会計ソフトIntuitが約1兆3200億円でのメールインフラMailchimp買収と認める

米国時間9月13日午後、Intuitは同社がMailchimpの買収を進めているという根強い噂を認めた。120億ドル(約1兆3213億円)が投じられることで、有名なメールインフラ企業は同社の傘下に加わることになる。

Intuitは、メールマーケティングで知名度が高いとはいえないが、税金の計算をするソフトウェアTurboTaxでよく知られている(これと関連してレントシーキングの継続を求める政府へのロビー活動でも)。また最近では、Credit Karmaの買収と、やや昔に行ったMintの買収でも知られている。

Mailchimpの買収は現金と株の両方で行われる。

「なぜIntuitは、時価総額の10%も使ってメールマーケティング企業を買うのか?」今、あなたの頭の中に疑問が湧いていても当然だ。

プレスリリースによると、Intuitは、この買収が「同社による世界中の繁栄の強化と、同社がAIによるエキスパートのプラットフォームになることを促進する」と考えているという。いつもなら、同社のビジネス口調を読みやすい口調に翻訳すべきだが、ちょっとむずかしい。

同社はもっとわかりやすく、Mailchimpの買収で、同社が前から共有していた2つの戦略、すなわち小企業の成長のためのセンターになることと、小企業のミッドマーケットに革新をもたらすことを加速できるというべきだった。

この方がずっとわかりやすい。IntuitのQuickBooksサービスは中小企業によく知られている。おそらくIntuitは、小企業向けに販売できるサービスはもっとあるはずと考えている。少々無理も感じられるが、トップが到達した結論は、2つの企業のシナジー効果には、この買収の値札ショックを補償してあまりあるものがある、というものだ。

Intuitの株価は時間外でわずか0.15%上昇したが、これはウォール街がこの買収に対して肩をすくめているためだろう。しかも買収のリークのされ方と最終結果はややごたついた。それが、Intuitの株価にすでに織り込み済みだったかもしれない。

Mailchimpの本社のあるアトランタでは、この買収は歓迎されている。Mailchimpは、自己資本のみでやってきたことで有名だ。しかも、シリコンバレーの外で、ベンチャーキャピタル抜きでデカコーンになれるのなら、まさにその生きた証拠がここにある。

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット:Smith Collection/Gado

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ニュースレタープラットフォーム「Mailchimp」がeコマースへ本格的に進出

最近の数年間でMailchimpは、単純なニュースレターのプラットフォームから本格的なマーケティング企業に変貌した。同社のサービスはすでに、複数のeコマースサイトとの統合していたが、中小企業のための同社独自のオンラインストアと、新たにアポイント予約サービスを提供していく。

MailChimpには新たに「Websites & Commerce」というサービスプラン集が作られ、これら新しいサービスがそこに含まれる。このプランは無料から始まり、最も基本的な機能が提供されるが、売買に関しては2%の手数料を払う。月額10ドル(約1080円)の有料プランでは、Mailchimpというブランドが消えてユーザーはメールとチャットにアクセスでき、手数料は1.5%になる。月額29ドル(約3150円)の「Plus」プランになると、手数料は1つの注文につきわずか0.5%になる。

どのプランでもユーザーはページ数制限なし、帯域制限なしのサイトを作ることができ、SEOツールやGoogle Analyticsとの統合がある。ストアに関しては、ユーザーは商品のカタログを自分で作り、注文や税、発送方式などを自分で管理できる。これらすべてと、アポイントの機能は、当然ながらMailchimp本体と深く統合されている。

画像クレジット:Mailchimp

これらの新しいプランは現在ベータ版で、この新しいeコマース機能は5月18日までに米国と英国のMailchimpの顧客全員が利用できるようになる。アポイント予約機能は、全ユーザーが4月28日から利用できる。

コマースの機能を内蔵したことはMailchimpの進化の大きな一歩だ。しかもそれは、理に適っている。同社によると、その1400万の顧客の約40%がすでに何らかのかたちでコマースを行っており、その多くはMailchimpネイティブでコマースをやりたいと述べている。またユーザーの30%近くは、前述の既存のコマース機能とそれらの統合を利用しており、同社によるとそういうeコマース利用顧客のからの会費収入は2019年から2020年にかけて61%成長した。

Mailchimpはすでに、ウェブサイトやドメインやその他のコマース関連サービスを提供しており、今回の新しい機能は自然な延長のようだ。Mailchimpのストアから直接販売することも、サービス業がアポイントの予約を受け付けることも、ユーザーにとって次の一歩として自然だ。

同社が強調するのは、新しい分野に入っても既存のプロダクトや顧客から去るわけではない、という点だ。MailchimpのCEOで共同創業者のBen Chestnut(ベン・チェストナット)氏は、発表声明で次のように述べている。「私たちのスマートマーケティングソリューションを放棄するわけではないので、ご安心ください。私たちの目標は依然として世界最良のメールマーケティングを提供することです。私たちの顧客とパートナーのみなさまが、新しい機能とともに一貫性と継続性を求めていることは、よく承知しています。メールのデザインをできる限り容易にする努力を今後も続け、また数カ月後には新しくて美しいメールのテンプレート集を提供したいと考えています」。

画像クレジット:Mailchimp

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Mailchimpeコマース

画像クレジット:FilippoBacci/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マーケティングプラットフォームの変革を追求するMailchimpが、新しいAIツールをローンチ

Mailchimpは、使いやすいメールマガジン作成ツールを提供することからスタートした。それはほぼ20年前に遡る。同社は今でもメールマーケティングを手掛けているが、現在中核をなしているのは中小企業向けのマーケティング自動化プラットフォームであり、ウェブサイトビルダー、基本的なオンラインストア、デジタル広告サポート、およびそれらを把握するための分析サポートを提供している。フィールドは違っていても、同社の主要な目標はこれまでと変わらず、こうした機能すべてを中小企業ユーザーにとって活用しやすいものにすることだ。

外部からの資金調達を一度も行うことなく、Mailchimpは本日、AIベースのツールセットをローンチし、大企業が現在使用しているものと同じような機能を中小企業が簡単に利用できるサービスを担う新たな一歩を踏み出した。具体的には、買い物客向けにパーソナライズされた商品レコメンデーションや、どのユーザーが何を購入する可能性が最も高いかを判断する行動ターゲティングのための予測ツールの提供などが含まれる。さらに、ビジネスオーナーによるビジュアルアセット設計をサポートするAIベースの新しいツール(Sawaの買収に一部基づく)や、より効果的なメールのサブジェクトライン作成を支援するツール、

また、企業が次善の策を選択するための新しいツールもある。サービスにより収集されるすべてのデータを解析し、メールキャンペーンのパフォーマンスを改善するための実践的な推奨事項をユーザーに提供する。

Image Credits: Mailchimp

「この取り組みは4年ほど前に始まりました」と、Mailchimpの創設者であり、CEOのBen Chestnut(ベン・チェストナット)氏は語る。「私たちは高みへの成長を続けていました。メールマーケティングは当社にとって魅力的なビジネスであり、順調に進んでいました。そうしたなか、事業を売却して多大な利益を得る選択肢が巡ってきました。いくつかのオファーがあったのです。もちろん、それを受けることも考えました。メールマーケティングビジネスの成功者としておさまり、シンプルに収益を確保していくのか。あるいは、あらたな挑戦に向かうことで、Mailchimpの第2幕を切り拓くことができるだろうか。正直なところ、どうなるかはわかりませんでした。4年前のことになりますが、あらゆる可能性が渦巻いていました」。

しかし、当時データアナリティクスの責任者で現在はCPOを務めるJohn Foreman(ジョン・フォアマン)氏を含めたチームとの話し合いの結果、チェストナット氏は、マーケティング自動化分野を追求する新たな道を歩むことを選択した。その理由の一つは、メールマーケティング領域の競合が激しくなってきたことにあると同氏は説明する。「結果は見えています。つまり、これほど多くの競合と永続的に向き合うわけにはいきません。もっと技術や能力を高めなければならないと認識したのです」。

それは、メール関連のサービスを超えて、多様な新製品を創出することを意味した。

Image Credits: Mailchimp

「私たちにとって大きな変革でした」とチェストナット氏は語る。「eコマースをはじめ多様な顧客セグメントに向けた構築を整備する必要があり、そうしたことも当社にとって新しい取り組みでした。あらゆる種類の新規分野を追求することになりました。このような変革を従業員に促すことは、本当に大変なことです。社員が喜んで一緒にこの旅路を歩んでくれたことに、心から感謝しています。彼らは私を信頼してくれました。この秋のリリースは、私たちが4年間取り組んできたことの集大成です」。

助けとなったのは、Mailchimpがすでにeコマースの顧客を有していたことだった。彼らはシステムを限界まで推し進めてくれたとチェストナット氏は指摘する。ほんの数年前までは、Mailchimpの企業文化は彼らを少々厄介な存在と見なしていた。非常に要求の厳しい顧客だったと同氏は振り返る。大きな利益をもたらす存在でもなかった。当時、Mailchimpの最大の顧客は非営利機関であったが、彼らはテクノロジーを高度に追求することはなかった。

こうした変革にもかかわらず、Mailchimpはプロセスを加速するための買収はあまり行っていない。同社が行っていることの多く(ダイレクトメールの追加など)は、同社がすでに得意としていたことの延長線上にあるものだとチェストナット氏は主張する。一方で、社内に適切な専門知識を配するためにAIとMLの小規模の買収を行い、さらにLemonStandを含むeコマースを2社獲得している。直近では、英国の雑誌、ニュースレター、ポッドキャストを提供するCourierを買収し、出版業界への参入を開始した。

Mailchimpは、この新しいプロダクトとサービスによって、大手のeコマース企業が長い間有していたものと同等の機能を、複雑さを伴わずに中小企業が利用できるようにしようとしている。

機械学習に基づくツールを構築するにはデータが必要だが、それはMailchimpがすでに持っているものだ。

「私たちは何十年もマーケティングに携わってきました」とCPOのフォアマン氏は説明する。「当社のプラットフォーム上には何百万もの中小企業が存在します。ツールを構築し、ビジュアル設計の観点からそれらを統合する(必ずしも買収ではありません)だけに留まりません。何百万もの企業、何十億もの顧客を対象にした長年にわたるマーケティングビジネスで蓄積してきた共通のデータセットを有していますので、人工知能や機械学習などのインテリジェンスをどのように使用して、ツールをどのように連携させるかを検討しました」。

チェストナット氏は、しばらくは会社を同様の変革に導くことはないだろうと語る。「10年に1度しか大きな変化を起こせないと信じています」と同氏は続ける。「ですから、適切な選択をした上で投資するべきです。当社は、eコマースを可能にしたこのオールインワンのマーケティングプラットフォームに全社をあげて注力しています。それは無比の取り組みといえるでしょう。私が会社に求めるのは、徹底的に追求していくことです」。

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カテゴリー:人工知能・AI

タグ:Mailchimp

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(翻訳:Dragonfly)