駿台グループ、オンライン家庭教師サービス「manabo」を買収

駿台グループのSATTは6月6日、スマホとタブレットを使った家庭教師サービス「manabo」を提供するマナボの全株式を取得したと発表した。買収金額は非公開。manaboは今後、独立した経営体制のまま駿台グループの一員となる。

manaboはスマホアプリを通じて、生徒が宿題や問題集などの分からない部分を撮影し、チューターにオンデマンドでリアルタイムに質問できるサービス。manaboには現在約3500名の家庭教師が在籍していて、彼らが音声通話と手書きの画面共有によって学生を指導する。これまでの累計指導回数は約20万回だ。2015年頃から同社はこのシステムを塾向けに提供するビジネスに軸足を移しており、その導入社数は50社を超える。

塾向けビジネスを加速させるきっかけとなったのは、2016年11月に行われた資金調達ラウンドだ。同ラウンドでマナボはZ会グループなどから2億5000万円を調達し、同グループの経営体制を担うZEホールディングス取締役の下田勝昭氏を社外取締役に招いている。

しかし、今回マナボの買収を発表したのは、Z会グループにとって競合にあたる駿台グループだった。マナボ代表取締役の三橋克仁氏は、「2017年より駿台グループ向けにもmanaboを提供していたが、その連携において特にサービスの消費率が高かったこと、経営の独立性を重んじてくれること、(買収ディールに参加した中でも)提示された評価額が高かったことの3つが駿台グループを選んだ理由だ」と語る。

また、駿台グループはmanaboを他塾に提供することにも寛容で、「駿台グループに入ったことで一部の塾からは反発を受けるかもしれないが、こちら側はすべての塾に対してウェルカムな姿勢」と三橋氏は語る。なお、三橋氏はディールに参加した企業名を明かさなかったが、参加企業は全部で約5社。そのすべてが塾業界の企業だったという。

マナボは今後、駿台グループのアセットを生かしつつ、企業向けの教育研修や病院向けなど、他業種への拡大に注力するという。また、SATTと共同でEdTech領域の新サービス開発にも着手する。

ちなみに、今回のディールにおいて三橋氏のロックアップ期間は設定されていないという。「残念ながら買収金額は公開できないものの、個人レベルの話で言えば、今後お金のために働く必要はなくなった。これからは“ロマンとそろばん”のロマンの方に全力をかけたい」と語った。

オンライン家庭教師サービスのマナボがZ会グループと資本業務提携、2.5億円を調達

manabo

スマホやタブレットを使ったオンライン家庭教師サービス「manabo」を展開するマナボは、11月1日、Z会グループの持株会社である増進会出版社を引受先とする2.5億円の第三者割当増資の実施と、Z会の会員などを対象にmanaboサービスを提供する業務提携契約の締結を発表。また同日、Z会グループの経営管理を担うZEホールディングス取締役の下田勝昭氏、およびBloom & Co.代表の彌野泰弘氏の社外取締役就任も発表した。

manaboはスマホアプリを通じて、生徒が宿題や問題集などの分からない部分を撮影し、チューターにオンデマンドでリアルタイムに質問できるサービス。主に有名大学の学生がチューターとして2000人以上在席しており、得意科目をアプリの音声通話と手書きの画像共有で教える。

今回の資本業務提携により、Z会グループでは2017年4月より、Z会高校受験コース受講の中学3年生の全会員、栄光ゼミナール高等部“ナビオ”の全塾生、および10月26日に発表されたタブレット向けオンライン学習サービス「Z会Asteria(アステリア)」の会員を対象に、manaboのサービス提供を予定している。サービスは、マナボからZ会グループへは有償で提供される。両社は2017年度以降も対象範囲を順次拡大する方針で、サービスの共同開発の可能性について協議を進めていくという。

Z会Asteriaのティーザーサイト。

Z会Asteriaのティーザーサイト。

マナボでは、BtoCの自社サービス提供も行っているが、2015年末からはBtoBtoCの法人向けOEMサービス提供に軸足を置いている。そうした中、Z会グループの栄光ゼミナールとは2回のトライアルを実施。結果が好調であったことから、より深く提携を進めることとなり、今回の資本業務提携に結びついた。ちなみにマナボは、2014年9月にベネッセコーポレーションから資金調達を実施しているが、現在では「リアルタイム家庭教師」の名称で提供していたベネッセへのサービス業務契約は終了している。

マナボ代表取締役社長の三橋克仁氏は「自社サービスも将来的にはもちろん、テコ入れしていくが、BtoCサービスはやはり成長に時間がかかることが経験してみて分かった。今はBtoBtoCにリソースを強めに割いて、体力を付けたい。Z会はもちろん、それ以外の教育系事業会社とも多角的にやっていこうと考えている」と話す。

AI導入など、manabo以外のスタイルのオンライン教育サービス展開の可能性について質問してみると、三橋氏は「今のところはオンライン家庭教師サービスに集中してより深く、よりサービスクオリティが上がる方向でやっていく」と言う。「業界の動向を見ると、EduTechは2013〜2014年にかけて非常に盛り上がったが、その後Tech界隈の注目がFinTechやAI、IoT分野へシフトしていき、今は山を越えて下り坂の状態だと感じる。一方で、教育のリアルな現場のICTは、取り組むべき課題としてようやく浸透してきたところ。進み方は遅いけれども、先端のEduTechとの間にはまだまだギャップがあって、着実に成長している。投資対象としても働く領域としても、おもしろく、チャレンジしがいのある分野だ。我々はリアルな教育現場の中でも比較的意思決定の早い塾や私学などへアプローチして、まずは粛々とBtoBtoCでサービスを広げていくつもりだ」(三橋氏)

また、最近日本でもトレンドになってきているアクティブ・ラーニング(能動的学習)やアダプティブ・ラーニング(適応学習)などの教育手法とmanaboとの関係について、三橋氏はこう語る。「自律学習やアダプティブ・ラーニングの本質とは、“先生が生徒に(一方的に)教える”というのを“生徒が先生に(自発的に)学ぶ”という逆向きのベクトルに変えることで、それは元々manaboがサービスとしてやってきていること。あらためて大局がmanaboの目指す方向に向かっていると感じる」(三橋氏)