一般的なAIモデルを10分の1に圧縮できるというLatent AIが約21億円調達、IoT、エッジAIへの活用に期待

およそ1年前、TechCrunchのBattlefieldコンペティションの最中に、Latent AI(レイテントAI)がひと握りの投資家たちに向けてプレゼンを行った。Latent AIはカリフォルニア州メンローパークに拠点を置く現在3歳の企業だ。同社はそのコンペティションでは勝つことができなかったが、その後他の投資家たちからの興味を惹きつけることに成功した。同社はこのたび、Future VenturesとBlackhorn Venturesが主導しBooz Allen、 Lockheed Martin、 40 North Ventures、Autotech Venturesが参加したシリーズA資金調達で、1900万ドル(約21億円)を調達した。これで同社は、合計で2250万ドル(約24億9000万円)を調達した。

支援者たちは、何に対して資金提供を行っているのだろうか?同社は、ハードウェアの制約やエッジデバイスに通常見られる安価なチップに影響を受けず、エッジAIニューラルネットワークをトレーニング、適応、展開するように設計されたソフトウェアを開発しているという。また、環境や運用状況に基づいて、電力を節約し必要なものだけを実行できる「注意メカニズム」のおかげで、精度を大幅に落とすことなく、一般的なAIモデルを10分の1に圧縮できるのだともいう。話はそこで終わらず、そのソフトウェアの利用者(エッジデバイスの開発者)が、ほぼ待ち時間ゼロですべてを実行できることを約束している(「待ち時間=レイテンシー」がゼロになるというところから会社名が来ている)。

ベテランの投資家でFuture Venturesの共同創業者のSteve Jurvetson(ステーィブ・ジャーベットソン)氏が、考えられる応用について語っている。「防犯カメラや家電製品の中で顔検出アルゴリズムがローカルに動作したり、Siri(シリ)のような音声インターフェースがネットワークに接続されていなくても瞬時に動作したりすることを考えてみてください」。

確かに、Latent AIが開発している種類の技術を必要としている市場は成長している。実際、さきほど行ったインタビューで、共同創業者でCEOのJags Kandasamy(ジャグス・カンダサミー)氏は、詳しく語ることは拒んだものの、Booz Allen(ブーズ・アレン)氏のような戦略的投資家のおかげもあって米国政府がすでに顧客であることを示唆した (2021年7月のプレスリリースに掲載されたブーズ・アレン氏のLatent AIへの投資に関する記事の中で、とある政府サービス機関のSVPが「データを収集、分析、迅速に処理する能力が米国の国防戦略の中核である」と述べている)。

また別の戦略的投資家であるLockheed Martin(ロッキード・マーティン)は、米軍の陸、海、空、宇宙、サイバー、電磁スペクトルの各ドメインにわたる状況認識を改善するために役立つAIテクノロジーを見つけることに強く焦点を当てているため、同スタートアップへの魅力を簡単に理解できる。

カンダサミー氏はまた、とあるスキーメーカーが、Google Glass(グーグルグラス)のような拡張現実ゴーグルでLatent AIの技術を使用していることについて語り、Latent AIが消費者マーケットでもチャンスを探っていることを示唆した。

もちろん、現在世界がデータ収集デバイスで溢れていること、そしてそのデータを遠くのクラウドとの間でやり取りすることなく実行可能にすることに大きな関心が寄せられていることを考えると、Latent AIと同じ目的を持つ企業やプロジェクトは多い。その中の代表的なものには、TensorFlow(テンソルフロー)のようなオープンソースツール、Xilinx(ザイリンクス)のようなハードウェアベンダー、 OctoML(オクトML)やDeeplite(ディープライト)のようなライバルのスタートアップがある。

カンダサミー氏は、それらのすべてが、何らかの形で不足しているのだと主張している。TensorFlowについては、それを利用する開発者は、本番環境へのデプロイに関してはコミュニティのサポートしか受けられないと彼はいう。世界のチップメーカーについては、彼らは自分たちのハードウェアに焦点を合わせていて、垂直統合されていないという。ではその他のライバルたちはどうだろう?彼らは、圧縮またはコンパイルのどちらかに焦点を合わせていて、両方に注意を向けてはいないとカンダサミー氏はいう。

いずれにせよ、Latent AIには、投資家が好むような裏話がある。連続起業家のカンダサミー氏は、その最後のスタートアップをAnalog Devices(アナログデバイシズ)に売却した後、2018年にSRI International(SRIインターナショナル)の客員起業家(EIR、entrepreneur in residence)となった。そこで彼はすぐに、同研究機関の技術ディレクターを10年近く務め、低電力高性能コンピューティング、コンピュータービジョン、そして機械学習を専門とするSek Chai(セック・チャイ)氏によって開発された技術に驚かされた。その後すぐに、カンダサミー氏はチャイ氏にLatent AIの創業を促し、存在する障壁を取り除き始めた。

さて、こうして新たな資金と、少数ではあるが増えつつある顧客(サブスクリプションベースでツールアクセスし最終的にはオンプレミスに展開を行う)を前にして、Latent AIに突きつけられた問は、現在の15人の体制が現在および将来のライバルに先んじるために、十分な力と速さを持っているのかということだ。

ジャーベットソン氏は、もちろん同社が良い位置にあると考えている。彼は、SRI Internationalの諮問委員会メンバーを10年以上務めており、Siriのような多くのテクノロジーが開発され、組織からスピンアウトされるのを見てきた。

「これは私が投資した唯一のものです」と彼はいう。

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画像クレジット:NicoElNino/Getty Images

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(文: Connie Loizos、翻訳:sako)

自動車、通信業界などが大きな関心を寄せるエッジAIの効率を高めるLatent AIの技術

SRI International(SRIインターナショナル)からスピンアウトしたスタートアップのLatent AI(レイテントAI)は、必要に応じてワークロードを動的に管理することで、エッジ(システム末端)でのAIワークロードの実行を容易にする。

Latent AIは、独自の圧縮技術およびコンパイルプロセスを使用して、ライブラリファイルを10分の1に圧縮し、他のシステムに比べて5分の1の待ち時間(レイテンシ)で実行させることが可能だという。同社は米国時間9月15日開催のTechCrunch Disrupt Battlefieldコンテストに出場しお披露目する。

CEOのJags Kandasamy(ジャグス・カンダサミー)氏とCTOのSek Chai(セク・チャイ)氏が設立した同社は、Future VenturesのSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏が率いてAutotech Venturesも参加した以前のシードラウンドで、すでに650万ドル(約6億9000万円)を調達している。

カンダサミー氏は、Latent AIを起業する前に、起業していたスタートアップのOtoSenseをAnalog Devicesに売却している(その前にはHPE Mid-Market Securityビジネスのマネージャーを務めていた)。OtoSenseは、音ならびに振動センサーからのデータを使って、保守ユースケースの予測を行うものだった。売却前には、デルタ航空やエアバスなどと提携していた。

画像クレジット:Latent AI

Latent AIはこの仕事の内容の一部を利用しており、それをSRI Internationalの特許と組み合わせている。

「OtoSenseでも、すでにある程度のエッジワークを行っていました」とカンダサミー氏はいう。「そのときは、音声認識部分をクラウドの外へと移動させていたのです。学習はクラウドで行いましたが、認識はエッジデバイスで行われていたため、学習結果をすばやく変換してダウンロードする必要がありました。最初の数カ月はそのように行っていましたが、データが長すぎるためLTEまたは3Gでストリーミングすることはできませんでした」。

一方、チャイ氏はSRIで飛行物体の電力を最適に管理する方法を研究するプロジェクトに取り組んでいた。そのシステムは1つの電力供給源から、飛行そのものに電力を供給するか、搭載コンピューティングワークロードを実行するかのリソース配分をインテリジェントに割り当てることが可能で、監視を行いながら必要に応じてそれらを切り替える。ほとんどの場合、監視のユースケースでは何も起こらない。そしてそれが事実であるために、観察されるすべてのフレームを計算する必要はない。

「私たちはそうしたやり方を採用し、ツールとプラットフォームとしてまとめて、音声からビジョン、断片的なもの、時系列なものまで、あらゆる種類のユースケースに適用できるようにしました」とカンダサミー氏は説明する。

ここで注目すべき重要なことは、同社がLatent AI Efficient Inference Platform(Latent AI推論プラットフォーム、LEIP)と呼ぶさまざまなコンポーネントを、スタンドアロンモジュールまたは完全に統合されたシステムとして提供していることだ。圧縮機能とコンパイラーはこうしたものの最初の2つであり、同社が今回発表するのはLEIP Adaptと呼ばれる。これは、カンダサミー氏が先に述べたような動的AIワークロードを管理するシステムの一部である。

画像クレジット:Latent AI

LEIP Adaptの実用的なユースケースは、例えばバッテリー式のスマートドアベルが、何かが発生するのを待ちながら、低電力モードで長時間動作できるようにする場合だ。そして、誰かがドアの前にやってくると、カメラが起動して画像認識のためのより大きなモデルを実行する(おそらく電源に接続されているドアベルのベースステーション上でも実行されるだろう)。そして、もし複数の人間が一度に到着した場合には(現在はそうなっていないが、おそらく来年、パンデミックが落ち着いたころには)、システムは必要に応じてワークロードをクラウドに委託することができる。

カンダサミー氏は、このテクノロジーへの関心は「非常に大きい」と語っている。彼の以前の経験とSRI Internationalのネットワークを考えれば、Latent AIが自動車業界の大きな関心を集めているのは当然のことだが、カンダサミー氏はまた、同社がカメラや補聴器メーカーなどの消費者企業と協力していることも指摘した。

さらに同社は、AI協調プラットフォームの一部としてLatent AIを検討している大手通信会社と協業しており、とあるCDNプロバイダーがJavaScriptバックエンド上でAIワークロードを実行することに協力している。

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(翻訳:sako)