プログラミング教育用ロボットのOzobotが300万ドルを調達

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現在、市場にはプログラミング教育用のおもちゃがたくさん存在する。そして、そのほとんどがタブレットやスマートフォンとの連携を必要とするタイプのものだ。親たちは子ども達をなんとかスクリーンから遠ざけようとしているなか、みずからも父親である起業家のNader Hamda氏は、従来のおもちゃとは違ったプロダクトを開発したいと願っていた。また、高価な教育用おもちゃをいくつも観察していた彼は、手頃な値段でその代替品となるプロダクトを開発し、それを広く学校や学生に広めたいと思っていた。

彼が開発した教育用ロボット「Ozobot」は、ゴルフボール程度の大きさで、子どもが紙に描いた線をたどるロボットだ。異なる色の線を描くことでOzobotの挙動をコントロールすることができる。このロボットはオフラインで遊ぶこともできるが、専用のモバイルアプリを使ってOzobotを操作することも可能だ。また、このアプリはプログラミングを学べるような仕組みになっていて、子どもたちは自分が書いたプログラムをテキストメッセージを使ってロボットに送信することができる。それで近くのOzobotをコントロールするのだ。

Ozobotのスターターキットの価格は約60ドル。Ozobotのオンラインストアで購入することもできるし、Barnes & NobleやToys “R” Usなどの従来型の小売店でも取り扱っている。また、Hamda氏によれば、近日中にBest BuyとTargetでも取り扱いを開始する予定だという。これまでに、Ozobotはファミリーユーザーや教育者を中心に50万機以上のロボットを販売。同社はオリジナル版のOzobotの他にも、Bit やOzobot Evoエディションなどのロボットを開発している。

Ozobotの開発元であり、カリフォルニア州レドンドビーチに拠点をおくEvollve Incは現地時間15日、シリーズAで300万ドルを調達したことを発表した。これにより、同社はOzobotのさらなる向上を目指した開発を続けるとともに、アメリカ、フランス、韓国などに展開するOzobotに新機能や新コンテンツを追加していく予定だ。今回のシリーズAをリードしたのはTribeca Venture Partnersで、その他にも名称非公開のベンチャーキャピタルや、ZICO創業者のMark Rampolla氏をはじめとするエンジェル投資家も本ラウンドに参加している。

Rampolla氏は、これまで彼が所有するPowerPlant Venturesを通してエコロジー食品や農業分野のスタートアップに投資してきた人物だ。その彼がなぜエドテックに出資したのだろうか?Rampolla氏はTechCrunchの取材にこう答えてくれた。「家族や友人から調達したわずかなリソースしか持たないにもかかわらず、Nader氏はOzobotを完成させ、3000以上の学校に販売してきました。また、導入をした学校の教師からはすでに良い反応を得ています。この出資は、彼らのアーリービジネスの拡大を手助けするという目的があります」。

またRampolla氏は、ココナッツウォーターを販売するZICOがかつてそうであったように、Ozobotによってエドテックという分野に新しいカテゴリーが生まれる可能性もあると話す。彼によれば、ZICOが開拓したココナッツウォーターというカテゴリーには今では80以上のブランドが存在している。彼がZICOを創業した当時、アメリカ国内でココナッツウォーターを販売していたのは同社だけだったのにもかかわらずだ。Ozobotがこれから生み出すであろうカテゴリーとは、学生がもつスキルの上昇とともに成長する、手頃な値段の教育用ハードウェアというカテゴリーだろうと彼は話す。

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TechCrunchを訪れたOzobot CEOのNader Hamda氏

Ozobots CEOのNader Hamda氏は、「私たちのゴールは、子どもや大人がテクノロジーを消費するのではなく、それを創りだすという世界です。保育園児から博士号の学生にいたるまで、プログラミングを学ぶためのツールとしてOzobotを使ってくれればと思います。しかし、今のところは10代やそれ以下の子どもたちにフォーカスしていきます。そして、今後は新しい機能やコンテンツを追加することで、それよりも年齢の高い高校生にも深い体験を提供できるようなOzobotを開発していくつもりです」。

その新機能の1つが、それぞれのロボットが反応し合う「スマートソーシャルロボット」だ。これによって、互いが協力し合うようにプログラムされたロボットの「群れ」をつくることが可能になるとHamda氏は語る。また、同社は教室でそのまま使えるような教育カリキュラムを用意していく予定だ。

教育者たちは、みずから考えたOzobotの授業例をEvollveにシェアすることがしばしばある。その中でもHamda氏のお気に入りは、ある生物の先生が考えた授業だったという。その授業は、紙に描かれたヒトの体内図のなかでOzobotを移動させることで、食べ物が消化される過程を学ぶというものだ。

Ozobotの成長を加速する要因の1つとなったのは、同社とMarvel Avengersとのタイアップだ。配信元のディズニーは、Ozobotに取り付け可能な「着せ替え」を販売しており、それを装着するとOzobotが発する音や動きが変わるようになっている。なかでもIron ManやCaptain Americaなどが人気のキャラクターだ。同社は今年中にBlack Widow、Ultron、The Hulkの着せ替えも販売開始する予定だという。

Tribeca Venture Partnersの共同創業者兼マネージングディレクターであるBrian Hirch氏は、TechCrunchの取材に対して、コンシューマー向けハードウェアを開発するスタートアップに出資することが少ない同VCがOzobotへの出資を決めたのは、Ozobotが狙う市場の大きさが理由だったと語る。Gartner社による調べによれば、スマートトイの販売台数は今年の800万台から、2020年までには4億2100万台へ拡大するという。また、Juniper社は全世界でのスマートトイ販売台数が2020年までに112億台にまで膨れ上がると予測している。

Ozobotの競合となるのは、Dash & DotAnki CozmoBots_aliveOsmoなどの企業だ。しかし、Hirsch氏は、この市場は「勝者がすべてを獲得する」タイプの市場ではないと語る。80年代に流行したTransformers、Speak、Spell、そしてMinecraftなどのプロダクトまでを考えると、この市場に少数の勝者が存在しないことが分かるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter