Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップを一挙紹介

Y Combinator(YC)のインキュベータークラスは巨大なものになった。200社以上の企業を抱えた2019年の冬クラスは、これまでのYCで最大の規模である。一方で、インキュベーターはその本社をマウンテンビューからサンフランシスコに移す準備をしている。

実際それはとても巨大である。そのためYCは、デモデーを開催する方法を変更する必要に迫られた。すべてのピッチを1つのステージで行うのではなく、並行して行われる2つのステージに分割したのだ。それぞれ「パイオニア」ステージと「ミッション」ステージという名前が付けられている。このため、たとえ建物の中にいたとしても、すべてのピッチを1人で直接見ることはできなかった。

私たちはその場に参加し、それぞれのクラスの話を聞きながら見たもののメモを持ち寄った。以下に紹介するのは米国時間3月18日にピッチが行われた86社のスタートアップだ。2日目の記事はまた別途!

なお1日目の有望10社に関するまとめ記事は「Y Combinatorの2019年冬のDemo Day初日の有望スタートアップ10社」を別途参照してほしい

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ
・Part 1:パイオニアステージ(1)※この記事
・Part 2:パイオニアステージ(2)
・Part 3:パイオニアステージ(3)
・Part 4:パイオニアステージ(4)
・Part 5:ミッションステージ(1)
・Part 6:ミッションステージ(2)
・Part 7:ミッションステージ(3)
・Part 8:ミッションステージ(4)

パイオニアステージ

Career Karma
今後数年間で何億人もの人びとが転職する必要がある。Career Karmaはそうした人びとにレベル分けテストを課した上で、コーディングブートキャンプやその他のトレーニングプログラムへと送り込む。すると、そうしたトレーニングプログラム側から生徒1人あたり1000ドルが、スタートアップへキックバックされるという仕組みだ。収入を分け合う提携方式の人気が高まる中で、多くのスキルトレーニング企業が、最も可能性の高い生徒を入学させるために、喜んで支払いを行っている。

VanGo
子供や10代の若者を対象にしたオンデマンド配車サービス。創業者によれば「お母さんたちは他のお母さんたちを信頼している」ので、サービスを提供しているドライバーの85パーセントが母親であり、かつドライバー全員が女性である。彼らは、子供の親たちを助ける他の分野にも拡大する計画を立てている。

Team Mobot
シミュレートされたユーザーインターフェーステストは、すべてのバグを捕らえるわけではなく、技術に精通していない企業にとっては難しいものだろう。Team Mobotは、実際のデバイス上であらゆるアプリのUIを物理的にテストすることで、QAテストを実行してバグを発見する、一群のロボットを提供している。Team Mobotのロボットたちは時間が経つにつれて学習し正確さが向上する。スタートアップは次はIoTや医療機器産業への進出を狙っている。

Bento Club
オフィスワーカーのためのより安価なランチのデリバリー。顧客はリストから選ばれたレストランに事前に注文を行う。Bentoは店からランチを集め、顧客のオフィスから1ブロック以内に設置されたピックアップ場所へ全ての注文を配送する。顧客の38%が紹介によるものだ。

Basilica
人工知能システムを構築しようとしているほとんどのチームは、十分なデータを持っていない。そしてそうしたデータは、収集コストが高くなる可能性がある。Basilicaによれば、同社のトランスファーラーニング手法により、企業は100万個ではなく、わずか1000個のデータポイントで正確なAIを作成できると言う。Basilicaは、各産業分野向けの効率を向上させるために、顧客全体のデータを使うことでネットワーク効果を生み出す。

Keynua
ラテンアメリカでは、文書への署名を行うためには、面倒な本人確認が必要である。あなたがKeynuaを使用して、文章へ口頭で同意している短いビデオを撮影すると、相手は既存の動画を用いて、あなたの身元を確認する。このチームの以前の製品(Cinepapaya)は、2016年にFandangoに買収された。

Lumos
医師たちは医療情報を見つけるためには専門的なツールよりもGoogleを使うことが多いが、Googleの検索結果は広告に溢れている上に、結果の大部分が医師向けではなく患者向けである。Lumosは、医師のための医療用Q&A検索エンジンを、月額15ドルで提供する。ペンシルベニア大学での実験では、ローンチから一週間以内に、医学生の半数が毎日Lumosを使うようになったことが観察された。Lumosは、医師たちが信頼する研究や情報を理解し、治療中の重要な意思決定の時点でそうした情報へのアクセスを可能にすることで、より多くの潜在的ビジネスチャンスがあると言う。

Traverse Technologies
Traverseは、ソフトウェアを用いて、風力や水力発電に向く候補地を特定する。そして同社はその場所を買い、転売を行う。彼らは75万ドルで購入した小区画は、500万ドルで転売可能だと見積もっている。現在約5000万ドル相当の引き合いを受けている。

Basement
親しい友人同士のためのソーシャルネットワーク。公開の場所で投稿を行うソーシャルネットワークは、個人的なものとは感じられず、必然的に個人的な情報共有をためらうような、縁の薄い知人が増えて行ってしまう。Basementは、大学生や大学院生たちが、ただ本当に親しい友人たちだけを追加するようにデザインされている。Instagramスタイルの投稿ツールを提供しているが、WhatsAppチャットのような親密さを感じるコメントスレッドへとつながる。Basementは、ユーザーが不適切な人びと友達にならないようにユーザーに強制する必要があるだろうが、Facebookが実現したいと考えていることを実現できるチャンスがある。

CosmicJS
気軽に使えて簡単に管理できる、WordPressのようなCMSである。すでにKFC、MLB、およびDailymotionが顧客であると、同社は語っている。現在、毎月の定期収入でおよそ1万ドルを稼いでいるが、それが毎月15%成長していると彼らは語っている。

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[原文へ]

(翻訳:sako)

スマート自転車ヘルメットLumosはウィンカーが点滅し、減速するとブレーキランプが点灯する

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TechCrunchでは前後にライトが装備された自転車ヘルメットを紹介したことがある。しかしボストンのハードウェア・スタートアップ、Lumosが開発しているのはフロントライトに加えて無線接続で点滅する左右のウィンカー、内蔵の加速度計に反応して自動的に点灯するブレーキランプを装備したスマート自転車ヘルメットだ。

開発チームは、さきほどKickstarterでのキャンペーンを開始した。量産開始のためのクラウド・ファンディングの目標額は12万5000ドルで、資金が集まれば来年4月の出荷を予定している。これまでのところ資金はメンバーの自己資金と数人のエンジェル投資家によってきた。

「現在、ウィンカーとブレーキランプを装備した自転車ヘルメットは市場に出ていない。 Lumosが初めての製品となるはずだ。サイクリストはこれによって自分の意図を周囲の自動車や歩行者に効果的に伝えることができるようになり、安全性の向上に大きく寄与する」と共同ファウンダーのEu-wen Dingは言う。

Lumosの後部の三角形に配置されたLEDは走行中は点滅しているが、サイクリストがブレーキをかけて減速すると常時点灯に変わる。ヘルメットの左右に設けられたウィンカーは自転車のハンドルに取り付けられるリモコンスイッチでコントロールされる。右ないし左のスイッチを押すとそれぞれの側のウィンカーが点滅し、ヘルメットの内部でビープ音が鳴り、ウィンカーが作動していることをサイクリストに知らせる。

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Dingによれば、ウィンカーの操作には2.4 GHz RFチップが用いられているという。「RFチップによる無線通信は信頼性が高く電力消費も少ないのでこの用途には最適だ」とDingは説明する。

ハーバードビジネススクールに通っていたDingはハーバードで開催されたスタートアップイベントで機械エンジニアでもう1人の共同ファウンダーになるJeff Chenと知り合った。DingはChenにスマート自転車ヘルメットのアイディアを売り込み、その後2人はMITのハードウェア・ハッカソンでヘルメットのプロトタイプを製作して優勝した。そこでDingはビジネススクールからドロップアウトしてフルタイムでLumosに取り組むことにしたという。

Lumosでは9ヶ月前からヘルメット製造に関して中国のメーカーと協力している。IoTデバイスを専門とする香港のBrincアクセラレータのプログラムにも参加した。

Kickstarterの最初期の出資者は1個85ドルでLumosヘルメットを入手できる。その後時期が後になるにしたがって99ドル、119ドルなどとなる。この記事の執筆時点ですでに5万ドルの出資の約束が得られている。プロジェクトの発表後まだ1時間もたっていないので、目標額を達成できることは間違いない。

〔日本版〕翻訳の時点で9万7349ドルの出資の約束が集まっている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+