向けサービス「Lancers for Business」で提供されてきた、クラウドソーシングを活用したデジタルマーケティング支援事業は、ランサーズの100%子会社クオントとして独立。オープン・タレント・プラットフォームの一翼を担う事業として強化されることとなった。

新会社では、従来“Quant”の名称で提供されてきたコンテンツマーケティングとクリエイターマネージメントシステムのほか、マーケティング企画・戦略構築を行うデジタルマーケティング支援、マーケティング活動を支える制作・運用・分析・改善提案をクラウドソーシングで構築する事業の3つのサービスを行うという。

位置情報を活用したオフラインのスキルシェアサービス「pook」

クラウドソーシングサービスLancersでは従来、デザイン制作やWeb制作、システム開発、ライティングなど、オンラインで完結する業務とフリーランスをマッチングしてきた。今回、新たに加わるスキルシェアリングサービスpookは、パーソナルトレーナーや家事代行など、オフラインで提供されるスキルをマッチングする事業だ。

pookではスキルを持つ個人と、サービスを受けたい個人が、サービス依頼から実際の決済までをスマホで行い、スマホの位置情報とチャットを利用して「会えない・来ない」トラブルを防ぐという。pookは6月にβ版リリースが予定されていて、現在、サービス依頼者とフリーランス双方の事前登録を受け付けている。

専門スキルを持つフリーランス向けサービス「Lancers Top」

ランサーズの中核、クラウドソーシング事業でも、新しいサービスが発表された。今年の夏にローンチが予定されている「Lancers Top」は、専門スキルを持つフリーランスのエンジニア・クリエイターを対象にしたプレミアムサービスだ。こちらも現在、フリーランスの事前登録受付が行われている。

掲載される案件は単価を保証する形での完全非公開制。フリーランスの登録には審査が設けられており、実践スキルテストや面談で選抜され、認定されたトッププレイヤーが業務を担当する。また、案件を掲載するクライアント企業に対しても登録審査が設けられ、信頼できるクライアントとの仕事のみがやり取りされるという。

 

ランサーズでは、オープン・タレント・プラットフォーム構想の発表とともに、コーポレートロゴとコーポレートサイトを刷新。新ビジョン「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」のもと、これらの取り組みを通してグループ全体で成長をさらに加速させていくとしている。

今回、新事業として発表されたデジタルマーケティング支援については、大手広告代理店やスパイスボックスなどの専業プレイヤーがひしめいている分野だし、オフラインでのスキルマッチング事業でもココナラの「ココナラ」やストリートアカデミーが運営する「ストアカ」、ランサーズと同じくクラウドソーシングサービスを展開するクラウドワークスの「WoW!me(ワオミー)」などが先行している。また家事代行などの各ジャンルごとに専業サービスが提供されている分野だ。既存のクラウドソーシングとの相乗効果やAI・機械学習によるマッチング精度の向上で、どれだけこうした先行者に食い込むことができるのだろうか。

ランサーズがライター特化のポートフォリオを公開、「WEBライティング技能検定」の是非も聞いてみた

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クラウドソーシングサービス「ランサーズ」を手がけるランサーズが続々新サービスをリリースしている。3月30日には、配信したメールマガジンをウェブコンテンツ化することでコンテンツマーケティングを実現する「Propag(プロパグ)」を公開。4月19日には、個人のスキルを売買するマーケットプレイス「ランサーズストア」を公開している。そして4月25日には、ライター向けのポートフォリオサービス「Quant(クオント)」を公開した。

ライター1300人のポートフォリオを掲載

Quantはランサーズの社内ツールとして活用してきたツールをベースにした、ライター向けのポートフォリオサービスだ。ローンチ時点ではランサーズ上で活躍するトップクリエーター(ライター)1300人のポートフォリオを掲載する。サービスの利用は無料だが、クリエーター登録にはランサーズのIDを取得の上、ランサーズ側での審査に合格する必要がある。

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ポートフォリオのイメージ

サイト上では、クリエーターが登録するプロフィールや実績のほか、オーディエンスデータやエンゲージメント、ソーシャル拡散といった指標をランサー単位で表示できる。このポートフォリオは、ランサーズの法人向けサービスである「ランサーズ for Business」を利用する企業に無料提供される。

最近では朝日新聞社によるサムライトの買収などもあったが、クラウドソーシングを使ったコンテンツマーケティングのニーズはまだ増加中だとという。少し前の資料だが、ランサーズでもコンテンツ制作に関する依頼は2015年4月から11月の半年で4倍に伸びているという発表(実数は非公開)をしている。

そこで求められるのは、自分たちのマーケティングのために最適なコンテンツをどう作るかということ。Quantを利用すれば、例えば「旅行系の記事で30代の女性に対するソーシャル拡散や読了率が高い人」なんて条件で最適なライターを見つけることができるとしている。

実際この1300人はクライアントからの評価も高く、その結果高単価で仕事を受注しているのだそうだ。「単価は公表していないが、プラットフォーム上でやり取りされている金額の3〜5倍程度の金額で受注している」(ランサーズ)とのこと。

WEBライターの検定資格についても聞いてみた

ポートフォリオ自体は質の良いライターに仕事が回る仕組みでポジティブなモノだが、このタイミングで「クラウドソーシングで働くライター」と聞くと、最近ソーシャルメディアで話題になった「WEBライティング技能検定」の話にも触れざるを得ない。

1週間ほど前にいくつかのブログでこのWEBライティング技能検定の教材の品質に問題があるのではないか、また検定を受けるまでに4万円以上の費用がかかるのは高すぎるのではないか、ということが話題になった(実際に問題集を購入した方のブログ「Webライターとして生きる」などに詳しい)。例えば、「一次ソースの『ソース』の意味を答えよ」という内容の4択問題の選択肢の1つに「つけ汁のこと」という、おおよそ間違いようもないようなトンデモな内容が含まれていたりするのだそう。また検定の解答速報(筆記問題のみ)や例題はCPAJのサイト上で閲覧できるが、一例を挙げると「ハンドメイドについて240 文字以上300 文字以内で記述してください」といったもので、テーマと文字数を設定しただけの“作文”だったりする。そんな検定を主催しているのは一般社団法人 日本クラウドソーシング検定協会(CPAJ)。その理事の1社がランサーズなのだ。

この検定にまつわる騒動についてランサーズに尋ねたところ、「検定内容の制作に携わっておらずコメントできない」「協会の理事を務めるため、協会の公式見解が出るまで発言できない」とのことだった。そこでCPAJにも直接コンタクトをとってみた。

CPAJでも今回の騒動については把握をしているという。代表理事の南雲宏明氏はブログ等で指摘された内容が検定の教材であるとした上で、「半年かけて真剣に作ってきた。内容には自信がある」と語った。だが、先ほどの“つけ汁”のような選択肢が含まれた問題だって存在するわけだ。その点については「たまに関係のない、クスッとなる選択肢を入れて試験に飽きさせないようにする意図もあった」「個人的には誤解を招くような問題はなくすように至急動いていく」(南雲氏)とした。また価格については、「試験料や資格発行料など、(販売元である)ヒューマンアカデミーと決めた。一般の資格に準拠している」と説明した。

そもそも、この検定はすでにライターとして活躍している人ではなく、クラウドソーシングを通じてライティングに挑戦しようとしている入門者向けのものだと考えているという。実際、検定を採点するとほぼ満点を取る人か、半分ほどしか正解しない人に二分されるのだそうで、ライティングの知識がある程度あれば満点に近い点数を取れるような内容なのだそうだ。南雲氏はブログなどで指摘した人たちはそういった知識がある人たちだったのではないかとした。この検定はそんな人に向けたものではないということだろう。

また「技能検定」という名称が付いているが、これが職業能力開発促進法で定められた検定の為の名称ではないかともソーシャルメディア上で指摘されていた。これについては「今回の話以前から確認しているが、各所で『民間資格』とうたっているので問題ないという認識。ただしあまりに誤解を招くようであれば(名称変更を)検討したい」としている。

「色んなご意見があると思うが、関係者や各理事にもチェックを頂き、ヒューマンアカデミーとも立て付けを検討した。クラウドソーシング業界は慢性的に人が足りない。たくさんの人にクラウドソーシングのあり方を知って頂きたいというのがもともとの趣旨」(南雲氏)

ランサーズとアイレップが提携、クラウドソーシングを使ったコンテンツマーケ支援事業

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クラウドソーシングサービスを展開するランサーズとマーケティングエージェンシーのアイレップは6月8日、コンテンツマーケティング領域での業務提携を締結した。2社は共同でコンテンツマーケティング支援サービス「ONE CUSHION(ワンクッション)」を提供する。

ONE CUSHIONは、ランサーズに登録するライターに対して試験を実施して、人材を選抜。試験に合格したライターに限定してクライアントワークを発注することで、クライアントは品質の高いコンテンツをもとにしたコンテンツマーケティングを実現できるというもの。ライターのアサインやディレクションをランサーズが、クライアントとのコミュニケーションや最終的な校正等をアイレップが担当する。

このONE CUSHION、もともとランサーズ、アイレップがそれぞれ今まで提供してきたサービスの強みを組み合わせたモノだという。

企業がオウンドメディアを立ち上げるなどして、コンテンツ(記事など)をフックに、消費者や顧客との関係性を築くことを指すコンテンツマーケティング。ランサーズ上にはこれまでもコンテンツマーケティングに向けた記事作成——1記事数十円〜数百円という、価格重視で品質を問わないモノかから、特定分野に特化したライターでないと書けないような比較的高単価のものまで——の依頼は数多くあったし、例えば「金融」といったテーマに特化した記事作成に特化したメディアにライターのリソースを提供するといった法人向けのビジネスも行ってきているのだそうだ。

またこれまでSEMや広告運用などを通じて企業のマーケティング支援をしてきたアイレップでは、2年ほど前から編集プロダクション(編プロ)などライターを束ねる企業と組み、コンテンツマーケティング事業を進めてきた。

アイレップが事業を進める中で課題を感じていたのは、コンテンツの品質。例えば著名な編集プロダクションと組んでも、その品質は実際に記事を書くライター個人の能力によって左右されるため、「ライターのアサイン状況次第では満足できない結果になっていた。ライターの高度な標準化が必要になった」(アイレップ取締役の下山哲平氏)という。その解決策として、同社では社内で編集・校正の機能を持つようになったのだという。

だが最終的な品質のチェックを社内でするのであれば、編集機能のある組織と組むよりも、クラウドソーシングようにライターが集まるプラットフォームと組む方が安価なわけだ。そんなことから複数の事業者と話し合いを進め、今回のランサーズとの提携に至ったのだそう。「(クライアントから来た)案件をそのままプラットフォームに投げるのではなく、間に入ってクライアント、ライターの両方とコミュニケーションをとるディレクターが必要。そこに投資をし、注力しているのがランサーズだった」(下山氏)。

 

クラウドソーシングの基盤をオープン化するランサーズの狙い、そして課題

既報のとおりクラウドソーシングサービス「Lancers」を手がけるランサーズが8月12日に新事業戦略発表会を開催した。この発表会でランサーズは、2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額が49億円、契約金額が4億5000万円、さらに会員数は36万6000人、クライアント社数は9万1000社と実績を公開した。また同時に、パートナー企業が同社のクラウドソーシングサービスのプラットフォームを利用できるようになる新サービス「Lancers Open Platform」を発表した。

Lancers Open Platformでは、ランサーズが保有する36万6000人(2014年8月時点)の会員データを外部のパートナー企業に公開する。パートナー企業はランサーズの会員をディレクションして、独自にクラウドソーシングを活用したサービスを提供できる。

当初はイノーバ、サイバーバズ、ByThink、サムライト、KoLabo International、八楽、BIJIN&Co.、LOCUS、インフォテリア、ファストメディア、デジタルステージ、オルトプラス、サテライトプラスの計13社がパートナーとなり、コンテンツライティングや翻訳、動画制作といった事業を展開する。

またパートナーのうちサイバーバスやBIJIN&Co.、KoLabo Internationalなどは、自社が抱える会員に対して、ランサーズ経由での発注ができるようなスキームも作るとしている。

ランサーズでは2014年内に100社までパートナーを拡大する予定。また2015年以降にはパートナー数の制限を取り払い、すべての企業にAPIを提供するとしている。

ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏は、2008年にスタートしたLancersは日本初のクラウドソーシングサービスであると説明(追記 8月13日11時15分:記事公開後に「サイトエンジン(当時はアルカーナが運営)のアポロンのほうがサービスとしては先ではないか?」というツッコミが入った。ランサーズは2008年12月、アポロンは2008年9月の開始だ。ただしアポロンはすでにサービスを停止している。ちなみにKAIZEN Platform CEOの須藤憲司氏がリクルート在籍時に手がけていたC-teamも2008年9月の開始なので、厳密には「サービスが現在も提供されており、かつさまざまな仕事に対応するクラウドソーシングのプラットフォーム」という意味では日本初ということになる)。登録するユーザーがチームを組むことで大型案件にも対応する「Lancers マイチーム」を2013年末から提供しているが、現在「(月額で)500%成長」と好調ぶりをアピールした。

ランサーズの期待、そして課題

秋好氏は自社の好調ぶりを語ったが、クラウドソーシング市場全体の成長も間違いないものだろう。説明会でも、矢野経済研究所の資料をもとに「2018年には1800億円超の市場規模に成長する」という予想が紹介された。だがランサーズに課題がないわけではない。

秋好氏によると、直近の月額契約金額は2億円を超える見込みとのことだが、流通金額(仕事の案件総額。4-6月で49億円)に対する契約金額(実際の成約金額。4-6月で4.5億円)は決して高いとは言えない。

説明会ではその点について記者からの質問がなされており、オープン化の詳細を説明した取締役COO事業開発部長の足立和久氏も、課題として認識している旨を答えている。ただこれはLancersに限らず、オンラインで要件定義からディレクションまでを完結するクラウドソーシングサービスそのものの課題でもある。今回のオープン化で提携企業がきっちりとディレクションに入るのであれば、解決できることもあるはずだ。

また社外を見てみると、競合と言われるクラウドワークスも急速に成長している。直近ではリクルートグループとの資本業務提携を発表した同社だが、流通総額(ややこしいのだけれど、クラウドワークスの言うところの流通総額とは実際の成約金額のことだ)は年間20億円規模とも5月に報じられている。僕が直近に複数の関係者から聞いたところでは、すでに月額の成約金額ベースでランサーズとほぼ同等だという話も聞く。

秋好氏は説明会で「2008年からビジョンは変わらない。時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」と語った。ランサーズでは、Lancersを2020年に1000万人が利用するプラットフォームに成長させるという目標を掲げている。


ランサーズ、2014年第1四半期の契約金額は4.5億円

クラウドソーシングサービスのランサーズが8月12日に自社の戦略説明会を開催した。同社はその中でクラウドソーシングのプラットフォームをオープン化する「Lancers Open Platform」を発表した。
プラットフォームの詳細は後ほど紹介するとして、同社が公開した数字をまず紹介したい。
同社の2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額は49億円、契約金額(実際に発注者と受注者との間で仕事が成約した金額)は4億5000万円だという。
同社が契約金額を公式に発表したのは今回が初めて。直近では月額2億円規模になる見込みだそうだ。また会員数は36万6000人、クライアント企業数は9万1000社となる。


ランサーズがKDDIと手がけるのは「IT」と「非IT」をつなぐクラウドソーシング

オンラインで不特定多数の人に業務を発注できるクラウドソーシング。その多くはデザインやプログラミング、ライティングなどオンラインに閉じた業務がほとんどだ。

その取り組みをオフラインの業務まで拡大するのが、4月7日よりランサーズとKDDIが取り組む「ランサーズプレイス」だ。

このランサーズプレイスでは、工事や引っ越し、印刷など、リアル領域の業務をクラウドソーシングで展開する。すでに、KDDIの法人向けプログラム「KDDIまとめてオフィス」を展開する営業部隊が、顧客企業向けにランサー(受注者)としての登録を案内。ランサーズにてその申し込みをアクティブ化しているという。また同時に、発注者としてのニーズをヒアリングしている。今後は個人、法人を問わずに受注者の登録を拡大していく。当面はベータ版として運用し、10月にも本サービスを開始する。2014年度10万件の案件掲載を目指す。

「クラウドソーシングの本質的な価値はネットで完結すること。つまりITありきだった。そのため非ITの領域にはリーチできなかったが、そこにリーチできるようになるのが強み」——ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏は今回の取り組みについてこのように語る。

KDDIの法人営業としては、顧客企業からの細かなニーズのすべてをサービスとして自社で提供することが難しい。そんな課題に対して顧客同士をクラウドソーシングでマッチングすることで解決したいというニーズもあったそうだ。

また同時にランサーズでも「たとえばこれまでランサーズでデザインを作っても、それをプリントする印刷会社までをつなげることができなかった」(秋好氏)というように、ITと非ITをつなぐソリューションがないままで、この溝を埋めたいという思いがあったという。

「リアル」ゆえの課題も

ただ一方で課題もある。KDDIまとめてオフィスの顧客企業には、ITリテラシーのあまり高くない中小企業も少なくない。秋好氏からは、KDDIの営業部隊に対して「クラウドソーシングとは何か」というところを理解してもらうまでにも時間がかかったという話も聞いた。そういう環境で、果たしてクラウドソーシングをどこまで利用してもらえるのだろうか。実際、KDDIの営業部隊が顧客からもらった紙の申し込み資料をランサーズがアクティベーションする時点でも説明が必要なケースが多々あるという話も聞いた。

しかしランサーズビジネス開発部の小口展永氏によると、クローズドベータ版の段階で、都市部については比較的ユーザーが集まっており、地方でも徐々に成功事例が出てきているという。「中小企業ではアウトソーシングができないと思っていた人が多い」(小口氏)とのことなので、潜在的なニーズをいかに顕在化できるかという点こそが成長の課題になってきそうだ。


ランサーズで組織単位の受注が可能に、仕事の幅が広がる「マイチーム」機能

クラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」は12月20日、オンライン上で作成したチームで仕事を受注できるサービス「ランサーズマイチーム」を開始した。国内のクラウドソーシングではこれまで、発注者と受注者で仕事をやりとりするのが主流だったが、オンライン上でチームを作って仕事を受注できるのは日本初だという。

例えば「デザインだけは自信がある」という人が、エンジニアやライター、ウェブディレクターと一緒にチームを作ることで、ホームページやアプリ開発など自分の専門外のスキルが必要な仕事を受注できる。発注者側としては、複数のスキルを要する仕事や、1人の受注者では難しかった規模の大きな仕事を依頼できるのがメリットだ。

チームはプロジェクト単位で作り、知り合いだけでなく、面識がない人も招待できる。仕事はチームを作成したリーダーが発注者に提案し、受注した場合はメンバー全員が報酬金額に同意してからスタートする。納品完了後は、発注者が事前にランサーズに仮払いした報酬金が自動的に各メンバーに支払われる。メンバーはメッセージやファイルをランサーズ上でやりとりして仕事を進めていく。

ランサーズによれば、当面は知り合い同士でのチーム結成が多いと想定しているが、チームでの仕事の実績が増えるに連れて、海外に住む見知らぬ人とチームを組むようなケースも出てくると見込んでいるのだという。


出版特化型クラウドファンディング「ミライブックスファンド」がローンチ

ワンモアと大日本印刷(DNP)が5日、出版に特化したクラウドファンディングサイト「ミライブックスファンド」を公開した。クラウドファンディングサービスを手がけるワンモアと、出版物を制作するDNP、出版取次会社が協力し、出版に必要な企画立案から資金調達、流通、制作までに至るプロセスをワンストップで提供する。

出版者(出版社ではなく個人やチーム)は、出版物のテーマやストーリー、必要な資金と募集期間、支援者へのリターンの内容などプロジェクトの詳細をサイト上で告知し、購入希望者による支援を呼びかける。募集期間内に必要な資金が集まれば、支援者へ所定のリターンを提供する。出版者は集まった資金の20%を手数料として支払う。

リターンはプロジェクトによって異なるが、コアなファン向けに限定本を提供したり、新人作家の出版などのプロジェクトに対しては、支援者の名前入りの書籍をプリントオンデマンドで制作したり、限定フィギュアを3Dプリンターで制作したりすることを想定しているのだという。

第1弾プロジェクトとしては、クラウドソーシングサービスを運営するランサーズが、特定の企業に所属せずに働くフリーランスの活動を紹介する書籍を出版する。取材や書籍カバーデザインなどの制作者についてはクラウドソーシングをフル活用し、ランサーズ上で募集する。

プロジェクトの募集期間は12月5日から1月23日まで。目標金額は300万円で、支援金は500円から100万円まで受け付けている。リターンは、完成した書籍への広告掲載や出版パーティー参加権などを用意している。

出版に関するクラウドファンディングといえば、絶版漫画の配信サービス「Jコミ」が作品のPDFセットなどを販売する際に利用しているが、「出版の企画から流通、制作までを一気通貫で手がける出版特化型のクラウドファンディングは日本初」(ワンモア)。ミライブックスファンドでは2015年度までに100件のプロジェクト実現を目指す。

出版者としては、出版物の企画段階からサイト上でプロモーションができるため、出版に伴うリスクを低減できることがメリット。また、取次の協力があるため、書店や電子書籍ストアでも販売されるのも自費出版と異なるところだろう。その一方、販売力のある大手出版社の書籍と異なり、書店でどれだけ売れるかは未知数だ。


ランサーズの次なる一手は「社会人スキル」育成、ベネッセと提携で無料診断アプリ

クリエイターやエンジニア、ライターといったフリーランスに仕事を発注するクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」が15日、通信教育大手のベネッセと提携し、「社会的スキル」を診断する無料サービスを開始した。コミュニケーション能力やチームワーク力などのスキルを“見える化”することで、Lancers会員のキャリアアップを支援する。ベネッセはLancers会員の社会人との接点を持つことで、小中高生が中心の顧客基盤を拡大する狙いだ。


Lancersの特設サイトで質問に答えることで、「コミュニケーション」「バックアップ」「チーム志向」「モニタリング」「リーダーシップ」といった5分野のスキルを診断できる。質問は「自分からお手本を見せて指導する」「仕事が終わらないメンバーがいたら手伝う」といった合計72問を用意していて、「まったくない」から「とてもそうだ」までの6段階を選んでいく。

ちなみに、スキルの診断結果はLancers上には公開されないので、「背伸び」して答えて診断結果を良くしようとする必要もない。Lancersはスキルの診断結果に応じて苦手分野が同じ人が集まるSNSを公開していて、そこで成功・失敗体験談を共有したり、今後は能力を向上させるために適切な書籍(ベネッセ以外の書籍も含む)をレコメンドしていきたいのだという。

Lancersはこれまでも、デザイナーやエンジニアの登録会員に対して、IT関連の技術スキルがわかるテストを無料提供していて、合格した会員には、マイページでそのスキルを表現できるようにしている。今回のベネッセとの提携では、ITスキルとあわせて、クラウドソーシングで仕事をする上で必要だという「社会人基礎力」を会員に把握してもらいたのだと、ランサーズビジネス開発部部長の酒井佑介氏は説明する。

ベネッセとの提携は、クラウドソーシングでの発注の変化を見据えた戦略でもある。Lancersでは主に、発注者と受注者が1対1で仕事のやりとりをしているが、将来的には複数人で構成されるチームに仕事を発注するケースが増えると、酒井氏は見ている。例えば、ホームページ制作を発注する場合、Lancers上でディレクター、ライター、デザイナー、コーダーからなるプロジェクトチームを組むようなイメージだ。「お互いが非対面で仕事をするクラウドソーシングだからこそ、コミュニケーション能力やチームワークが必要になる」(酒井氏)。