“家庭教師のフリマ”サービス「レコンズ」今春スタート、スマホ学習塾「アオイゼミ」が発表

スマホで学べる中高生向けのオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営するZ会グループによる買収を受けて、昨年12月に取材に答えた同社代表取締役社長の石井貴基氏は「アオイゼミの旗振りで来春、新規事業のリリースを予定している」と話していたのだが、2月26日、その新サービスの発表があった。

新しいサービスは、家庭教師と生徒のCtoCマッチングサービス「家庭教師のレコンズ(以下レコンズ)」だ。石井氏はレコンズのことを「いわば『カテキョのフリマ』サービス」と言っている。メルカリの参入発表でも注目を集める教育関連CtoCの分野に、Z会グループとして参入する。

レコンズは、家庭教師を探す機能、教師とメッセージでやり取りできる機能、決済機能を備え、子どもに合った家庭教師を見つけて直接契約できる、CtoCプラットフォームだ。授業依頼から指導報告、授業料の支払いまでサービス内で完結することができる。

サービス提供開始は今春を予定(「4月にはスタートしたい」と石井氏は言っていた)。リリースに先駆け、授業を受けたい側、授業をしたい側、双方の事前登録を本日より公式サイトで開始する。

葵がレコンズで目指すのは「理想の先生をもっと気軽に見つけて学ぶ」ことだと石井氏は話す。既存の家庭教師派遣サービスでは、一般的には授業料の約50〜60%が手数料として派遣会社に支払われる。このため、授業料が高額になりやすく、逆に先生の収入は少なくなる。

レコンズではCtoCマッチングプラットフォームの形をとることで、中間マージンを約20%程度にできるため、子どもに合った教師を適切な授業料で雇えて、教える側も収入を増やせるという。

また、家庭教師ではなく個別指導塾であれば授業料は抑えられるが、複数の子どもに1人の先生がつくことになる。石井氏は「レコンズなら授業料を抑えながら、マンツーマンでの授業を実現できる。家庭教師のCtoC化で、学習塾市場にも新しい動きが出るのではないだろうか」と話している。

レコンズのスタートは、Z会グループにとっても意味を持つ。オンライン学習塾のアオイゼミ利用者は、現在30万人以上。「普段の自宅での学習にはアオイゼミを利用し、週1日家庭教師にサポートしてもらう、といった使い方ができるので、相性がいい。お互いのサービスを補い合う関係が成立する」と石井氏は言う。

さらにZ会グループの利用者OB・OGが、家庭教師として登録することも期待される。「アオイゼミからは今年数万人が卒業して新大学生となる。またZ会OB・OGも、毎年2000人以上が東京大学、京都大学に合格するなど、数千人が難関大学に進んでいるし、学習塾・栄光ゼミナールのOB・OGも同じく数千人が難関大学に進学する。グループの卒業生で、良質な家庭教師がすぐにそろえられる環境にある」(石井氏)

習い事や語学学習など、知識を教える人と学ぶ人を結び付けるCtoCサービスとしては、メルカリが発表した「teacha(ティーチャ)」のほかにも、クラウドワークスが事業譲受した「サイタ」、グローバルウェイの「TimeTicket(タイムチケット)」、ストリートアカデミーの「ストアカ」、語学学習に特化した「フラミンゴ」などがある。

そんな中で石井氏は「レコンズでは、Z会グループの強みが生かせる、小中高の児童・生徒と大学受験生のみにフォーカスする」と言う。「グループには教材だけでなく、長年の指導ノウハウも培われている。そのノウハウをレコンズに最適化して、先生の教育も行い、質の高い授業ができるようにサポートしていく。また“成績の上げ方”などのテクニックについても、追加情報として提供していきたい」(石井氏)

教師の質については、石井氏はこんなことも言っている。「あまり細かい制約は、レコンズではかけないようにしたい。例えば、今までは“最初は一律で時給1500円”などと決められている給料も、このサービスでは先生に決めてほしいと思っている。『最難関校の学生だけど、社会貢献としてできるだけ安く教える』とか『有名大学ではないけれど児童福祉学を専攻していて、登校拒否や学習障害などに詳しい』とか、学歴だけじゃなくて個性に合わせて選べることを、サービスの魅力にしたい」(石井氏)

とはいえ「ご家庭に訪問したり、カフェで顔を合わせたりして勉強することになるので、教師の本人確認は徹底してやる」とのこと。また利用家庭のレビューによる「授業の満足度」を表示する仕組みがあり、「評価が下がった先生はすぐ分かるようになっているので、そうしたことで質の担保をしていく」と石井氏は説明する。

石井氏は「将来的には、先生への支払いサイトは早めたい。自分も学生時代、給料がなかなか入らなくて苦労したので。また先生の実績に応じて、手数料を下げるような仕組みも取り入れていけたら」とレコンズの今後の展開についても、既に考えている。

さらに「これができたらすごいと思うんだけど」と石井氏が語るのは「奨学生制度」だ。「レコンズの登録者で『どこの学生だったら、4年間でいくらぐらい稼げる』といったデータがたまったら、新聞奨学生のように奨学金を出して、大学への進学を支援する、といったこともできたらいいなあ、と思っている」(石井氏)

また海外展開についても、石井氏は念頭に置いているとのこと。「教材ありきのサービスだとローカライズが重荷になるが、レコンズは教材モデルではないのでローカライズする部分が少ない。オペレーションを今後磨いていけば、国外にも出せるサービスになると思う。Z会グループの強みである、指導方法などのノウハウを生かしながら、マッチングプラットフォームとしてブラッシュアップすれば、海外にも行けると考えている」(石井氏)