Slingshot Aerospaceは宇宙ごみなどの状況情報をリアルタイムで提供、衛星打ち上げ・運用業者を支援

地球低軌道が少々混雑してきた。小規模な人工衛星の急増や、SpaceX(スペースX)の「Starlink(スターリンク)」のような大規模な衛星コンステレーション、そして増え続ける宇宙ごみの間を抜けて、軌道上に衛星を打ち上げ・運用することは、まるでゲームの「フロッガー」をプレイしているように感じられるかもしれない。国際宇宙ステーションでさえ、定期的に「回避行動」をとらなければならないのだ。

宇宙にはまだ、たくさんのスペースがある。しかし、10億ドル(約1170億円)もする人工衛星を運用するのであれば、衝突しないように全力を尽くしたいと思うだろう。

そこで、Slingshot Aerospace(スリングショット・エアロスペース)の出番となるわけだ。同社は複数のソースからのデータを統合し、デジタルで構成した宇宙の全体的状況をリアルタイムで提供することで、宇宙事業者がその資産をより良く管理・保護できるようにする。2017年にMelanie Stricklan(メラニー・ストリックラン)氏、David Godwin(デイヴィッド・ゴドウィン)氏、Thomas Ashman(トーマス・アッシュマン)氏によって設立され、現在はテキサス州オースティンとカリフォルニア州エルセグンドを拠点とするこの会社は、2部構成のシリーズA投資ラウンドで3460万ドル(約40億6000万円)を調達。2020年10月に調達した約800万ドル(約9億4000万円)に続き、第2回目となる2500万ドル(約29億3000万円)相当の資金調達を、米国時間3月10日に発表した。

「宇宙には無限のチャンスがあります。しかし、我々は宇宙飛行の運用と軌道上の資産管理を最適化するために、デジタル革命を起こさなければなりません」と、ストリックラン氏は同社のプレスリリースで述べている。「宇宙を利用するすべての組織に、よりアクセスしやすく、タイムリーで、正確なリスク軽減を提供するためには、リアルタイムの調整が必要です」。

今回の2回目のラウンドは、Draper Associates(ドラッパー・アソシエイツ)とATX Venture Partners(ATXベンチャー・パートナーズ)が主導し、Edison Partners(エジソン・パートナーズ)、Embedded Ventures(エンベデッド・ベンチャーズ)、Valor Equity Partners(ヴァロー・エクイティ・パートナーズ)、Lockheed Martin Ventures(ロッキード・マーティン・ベンチャーズ)などが追加出資した。Slingshot Aerospaceの顧客には、NASA、Boeing(ボーイング)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)、U.S. Space Force(米国宇宙軍)、U.S. Air Force(米国空軍)、OneWeb(ワンウェブ)などが含まれる。

「宇宙状況認識という分野は今、破壊的革新を起こすための機が熟しています。現在のところ、衛星オペレーターが実用的な情報をもとにリアルタイムで通信・協力し、軌道上のコンジャンクションを解決したり、グローバルな宇宙認識を最適化するための共通プラットフォームは存在していません」と、とEdison PartnersのDaniel Herscovici(ダニエル・ハースコビッチ)氏は述べている。

LeoLabs(レオラブズ)やKayhan Space(カイハン・スペース)など、他の宇宙関連のスタートアップ企業は、この評価に同意しないかもしれないが、Slingshotが魅力的なプラットフォームを構築していることは確かだ。

「Slingshot Beacon(スリングショット・ビーコン)」は「商業、政府、民間の顧客を1つのプラットフォームで結びつけ、衛星やその他の資産をより良く設計、管理、保護できるようにし、リスクを軽減し、すべての宇宙飛行事業者が安全で信頼できる運用を確実に行えるようにする」軌道衝突回避プログラムだ。その試験運用プログラムは、現在地球低軌道にある衛星コンステレーションの半分以上を占める資産を所有する参加者たちとともに、2021年8月に開始された。

同社が新たに調達した資金は、Slingshot Beaconをはじめとする製品の商業化のために使われる他、今後1年間で40人の従業員を新規雇用するために充てられる予定だ。2030年までに約11万5000個の衛星が打ち上げられると予想される中で、これはかなり良い、そしてかなり必要とされるアイデアだろう。

画像クレジット:Slingshot Aerospace

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星も組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTTは1月17日、HAPS早期実用化に向けた研究開発、実証実験などの推進を検討する覚書を、NTTドコモスカパーJSATエアバスとの4社で締結したことを発表した。HAPSの接続性、HAPSを利用した通信システムの有用性の発見、技術やユースケースの開発を4社で進めるという。

HAPSとは、地上約2万mの成層圏を飛行する高高度プラットフォーム(中継基地局)のこと。昨年、NTTとエアバスは、エアバスが所有する高高度無人機「Zepher S」(ゼファーエス)を用いた実証実験を行い、通信サービスの実現可能性をすでに実証している。今回の覚書により4社は、5Gのさらなる高度化と6Gに向けた取り組みとして、空、海、宇宙を含むあらゆる場所への「カバレッジ拡大」を目指す。

さらにこの覚書には、静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)も含めた非地上ネットワーク技術を用いたアクセスサービス「宇宙RAN(Radio Access Network)」事業の促進も含まれている。「宇宙RAN」が実現すれば、災害対応、離島やへき地へのサービス、飛行機や船舶などの通信環境の飛躍的改善が期待できるという。

宇宙RANシステム構成

宇宙RANシステム構成

今後は通信技術の開発のみならず、HAPSの機体開発や、HAPSの運用に向けた標準化と制度化への働きかけも行い、HAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。さらに、HAPS、衛星、地上局の連携による「宇宙RAN」事業を促進し、NTTの技術を活用したネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築してゆくとしている。

宇宙ステーションの運用ギャップ回避のためにNASAがBlue Origin、Nanoracks、Northrop Grummanと450億円以上の契約を締結

NASAは、2030年までに国際宇宙ステーション(ISS)を商用ステーションに置き換える予定であることを公式に(かつ静かに)認めてからわずか2日後に、今度は民間ステーションの計画のさらなる推進のために、3社と4億ドル(約450億円)以上の契約を結んだ。

NASAと商用低軌道(LEO)目的地プログラムの下で契約を結んだ3社は以下のとおりだ。

  • Nanoracks(ナノラックス)、1億6000万ドル(約180億5000万円)
  • Blue Origin(ブルーオリジン)、1億3000万ドル(約146億7000万円)
  • Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、1億2560万ドル(約141億7000万円)

NASA商用宇宙飛行のディレクターであるPhil McAlister(フィル・マカリスター)氏は米国時間12月2日に、NASAは合計11件の提案書を受けとったと語った。彼は、選択された3つの提案には、多様な技術的概念と、ロジスティックならびに打ち上げロケットのオプションが提供されていると付け加えた。「この多様性は、NASAの戦略の成功の可能性を高めるだけでなく、高度なイノベーションにもつながります。それは、宇宙に対するほとんどの商用の取り組みの中で重要なのです」と彼はいう。

3社はすでに、提案に関わるいくつかの詳細を発表している。Blue Originは、そのステーションコンセプトを「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と呼び、Boeing(ボーイング)やSierra Space(シエラ・スペース)、その他と共同で設計している。チームは、2027年にステーションを打ち上げたいと述べている。一方Nanoracksは、親会社のVoyager Space(ボイジャースペース)ならびに航空宇宙業界の雄Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で開発中のステーションを「Starlab(スターラボ)」と呼んでいる。Northropはステーションの提案に派手な名前を付けていなかったが、Dynetics(ダイネティクス)と協力して、Cygnus(シグナス)宇宙船をベースにしたモジュラー設計を提供しようとしている。

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民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

NASAがISSの廃止と新しいステーションの導入の間にギャップがないようにしようとしている中で、今回の重要な契約は2フェーズプロセスの最初のフェーズに相当する。NASAは、議会ならびに最近の監察総監室の報告書の両方で、LEOにおける経済的繁栄の全体的な成功は、このギャップを回避することにかかっていると繰り返し強調してきた。

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画像クレジット:Blue Origin

NASAは報告書の中で「ISSが廃止された後に、低軌道(LEO)に居住可能な商用目的地がない場合、NASAは、月と火星への長期にわたる人間の探査ミッションに必要な、微小重力健康研究と技術実証を実施できなくなり、それらのミッションのリスクが高まったり遅延したりするだろう」と述べている。

この潜在的なシナリオを回避するために、NASAは、1つ以上の商用LEO「目的地」(ステーションと呼ばれることもある)を2028年までに運用可能にすることを提案した。これによって2030年に引退する予定のISSと2年間の並行運用期間が生じる。その報告書はそのタイムラインを達成できる可能性についての疑問は投げかけているものの、今回の3社とNASAの幹部はそれぞれ、ステーションの運用ギャップを回避できることに自信を持っていた。

「商用貨物便が打ち上げられてから10年経った今でも、人びとは商用航路の堅牢性とアイデアと柔軟性に疑問を抱いています」とNanoracks CEOのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)氏は述べている。「確かに、今後の課題は残っています、【略】しかし私たちには堅牢性があり、一緒に取り組んでいるプロバイダーが多数います。これは、リスクの軽減を進め、商用航路に複数のプロバイダーを配置するためのまさに正しい方法なのです」。

この最初の一連の契約は、2025年まで続くと予想される設計や作業を各企業が遂行するのに役立つだろう。

NASAは、2026年の開始を目標とするプログラムの第2フェーズでは、このグループの企業または他の参加企業から人間が使用するステーションを1つ以上認定し、最終的には軌道上サービスを購入しステーションを利用する多くの顧客の1つになる予定だ。NASAは声明の中で、これにより、人間を再び月に送り、最終的には有人宇宙飛行を火星に送り込むことを目的とするArtemis(アルテミス)計画に集中できるようになると述べている。

今回のフェーズにいないことで目立っているのはAxiom Space(アキソム・スペース)だ、同社はISSに取り付けるためのモジュール(自社のステーションとして自己軌道を回り分離する)を打ち上げるための別契約を獲得しているが、今回のプログラムには参加しなかったことを明かしている。

もちろん、大きな問題は、これらのステーションの最終コストがどれだけになるか、そしてNASAが最終的に全体のコストのどれ位を支払うかということだ。マカリスター氏は、NASAが「入札の方々がこれらの活動への財政的貢献を最大化することを奨励しています」と述べ、現在NASA以外の投資が約60%を占め、NASAの貢献は40%未満であると述べた。しかし、3社とNASAは、ステーションの設計、立ち上げ、運用にどれだけの資本の投下が必要なのかと予想しているのかという点はあまり語ろうとしなかった。

画像クレジット:Nanoracks

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

スペースデブリ除去に取り組む軌道上サービスのAstroscaleがシリーズFで約125.7億円調達

日本の宇宙ベンチャー企業であるAstroscale(アストロスケール)は、新たなシリーズFラウンドで1億900万ドル(約125億7500万円)の資金を調達し、同社の累計調達額は3億ドル(約346億円)に達した。Astroscaleは軌道上サービス技術を専門としており、軌道上でのビジネスをより持続可能なものにする手段として、軌道上の運用高度に存在するデブリの量を減らし、また、既存の衛星の寿命を延ばすことを目的としている。

日本のTHE FUNDが主導し、Seraphim Spaceなどの投資家の参加を得た今回のラウンドにより、Astroscaleの資金調達総額は3億ドル(約346億円)となった。Astroscaleの創業者兼CEOである岡田光信氏は、プレスリリースの中で、今回の資金調達により、事業規模の拡大と「2030年までに軌道上でのサービス提供を日常的に行う能力を劇的に加速させる」ことが可能になると述べている。

Astroscaleにとって、2021年は大きな年だった(ちなみに岡田氏は、米国時間12月15日に開催されるTC Sessions: Space 2021のメインステージに参加する予定だ)。同社は、8月にはデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d (エルサディー、End-of-Life Services by Astroscale – demonstrationの略)」の技術デモを成功させた。年内にその次のフェーズとなるミッションを控えており、また、2022年初頭に予定されている宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けのミッションでも、軌道上デブリ除去のデモンストレーションを行う計画が進んでいる。

Astroscale社が前回5100万ドル(約55億円)を調達したのは2020年10月で、その年に同社は、 地球上の主要な通信インフラである大型静止衛星のサービスに注力しているEffective Space Solutionsを買収した。

関連記事:Astroscaleが約54億円を調達、静止衛星長寿命化や軌道上デブリ除去など業務を多様化

画像クレジット:Astroscale

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

iRocketとデブリ除去・衛星サービスのTurion Spaceが地球低軌道へ10回の打ち上げ契約を締結

ニューヨークに拠点を置く再利用可能ロケットのスタートアップiRocket(アイロケット)は、最初の商用顧客を獲得した。同社は米国時間11月4日、Y Combinator(YC)の卒業生であり、軌道上デブリの除去や衛星サービスのための宇宙機を開発しているTurion Spaceと複数回の打ち上げ契約を締結したと発表した。

契約条件によると、iRocketは10回の打ち上げで、Turionが開発中のDroid衛星20基を軌道に乗せる予定だ。

iRocketは、完全に再利用可能なロケットの開発を進めており、まずShockwave(ショックウェーブ)打ち上げロケットを開発し、2年後には軌道に乗せることができるようになるとしている。自律的に3DプリントされたShockwaveは、最大で約300kg(661ポンド)および1500kg(約3300ポンド)のペイロードに対応することができる。同社は、NASAのマーシャル宇宙飛行センターで、インジェクターテストやロケットエンジンテストなどのハードウェアテストを開始した。次は完全な組み立てテストだと、CEOのAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchに語っている。

「開発は順調に進んでおり、Turionとのパートナーシップはそれを強化するものです」と同氏は語った。iRocketは、米国宇宙軍、M&J Engineering Group、VCのVillage Globalから資金提供を受けている。

再利用可能な上段を持つiRocketと、Droid宇宙機を持つTurionは、両社とも宇宙ゴミの除去に目を向けている。Droidは軌道上のゴミをロボットアームを使いドッキングして除去し、最終的には大気圏再突入で燃え尽きるよう、十分に低い軌道に引きずり込ことで、デブリを除去する。

Y Combinatorの2021年夏期コホートに参加していたTurionは、2022年10月にDroidのプロトタイプ1号機の打ち上げを目指している。同社はそのミッションのためにすでに別の打ち上げ契約を結んでいるが、どのプロバイダーを選択したかは明らかにしていない。

この最初の打ち上げでは、軌道上デブリを除去したり、衛星にサービスを提供することはできない。TurionのRyan Westerdahl(ライアン・ウェスターダール)CEOは「領域認識活動のみを行う予定です」と説明する。「私たちはこの衛星を『Just Get It Up There』と呼んでいますが、これはできるだけ早く軌道に乗せたいからです。なぜなら、当社がすべきことの大部分は、地上オペレーションを本当に強化することだからです」とも。

Turionは、YCに加えて、Soma Capital、Forward VC、Pi Campus、FoundersX Ventures、Harvard Management Company、Imagination VCからも資金提供を受けている。

ウェスターダール氏は「当社の最優先事項は、地球低軌道における持続可能な未来を築くことであり、積極的なデブリ除去はそのための大きな要素です」と述べている。

両社はまた、軌道上でのサービスに関する将来のコラボレーションの可能性についても示唆している。ウェスターダール氏は、TurionがiRocketと協力して、ロケット会社のペイロードの何分の一かで軌道上の最終デリバリーを行い、宇宙ゴミの除去と組み合わせる可能性を示唆した。

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ブルーオリジン、ボーイングなどがシエラスペースとの民間商業宇宙ステーション建造を発表

軌道上の不動産ラッシュがついに始まる。Sierra Space(シエラ・スペース)が、民間宇宙ステーション打ち上げ計画のさらなる詳細を発表した。Blue Origin(ブルーオリジン)とBoeing(ボーイング)がこのチームに加わり、2020年代の後半に宇宙ステーションを軌道に送り込む計画だという。

「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と名付けられたこの計画中のステーションには、Redwire Space(レッドワイヤー・スペース)、Genesis Engineering(ジェネシス・エンジニアリング)、Arizona State University(アリゾナ州立大学)の技術やサービスも含まれる予定だ。これは商業宇宙ステーションの計画としては3番目に発表されたもので、数日前にはVoyager Space(ボイジャー・スペース)、Nanoracks(ナノラックス)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社が、2027年に打ち上げを予定している商業宇宙ステーションの計画を発表したばかりだ。そしてもう1件、Axiom Space(アクシオム・スペース)も商業宇宙ステーションを計画している。

Sierra Spaceが最初に商業宇宙ステーションの計画を発表したのは、2021年4月のこと。その背景には、間もなく閉鎖される国際宇宙ステーション(ISS)の代わりになるものを求めて、民間企業の声が高まっているという状況がある。Sierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)の一部門である同社は、Orbital Reefに使用される大型で膨張式の「LIFE(Large Integrated Flexible Environment、大型で統合された柔軟性の高い環境)」と呼ばれる居住区の開発を進めている。今回の最新ニュースは、先に発表されたこの計画に基づくものだ。

Orbital Reefは「地球外多目的ビジネスパーク」として運営されることになると、Blue Originの先進開発プログラム担当シニアVPであるBrent Sherwood(ブレント・シャーウッド)氏は、米国時間10月25日に開催されたメディア向け発表会イベントで語った。この宇宙ステーションは、科学研究、製造、メディア、エンターテインメント、観光など、さまざまな商業目的に利用することができると、シャーウッド氏は考えている。Orbital Reefは完全運用が始まれば最高10人が滞在可能で、その内部容積は現在のISSの約90%になる見込みだという。

Blue Originはコアモジュール、ユーティリティ・システム、そして重要な点として、同社の重量級打ち上げシステムである「New Glenn(ニューグレン)」大型ロケットを提供する。Boeingは、宇宙ステーションの運用と科学モジュールを担当し、人間を宇宙ステーションへ往復させるStarliner (スターライナー)を提供する。Redwire社は、微小重力研究技術と宇宙空間における製造、ペイロードの運用と展開可能な建造物を提供する。

メリーランド州に本拠を置くGenesis Engineeringは、日常業務や観光を目的とした1人用の宇宙船を開発し、アリゾナ州立大学は大学コンソーシアムを率いて研究助言サービスを提供する。

「微小重力環境は、科学的・商業的な発見のためのまったく新しい場を提供します」と、Redwireの民間宇宙・渉外担当エグゼクティブVPであるMike Gold(マイク・ゴールド)氏は述べている。「微小重力を利用した研究・開発・製造を習得した国や企業が、将来の世界経済のリーダーになると、我々は確信しています」。

しかし、このステーションのコストがどの程度になる見込みであるかは、あまり明らかになっていない。各社の役員は、プロジェクトに投入する資本や全体の投資額について、具体的に述べようとはしなかった。シャーウッド氏は「ご質問の件は、我々のビジネスケースの一部であり、具体的な数字を申し上げるつもりはありません」と語った。

NASAは、Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)プロジェクトの一環として、初期の宇宙ステーション計画の提案に対し、最大4億ドル(約456億円)を投資することを計画しているが、この資金は複数の提案に分配されるため、1つのステーションを開発して打ち上げる費用全体の中では、ほんの一部にしかならないと思われる。NASAは先月、これらの資金の一部を獲得しようとする企業から「およそ1ダースほどの提案」を受け取ったと、CNBCに語っている。

もう1つ、まだ明らかになっていない重要なパズルのピースは、Blue Originの「New Glenn」、Boeingの「Starliner」、Sierra Spaceの「Dream Chaser(ドリーム・チェイサー)」という各社が開発しているスペースプレーンの打ち上げ能力だ。これらの機体で宇宙に到達したものはまだ1つもないが、Boeingは2022年前半にStarlinerの打ち上げテストを行うことを目指している。Blue Originは同年の第4四半期にNew Glennの打ち上げを予定しており、Sierra SpaceはDream Chaserを使ってISSへ向かう7回のミッションをNASAと契約している。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

民間宇宙ステーションの時代が正式に到来する。Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社は先日、2027年に商用ステーションを起ち上げる計画を発表した。しかし、これは新しい宇宙経済を発展させるための次の論理的ステップに過ぎないと、各社は述べている。

関連記事:Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

「過去10年間は宇宙へのアクセスを構築する時代でしたが、次の10年は宇宙に行き先を構築する時代になります。それが、この業界における我々の重要な命題の1つです」と、VoyagerのDylan Taylor(ディラン・テイラー)CEOは述べている。

米国が初めて打ち上げた宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」に敬意を表して「Starlab(スターラブ)」と名付けられたこの新しい宇宙ステーションは、膨張式の居住モジュール、ドッキングノード、ロボットアームを備えたものになる。3社は官公庁と民間企業の両方からの強い需要を見込んでいるものの、NanoracksのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)CEOは「Starlabの中核は科学です」と強調した。

Starlabは最終的には観光客も受け入れることができるが、観光を第一に考えたプロジェクトではないと、マンバー氏は付け加えた。「宇宙観光旅行は話題になりますが、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、それ以上のものが必要です」と、同氏はいう。

3社は、NASAの「Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)」プロジェクトへの入札として、Starlabを同宇宙局に提出した。このプロジェクトでは、宇宙ステーションを開発する民間企業に最大で4億ドル(約454億円)の契約が割り当てられる。

このようなプロジェクトには莫大な公共投資が必要となるものだが、この資金提供は、特に国際宇宙ステーションの離脱が間近に迫っていることを考慮すると、NASAが地球低軌道における存在感を維持することに関心があると世界に示す意味でも重要であると、テイラー氏は述べている。

マンバー氏も同様の意見を述べている。「私たちは宇宙ステーションの空白期間を作りたくありません」と語る同氏は「業界や社会の誰もが、米国が低軌道に宇宙ステーションを持たない期間があってはならないことを理解しています」と続けた。

しかしながら、全体的には民間の資金が鍵となる。そこでVoyager社の出番だ。2021年、Nanoracksの過半数の株式を取得した同社は、プロジェクトの資金調達と資本配分を監督することになる。

「現実的には、米国議会から十分な資金を得ることはできません」と、マンバー氏はいう。「そんな時代は終わりました。これは商業的なプロジェクトです」。

LEO(地球低軌道)経済の将来については、企業や公的機関が設計の標準化と競争力の維持をどのように両立させるかなど、未だ不明な点が多い。

テイラー氏は、いくつかの重要な技術を標準化するには、コンソーシアムを起ち上げる方法が有効であると提案している。NASAからの投資も居住システムの共通化に役立つだろうと、Lockheed Martinの民間宇宙部門VPであるLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、TechCrunchによるインタビューの中で語っている。

「NASAは顧客として、宇宙輸送におけるこの並外れた革命を解き放ちました」と、マンバー氏は語る。「NASAがカーゴで成功したように、商用クルーで成功したように、宇宙に興味を持つ市場があれば、小規模な民間宇宙ステーションにも同じようなことが起こると予想できます」。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

KDDIは、イーロン・マスク氏率いるSpaceXの地球低軌道(LEO)衛星通信サービス「Starlink」(スターリンク)を、au基地局のバックホール回線(基地局と制御局・交換局などのコア網設備を結ぶ伝送路)に利用する契約を締結したと発表しました。

この契約によって、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島嶼地域、災害対策においても、auの高速通信を提供をめざします。2022年度をめどに、全国1200か所から順次導入を開始します。

「Starlink」は、従来の静止衛星に比べて地表からの距離が65分の1と近いため、衛星から低遅延かつ高速な通信を実現するサービスです。すでに地球低軌道衛星を1500基運用しており、βユーザーは10万人を抱えています。

KDDIは、光ファイバーに接続した通常のau基地局に加え、Starlinkをバックホール回線としたau基地局を導入し、山間部や島嶼のエリアを補完することで、日本中どこでもauの高速通信を利用可能とすることを目指します。KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

この提供に先立ち、KDDIは総務省より実験試験局免許の交付をうけ、Starlinkの衛星通信と地上のインターネット網を接続するゲートウェイ局を山口衛星通信所に構築しました。現在、品質と性能を評価するため、SpaceXと共同で一連の技術検証を行っています。

地球低軌道(LEO)通信をめぐっては、ソフトバンクが低軌道通信衛星OneWebと成層圏にソーラー発電の電気飛行機を用いて浮かべた携帯基地局の組み合わせによって、過疎地域のエリア化を目指しています。また、楽天モバイルは低軌道衛星からスマートフォンに直接電波を飛ばすAST Space Mobileに出資し、宇宙から日本全域100%のエリアカバーの実現を目指しています。

SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」、端末出荷数が早くも10万台に到達
楽天モバイル、宇宙に携帯基地局 日本全土をエリア化する「スペースモバイル計画」22年開始めざす

(Source:KDDIEngadget日本版より転載)

軌道上の燃料補給サービスを目指すOrbit Fabの資金調達に航空宇宙分野大手ノースロップとロッキード参加

サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業のOrbit Fab(オービット・ファブ)は、軌道上における燃料補給サービスの第1人者になることを目指しており、その実現に向けて1000万ドル(約11億円)以上の資金を調達した。この資金は、早ければ2022年末に開始を予定している燃料補給実験に使われる。同社はこの実験で、2機の燃料補給シャトルを宇宙に送り、ドッキング、燃料の移送、ドッキング解除の3つのステップを繰り返し行う予定だ。

今回の投資ラウンドは、Asymmetry Ventures(アシンメトリー・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のSpaceFund(スペースファンド)と、新たな投資家として丸紅ベンチャーズおよびAudacious Venture Partners(オーデイシャス・ベンチャー・パートナーズ)が参加した。中でも注目すべきは、Northrop Grumman Corporation(ノースロップ・グラマン・コーポレーション)とLockheed Martin Ventures(ロッキード・マーチン・ベンチャーズ)の両社も出資に参加したことである。請負業者として競合する2社が一緒に投資を行うのは初めてのことだと、Orbit Fabの共同設立者であるJeremy Schiel(ジェレミー・シエル)氏はTechCrunchに語った。

「私たちはすべての船を引き上げる潮目のようなものです」と、シエル氏はいう。「どちらかの企業に競争力を与えるのではなく、宇宙における持続可能性のために、全体としてより良い選択肢を採ることができるのです」。

同氏のいう「2つの大手企業を仲良くさせること」は、宇宙空間での燃料補給という事業を有利に進めたい同社にとって、重要な鍵となる。2019年のTechCrunch Disrupt Battlefield(テッククランチ・ディスラプト・バトルフィールド)で最終選考に残ったOrbit Fabは、RAFTI(Rapid Attachable Fluid Transfer Interface、高速取付可能流体移送インターフェース)と呼ばれる給油バルブを開発しているが、この部品は宇宙機が地球を離れる前に設置する必要がある。つまり航空宇宙関連業者など大手顧客から、購買契約は衛星が軌道に乗る前に獲得しなけれはならないのだ。

関連記事:軌道上の人工衛星に燃料補給するスタートアップOrbit Fabが約3億2000万円を調達

RAFTIを搭載した宇宙機は、地球低軌道や静止軌道、そして最終的にはシスルナ空間(地球と月の間)に配置されたOrbit Fabの燃料補給シャトルとドッキングできるようになる。2025年までには、すべての宇宙機にRAFTIが搭載されるようになることを期待していると、シエル氏は語っている。さらに長期的には、小惑星から採掘した材料を使って宇宙空間で燃料を製造するという、より大きな目標を同社は掲げている。

「私たちは宇宙のDow Chemical(ダウ・ケミカル)になりたいのです」と、シエル氏はいう。「月面採掘業者や小惑星採掘業者の最初の顧客となって、彼らが採掘した材料を買い取り、それを使って実用的な推進剤を軌道上で製造できるようにしたいと考えています」。

Orbit Fabによると、軌道上での燃料補給は急成長する新しい宇宙経済の基盤となるもので、物品や宇宙機をある軌道から別の軌道に移動させる必要が生じたり(これには非常に多くの燃料が必要だ)、資源を地球に戻すためのサプライチェーンを構築する際に不可欠となる。

「私たちは、宇宙で製造する推進剤のサプライチェーンになりたいのです」と、シエル氏は付け加えた。

画像クレジット:NicoElNino / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクが2030年代の「Beyond 5G」「6G」のコンセプトと12の挑戦を公開

ソフトバンクが次世代移動体通信規格「Beyond 5G」「6G」に向けた12の挑戦を公開ソフトバンクは、2030年代の商用化が期待されている、次世代移動体通信規格「Beyond 5G」および「6G」に向けた12の挑戦を公開しました。

内容としては、5Gの「ミリ波」よりもさらに高い周波数帯「テラヘルツ波」の利用や、無人の電気飛行機を使って成層圏に携帯基地局を浮かべる「HAPS」、LEO(低軌道通信衛星)を活用した、100%のエリアカバレッジなどが紹介されています。全文は下記の通りです。

(1)ベストエフォートからの脱却

これまでのモバイルネットワークでは、スマートフォンをインターネットに接続するベストエフォートなサービスを提供してきました。例えば、ネットショッピングや動画のストリーミング視聴といった、多少の遅延やパケットロスが発生しても生活に支障が生じにくいアプリケーションを提供してきました。6Gのモバイルネットワークでは、さまざまな産業を支える社会インフラの実装が期待されており、各産業が要求するサービスレベルに見合った、品質の高いモバイルネットワークを提供する必要があります。ソフトバンクは、日本全国を網羅するモバイルネットワークに、MEC(Mobile Edge Computing)やネットワークスライシングなどの機能を実装して、産業を支える社会インフラを実現していきます。

(2)モバイルのウェブ化

インターネットは、これまで多くのIT企業によってシステムやプロトコルの改善がなされ、進化を続けてきました。一方、モバイルネットワークは、クローズドなネットワークであるため、世界的に標準化される以上に進化を遂げることはありません。今後、モバイルネットワークのサービスの幅を広げるために、より柔軟なアーキテクチャーに生まれ変わることが期待されます。6Gでは、ウェブサービスのアーキテクチャーを取り込むことで、さらにお客さまに便利なサービスを提供できると考えて、研究開発を進めていきます。

(3)AIのネットワーク

AI技術は、画像認識による物体の検知や、音声認識・翻訳だけではなく、ネットワークの最適化や運用の自動化など、幅広く適用されるようなりました。同時に、無線基地局を含むモバイル通信を支えるネットワーク装置では、汎用コンピューターによる仮想化も進んできました。AI技術と、ネットワーク装置の仮想化は、いずれもGPU(Graphic Processing Unit)によって効率的に処理できるソフトウエアです。モバイルネットワーク上にGPUを搭載したコンピューターを分散配置することで、低コストで高品質なネットワークとサービスの提供が可能になります。ソフトバンクは、2019年からGPUを活用した仮想基地局の技術検証に取り組んでおり、AI技術とネットワークが融合したMEC環境を実現していきます。

(4)エリア 100%

6Gでは、居住エリアで圏外をなくすことや、地球すべてをエリア化することが求められます。ソフトバンクは、HAPSやLEO(低軌道)衛星、GEO(静止軌道)衛星を活用した非地上系ネットワークソリューションを提供することで、この問題を解決します。これにより、世界中で30億を超えるインターネットに接続できない人々に、インターネットを提供することが可能になります。また、これまで基地局を設置できなかった海上や山間部、さらには上空を含むエリアにモバイルネットワークを提供することが可能になり、自動運転や空飛ぶタクシー、ドローンなど新しい産業を支えるインフラとなります。

(5)エリアの拡張

ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは、2017年から成層圏プラットフォームと通信システムの開発に取り組んでいます。2020年にはソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider」(サングライダー)が、ニューメキシコで成層圏フライトおよび成層圏からのLTE通信に成功し、HAPSが実現可能であることを証明しました。このフライトテストで得た膨大なデータを基に、商用化に向けて機体や無線機の開発、レギュレーションの整備などを進めていきます。

(6)周波数の拡張

5Gでは、これまで移動体通信で利用されることがなかったミリ波が利用できるようにしました。6Gでは、5Gの10倍の通信速度を実現するため、ミリ波よりも高い周波数のテラヘルツ波の活用が期待されています。一般的に、100GHzから10THzまでがテラヘルツ帯とされ、2019年に開催された世界無線通信会議(WRC-19)では、これまで割り当てられたことがなかった275GHz以上の周波数の中で、合計137GHzが通信用途として特定されました。この広大な周波数を移動通信で活用することで、さらなる超高速・大容量の通信の実現を目指します。

(7)電波によるセンシング

ソフトバンクは、これまで電波を主に通信用途で活用してきましたが、6G時代では通信以外の用途でも活用することが可能になります。例えば、Wi-Fiの電波を使用して、屋内で人の位置を特定する技術はすでに実用化されている他、Bluetoothを位置情報のトラッキングに利用するケースもあります。6G時代では、電波を活用して、通信と同時にセンシングやトラッキングなどを行うサービスの提供を目指します。

(8)電波による充電・給電

スマートフォンなどのデバイスは、Qi規格による無接点充電技術が多く使用されていますが、距離が離れてしまうと充電・給電ができないという欠点があります。6G時代には、電池交換や日々の充電から解放される未来がやってくると期待しており、距離が離れても電波を活用した充電・給電を行える技術の研究開発を進めていきます。

(9)周波数

周波数は、これまで各事業者が占有して利用することを前提に割り当てられてきましたが、IP技術を無線区間に応用することで、時間的・空間的に空いている帯域を複数事業者で共有することも可能になると考えます。Massive MIMOやDSS(Dynamic Spectrum Sharing)などの多重化技術がすでに確立されていますが、これらを含めた技術をさらに発展させて周波数の有効活用を進めていきます。

(10)超安全

2030年には、量子コンピューターの実用化まで開発が進むと言われています。量子コンピューターが実用化されると、現在インターネットの暗号化に使われているRSA暗号の解読ができるようになり、通信の中身を盗まれる可能性があります。将来、通信インフラの上に成り立つ産業全体を守るために、耐量子計算機暗号(PQC)や量子暗号通信(QKD)などの技術検証に取り組み、発展させることで、超安全なネットワークの実現を目指します。

(11)耐障害性

モバイルネットワークは、5G以降により一層社会インフラとしての役割が強くなってくると考えており、通信障害が発生した場合でも社会インフラとして維持し続ける必要があります。そこで、従来のネットワークアーキテクチャーを見直すことで、障害が起こりにくいネットワークを構築するとともに、万が一、障害が発生した場合でもサービスを維持できるようなネットワークの技術の研究開発を進めていきます。

(12)ネットゼロ

大量のセンサーやデバイスからのデータ、あらゆる計算機によるデータ処理によって、CO2排出量を常時監視・観察ができるようになると、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロの達成に大きく寄与できると考えられます。しかし、常にセンサーなどで監視されることになるため、プライバシー情報の取り扱いや情報セキュリティーといった課題を解決することも必要になります。また、基地局自体もカーボンニュートラルな運用を目指しています。現在、災害時でもネットワークを稼働させるため、基地局の予備電源の設置が義務付けられていますが、電源を普段から活用することや、日中に充電した電気を夜間に使うことで、温室効果ガスの排出量を抑えることができます。さらに、通信量に応じてリアルタイムな基地局の稼働制御を行うことで、消費電力を最小化することも可能になります。カーボンフリーな基地局の実現に向けて研究開発を進めていきます。

(Source:ソフトバンクEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
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