Match Groupがひとり親向け最新デートアプリ「Stir」を米国で提供開始、スケジュール管理機能搭載

Tinder(ティンダー)、Match(マッチ)、OkCupid(オーケーキューピッド)、Hinge(ヒンジ)などを展開している出会い系アプリ大手のMatch Group(マッチ・グループ)が、米国時間3月21日、その出会い系サービスのラインナップに、シングルペアレント専用アプリStir(スター)を新たに追加した。今回のリリースは、既存の出会い系アプリでは十分なサービスを受けられていない、全米2000万人のシングルペアレントへの対応を目指すという。Stirの最大の特徴は「Stir Time」(スター・タイム)という名のスケジュール管理機能だ。この機能を使えば、デートの時間を調整する際の困難が軽減される。たとえばコペアレント(元配偶者との間で分担する養育)時間や、子どもの習い事、その他の子育て関連に関連する時間だ。

Match Groupによれば、シングルペアレントの4人に1人(27%)がスケジュールの調整でデートに行けないと回答していることから、Stir Timeを導入したのだという。

アプリ内の機能として、空いていることが多い曜日や時間帯を「午前」「午後」「夜」という一般的な形で指定することができる。こうすることで、いわゆる「自由時間」が週に数回しかないような親でも、同じようなスケジュールの人とマッチングすることができる。

画像クレジット:Match Group

デートの調整を容易にするだけでなく、Hingeと同様に、ユーザーがどのような関係を求めているのかをよりよく説明し、自分の個性をアピールすることができるように、アプリからの質問に答えるよう促す。

例えばStirはユーザー登録にあたって、子どものいない夜をどのように楽しみたいか、人間関係にどのように対処するか、週末は何をしているか、大声では言いにくいお気に入りの楽しみはあるか、酒は飲むか、どんなペットを飼っているか、などの質問をしてくる。その後、ユーザーは写真を追加し、残りのプロフィールを記入するよう促される。

画像クレジット:Match Group

Stirはサブスクリプションで収益を挙げるが、そこに含まれるサービスは、ユーザーが自分に「いいね!」をくれた人を確認したり、マッチングする前にメッセージを送ったり、プライバシー保護のために自分のプロフィールを好きな人にだけ見せるように設定したり、プロフィールを強調したり、誤ってパスしたプロフィールを巻き戻して見たり、目立つために「スーパーいいね!」を送る機能などだ。しかし、シングルペアレントにとって、それも養育費をもらっていないような人たちもいることを考えると、サブスクリプション費はかなり割高感があるかもしれない。テスト期間中のApp Storeのレビューには、この問題に言及するものが多く、アプリの他の機能は気に入っている人でも、価格設定が納得いかないという声があがっていた。

ユーザーからのフィードバックを受け、Stirはアプリとメッセージは無料で使用でき、オプションでサブスクリプションによる有料機能にアップグレードできるフリーミアムモデルに移行した。Stirは1カ月間、39.99ドル(約4800円)で、メッセージングとプロフィール調整機能のみを提供する。3カ月または6カ月の前払いで月額費用を抑えることができるが、その際にはアップグレードされた機能をフルセットで利用できる3カ月のプレミアムサブスクリプション89.99ドル(約1万1000円、または月額30ドル[約3600円])の利用を促される。

アプリ自体は、Match GroupのTinderやHingeのような仕組みで、写真中心のプロフィールを閲覧して、マッチング候補の相手を決めていくことに重点を置いている。ただし、スワイプではなく、Xやハートのアイコンをタップして、パスやいいね!を示す。中央のボタンを押すと「スーパーいいね!」のパックを5個入り1.60ドル(約192円)で購入することができる(よりたくさん買うこともできる)。

Match Groupの新規事業担当副社長のDinh Thi Bui(ディン・ティー・ブイ)氏は、このアプリの正式リリースに関する声明の中で「子どもがいることが、デートの邪魔になってはいけません」と述べている。「シングルペアレントのみなさんが祝福され、自分らしくいられるような出会いを提供することに注力致します。そうすることで、子育てだけでなく、個人的な生活にも目を向けられるようになっていただきたいと思っています」と彼は付け加えた。

しかし、Stir Time や、このアプリがひとり親に焦点を当てている(少なくとも、子どものいる人とデートすることに興味のない人とマッチするという頭痛の種は解消されている)にもかかわらず、このアプリは親向けの包括的な機能セットは提供していない。

例えば、性犯罪者がしばしば子どもへの接触手段として、独身女性親をターゲットにすることを考えると、デートする親にとってかなりの心配事となるマッチ候補の身元確認を行う機会は提供されていない。一方、Match Groupは、身元確認サービスのGarbo(ガルボ)に出資を行い、その後、Tinderに統合した。まもなくMatchの他の出会い系アプリでも同じことを行う予定だ。だが不思議なことにStirには提供されていない。

また、このアプリは、親が子どもの年齢(あるいは一般的な年齢範囲)を指定することができない。これは、年長の子どもを持つ人との交際には前向きでも、子どもが赤ちゃんの時期は再び経験する決心ができていない人がいることを考えると、もう1つの見落としだ。さらに、他の出会い系アプリ、たとえばBumble(バンブル)が提供するような高度なフィルタリングオプションがない。

Stirは、出会い系アプリ大手のMatch Groupが開発したBLK、Chispa、Upwardといったニッチな出会い系アプリの仲間に加わる。これらは、Match Groupの主力アプリ(Match)やその他のニッチな出会い体験の開発をサポートする、Match部門で開発されている。Stirも他と同様、Match社内に専門チームがある。

新しいアプリは、iOS App StoreGoogle Playの両方で利用可能だ。

編集部注:日本時間3月22日午後の時点で日本のApp Storeには登録されていない、Google Playには登録されているが日本での利用は解禁されていない。

画像クレジット:Match Group

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

Tinderも写真やプロフィールを見る前に会話をするバーチャルのブラインドデートを導入

米国時間2月10日、Tinderは新たなアプリ内機能で「ブラインドデート」を復活する。ただし今回は、2人の会員を一緒にブラインドデートに送り出すのではなく、お互いをソーシャルなチャットで紹介しあい、相手のプロフィールを見る前に対話とチャットができる。この機能は、写真ではなくお互いの人柄や会話に基づいて第一印象を得ることを狙っている。

Tinderの親会社であるMatch Groupは先に行われた決算報告でこの機能を追加する計画をちらつかせ、まだ新しい「Explore」セクションで新しい体験を試すことができ、ユーザーのエンゲージを継続できるようになったと述べた。2021年9月に導入したExploreは今では、Tinderのさまざまな対話的機能のホームであり、ビデオシリーズの「スワイプナイト」の他、互いの関心事項でマッチを見つけたり、マッチングの前に気軽なチャットを始めるなどの機能もある。後者をTinderは「ファストチャット」と呼んでおり、それがブラインドデート機能のベースでもある。

ブラインドデートを利用するためには、会員はまず、少々の肩慣らしの質問に答えてから、共通性に基づいて誰かとペアになる。2人は時間制限があるチャットを開始するが、相手の詳細はわからず、選択式の質問に答えるだけだ。軽い質問ばかりで、中には馬鹿らしいのもある。

・シャツを洗わずに__回着られます。
・ケチャップは___にもかけます。

時間が来たら、互いのプロフィールを見ることができる。そして気に入ったら、もっと相手のことを知ることができる。

Tinderによると、この新たな体験は、本物性を重視するZ世代のデート文化を反映している。同社によると、ブラインドデートのテストは大成功で、同じファストチャットを使った機能でも、最初からプロフィールを見られるものと比べてマッチの成立率が40%高かった。そこでTinderは今回、展開に踏み切ったのだ。

もちろん、Tinderのようなデートアプリの最大手が、写真に頼らない紹介方法を導入したのはちょっと皮肉だ。Tinderをはじめ、今のデートアプリはデートを表層的な環境に変えてしまったと批判されている。そこでは人間に関する決定が、写真の魅力だけに基づいて1秒にも満たない時間で行われてしまう。そのため近年は新種のデートアプリが勃興し「反表層的」で真実性があると謳っている。そんなアプリは、ルックスよりも人柄を重視して、写真を隠したり、音声チャットで互いを結びつけたりしている。S’MoreSwoonMeJigsawなどが、そのようなアプリの例だ。

しかしTinderは、本物的で人間的な出会いのためにわざわざまったく新しいアプリを作らなくても、自分たちが提供するブラインドデートで十分だと信じているのだ。

Tinderのプロダクトイノベーション担当副社長Kyle Miller(カイル・ミラー)氏は、Fast Chat:Blind Date(ファストチャット:ブラインドデート)の立ち上げの発表で次のように述べている。「写真で先入観を作らずに、会話で人柄を紹介することには、何か本当に特別の感覚があります。Tinderのブラインドデートは、意外なほど楽しくて、冗談なども言い合えるような、対話と結びつきを作れるTinderにとってもまったく新しい機能だ」。

英語圏では、今日からExploreの中でブラインドデートが展開される。グローバルな展開は数週間後だ。

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デートアプリTinderはネットで新たに知り合いを発見する「ソーシャルディスカバリー」に足を踏み出す

デートアプリTinder(ティンダー)とその親会社Match(マッチ)が、アプリを通じた個人的なつながりの未来を模索している中で、どのようなアイデアを試し、破棄したのかをみていくのは興味深い。そうしたものの1つが「Tinder Mixer」(ティンダー・ミクサー)と呼ばれるもので、Tinderのユーザーがグループビデオチャットに参加したり、近くにいる人と「ゲーム」をしたりする方法が一時的に提供されていたのだ。

この機能は、2020年ニュージーランドで短期間テストされたとの情報を得ているが、今後の実運用はされない。

Tinder Mixer機能は、アプリ研究者のAlessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルツィ)氏が、TinderのAndroidアプリのコードの中に痕跡を発見したことで明らかになった。この発見はまだ公表されていなかったが、私たちはこの製品の起源について調べてみた。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

パルツィ氏によれば、彼がデートアプリの中で見つけたリソースは、まだ開発途中の製品のように見えたものの、結局それはTinderがデート市場で続けている実験の中で、すでにテストされてすぐに終了したものだったという。

Tinderによれば、このTinder Mixerのテストが2021年の製品ロードマップに影響を与えることはなく、上で言及したTinder Mixer体験が実際に登場することはないという。

とはいえ、この機能が特に興味をそそった点は、Tinderが短期かつ実験的とはいえ、Tinderがソーシャルディスカバリー(リアルの知人同士がつながるのではなく、新しく知り合いを「発見する」ソーシャル活動)分野に一歩踏み出したことだった。通常なら、Tinderのユーザーは1対1で、相手のプロフィールをスワイプし、マッチングし、チャットを行い、時にはビデオ通話を行う。しかし、グループでのライブビデオチャットのようなものは、今のTinderは提供していない。

画像クレジット: Alessandro Paluzzi

とはいえ、ビデオを使うライブというのはMatchにとって新しいものではない。

それはMatchがこれまでも実験を行ってきた分野だ。たとえば1対多のビデオ放送機能を提供する「Plenty of Fish」(プレンティオブフィッシュ)や、世界中の人々と1対1のビデオチャットができる「Ablo」(アブロ)などが挙げられる。こうした実験は、同社が考えている「デート隣接」体験なのだ。言い換えれば、このような動画でのやりとりを通じて誰かと出会うことは可能だが、それは必ずしも主目的ではないということだ。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

こうしたビデオ体験は、Match史上最大の買収案件となったソウルのHyperconnect(ハイパーコネクト)の17億3000万ドル(約1893億円)での買収が発表されても継続し「ソーシャルディスカバリー」やライブストリーミング市場を含む将来に向けた道筋をつけさせるものとなった。

関連記事:出会い系大手のMatchがソウル拠点のHyperconnectを同社最大規模の1809億円で買収

Matchは、ソーシャルディスカバリーが大きな可能性を秘めた分野であり、実際、デートの2倍の規模の市場になると見積もっている。

Match GroupのCEOであるShar Dubey(シャー・デュベイ)氏は、先日開催されたJPモルガン主催の「テクノロジー・メディア・コミュニケーション会議」でこの点について触れ、Matchのいくつかの大規模なプラットフォームでは、多くのユーザーが「プラットフォーム上で同じ指向を持つ独身者たちとの共有体験やコミュニティ意識」をより求めていることが観察されていると述べた。

彼女は、テクノロジーの進歩によって、従来のスワイプ、マッチ、チャットで行われてたデートの流れ以上の豊かな体験を通して、他者との交流が可能になったのだと指摘する。そうした体験には少数対少数、多数対多数、1対1などのものが含まれている。

Hyperconnectは、Matchがこうした分野に展開する際に必要となる技術の多くを提供できる。

現在Hyperconnectは、Azar(アザール)とHakuna Live(ハクナライブ)という2つのアプリを提供しており、ユーザー同士がオンラインでつながることができる。2014年に開始された前者は、1対1のライブビデオやボイスチャットに焦点を当てており、一方2019年に開始された後者はオンライン放送の分野をカバーする。これらのアプリが、MatchがPlenty of FishやAbloで行ってきたライブストリーム体験に対応するものであることは、偶然ではない。

このようなライブストリーミングサービスは、若い人たちによく使われていることが多いので、Matchが将来的な特定の製品開発のためのためではなく、単なるデータ集めのために、同じく若い層が多いTinderでもこのようなライブストリーミング体験をテストしたかったのは理解できる。

まもなく完了するHyperconnectの買収と同時に、Matchはまず、手に入るアプリを使ってライブストリーミングおよびソーシャルディスカバリー市場での活動をアジアで拡大することになる。なぜならHyperconnectの利用と収益の75%はアジア市場から得られているからだ。それからMatchは、その国際的な経験と知識を活用して、まだ開拓されていない他の市場での成長を加速させることを計画している。

しかし、買収のもう1つの大きな理由は、MatchがHyperconnectの技術を同社の既存のデートアプリのポートフォリオに導入することで、より豊かな体験を生み出せるだけでなく「西洋的」なオンラインデートのやり方はまだ完全には受け入れられていないものの、ソーシャルディスカバリーは受け入れられている市場でのユーザーに、アピールできる可能性があると考えているからだ。

デュベイ氏はJPモルガンの会議で「ソーシャルディスカバリープラットフォームで人気のあるエクスペリエンスを、私たちのデート・プラットフォームに持ち込むことで、真の相乗効果が得られると考えています。また、ソーシャルディスカバリープラットフォームを強化することで、利用者の方がデートの目的を果たすお手伝いをすることができるようになります」と説明した。

これらのことがTinderにとってどのような意味を持つのかは、まだはっきりしていない。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:デートアプリTinderMatch GroupSNSビデオチャットHyperconnect

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

Match Groupが素性調査を行う非営利団体Garboに数億円の資金を投資

Tinder(ティンダー)、Match(マッチ)、OkCupid(オーケーキューピッド)、Hinge(ヒンジ)など、人気出会い系アプリの親会社であるMatch Group(マッチ・グループ)は、素性調査プラットフォームGarbo(ガーボ)に7桁ドル(数億円)の投資を行ったと、米国時間3月15日発表した。Match Groupのユーザーがオンラインで相手を選ぶときに、適切な情報を元に判断できるようにするのが狙いだ。この取り引きにより、MatchはGarboと親密に協力し合い、2021年後半にはTinderに素性調査技術を組み込み、その後、Match Groupが米国で展開している他の出会い系アプリにも導入していく予定だ。

ニューヨークを拠点とするGarboは、2018年、Kathryn Kosmides(キャサリン・コズミズ)氏によって設立された。コズミズ氏はジェンダーに基づく暴力の被害から立ち直った人物であり、暴力事件を起こした経歴が疑われる人物に関する重大な情報を、誰もが簡単に調べられるようにしたいと考えた。

画像クレジット:キャサリン・コズミズ氏(Match Group)

通常、非営利団体によって提供される素性調査サービスは、麻薬犯罪や軽い交通違反など、広範にわたる個人情報を表面化させてはくれるが、必ずしも暴力や虐待に関連するものとは限らない。しかも、料金は立場が弱い側のコミュニティに課せられることが多く、ジェンダーに基づく暴力には対応していないとGarboは指摘する

Garboは逮捕、有罪判決、接近禁止命令、迷惑行為、その他の暴力犯罪などに関連する公共の記録と、暴力や虐待に関する報告のみを収集し、低価格で素性調査サービスを提供している。このサービスは、相手の氏名、またはファーストネームと電話番号を入力するだけで利用できる。出会い系アプリに登録される個人情報は、大抵はこの程度しかないからだ。

するとこのサービスは「公正素性」チェックを行う。つまり、調査結果から麻薬所持容疑や飲酒または麻薬を使用しての運転、危険運転致死罪などを除外した内容が示される。

2020年、Garboはニューヨーク市エリアの500人を対象に、この技術のベータテストを実施した。するとたちまち、口コミだけで予約希望者が6000人にまで膨れ上がった。後にGarboは、この技術が全国規模で展開できる可能性を感じてテストを中止した。一般公開する前に、その準備を整えたかったからだ。

金銭的な支援をほとんど受けていない小さな非営利団体であったGarboは、そのためには大規模なパートナーが必要だと気がついた。その後、コズミズ氏はMatch Groupの安全関連の新責任者Tracey Breeden(トレイシー・ブリーデン)氏と知り合い、両者は、その技術を米国中のもっと多くのオーディエンスへ届けるために協力し合うことで合意した。

「あまりにも長い期間、世界中の女性や社会から阻害された人々は、数々の障壁に阻まれ、資源と安全から遠ざけられてきました」と、Match Groupの安全および社会的擁護責任者のブリーデン氏は、本日のニュースに関する声明の中で述べている。「企業は、そうした障壁を、テクノロジーと行動に根ざした真の協働によって取り除く役割を果たせるものと、私たちは認識しています。Match Groupとの提携により、Garboの思慮深く画期的な消費者向け素性調査は、情報による力と権利を利用者に提供し、テック界全体における安全な人間関係とオンラインコミュニティに通じる公平な道作りの一助となります」と彼女は話す。

Match Groupによる出会い系アプリの機能強化を目的とした外部の安全技術提供者への投資は、これで2回目になる。2020年初め、同社は、Tinderとその他の出会い系アプリに新たな安全機能を組み込む目的で、Noonlight(ヌーンライト)に投資を行っている。これは、ProPublica(プロパブリカ)とColumbia Journalism Investigations(コロンビア・ジャーナリズム・インベスティゲイションズ)が2019年12月に共同執筆した記事で激しく非難されたことを受けての対応だ。この記事では、Match Groupが既知の性犯罪者たちにアプリの使用を認めていたと伝えている。さらにMatch Groupには同社の出会い系アプリ利用者の素性調査に一環した指針がなく、利用者の安全は、利用者自身に責任を押しつけていたとも指摘している。

それに対して、Tinderの最大のライバルであるBumble(バンブル)は、Tinderのような旧来の出会い系アプリよりも女性に優しいことを売り言葉にし、悪質な人間から利用者を守るためにデザインされた機能を数多く展開した。最も新しいものとしては、悪質な人間が「Unmatch」(マッチ解除)を利用して自分の素性を隠す行為を阻止する手段がある。

「安全ではない」アプリという評判は、Tinderのみならず、オンライン出会い系アプリ業界全体に重大なダメージを及ぼすため、Match Groupがその問題に対処するための直接投資を決めたことは納得できる。例えばNoonlightへの投資では、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)が採り入れているものと似た、Tinderアプリの中で目立たない形で緊急通報できる機能や不正防止対策などの導入をMatch Groupは約束した。

Match Groupによれば、Garboはこの新しい資金を使って、製品、エンジニアリング、管理を担当する人材を雇用する予定だ。これには、エンジニアリングの責任者や中心的チームとなるエンジニア5人なども含まれる。このチームは、自然言語処理やAIなどのテクノロジーを駆使して、Garboの数々の能力を構築することになっている。

Garboはまた、Match Groupからの時間と資源の多大な貢献に力を得て製品を完成させ、それをTinderを手始めに、Match Groupの各製品に展開していく。一方Match Groupは、Garboの技術を、配車サービスなどの他のプラットフォームでも利用できるようにする同非営利団体の取り組みを後押しする。

ただし、Tinderで展開される場合は素性調査は有料になる。

とはいえMatch Groupでは、利用者の反応、どれだけの人が使いたがるか、どれほどの調査を利用者が求めるかなど、さまざまな要素に基づいて価格を設定すると話している。また、どれだけ深く統合するか、つまり、アプリからGarboへの外部リンクにするのか、アプリ内の一機能のようになるのかなど、そのかたちも未定だ。

Match Groupでは、この機能を展開する時期をTinderは「2021年後半」、他の出会い系アプリはそれ以降と述べるだけで、具体的には示していない。同社では、今後数カ月内に、米国以外の利用者に向けたサービスのための同類の投資を行うことも検討しているようだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Match GroupGarbo投資マッチングアプリジェンダー

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

出会い系大手のMatchがソウル拠点のHyperconnectを同社最大規模の1809億円で買収

出会い系大手のMatch Group(マッチグループ)は、米国時間2月9日午後、韓国のソーシャルネットワーキング企業であるHyperconnect(ハイパーコネクト)を、現金と株式を合わせ17億3000万ドル(約1809億4000万円)で買収すると発表した。これは韓国のスタートアップエコシステムにとって大きな勝利だ。

Hyperconnectによれば、同社は2020年には2億ドル(約209億2000万円)の売上(2019年比50%増)の収益を上げると予測されている。同社が提供する2つのアプリAzar(アザール)とHakuna(ハクナ)は、言葉の壁を超えてユーザー同士が交流できるアプリだ。2つのアプリは補完関係にあり、Azarが1対1のビデオチャットに特化しているのに対して、Hakuna Liveはオンラインライブ放送市場に特化している。両社はプレスリリースの中で、Hyperconnectの売上の75%はアジアからのものだと述べている。

これは、数多くのアプリや人気のある出会い系アプリのTinder(ティンダー)とHinge(ヒンジ)も所有しているMatch Groupにとって、これまでで最大の買収となる。

この買収とHyperconnectに関わるテーマの1つはテクノロジーだ。同社は現在、成熟している標準規格であるWebRTCの「初のモバイル版」を開発したと主張している。これは、中間サーバーとして機能する別の企業に依存することなく、ユーザー間に弾力性のあるピア・ツー・ピア接続(1対1の直接接続)を提供するように設計されたものだ。

たとえば2人の参加者の間のビデオチャットは、Hyperconnectのサーバーを介して配信されるのではなく、WebRTCを使用して2人の間で直接送信される。これは遅延をなくし信頼性を向上させるために設計されているが、一方Hyperconnectにとってもサービスの帯域幅のコスト削減が可能となる。WebRTCは現在、Google(グーグル)などの企業がGoogle Meet(グーグルミート)のような製品で使用しており、オープンソースの標準として十分に確立している。

WebRTCに対する革新的な取り組みに加えて、Hyperconnectは異なる言語で話したりテキストを書いたりする2人のユーザーが、アプリ内でリアルタイム翻訳を使用して、直接対話できるようにサポートするためのインフラストラクチャを構築した。Google Cloudのマーケティング投稿によれば、Hyperconnectは同クラウドサービスが提供する音声、リアルタイム翻訳、メッセージングAPIの上得意であるという。

両社の共同声明は、双方ともに研究開発とエンジニアリングを取引の鍵だと強調している。ということで、この大規模な買収が投げかける疑問は、Match Groupが一体何を開発しようとしているのかということだ。同グループは、これまでは自身のサービスを主に出会い系に限定してきたが、Hyperconnectから技術を取得することで、生放送やその他のメディアも視野に入れることができるかもしれない。

買収は2021第2四半期で完了する見込みだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Match GroupHyperconnect買収

画像クレジット:Johannes Spahn / EyeEm / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:sako)