NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA/ESA/JPL-Caltech

火星探査ローバーのPerseveranceには、火星の地表にある岩石や堆積物、大気を含むサンプルを採取してパッキングする役割があります。しかしNASAにはまだそれを地球へと持ち帰る手段がありません。NASAはそのサンプルを手に地球へ持ち帰る宇宙機Mars Ascent Vehicle (MAV)の開発製造企業としてロッキード・マーティンを選定しました。

これはNASAの火星サンプルリターン計画において、無人機で地球にサンプルを持ち帰る最初の往復ミッションになります。このミッションではMAVを搭載するサンプル回収用着陸機(Sample Retrieval Lander)がジェゼロクレーター近辺に着陸、Perseveranceが残したサンプルを拾いあつめてMAVに積み込み、発射台としてMAVを地球に向け打ち上げます。

ロッキードマーティンは複数のMAVプロトタイプを用意しテストします。NASAは、ロケットの地上支援装置の設計と開発に加えて、MAV統合システムの設計、開発、テスト、評価を請け負っています。

言葉で説明すればこれだけのことですが、いざ実行に移すとなるとそれは非常に困難なミッションになると予想されます。MAVは、火星の過酷な環境に耐えるべく堅牢に作られ、他のNASAの宇宙機と完璧に連携する必要があります。さらにMAVは2026年までに打ち上げられる予定のサンプル回収用着陸機に搭載できるぐらいのコンパクトさに仕上げられなければなりません。

契約は1億9400万ドルで2月25日からオプション基幹含め6年の契約期間になるとのこと。火星からのサンプルリターンは、地球以外の惑星からの初のリターンミッションになる予定で、成功すれば生命が存在した可能性もある初期からの火星の歴史を明らかにする重要な資料が得られると考えられています。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

NASAが「アルテミス1号」にAlexaおよびCiscoのWebex統合、音声操作でテレメトリー読上げやビデオ通話なども可能に

NASAが「アルテミス1号」にAlexaおよびCiscoのWebexを統合、音声操作でテレメトリー読上げやビデオ通話なども可能に

Amazon

NASAは、Amazon、Cisco、ロッキード・マーティンと協力して宇宙飛行士がAI音声アシスタントなど商用技術によって、その活動に利益を得られるかどうかを確認する実験計画「Callisto」を発表しました。

Callistoでは、Amazonの音声アシスタントAlexaおよびCiscoのWebex技術をOrion宇宙船に組み込み、音声アシスタントやビデオ通話およびホワイトボード機能といった商用コミュニケーション技術の宇宙空間での有効性を確認します。

音声アシスタントにビデオ通話といえば、映画『インターステラー』でマシュー・マコノヒー演じるクーパーが、宇宙船に届いた家族からのビデオメッセージを見るシーンが思い出されます。あの場面ではクーパーが「数十年分のビデオメッセージがたまっている」と言うコンピューターに対して「最初から再生しろ」と音声で指示を出し、それを視聴します。

実験ではそれと同じようなことを、AmazonやCiscoの商用技術で実現できないか探ってみようというわけです。

最初の試験飛行は、無人のOrion宇宙船が月を周回したのちに地球に戻るアルテミス1号ミッションで実施されます。無人で行われるため、ヒューストンの宇宙センターにいるオペレーターが、仮想の乗組員として宇宙船に音声コマンドを送信、それが船内のスピーカーで再生され、Alexaがそれに対して期待するように動作するか、Webexを使用できるかなどを確かめるとのこと。Alexaは宇宙船のテレメトリーを監視できるように組み込まれ、飛行士は宇宙船の移動速度や月まで残りの距離をたずねたりすることができるようになるでしょう。

また、ホワイトボードの機能は機内の複数のカメラを使用してテストされ、地上管制からの書き込みが機内できちんと表示されるかを確認します。地上と宇宙で落書きを送りあうのにかかる時間は、管制センターが通信の遅れに対処するための方法を検討することにも役立ちます。

深宇宙ではインターネット接続など利用できるべくもありませんが、AlexaやWebexが機能するには代替の通信ネットワークが必要になります。そのため、惑星間ミッション中の通信に使用されるNASAのDeep Space Network(DSN)が使用されます。

Amazonは、Artemis I の実験で得た知見を元に、将来のミッションのため、また地上のインターネット接続環境がほとんど利用できない人々のためにAlexaに改良を加えるとしています。また仮想乗組員として音声コマンドの送信などを体験する機会を、将来の宇宙飛行士である学生らへのSTEM教育の一環として提供することも考えています。

ゆくゆくは、宇宙船に統合された音声AIアシスタントが、長い深宇宙の旅で暇を持て余した飛行士の会話相手になることも想像できます。しかし飛行士には「何か面白いチャレンジを教えて、とだけは聞くな」とアドバイスしておくべきかもしれません。

(Source:AmazonEngadget日本版より転載)

民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

民間宇宙ステーションの時代が正式に到来する。Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社は先日、2027年に商用ステーションを起ち上げる計画を発表した。しかし、これは新しい宇宙経済を発展させるための次の論理的ステップに過ぎないと、各社は述べている。

関連記事:Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

「過去10年間は宇宙へのアクセスを構築する時代でしたが、次の10年は宇宙に行き先を構築する時代になります。それが、この業界における我々の重要な命題の1つです」と、VoyagerのDylan Taylor(ディラン・テイラー)CEOは述べている。

米国が初めて打ち上げた宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」に敬意を表して「Starlab(スターラブ)」と名付けられたこの新しい宇宙ステーションは、膨張式の居住モジュール、ドッキングノード、ロボットアームを備えたものになる。3社は官公庁と民間企業の両方からの強い需要を見込んでいるものの、NanoracksのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)CEOは「Starlabの中核は科学です」と強調した。

Starlabは最終的には観光客も受け入れることができるが、観光を第一に考えたプロジェクトではないと、マンバー氏は付け加えた。「宇宙観光旅行は話題になりますが、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、それ以上のものが必要です」と、同氏はいう。

3社は、NASAの「Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)」プロジェクトへの入札として、Starlabを同宇宙局に提出した。このプロジェクトでは、宇宙ステーションを開発する民間企業に最大で4億ドル(約454億円)の契約が割り当てられる。

このようなプロジェクトには莫大な公共投資が必要となるものだが、この資金提供は、特に国際宇宙ステーションの離脱が間近に迫っていることを考慮すると、NASAが地球低軌道における存在感を維持することに関心があると世界に示す意味でも重要であると、テイラー氏は述べている。

マンバー氏も同様の意見を述べている。「私たちは宇宙ステーションの空白期間を作りたくありません」と語る同氏は「業界や社会の誰もが、米国が低軌道に宇宙ステーションを持たない期間があってはならないことを理解しています」と続けた。

しかしながら、全体的には民間の資金が鍵となる。そこでVoyager社の出番だ。2021年、Nanoracksの過半数の株式を取得した同社は、プロジェクトの資金調達と資本配分を監督することになる。

「現実的には、米国議会から十分な資金を得ることはできません」と、マンバー氏はいう。「そんな時代は終わりました。これは商業的なプロジェクトです」。

LEO(地球低軌道)経済の将来については、企業や公的機関が設計の標準化と競争力の維持をどのように両立させるかなど、未だ不明な点が多い。

テイラー氏は、いくつかの重要な技術を標準化するには、コンソーシアムを起ち上げる方法が有効であると提案している。NASAからの投資も居住システムの共通化に役立つだろうと、Lockheed Martinの民間宇宙部門VPであるLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、TechCrunchによるインタビューの中で語っている。

「NASAは顧客として、宇宙輸送におけるこの並外れた革命を解き放ちました」と、マンバー氏は語る。「NASAがカーゴで成功したように、商用クルーで成功したように、宇宙に興味を持つ市場があれば、小規模な民間宇宙ステーションにも同じようなことが起こると予想できます」。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

NASA(米航空宇宙局)は以前から、老朽化した国際宇宙ステーション(ISS)に代わる商業運用の後継ステーションを民間企業に奨励してきた。Axiom Space(アクスアム・スペース)はすでにその意向を表明しているが、Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)で構成される新たなコンソーシアムは「史上初の自由飛行の商業宇宙ステーション」を建設し、2027年に運用を開始する予定だと発表した。

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この新しい宇宙ステーションは、米国で3番目に建設された宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」にちなんで「Starlab(スターラブ)」と名づけられる予定だ。Starlabには4人の宇宙飛行士が滞在する。その規模は国際宇宙ステーションよりもはるかに小さく、人間が居住できる加圧空間は国際宇宙ステーションの3分の1程度だ。そのため、ISSや中国の宇宙ステーションのように分割して軌道に乗せるのではなく、1回の打ち上げで軌道に乗せられると期待されている。

Voyagerが株式の過半数を保有するNanoracksは、現在ISSで使用されている多くの部品を設計・製造しており、この3社のチームは宇宙での運用においては豊富な経験を持つ。Voyagerはこのプロジェクトに戦略的指導と資本投資を行い、Lockheed MartinはStarlabの主要メーカーであると同時に、さまざまなテクニカル部品をつなげるインテグレーターでもある。

宇宙ステーションの主な構成要素は、Lockheedが製作した膨張式の居住モジュールで、貨物や乗組員を運ぶ宇宙船のドッキングカ所や、ステーションの外で貨物やペイロードを操作するための宇宙ステーションにあるようなロボットアームを備えている。

クルーとして想定されるのは、官民の研究者、メーカー、科学者で、宇宙旅行者などの商業的な顧客も含まれるという。NASAが民間ステーションを導入する意図は、公的資金を最大限に活用しながら、NASAにとって継続的な宇宙空間の占有をより持続可能なものにするために、多くの顧客の中の1人になることだ。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASAがアルテミス計画の月着陸機コンセプト開発でSpaceXやBlue Originなど5社と契約

NASAは、Artemis(アルテミス)計画の一環として、着陸機のコンセプトを開発する総額1億4600万ドル(約160億円)の契約を、SpaceX(スペースX)、Blue Origin(ブルーオリジン)、(ダイネティックス)を含む5社と締結した。

その内訳は、Blue Originに2650万ドル(約29億円)、Dyneticsに4080万ドル(44億6000万円)、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)に3520万ドル(約38億5000万円)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)に3480万ドル(約38億円)、SpaceXに940万ドル(約10億3000万円)となっている。提案書を提出したBlue Ridge Nebula Starlines(ブルー・リッジ・ネビュラ・スターライン)とCook & Chevalier Enterprises(クック・アンド・シュヴァリエ・エンタープライゼス)の2社のみが契約を獲得できなかった。

契約は、NextSTEP-2(Next Space Technologies for Exploration Partnerships、次世代宇宙探査技術パートナーシップ)のAppendix N(Sustainable Human Landing System Studies and Risk Reduction、持続可能な有人着陸システムの研究とリスク低減)に基づいて締結されたものだ。2021年7月初旬に発表された募集要項によると、この契約の目的は「コンセプトの研究、持続可能な有人着陸システムの運用コンセプト(地上および飛行)の開発、およびリスク低減活動のために、潜在的な商業パートナーと協働する」となっている。

これは実際には、選定された企業が着陸機の設計コンセプトを開発し、部品の試験を行い、性能や安全性などを評価することを意味する。

この契約は、2021年4月にNASAがSpaceXのみに与えた有人着陸システムの契約とは別のものだ。そちらの契約については、Blue OriginとDyneticsの両社が政府の監視機関に異議を唱え、後にBlue OriginはNASAを相手取った訴訟で反論しており、それは現在も継続中だ。

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しかし、今回の選定結果は、今後10年間の着陸機開発契約に影響を与えることになるだろう。NASAは声明で「これらの企業が行う仕事は、将来的にNASAが求める月周回軌道から月面までの定期的な宇宙飛行士の移動手段を提供するための戦略と要件の形成に、最終的に役立つことになるでしょう」と述べている。

Blue Originの提案は、Lockheed MartinとNorthrop Grumman、そしてDraper(ドレイパー)を含む、Blue Originが「ナショナルチーム」と呼ぶグループからのものだ(Lockheed社とNorthrop社は、Appendix Nの下で個別にも契約を獲得している)。

「この契約において、我らがナショナルチームは将来の持続可能な着陸機のコンセプトに貢献する重要な研究とリスク低減活動を行います」と、Blue Originの広報担当者はTechCrunchに説明している。「また、私たちはこの取り組みにおいて、他の複数の企業や全国のNASAフィールドセンターと密接に連携していきます」。

2020年に承認されたアルテミス計画は、アポロの時代以来となる人類の月面再訪だけでなく、2020年代後半までにそのような旅を定期的に行えるようにするという多くの目的がある。さらにNASAは、月に留まらず、火星にも人類を送り込む惑星間探査にまで拡げることを目指している。

「NASAの重要なパートナーとして、また商業的パートナーシップがいかに効果的に機能するかを示す好例として、Northrop Grummanは有人宇宙探査における実績を築き上げていきます」と、Northrop Grummanの民間商業衛星担当VPを務めるSteve Krein(スティーブ・クライン)氏は声明の中で述べている。「当社は、月への再訪と火星に人類を送るというNASAの野心的な目標を達成するために、Blue Originとナショナルチームとのパートナーシップを継続していきます」。

画像クレジット:Getty/Walter Myers/Stocktrek Images / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

軌道上の燃料補給サービスを目指すOrbit Fabの資金調達に航空宇宙分野大手ノースロップとロッキード参加

サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業のOrbit Fab(オービット・ファブ)は、軌道上における燃料補給サービスの第1人者になることを目指しており、その実現に向けて1000万ドル(約11億円)以上の資金を調達した。この資金は、早ければ2022年末に開始を予定している燃料補給実験に使われる。同社はこの実験で、2機の燃料補給シャトルを宇宙に送り、ドッキング、燃料の移送、ドッキング解除の3つのステップを繰り返し行う予定だ。

今回の投資ラウンドは、Asymmetry Ventures(アシンメトリー・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のSpaceFund(スペースファンド)と、新たな投資家として丸紅ベンチャーズおよびAudacious Venture Partners(オーデイシャス・ベンチャー・パートナーズ)が参加した。中でも注目すべきは、Northrop Grumman Corporation(ノースロップ・グラマン・コーポレーション)とLockheed Martin Ventures(ロッキード・マーチン・ベンチャーズ)の両社も出資に参加したことである。請負業者として競合する2社が一緒に投資を行うのは初めてのことだと、Orbit Fabの共同設立者であるJeremy Schiel(ジェレミー・シエル)氏はTechCrunchに語った。

「私たちはすべての船を引き上げる潮目のようなものです」と、シエル氏はいう。「どちらかの企業に競争力を与えるのではなく、宇宙における持続可能性のために、全体としてより良い選択肢を採ることができるのです」。

同氏のいう「2つの大手企業を仲良くさせること」は、宇宙空間での燃料補給という事業を有利に進めたい同社にとって、重要な鍵となる。2019年のTechCrunch Disrupt Battlefield(テッククランチ・ディスラプト・バトルフィールド)で最終選考に残ったOrbit Fabは、RAFTI(Rapid Attachable Fluid Transfer Interface、高速取付可能流体移送インターフェース)と呼ばれる給油バルブを開発しているが、この部品は宇宙機が地球を離れる前に設置する必要がある。つまり航空宇宙関連業者など大手顧客から、購買契約は衛星が軌道に乗る前に獲得しなけれはならないのだ。

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RAFTIを搭載した宇宙機は、地球低軌道や静止軌道、そして最終的にはシスルナ空間(地球と月の間)に配置されたOrbit Fabの燃料補給シャトルとドッキングできるようになる。2025年までには、すべての宇宙機にRAFTIが搭載されるようになることを期待していると、シエル氏は語っている。さらに長期的には、小惑星から採掘した材料を使って宇宙空間で燃料を製造するという、より大きな目標を同社は掲げている。

「私たちは宇宙のDow Chemical(ダウ・ケミカル)になりたいのです」と、シエル氏はいう。「月面採掘業者や小惑星採掘業者の最初の顧客となって、彼らが採掘した材料を買い取り、それを使って実用的な推進剤を軌道上で製造できるようにしたいと考えています」。

Orbit Fabによると、軌道上での燃料補給は急成長する新しい宇宙経済の基盤となるもので、物品や宇宙機をある軌道から別の軌道に移動させる必要が生じたり(これには非常に多くの燃料が必要だ)、資源を地球に戻すためのサプライチェーンを構築する際に不可欠となる。

「私たちは、宇宙で製造する推進剤のサプライチェーンになりたいのです」と、シエル氏は付け加えた。

画像クレジット:NicoElNino / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

次世代の月面探査車をGMとロッキード・マーティンが共同で開発中

人類が前回(1972年)、月を訪れたときには、比較的シンプルなバッテリー駆動の乗り物で移動した。NASAは次の有人月探査に向けて、月面探査車のアップグレードを検討している。

Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)とGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間5月26日、次世代の月面車を共同で開発していると発表した。これは以前の月面探査車よりも、より速いスピードで、より長い距離を走れるように設計されているという。このプロジェクトがNASAに採用されれば、この月面車は今後のアルテミス計画で使用されることになる。その最初のミッションは、無人で地球から月まで往来する飛行試験で、2021年11月に予定されている。

5月26日のメディア向け発表会で幹部が語ったところによると、提案申請書は2021年の第3四半期か第4四半期に発行されるだろうとのこと。NASAは提出された提案書を評価した後、契約を締結することになる。

前回のアポロ計画で使用された月面車は、着陸地点から約8キロメートル以内しか移動できなかったため、宇宙飛行士が月の北極や南極などの遠く離れた地点で重要なデータを収集することはできなかった。ちなみに月の円周は1万921キロメートルだ。2社はこれらの性能の大幅な向上を目指していると、ロッキードで月探査を担当するバイスプレジデントのKirk Shireman(カーク・シャイアマン)氏は語ったが、新型月面車に使用される素材や航続距離などの性能は、まだ正確に確定しているわけではないと言及した。

GMはこの月面車用の自律走行システムも開発する予定で、これにより安全性が向上し、宇宙飛行士がサンプルを収集したり、その他の科学的研究を行う能力が高まると、幹部は水曜日に語った。

GMは電気自動車や自律走行車の技術に、2025年までに270億ドル(約3兆円)以上を投資しており、その研究を月面車プロジェクトに活かすことを目指していると、GM Defense(GMディフェンス、GMの軍事製品部門)の成長戦略担当バイスプレジデントであるJeffrey Ryder(ジェフリー・ライダー)氏は語っている。「私たちは現在、これらの能力をどのようにアルテミス計画に関わる特定のミッションやオペレーションに適用するかについての調査を始めたところです」。

GMは地球上で行っているバッテリーや駆動システムの研究も、月面車の開発に活かしていくという。ライダー氏は、この月面車プログラムが他の市場機会につながることを期待している。

両社はこれまでにも、月面探査を含むNASAのミッションに技術を提供してきた。自動車メーカーのGMは、アポロ時代に使用された月面車のシャシーや車輪などの開発に協力。アポロ計画全般における誘導・航法システムの製造と統合も担当した。大手航空宇宙企業のロッキード・マーティンは、すべての火星探査を含むNASAのミッションで、宇宙船や動力システムの製造に携わっている。

両社は、今回の協業を「いくつかの取り組みの1つ」としており、今後も他のプロジェクトについて、さらなる発表が予定されているという。

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カテゴリー:宇宙
タグ:GMロッキード・マーティン探査車NASAアルテミス計画

画像クレジット:Chris Jackson / Staff / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロッキード・マーチンがロケットエンジンメーカーのエアロジェット・ロケットダインを約4550億円で買収

米国最大の防衛関連企業であるLockheed Martin(ロッキード・マーチン、LM)は、ロケットエンジンとミサイルメーカーのAerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイン、AR)を負債と純現金を含めて44億ドル(約4550億円)で買収し、宇宙と超音速分野へと注力する。この動きは、宇宙・防衛産業における競争の激化の中で起きた。

LMはプレスリリースの中で、今回の買収によって同社のポートフォリオに推進システムに関する専門知識が加わり、ARの技術はすでにLMのサプライチェーンの 「重要なコンポーネント」 になっていると述べた。同社はすでに、ARの推進システムを航空、ミサイル、射撃管制に利用している。

ARの2019年の売上は約20億ドル(約2070億円)だった。同社はカリフォルニア州エルセグンドに本社を置き、5000人近い従業員を抱え、2013年にGenCorpのAerojetとPratt & Whitney Rocketdyneが合併して設立された。同社は国防総省向けに固体ロケットモーターのほか、戦術・戦略ミサイルを製造している。

ARはUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)のDelta 4とAtlas 5ロケットの上段に搭載されるRL10ロケットエンジンを製造しており、NASAのSpace Launch System用のRS-25エンジンも製造している。

LMの今回の動きは、SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルーオリジン)などの新規参入企業に対抗して推進技術を強化し、米国政府との宇宙契約を獲得するためのものだ。一方でライバルのRaytheonは米航空宇宙・防衛大手のUnited Technologiesとの合併を準備している。

LMのJames Taiclet(ジェームズ・タイクレット)CEO は声明で、「ARの買収により、国内の防衛産業の基盤における重要な要素が維持・強化され、当社の顧客と納税者のコストが削減されます」と述べた。

ARのEileen Drake(アイリーン・ドレイク)CEOは「LMの一員として、私たちは米国の防衛と宇宙探査を可能にするという共通の目的を加速させるために、同社の豊富な専門知識と資源と私たちの高度な技術を集結します」と述べた。

買収は2021年後半に完了する見込みだが、規制当局やARの株主による承認プロセスが必要となる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Lockheed MartinAerojet Rocketdyne買収

画像クレジット:NASA

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

ロッキード・マーティンのリサ・キャラハン氏が語る月着陸船共同開発の今

NASAのアルテミス計画はやっと進み始めたところだが、民間パートナー企業たちは、月着陸システム開発の名誉を獲得しようと競い合っている。なかでもこの取り組みをリードしているのが、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)とBlue Origin(ブルー・オリジン)だ。ロッキードの副社長であり商用民間宇宙担当ジェネラルマネージャーのLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、共同作業は驚くほど円滑で成果も大きいと語る。

TC Sessions:Spaceに登壇したキャラハン氏は、そうした取り組みに最初から参加できることへの喜びを表していた。「やりたくない人なんて、いないでしょ?めちゃくちゃすごいことです」と彼女は話す。「私たちのスタッフには、アポロのときにはまだ生まれていなかった人が大勢います。なので、彼らは次世代の一員として、再び月に宇宙飛行士を送る計画に参加できることを、とても喜んでいます。私も個人的に、最初の女性を月に送ることになるという事実を誇らしく感じています」。

ロッキードは離陸モジュールの開発を行っており、その一方でNorthrup Grumman(ノースロップ・グラマン)とDraper(ドレイパー研究所)がその他のコンポーネントを、主契約者であるブルー・オリジンは着陸モジュールを担当していると、彼女は説明した。

「ブルー・オリジンの視点からすると、この企業の組み合わせは実におもしろいものです。ロッキードやノースロップ・グラマンやドレイパー研究所といったアポロの時代まで遡る老舗が、この国家的優先課題のために、ある意味、国民としての時間をともに過ごしているのですから」と彼女はいう。

昔からのライバルと新参企業との間に摩擦はないものかと案じるのは無理もないが、キャラハン氏によればその関係は非常に前向きだという。

「これは異なる文化の融合なのです。このチームのメンバー全員が、それによって成長していると私は考えています」と彼女はいう。「ブルー・オリジンは、元請け業者としてとてもよくやっています。みんなを大変に温かく迎え入れてくれます。私はその雰囲気を、社員章のない環境と呼んでいます。何らかの技術交流会議に出席しても、誰がどの会社の人間かはわからないでしょう。なぜなら全員が、取り組むべき仕事の担当者として適切な経歴を有する一流の人材だからです。なので、まったく境目がありません。その状態を、私たちはとても楽しんでいます」。

これはすべて、ほとんどの企業が業務方法の変更を余儀なくされたパンデミックの間のことだ。キャラハン氏は、計画を大転換するのではなく、まさしくこれまで続けてきた業務の近代化に重点を置いた賜物だと話した。

「おそらくこの5年間かそれ以上、私たちは、デジタルトランスフォーメーションと呼んでいるものに投資してきました。デジタルコラボレーションツールです。複数の人たちが同時にデザイン作業ができるよう、双子の宇宙船をデジタルで構築するものです」と彼女は説明する。「苦あれば楽ありといってもいいでしょうが、新型コロナウイルスのお陰でその取り組みが加速されました。このような仮想環境で、これまで思ってもみなかったかたちで、本当のコラボレーションができるのだと新型コロナは教えてくれています」。

ロッキードの次なる大きな節目は、Orion(オライオン)宇宙船を、ケープ・カナベラルのケネディー宇宙基地に届けることだ。

「本当にわくわくしてます。私たちがこのシステムをVBA(NASAの宇宙船組立棟)に届けると、その打ち上げ準備が完了します。2021年の予定です。そしてそれは、Space Launch System(スペース・ローンチ・システム)によって打ち上げられる最初のOrionとなります」とキャラハン氏は話していた。

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タグ:Lockheed Martinアルテミス計画

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(翻訳:金井哲夫)