出張写真撮影サービス運営のラブグラフが1.4億円の資金調達

カップル・家族のための出張写真撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」を運営するラブグラフは7月7日、GREE Venturesほか、数名の個人投資家を引受先とした、総額1.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金は既存事業の拡大、採用のほか、オウンドメディアの拡大、新規ブランドの立ち上げなどに充てるとしている。

カップルだけではなく、ウェディング、家族での利用も

ラブグラフの創業は2015年2月。もともと、同社の代表取締役CEOである駒下純兵氏が個人的な趣味として、カメラの練習も兼ねて友人カップルのデートに同行し、写真を撮影。その写真をウェブサイトに公開したところ、SNSで拡散され、撮影の依頼が増えたことから法人化した、という経緯だ。

Lovegraphの利用料金は、写真撮影やカメラマン出張料、 写真編集など全て込みで1万6000円(平日、休日ともに)となっている。

 

最初は“カップル”に特化した写真撮影サービスだったが、約2年半、事業を運営していく中で少しずつ用途が拡大。結婚式の前撮り、後撮りのほか、家族写真、友人同士の写真の撮影にも使われ始め、これまでに8000人以上が利用しているとのこと。

サービス開始以降、成長は続けているものの、今度は新たな課題が浮き彫りになってきた、と駒下氏は語る。

「ありがたいことに、『カップルの写真撮影といえばLovegraph』とイメージしてもらえるくらいカップル領域におけるブランディングには成功しました。ただし、そのイメージが強すぎることもあって、(一度は増えた)結婚式の前撮りや家族写真の撮影での利用にためらいを感じてしまうユーザーも出てきてしまいました」(駒下氏)

そうした状況を踏まえ、ラブグラフは新規ブランドの立ち上げに着手する。具体的には、現在のLovegraphはカップル向けにしつつ、ウェディング向け、家族向けに特化したブランドをつくる、というわけだ。既に友達同士のための出張フォト撮影サービス「Lovegraph friends(ラブグラフフレンズ)」は立ち上がっている。

ミレニアル世代にLovegraphを浸透させていく

駒下氏の趣味から始まったサービスだが、今後はミレニアル世代における「カメラマンによる写真撮影」の文化をつくっていくことが目的だという。

「これまで、写真撮影のサービスは七五三や成人式など、特別なタイミングでしか使うことはありませんでしたが、自分はもっと日常的に写真を撮る文化があってもいいと思っています。その役割をLovegraphが担いたい」(駒下氏)

そのためにラブグラフは新規メディアを立ち上げ、まだLovegraphを知らないミレニアル世代にアプローチを行っていく。「現在、ミレニアル世代の総人口は2500万人ほどいるのですが、その10〜20%をLovegraphのユーザーにしていきたい」と駒下氏。ラブグラフはカメラマンによる写真撮影を、より日常的なものにしていくことを狙っていく——。

「競合はセルカ棒」カップルのデートに同行撮影する「ラブグラフ」が口コミでじわり拡大

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「カップルのデート写真、撮ります」――昨年1月に個人の趣味で始まったカップルフォトサイト「Lovegraph(ラブグラフ)」が、10〜20代を中心にじわりと伸びている。カメラマンがカップルのデートに同行して撮影するサービス。プリクラや自撮りでは難しい、自然な表情が撮影できることが人気で、月間の撮影件数は100組以上、カップル写真を掲載するサイトは月間30万PVに上る。

友人カップルのデート写真投稿→「私達も撮ってほしい」

ラブグラフを立ち上げたのは、カメラマン志望だった現役大学生の駒下純兵さん。もともとは写真の練習を兼ねて友人カップルのデートに同行し、無料で撮影した作品をサイトに掲載していた。カップルがInstagramやTwitterに撮影されたデート写真を投稿すると、「私達も撮ってほしい」と口コミが拡散。撮影依頼が50件を超えると、一人では対応しきれなくなった。

大阪在住の駒下さんは当初、カップルから交通費だけをもらって、東京、山梨、福岡など全国に足を運んでいた。しかし、撮影依頼が増えるにつれ「遠方だと交通費がカップルの負担になる」と思い、現地にいる知り合いのカメラマンに撮影を依頼。その後も撮影依頼は順調に増え、今年2月に事業化に踏み切った。

現在はサイト経由で撮影依頼を受け、担当のカメラマンがカップルに返信。撮影場所を決め、デート中の自然な表情を撮影している。最も人気が高いのは、カメラマンが厳選した写真12枚をもらえるプランで、料金は撮影費が1万円、カメラマンに払う交通費が1500円。写真をイラストにしたり、動画を撮影するプランもある。

9割以上のカップルが写真掲載を承諾

サイト上には、掲載に承諾したカップルのデート写真が並ぶ。興味深いのは、9割以上のカップルが承諾していること。10代カップルがこぞってMixChannelにキス動画を投稿していることを考えると不思議ではないかもしれないが、見方を変えると、写真の満足度が高いから掲載を許可しているとも言えそうだ。最近では家族の写真も増え、毎日1組ペースで掲載している。

口コミで伸びるラブグラフに、アーティストも注目し始めた。中高生に人気のシンガーソングライター・MACOさんは、新曲のプロモーションでコラボを4月に展開。Twitterでハッシュタグ「#MACO_Lovegraph」とともに写真をツイートしたカップルの中から2組を選び、新曲をBGMにした動画をYouTubeに公開した。

6月18日には、Crystal Kayの3年ぶりとなるシングル「君がいたから」とコラボした動画を公開。家族愛をテーマにした同曲にあわせて、ラブグラフの映像スタッフが脚本を制作した。

カメラマンは全国各地で約120人が在籍する。その多くは週末限定で撮影するセミプロで、報酬は撮影費の50%。志望者には作品のポートフォリオを提出してもらい、面接を経て採用している。「毎月50人ほどの応募があって、採用者は5人程度」(駒下さん)となかなか厳しい審査があるようだ。6月には全国で写真教室を開く「PHaT PHOTO」と提携し、ラブグラフのカメラマン養成講座も始めた。

ラブグラフは駒下さんほか取締役が3名、エンジニア、デザイナー、インターンの計6名。いくつかのVCから投資の提案もあったが、当面は自己資金で運営していく。「撮影収入だけでなく、写真素材をレンタルする事業の需要も伸びています。ある程度のマネタイズはできているので、いまは投資を受けるよりも、シナジーのある企業と組んで事業を大きくしていきたいです」(駒下さん)。

自撮りカップルを見るたびに歯がゆさ

駒下純兵さん

駒下純兵さん

駒下さんは関西大学4年の現役大学生。ラブグラフを事業化する前はカメラマンを志望していて、ミスコンや美男美女大学生スナップサイト 「美学生図鑑」で撮影の腕を磨いていた。ラブグラフもその一環として始めたものだ。

カメラマンとしてのキャリアに未練はないのかと聞くと、駒下さんは「ミスコンのカメラマンをやっていて、ある程度は名前も知れたんですが達成感がなくて。もともとカメラ始めたのは、他人に喜んでもらいたかったから。僕が撮らなくてもラブグラフが大きくなれば喜んでもらえる」と話す。

出張撮影サービスとしては、ミクシィ子会社のノハナが家族の記念日を想定した有料プランを出していたり、スマートフォンからフォトウェディングを申し込む「ファマリー」などがある。カップルの出張撮影サービスではビッグプレイヤーがいないが、駒下さんは「競合はセルカ棒なんです」と言う。

「セルカ棒で自撮りしてるカップルを見るたびに、『うわー、絶対ラブグラフのほうがいいのに』って思います。僕らが作りたいのは、カップルがちゃんと写真を撮る文化。プリクラかセルカ棒でやっていることを、ラブグラフでやってほしいんです。」