会員数14万人の「MEDULLA」運営がスキンケア領域に進出、パーソナライズ×スマホUXで化粧品業界の変革へ

パーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」を手がけるSpartyは5月22日、スキンケア領域の新ブランド「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」の発売を開始した。

同サービスの特徴は肌診断の結果を軸に、約11万通りの中から自分に合った処方が提案されることだ。具体的には10個のオンラインアンケートに回答することで、自身の肌タイプや肌に関する悩みなどを特定していくところからスタート。その後カメラ撮影による肌状態の診断を実施すると、それらの結果を踏まえて自分用に最適化された化粧水と美容乳液が提案される。

価格は化粧水100mlと美容乳液80mlがセットで9200円、定期購入コースの場合は8280円(どちらも税抜)。商品が届いた後の定期カウンセリングも同サービスの1つのポイントで、診断結果をベースとしたスキンケアアドバイスを受けられるほか、フィードバックを通じて処方の内容をアップデートしていくこともできる。

商材の違いはあれど、サービスの構造や解決しようとしているユーザーのペインはSpartyがこれまで展開してきたMEDULLAと同様だ。MEDULLAでは日本国内に1万種類以上も存在すると言われるシャンプーの中から「自分に合ったものを探すのが大変」という悩みに対して、パーソナライズ×スマホUXの切り口から解決策を提案。この仕組みがユーザーから支持を集め、同サービスの会員数は累計14万人を超えた。

Spartyとしてはスキンケアにおいても同じような悩みが存在すると考えていて、今回スキンケア領域で新たなブランドをローンチすることを決めたという。

「パーソナライズスキンケアは米国で非常に熱い分野であり、日本国内でも資生堂の『Optune』など複数のサービスが生まれてきている状況だ。自分たちとしてはMEDULLAで培ってきた一連の購入体験に加えて、そこから得られたデータを基に全体のUXや処方ロジックを改善していく仕組みはスキンケア領域でも強みになると考えている。まずはその体験を軸にしっかりと市場を作り、パーソナルスキンケアの代表的なブランドを目指していく」(Sparty代表取締役社長の深山陽介氏)

深山氏の話では化粧水や美容乳液自体もこだわりの成分を活かして差別化できるようなものを開発しているとのことだが、そこにスマホを起点としたパーソナライズの体験を加えることで「顧客の課題を解決するサービスとして提供できる」点が1番のウリになるという。

新ブランドの肌診断ではオンラインの質問に加えて、カメラを使って肌状態を解析する仕組みも導入している(海外スタートアップの技術を活用しているとのこと)

また直近では新型コロナウイルスの影響で化粧品カウンターに出向いて商品を選ぶのが難しくなっていることもあり、オンライン完結で自分にあった製品を探せる手段としての需要もあるだろう。これに関しては実際にMEDULLAでもオンライン経由で新規顧客獲得数が増加傾向にあるとのことだった。

「(コロナが落ち着いていったとしても)化粧品カウンターで実際に肌に触れながら商品を選ぶというのは、しばらくは難しいのではないか。その環境において『スマホの中にある、あなたの美容院』のような形で、自宅にいながらスマホ上で簡単に肌状態を診断でき、パーソナライズされた最適なスキンケア製品が自宅まで届くという体験を提供していきたい」(深山氏)

深山氏によるとゆくゆくは今回の新ブランドとMEDULLAのサイトを統合して、さまざまなデータを基にユーザーに合った製品を提供していく計画なのだそう。1月の資金調達時にも「中長期的にいくつかのブランドを保有するD2Cホールディングスを目指している」という旨の話があったが、まずはパーソナライズ×デジタルを基軸として「化粧品メーカーや化粧品業界全体のあり方自体を変革していくようなチャレンジをしていきたい」という。

月商は2億円規模、会員数8万人のパーソナライズシャンプー「MEDULLA」が丸井などから6億円調達

Spartyのメンバー。前列中央が代表取締役CEOの深山陽介氏

パーソナライズシャンプーのD2Cブランド「MEDULLA」を手がけるSpartyは1月23日、丸井グループ、XTech Ventures、アカツキ、ジンズホールディングスを引受先とする第三者割当増資により総額で約6億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達を機に体験型店舗の運営やサロンとの提携など、オフライン展開を加速させていく計画。現在期間限定で有楽町マルイ1階にオープン中の店舗を3月1日より常設店舗として再オープンするほか、新たな店舗も開設していく予定だ。

なお今回の調達先は丸井グループを除いて全て既存投資家。SpartyではこれまでXTech、アカツキ、ジンズの3社に加え、サティス製薬やアイスタイル、赤坂優氏から資金調達を実施している。

「パーソナライズ×スマホUX」で急成長、会員は8万人突破

Spartyは2017年7月に博報堂出身の深山陽介氏(代表取締役CEO)らが立ち上げたスタートアップ。2018年5月よりユーザーの髪質や香りの好みなどを踏まえたパーソナライズシャンプー・MEDULLAの提供を開始している。

情報通の人は知っているかもしれないけれど、2018年にはOEM先のトラブルにより商品回収を行うなど一時は売り上げがほとんどない危機にも陥った。そこからサティス製薬と資本業務提携を結び、同社と協業する形で2019年4月に全面リニューアルを実施。同年11月からはヘアオイルの販売も始めた。

深山氏によると特に昨年の秋口以降、事業が一気に伸びたそう。現在会員数は8万人を超えるまでに成長し、2020年1月の月商は2億円近くを見込んでいるという。

プロダクトの特徴は「パーソナライズ×スマホUX」だ。MEDULLAはオンライン上で9つの質問に回答するだけでカルテを発行し、約3万通りの中から各ユーザーにカスタマイズしたレシピでシャンプーとリペアを製造する。

ユーザーはスマホをタップしていくだけで自分に合った納得感のある製品を手にすることが可能。フィードバックを送ればより自分に適した形へ処方を改善していくこともできる。

MEDULLAでは自分の髪質やなりたい髪など、9つの質問に対してスマホ上の画面をポチポチタップしながら回答していくだけで、自分に合った処方箋が作成される

質問回答後の画面

日本には1万種類以上のシャンプーが存在すると言われ、店頭やWeb上に様々な商品が並んでいる状況において自分に合ったものを見つけるのは大変だ。深山氏は「思考停止時代のUX」という表現もしていたけれど、実際に「いろんな商品を試したけど、どれがいいのかわからない。自分に本当に合ったものが手軽に手に入るならお金を払いたい」と考えるユーザーは多いという。

「美容はそうとう曖昧なものだと思っている。データだけでその人が本当に喜ぶものを提供できるかというと、その時の環境や気分、体験によっても大きく左右され難しい。だからこそデータで最適なものを提供することをベースにしつつも、ユーザーにデジタル起点でしっかりと寄り添い、曖昧な悩みを一緒に形にする。そしてずっと同じものではなく商品をどんどん変え、『サービス』にしていくことを大事にしている」(深山氏)

プロダクトを多くの顧客に届けるという観点では、Spartyは初期からサロンとの提携にも力を入れてきた。現在150店舗を超える提携サロンでは美容師が無料で髪質や頭皮の状況を診断し、MEDULLAを体験してもらった上で興味を持ったユーザーに販売する「体験型販売」を実施している。

ユーザーは美容師の診断を受けた上で実物を試してから購入できるのがメリット。通常通りユーザーのスマホを使ってオンラインで購入手続きをするため、サロン側は在庫を抱える必要がなく始めやすい。販売できると定期的にマージンが得られるので収益アップにも繋がる。デジタルを起点にサロンのビジネス構造をアップデートする取り組みと捉えることもできるだろう。

MEDULLAにとっても顧客とのタッチポイントが増えるだけでなく、“認知されてはいるものの購入には至っていなかった顧客”の背中を押すスイッチにもなりうる。

美容品ということもあり「実際に香りを試したい、対面で話を聞いて確認してから購入したいというニーズも一定数ある」(深山氏)ため、サロンはそのための場所として効果的。サロン経由で購入した顧客は翌月以降の継続率が高く、良質な顧客との接点になっているようだ。

サロン連携と並行して取り組んできたオフラインの自社店舗についても狙いは近しい。有楽町マルイ内の期間限定店舗では専任スタッフが無料でヘアカウンセリングや頭皮診断を行うほか、ヘアオイルを無料で使用できるブースを用意。ギフト用単品販売など店頭限定商品なども扱い、オンラインとオフラインを融合させたデジタルネイティブな体験型店舗として運営している。

丸井グループとの協業などでオンライン展開加速へ

今回の資金調達は上述してきた取り組みを加速させ、事業をさらに成長させていくことが大きな目的となる。直近では特に「店舗」「サロン」「人を起点としたブランド」の3つが注力ポイントだ。

店舗に関しては「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略を掲げる丸井グループとの協業を軸に、体験型店舗を広げていく計画。3月1日スタートの有楽町マルイの常設店のほか、渋谷ヒカリエ ShinQsや阪急うめだ本店などでも期間限定の店舗を開設する予定だ。

同時に提携サロンの拡大にも引き続き力を入れ、2020年に1000店まで増やすことを目指すという。

もう1つの人を起点としたブランドの構築は若干ベクトルが異なるが、深山氏いわく「消費財版のBASE」のような世界観を実現したいとのこと。MEDULLAと同様のフローで3万通りの中から処方を選び、デザインを変更した上で“自分のブランドとして”商品を簡単に製造販売できる仕組みを作る。

すでに先日より第一弾としてアーティストの伊藤千晃氏とタイアップしたシャンプートリートメントセットの販売を開始。このような事例を今後も増やしていく方針だ。

MEDULLAを最初にローンチしてから1年半以上が経過し、同サービスはもちろんマーケット環境にも様々な変化があった。近年はパーソナライズヘアケア商品も盛り上がってきていて、参入障壁自体はそこまで高くないこともあり、ボタニストやユニリーバなども昨年からこのビジネスに参入している。

そのような環境において深山氏が今後ビジネスを一層スケールさせていくためのポイントにあげていたのが、店舗やサロン、人起点のブランドを含めた「強固なチャネルを構築すること」だ。

「化粧品メーカーの歴史を紐解くと、それはチャネルを作ってきた歴史でもある。もちろんブランドも大事だが、チャネルを構築してそこにブランドを流せる土壌を作ってきた企業がビジネスを拡大してきた。今は様々なチャネルをデジタル起点で変革できるタイミングが訪れていて、自分たちもまさにそこに取り組んでいる」

「要はこれまで店舗にしてもサロンにしてもオフラインからオンラインが主流だったところを、『オンライン起点でいかにオフラインを最適化していくか』考えて体験を設計していくということ。パーソナライズ×スマホUXを軸として、チャネルに投資をして土台を作る。製造も含めたバリューチェーンを磨いていくに力を入れる」(深山氏)

まずは化粧品領域から「パーソナライズ×スマホUX」のモデルを広げていく方針で、今年の春頃を目処にスキンケア商品も販売する予定。ゆくゆくは化粧品以外も含めて、いくつかのブランドを保有するD2Cホールディングスを目指していきたいという。

100通りの処方の中から1本ずつ手作り、“パーソナライズシャンプー”の「MEDULLA」登場

Spartyは5月22日、女性向けの定期通販ブランド「MEDULLA(メデュラ)」からユーザーの髪質に合せてカスタマイズしたパーソナライズシャンプーとコンディショナーの発売を開始すると発表した。

MEDULLAは、公式サイトで自分の髪質、なりたい髪、香りの好みなど7つの質問に答えるだけで、自分に合ったシャンプーを届けてくれるサービスだ。質問の答えによって100以上の処方の中から1つのブレンドを見つけ、専門のラボで1本づつ手作りでシャンプーを製造するという。シャンプーとコンディショナーは2本セット(約2ヶ月分)で6800円だ。

MEDUULAに似たサービスとして、アメリカでは2017年12月に520万ドルを調達したProseやY Combinator出身のFunction Of Beautyなどがある。

Sparty代表取締役の深山陽介氏は、「日本には1万点以上のシャンプーが存在する。その数が多すぎるがゆえに、髪に悩む生活者が“選べない”という問題がある」と話し、質問にタップで答えるだけのUX、サブスクリプションモデルならではの長期的なコミュニケーション、自分の処方をSNSに投稿するなどインフルエンサーを活用した認知手法などで従来の一般ブランドとの差別化を目指すという。

MEDULLAのような価格の高いシャンプー製品を広めるために有効なのが、美容院を利用した認知拡大と拡販だ。MEDULLAは現時点で美容院4店舗と提携を結ぶ。「2018年度中に、MEDULLAブランドの体験の場として全国100店舗に拡大していきたい」と深山氏は語る。具体的には、美容業界で強力な影響力をもつと言われる卸業者(ディーラー)との関わりの少ない、フリーランス美容師を中心に協力関係を深めていきたいという。

「第一弾のプロダクトとしてシャンプーを選んだのは、化粧品の中でもブランドスイッチが起こりやすい製品で、3年に1度は新ブランドが大きく市場シェアを伸ばすケースがあるからだ。その例として、ノンシリコンというバリューでシェアを伸ばしたジャパンゲートウェイや、ボタニカルというライフバリューをもつボタニストなどがある。どちらも100億円以上の売り上げを作ったブランドだ。MEDULLAは、パーソナライズというバリューを起点としたD2Cブランドとして市場を奪いたい」(深山氏)

Spartyは2017年7月の創業。これまでに、エンジェルラウンドとしてエウレカ創業者の赤坂優氏から金額非公開の資金調達を行っている。当面の目標として、深山氏は「MEDULLAで年商5億円を目指すとともに、将来的には誰でもシャンプーブランドを作って販売できるようなプラットフォームを作りたい」と話した。