精子凍結と生殖能力をチェック、男性向け生殖支援スタートアップLegacyが3.8億円を調達

男性の生殖を支援するスタートアップであるLegacy(レガシー)が、Bill Maris(ビル・マリス)氏のサンディエゴ拠点のベンチャー企業であるSection 32や、Y Combinator 、Bain Capital Venturesから資金350万ドル(約3億8000万円)を調達した。Bain Capital Venturesは昨年、Legacyの150万ドル(約1億6000万円)のシードラウンドをリードした企業だ。

TechCrunchはLegacyの創業者でCEOのKhaled Kteily(ハレド・クテイリー)氏に、創業2年、社員5人の同社について、また世界でも有数の男性生殖センターになるという野心について聞いた。我々が最も尋ねたかったのは、Legacyと似たようなスタートアップが、一般的に女性よりも生殖に関心を持たない男性にいかに同社の在宅テストキットやサービスが必要と思わせるかということだった。

「男性は自らの生殖について懸念すべきだ」とクテイリー氏は話した。同氏は以前ヘルスケアとライフサイエンスのコンサルタントを務め、ハーバード・ケネディ・スクールで公共政策の修士号をとっている。「精子の数は過去40年で50〜60%少なくなっている」。TechCrunchのBattlefieldで優勝したことのあるLegacyとのやり取り詳細は以下の通りだ。

TechCrunch(TC):なぜ会社を始めたのか。

Khaled Kteily(KK):精子のキングになりたいと思っていたわけではない(笑)。しかし私はかなりひどいアクシデントを経験した。足の第2度熱傷だ。車の中で4つのStarbucksの紅茶を太腿にこぼしてしまった。そのころ、ケネディスクールでの同僚ががんと診断され、医師は放射線治療を始める前に精子を凍結しておくことを同僚に勧めた。それを聞いて私自身も精子を保存しておくべきだとひらめいた。これを実行するためにケンブリッジに行ったが、その場所は餃子レストランのすぐ隣にあり、すごく変な感じだった。そして高価だった。そこで私は考えた。精子を保存するもっといいやり方があるに違いない、と。

TC:どうやってこのような事業を始めたのか。

KK:RoとHimsがサービスを開始させようとする前のことだ。しかし人々は自宅での精子検査に満足しつつあった。なので私はアイデアの調査を開始した。私は米国生殖医学会に加入し、精子についての授業を受け始めた。

TC:女性は自分の生殖モニターで30代ごろからかなりのプレッシャー下におかれる。あなたの同僚のような特殊な状況を除き、男性は本当に自分の精子のテストを考えるのだろうか。

KK:男性は精子について心配する必要があるし、責任を持つ必要もある。子どもをもとうとしているカップル7組のうち1組では(不妊について)男性も女性と同じように責任があるということを多くの人が知らない。女性は自身の生殖について教えられているが、男性はそうではない。しかも精子の質が劣化しているにもかかわらずだ。精子の数は過去40年で50〜60%減少していもいる。

TC:待って。なんですって、どうして?

KK:(おそらく犯人は)プラスティックや私たちが飲食するものの中に含まれる化学物質、それからライフスタイルの変化だ。我々は体を動かさなくなり、よく食べるようになっている。精子の健康は体全体の健康に関係する。私が思うに、携帯電話も一因だ。さまざまな研究があるが、携帯電話は新たな喫煙だと私は確信していると言って警告したい。どういうことかというと、タバコの使用を続けさせることで利益を得られる企業によって研究が行われたとき、喫煙が危険だということは明らかにならなかった。また精子の質が年々劣化傾向にある。これはまた母親、そして子どものリスク増大にもつながっている。妊娠糖尿病リスクや自閉症の割合、他の先天性の病気などだ。

TC:Legacyは消費者に直接販売している。テストを消費者への全体的なウェルネス提供に組み入れるために他の企業と協力しているのか。

KK:我々はB2Bにかなり投資していて、それが大きな買収チャンネルになることを期待している。まだ企業名は明かせないが、ちょうど先週大企業と契約を結んだところで、ほかにもいくつか進行中だ。これまでのところ、対象はほとんどベイエリアの企業だ。経験を重ね、そして大きな企業を経営する創業者となり、YC卒業生としての経験が貴重なものとなっている。

TC:投資家と話をするとき、マーケットサイズについてどう説明しているのか。

KK:400万組のカップルが不妊に悩んでいる。そしてすべてのケースで男性がテストを受けるべきだと考えている。(我々のキットの)購入のおおよそ半分がパートナーの女性によるものだ。また従軍する男性で任地に赴く前に精子を凍結する人もいる。同性カップルでいつか代理母を活用しようと計画している人、人生を変えるようなプロセスに踏み出す前に生殖を保存したいトランスジェンダーの患者もいる。しかし我々は全ての男性が大学に入る前にテストを受けてもいいと考えていて、投資家は「大きな絵」を目にする。

TC:キットと保存にはいくらかかるのか。

KK:キットは前金で195ドル(約2万1000円)。もし精子を保存する場合、年間145ドル(約1万6000円)。さまざまなパッケージを用意していて、検査2回と10年間の精子保存で1995ドル(約22万円)というものもある。

TC:サンプルは1回もしくは2回で十分なのか。メイヨー・クリニック(ミネソタ州に本部がある有名な総合病院)によると、精子の数はサンプルによって大きく変動し、正確な結果を得るには一定期間かけた精液分析を提案している。

KK:クライアントには複数回の実施を勧めている。結果は変動するだろうが、平均データは得られる。

TC:しかし複数回行うと、それぞれ費用が発生する?

KK:そうだ。

TC:検査では何に着目するのか。

KK:ボリューム、数、濃度、運動性、形態(精子の形)。

TC:実際に誰が分析と保存管理を行っているのか。

KK:分析ではシカゴのAndrology Labs(アンドロジー・ラボ)と提携している。米国でトップの生殖ラボの1つだ。保存に関しては、異なる地域にあるいくつかの冷凍保存プロバイダーと提携している。我々はサンプルを4つに分け、2カ所で2つのタンクに分けて保存する。あちこちのクリニックで起こっているような、アクシデントでサンプルがダメになってしまう、ということがないようにしたい。

TC:サンプルが不適切に扱われるのでは、との懸念があるのは想像に難くない。そうした事態は起こらないと顧客にどのように保証するのか。

KK:信頼と合法性は根幹であり、我々がフォーカスしている重大な分野だ。我々はCPPAとHIPAAに則っている。全ての関連データは、暗号化・匿名化され、全顧客にはそれぞれのIDが発行される(IDは数字で、保存施設側がだれの精子を扱っているのか知ることはない)。我々は余裕をもって対応しており、可能な限り科学的に最も堅牢な方法で、そして安全とプライバシーを確約するやり方でサンプルを取り扱っている。

TC:精子はどれくらいの期間、冷凍保存できるのか、

KK:無期限だ。

TC:収集するデータをどのように活用するつもりか。

KK:研究機関と提携するかもしれない。しかし我々は23andMeのようにデータを売ることはしない。

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(翻訳:Mizoguchi

ベルリンのBattlefield勝者は晩婚者のために元気な精子を冷凍保存するLegacyに決定

最初は13社だった。そして二日間の激しい競争の結果、勝者が決まった。

これらStartup Battlefieldの参加社は全参加社の中から書類選考で選ばれ、いずれも甲乙つけがたい優秀なスタートアップとして、このコンペに参加した。彼らはみな、VCたちとテクノロジー業界のリーダーから成るジャッジの前でプレゼンを行い、5万ドルの優勝賞金と優勝カップDisrupt Cupを争った。

数時間に及ぶ討議を経て本誌TechCrunchの編集者たちは、ジャッジのノートを熟読し、5社のファイナリストを決めた: それらは、Imago AI, Kalepso, Legacy, Polyteia, そしてSpikeだ。

5社は決勝のステージで、新たなジャッジたちの前で再度デモを行った。決勝のジャッジは、Sophia Bendz(Atomico), Niko Bonatsos(General Catalyst), Luciana Luxandru(Accel), Ida Tin(Clue), Matt Turck (FirstMark Capital), そしてMatthew Panzarino(TechCrunch)だ。

そしてついに、ベルリンで行われたTechCrunch Disrupt Berlin 2018 Startup Battlefieldの優勝者が決まった。

優勝: Legacy

Legacyは、おもしろい問題を探究している。それは、加齢に伴う精子の活動低下だ。スイス出身の同社は、人間の精子を冷凍保存して、本人が高齢者になっても元気で安全な精子を使えるようにする。晩婚だけど自分たちの子どもがほしい、という人びとにとっては、これは重要な問題だ。

Legacyに関する本誌記事は、ここにある〔未訳〕。

準優勝: Imago AI

Imago AIはAIを使って作物の収量を増やし、無駄に廃棄される食品を減らして、世界の人口増に対応する。同社はコンピュータービジョンと機械学習の技術を使って、作物の収量と品質を、誰でも容易に予測できるようにする。

Imago AIに関する本誌記事は、ここにある〔未訳〕。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa