AIが動画を自動編集する「VIDEO BRAIN」と動画マガジン「LeTRONC」で地方自治体のサポート強化

スマートフォン向けマーケティング事業、メディア事業を展開するオープンエイトは3月4日、AI自動動画編集クラウド「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」と、動画マガジン「LeTRONC」(ルトロン)を組み合わせて、動画の編集から掲載までをワンストップで提供できる地方自治体特別プランを発表した。

VIDEO BRAINは、AIが自動で動画を編集してくれるクラウドサービス。専門知識がなくても誰でも簡単に動画を編集できる。写真やテキストなどの素材を入稿すると、AIエンジンが入稿データを分析し、ストーリー性のある動画を自動で生成する。動画の尺やサイズ、文言などを希望に合わせて微調整するだけで、最短3分で動画が編集できる。

動画マガジン「ルトロン」は 「やってみたいこと」「行ってみたい場所」を発見し、外出が楽しくなることをコンセプトとした大人の女性のための動画メディア。現在のユーザー数は800万人強、約1万本の動画コンテンツが配信されている。

地方自治体特別プランでは、手軽に動画を活用したい地方自治体に向けて、「VIDEO BRAIN」で手持ちの静止画などの素材を生かすことができる。素材を入稿すると「VIDEO BRAIN」が自動で動画を編集し、最短1時間で確認用動画を送信する。出来上がった動画は、ルトロンNEWSに掲載されるほか、ウェブサイトでの紹介、SNSでの拡散などの二次利用が可能。なお、オリジナル動画を制作したい地方自治体向けには、ルトロン編集部が地域の魅力が伝わるスポットを選定のうえ、撮影・編集から掲載まで提供するプランもある。

オープンエイトは2015年に設立されたスタートアップ。2018年には、WiL、未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施するなど、注目を集めている。

「ルトロン」の技術を活用したAI自動動画作成ツール「VIDEO BRAIN」提供開始、運営は総額15億円を調達

動画メディア「LeTRONC(ルトロン)」や動画広告サービスなどを運営するオープンエイトが、AIによる自動動画生成機能「LeTRONC AI(ルトロンAI)」を発表したのは2017年10月のこと。同社で内々に活用されてきたこの機能がついに8月28日、「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」の名で、一般企業向けにクラウドサービスとして提供開始された。

オープンエイトが運営するルトロンは、観光スポットやレストラン、イベントといったおでかけ情報や、美容、ファッションなど、女性向けの動画を配信するメディアだ。2016年5月のウェブ版公開を皮切りに、SNS、アプリなど複数チャンネルで配信される分散型メディアとして、オリジナルコンテンツを展開。アプリは100万ダウンロード超、SNSファン数はのべ約700万となり、提供する動画コンテンツは約8000本を数える。

ルトロンでは、AIを活用してユーザーの視聴履歴などを分析し、ユーザーごとの趣味嗜好に合った動画コンテンツを自動生成している。そのテキストマイニングや画像解析、自動編集など動画に関する技術を応用して、提供するのがVIDEO BRAINだ。

VIDEO BRAINで動画を作るのに、特別な知識は要らない。PowerPointでプレゼン資料を作ったことがある人なら誰でも、いや、もしかしたらそれよりもずっと簡単に、動画が作れるかもしれない。

写真・動画やテキストなどの素材を画面から入力していくと、AIエンジンがデータを分析し、100種類以上ある動画フォーマットから、おすすめを提案してくれる。動画や画像の長さ・大きさは編集が可能。入力したテキストからテロップとして配分される文言なども微調整することができ、最短3分で動画を書き出すことができる。

テキストと画像の入稿から、編集、プレビューと動画の書き出しまで、VIDEO BRAINを操作するところを見せてもらったのだが、「すごい」と思わず声が出たのは、画像に合わせてテロップテキストの配分が自動で終わったところ。動画を説明する文章として、5000文字ぐらい入力ができるそうなのだが、それらが各画像の内容に沿って、何となくいい感じに割り振られるのだ。

もちろん、自動の割り当てで気に入らないところは、自分で手を加えることもできる。テロップの修正以外も、画像サイズやシーンの入れ替え、秒数の調整などを「パワポ」レベルの操作でできるので、本当に動画制作の経験は必要ない。

TechCrunchに掲載されているものでも短めの記事なら、動画や画像素材を取り込んで、ちょっとした動画コンテンツが簡単に出来上がりそうだ。実際、クローズドでサービスを導入しているメディア企業で、ニュース記事を動画化しているケースもあるということだった。

オープンエイト代表取締役社長 兼 CEOの高松雄康氏によれば、クローズドで先行導入している企業は大手を中心に約10社。外部向けコンテンツや広告動画だけでなく、CSR活動や、飲食業でのオペレーションマニュアルといった従業員教育にも使われているそうだ。

高松氏は「広告など、動画の活用は広がってきたが、まだまだ予算が小さく、体制がないために取り組めないという企業は多い。また、社内向けマニュアルなど、そもそも大がかりな編集が不要で、必ずしも外部へ制作を依頼するほどではない場合もある。そういうケースでも、小さな予算で簡単に動画ができて、効果が試せる、という状況をVIDEO BRAINで提供したい」とサービス開始の背景について説明。「いろいろ試してもらって、動画を利用しようという企業の裾野を広げたい」と語った。

利用料金は月額15万円(契約期間1年間)。今後、素材のより適切なマッチングができるよう、さらにデータの学習・AIエンジンの改良を行っていくという。また高松氏によると「今秋には英語・中国語への対応を、年内には音声データへの対応も予定している」とのことだった。

オープンエイトでは、VIDEO BRAINの開発と推進を目的として、WiL未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。また動画事業のアドバイザーに江端浩人氏を迎え、VIDEO BRAINの機能強化や販売促進、海外展開を推進するという。

女性向けメディア「ルトロン」、渋谷区、宮崎市に続き、栃木県と提携——地域の魅力を動画で発信

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スマートフォン向けマーケティング事業、メディア事業を展開するオープンエイトは2月20日、同社が運営する動画メディア「ルトロン(LeTRONC)」にて栃木県と提携。“VERY GOOD LOCAL とちぎ”と題した栃木県ブランドの特設ページを公開し、ルトロンが取材した栃木県の魅力を11の動画コンテンツとして配信する。

ルトロンは2016年5月に公開された、“大人の女性”向けの動画メディアマガジン。30秒と短めの動画と取材記事で、旅行やグルメ、ファッション、フィットネスなどの暮らしの情報を月間180本提供し、自社サイトに加え、FacebookやInstagramなどのSNSと提携メディアへコンテンツを配信している。オープンエイトが2016年2月に買収した制作会社、THE CLIPが開発を行っているという。

栃木県は、JRグループの大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」の2018年の対象地として、県内各地の魅力を発信し、観光誘客を促す取り組みを行っている。その一環として動画での発信を検討していて、今回、コンテンツ制作についてルトロンとの提携が決まった。また、JR東日本の協力により、2月20日からの1週間、山手線や埼京線に設置されているトレインチャンネルで、ルトロン取材のコンテンツが放映される。

ルトロンにとって今回の提携は、2016年11月の渋谷区観光協会の公認メディア任命、2月17日の宮崎市との提携に続いて、地方自治体とともに地域の魅力を動画コンテンツによって発信する取り組みのひとつとなる。もちろんオープンエイトとしてはタイアップによるマネタイズという意図があるが、ルトロンが持つコンテンツ制作の強みによって、地方活性化に貢献していくとしている。

オープンエイト執行役員でルトロンを担当する針北陽平氏は、地方自治体との動画コンテンツへの取り組みについて、こう話す。「動画に魅力を感じる自治体は多いが、“100万回再生達成”など一発の当たりを求めがちだ。でもそういう動画を見ても、ユーザーはその地域へ行きたいとは思わないのが実態。我々は、食や観光地などの魅力が分かって、行ったときのイメージを訴求できるような動画をストックして、1年後でも2年後でも見られるようにすることが大切だと思っている。それに共感してもらえる自治体が増えてきた」(針北氏)

今後の展開について針北氏は「現在提携している自治体については、今の取り組み以降も一緒にやっていって、ストックを増やしたい。また、他の都道府県でも展開を広げて、日本津々浦々の魅力を発信していきたい」と言い、継続的な魅力発信の例として、先行する渋谷区観光協会との取り組みを挙げる。

「渋谷駅前のスクランブル交差点では、2017年年始の年越しカウントダウンを初めて車両通行止めにして、歩行者に開放してイベントとして行った。ルトロンでもそれを取材したのだが、正直コンテンツとしてまとめるのは大変だった。ニューヨークのタイムズスクエアのカウントダウンイベントみたいな、かっこいい、魅力あるイベント紹介にしていくために、定常的に取材を続けていきたい」(針北氏)

渋谷区はデジタルマーケティングの観光情報発信への活用を進めていて、ルトロンはコンテンツ制作分野でこの取り組みに参加していく、と針北氏は話す。渋谷区では、渋谷駅周辺だけではない、いくつもある魅力的なスポットの情報を全域で発信するために、3月までに区内の800カ所にビーコンを設置し、観光協会が2016年12月から提供を始めたスマホアプリ「PLAY! DIVERSITY SHIBUYA」への情報配信を行うという。ルトロンはこのアプリへの動画配信も行っていくそうだ。

「我々はコンテンツで課題解決する、というよりは、ユーザーの需要を喚起したい。コンテンツをSNSや提携メディアにも分散して配信しているのもそれが狙い。いつもFacebookをチェックしている人ならFacebook経由で情報を得たいだろうし、@cosmeが窓口になっている人もいるだろうし。デジタルマーケティングでそこにいるユーザーに届くようにしておいて、コンテンツの力でユーザーを動かす、という考え方だ。このところ、コンテンツの質の問題が挙がっているが、それはコンテンツの持つ力が強くなっているということでもある。もちろん、我々は取材・撮影したオリジナルのコンテンツを掲載していて、そこには自信があるけれども、自治体の公認を得ることで、よりユーザーに響くことになるだろう」(針北氏)