LINEは5000万人の「つながり消費」でECを変えようとしている

あらゆる商品を個人間で売買できるフリマアプリとして2014年3月にスタートした「LINE MALL」。サービス開始から5カ月を経て、国内5000万のLINEユーザーのつながりを商品購入に生かす新戦略を発表した。第1弾としては、LINEの友人間で商品をまとめ買いできる「LINE グループ購入」を28日から開始する。「つながり消費」を促すサービスを強化することで、LINE MALLは文字通り、モールアプリに変化しつつあるようだ。

リアルなつながりを消費に変える

「LINE グループ購入」の該当商品は食品や飲料などの日用品がメイン。通常価格よりも最大50%オフで購入できるのが特徴だ。注文方法は、代表者となるユーザーが商品を選び、LINEのトークやグループでまとめ買いする相手を指定する。その後、自身の購入個数を入力した注文書をLINEのメッセージで送り合い、参加メンバーの購入個数が最低個数を上回れば購入できる。決済はユーザーごとに行われ、商品は各家庭に届けられる。

グループ購入サービスは過去にもあったが、最大の違いは「リアルなつながりを消費に変えられるかどうか」だ。LINE執行役員の島村武士は従来のPCをベースとしたECについて、商品名を検索したり、スペックを比較して購入する「Pull Commerce(検索型EC)」が中心だったと指摘する。「Pull Commerceは特定の商品が欲しいケースには対応できても、ニーズが顕在化していないシーンでは利便性が高くない」。

これに対して「LINE グループ購入」は、新たなニーズを創出する「Push Commerce(プッシュ型EC)」だという。「みなさんが商品を買いたいと思った時に、自分発じゃないこともある。例えば妖怪ウォッチは、私じゃなくて子どもや妻に欲しいと言われて買ったりする」。Push Commerceは、LINEの友人や知人に推薦されることで、本来買おうとしていなかった商品に出会う機会を提供するものと言えそうだ。

「つながり消費」を促すサービスとしてはさらに、LINEの友人にギフト商品を送れる「LINE ギフト」を今秋に開始する予定。購入者はLINE MALL内でギフト商品を購入し、LINEの友達リストから送り先を選ぶだけで、相手の住所が知らなくても商品を送付できる。購入者は1人だけでなく、LINEの友だちを誘って割り勘することも可能だ。受取人はLINE上で届いたメッセージから住所や配送日を設定することで、商品を受け取れる。

27日に発表された新戦略の中には、ショッピングモール型のサービスも含まれている。具体的には、地域の生産者が収穫した農産物や、水揚げされたばかりの魚介類を販売する「LINE マルシェ」、オフラインで店舗展開している人気セレクトショップの店頭販売商品を購入できる「LINE セレクト」を年内に開始する予定。LINEとしては、両サービスに出店する店舗から販売手数料を徴収する。

開始時期は未定ながらも、クリエイターがハンドメイド商品を量産製造できるように支援する「LINE クリエイターズモール」も手がける。同サービスは、LINE MALLでユーザーから多くの「お気に入り」登録されたハンドメイド商品に対して、LINE MALLの審査を経てから、工場に量産化のオファーができるというもの。クリエイターにとっては、個人では難しい量産が可能になり、工場としては、職人や機械の遊休時間を有効活用できるメリットがある。

EC化率の白地図を全部取る

LINE MALLはフリマアプリとしてスタートしたこともあり、メルカリやフリルといったアプリと競合視されることが多い。この点について島村は、「LINE MALLをフリマサービスと考えていたら、サービス名はLINEフリマにしていた。LINE MALLはあくまでモール。個人間のやりとりに限らず、新しいECの形を目指している」と語り、フリマアプリとは見ているところが違うと言い切る。

経済産業省の調査によれば、小売りやサービス業におけるB2C市場のEC化率は3.1%にとどまっている。LINE執行役員の舛田淳は、ECには攻めるべき「白地図」が残っているといい、LINE MALLでは「白地図を全部取ることを目指す」と意気込んでいる。「最大のリアルグラフを持つプラットフォーム上でECを展開するのが唯一かつ最大の強み」。


「LINE MALL」の定額配送はユーザーの心理的ハードルを下げる

新品・中古に関わらず、あらゆる商品をスマートフォンで売買できるフリマアプリ「LINE MALL」が30日、離島を含む全国一律でサイズ別の定額料金で配送できる「LINE配送」を開始した。ファッション通販を手がけるフェリシモとの提携により実現した。例えば、3辺の長さの合計が60cm以下の送料は全国一律で650円。佐川急便やヤマト運輸で東京から北海道まで送った場合と比べて500円近く安くなるわけだが、本質はユーザーの心理的なハードルを下げるところにありそうだ。

LINE MALLは出品者が送料を全額負担するため、販売価格に送料を上乗せした金額で出品する仕組み。購入者としては、地域ごとに異なる宅配業者の料金表をチェックして送料を計算しなくて済むので便利だが、出品者からすると、配送先が遠くなるほど送料がかさみ、その分の収益が少なくなるわけだ。

一方、LINE配送は誰に売れても送料が変わらないので、あの見にくい配送料金表とにらめっこして値付けに悩む必要もなくなり、出品時の心理的なハードルが下がりそう。レターパックライトやクロネコメール便といった安価な配送方法も選べるので、商品のサイズに応じてLINE配送と、これまでどおり一般の配送サービスとを使い分けるのがよさそうだ。

心理的なハードルが下がるのは出品者だけではない。LINE配送を利用する出品者は取引成立後、日本郵便の「ゆうパック」で神戸市にあるフェリシモの物流センターあてに着払いで商品を送り、物流センター内で購入者の配送先情報を印刷した伝票に貼り替えて出荷する。物流センターを中継することで、出品者と購入者が個人情報をやりとりしない「匿名配送」が可能になるわけだ。購入者は出品者に直接住所を教える必要がなくなるので、今まで以上に安心して取り引きできるかもしれない。

LINE MALLは2013年12月にサービスを開始。現時点での月間流通総額は非公表だが、アプリのダウンロード数は約200万件。スマホ向けフリマアプリの競合としては、メルカリやFril(フリル)がある。メルカリは7月に400万ダウンロードを突破し、月間流通金額は「10億円を大幅に超える」ことを明らかにした。一方、女性に特化したフリルも7月、アプリのダウンロード数が150万件に達し、月間流通総額が5億円を上回ることを発表した。LINE MALLは年内にも企業による出品を開始し、事業拡大を図る狙い。LINEは今後、物流センターで他社のチラシを同封する広告ビジネスも視野に入れているという。


「LINE MALL」が販売手数料を無料化、競合フリマアプリに衝撃か

ヤフーミクシィサイバーエージェントなど大手ネット企業に加えて、メルカリFrilなどのスタートアップが続々と参入する個人間取引(C2C)市場。いわゆるフリマアプリと言われるこの分野ではいくつかのサービスが販売手数料無料をうたっているが、6日に「LINE MALL」がこの動きに追随した。国内で圧倒的なユーザー数を誇るLINEが手数料無料化に踏み切ったことで、勢力図に大きな影響を与えそうだ。

LINE MALLのイメージ

LINE MALLは商品のジャンルや新品・中古に関わらず、あらゆる商品を売買できる。出品は一般ユーザーか企業かを問わず、事前審査も不要。スマホで撮影した写真を利用し、販売価格を設定、出品ボタンを押すという3ステップだけで出品できる手軽さがウリだ。2013年12月にAndroid版で先行スタートし、これまでは出品者から商品代金の10%を手数料として徴収していた。今回の無料化に伴い、過去に商品を販売した人に対しては手数料を払い戻す。

6日には、LINE MALLのiPhoneアプリも公開した。これにあわせて、アプリ内に新カテゴリとして「LINEセール」を設置。国内外のバイヤーが集めた商品を中心に、LINEセールでないと購入しづらい商品やお得な価格の商品を7日午後12時30分より毎日紹介していく。

LINEは手数料を無料化した理由について、「多種多様な出品を促してMALL全体のコミュニケーションを活性化させるため」と説明。LINE MALL単体での収益化については「その段階ではない」としている。