新生MERYが11月21日に開始――小学館とDeNAの共同出資会社として復活

DeNAと小学館の共同出資会社であるMERYは10月27日、新たな体制の元で女性向けメディア「MERY」を11月21日より提供すると明らかにした。

MERYはもともとDeNA傘下のペロリが提供していた女性向けキュレーションメディア。昨年12月に「WELQ」を始めとしたDeNA運営のキュレーションメディアが問題視された結果、他のメディアに少し遅れる形で同月7日にMERYも全記事を非公開にしていた。

DeNAでは記事を非公開にした後もMERY再始動のあり方を模索する中で、2017年4月に小学館とデジタルメディア事業を検討するための基本合意を締結。結果的には小学館が66.66%、DeNAが33.34%を出資する共同出資会社という形で、8月に株式会社MERYを設立した。

リスタートするMERYにおいては記事掲載に至るまでの作成、編集、校閲などの業務を小学館が、システム構築やネット上のマーケティングなどをDeNAが担当する。従来のMERYにおける運営体制を抜本的に刷新し、新たなプロセスで記事制作やメディア運営を行う。

具体的な体制についてはプレスリリース内で以下の記載がある。なお、MERYの代表取締役社長には小学館で「プチセブン」や「CanCam」の編集長を歴任した山岸博氏が就任する。

MERY公認ライターおよび編集部が執筆した記事は、法令に基づき各種確認を経て公開判断を行います。
1)MERY公認ライターとは、株式会社MERYにて新たに採用面接を行い、教育・研修を受けたライターです。
・一般投稿による記事は一切取り扱いません。
・非公開化前の旧「MERY」の記事は一切使用しません。
2)すべての記事は校閲、編集部の二重チェック後に公開いたします。

「MERYロス」という言葉も生まれるほど多くのファンを抱え再開が待ち望まれていた一方で、画像の無断転載に関する迷惑料の支払い交渉が終わっていない人から新会社設立時に不満の声もあがっていた。

公開停止中のDeNA「MERY」に新代表が就任——再開の可能性を模索

ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけていたキュレーションメディアの1つ、「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した問題は、3月13日に第三者委員会による調査報告書の内容と、関係者の処分(WELQを含むDeNA Palette事業の統括であり執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長の村田マリ氏が辞任意向(子会社iemoおよびFind Travel含む)を表明、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役の中川綾太郎氏が辞任。その他社員25人を含む合計30人の処分)が発表されたことで、ひとまず収束に向かっているようだ。

もちろん不正確、もしくは誤った情報で被害を受けた読者への補償をはじめとして、まだまだ関係者の抱える課題は少なくない。最近ではDeNAは謝罪広告も展開している。

あるサイトに掲載されたDeNAの謝罪広告

だがDeNA Paletteの今後については、調査報告書が発表された際の記者会見でDeNA創業者・代表取締役会長兼執行役員の南場智子氏が「事業の継続に関しては全く目処が立っておらず白紙」「この3カ月間、事業として継続することが可能か、また再開ありきではなく、どのような形であれば、問題を起こさないサービスになるか検討は進めてきた」「同じ形で再開することはあり得ず、どのような形であればありえるのか」といったコメントをしていたとおりで、直近に再開する予定はないとしていた。

そんな中、MERYを運営するペロリの新代表に、4月より元アイ・エム・ジェイ(IMJ)執行役員CMOの江端浩人氏が就任する予定であることがTechCrunch Japanの取材で明らかになった。

江端氏は伊藤忠商事などを経て2005年に日本コカ・コーラに入社。2012年9月より日本マイクロソフトの業務執行役員セントラルマーケティング本部長に就任。2014年11月よりIMJの執行役員CMOに就任していた。IMJのサイト上では、まさにDeNAの会見があった3月13日に「江端氏が2017年3月31日をもって一身上の都合により退任する」という発表がされていた。同氏は日本コカ・コーラ時代に会員数約1200万人、月間約10億ページビューまで成長した会員制サイト「コカ・コーラ パーク」(2016年10月にサービス終了。とはいえ2007年6月にスタートし、オウンドメディアの一時代を築いたサービスだ)を立ち上げるなど、デジタルマーケティング業界に明るい人物だ。

こんな話を聞くと「DeNAはMERYをすぐ復活させる気なのか」と思う人もいるかも知れないが、DeNA広報部ではこの人事を認めた上で、「あくまで再開については白紙。事業再開の可能性を含めて検討できる人物に全権を委ねた」としている。僕が業界関係者から聞いたところでも、実際今日明日の再開計画があるわけではないようだ。

DeNAは広告やマーケティングといった領域で知見のある「大人」に事業継続の可否までを委ねることで、社外とのコミュニケーションも含めて交通整理をしていくということだ。MERYの再開は未定だが、スタートアップとして運営してきたペロリ社が大きく変わることは間違いない。

「心より深くおわび」WELQを契機にした“キュレーション問題”でDeNAが謝罪

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏
左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけるキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」。中でも医療・ヘルスケア領域を対象にした「WELQ」の記事の信頼性に端を発した大騒動についてはTechCrunch Japanでもこれまで複数の記事でお伝えしてきた。

これを受けるかたちでDeNAは12月7日、東京・渋谷にてDeNA Paletteの全記事非公開化および第三者調査委員会の設置に関する記者会見を開催した。会見にはDeNA代表取締役CEOの守安功氏のほかDeNAの創業者であり取締役会長の南場智子氏、DeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏の3人が出席(南場氏については、本日になって追加で出席する旨の案内があった)。これまでの経緯を説明したのち、来場したメディアとの質疑応答を行った。

会見の冒頭、守安氏は改めて一連の問題に対して、自社サービスのユーザー、インターネットユーザー、取引先や株主、投資家などの関係者にして、「多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、心より深くおわび申し上げます。また、直接私からご説明する機会が遅くなってしまったことを、重ねてお詫び申し上げます」として謝罪した。

これまで本件について伝えてきた記事は以下の通り。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

改めて今回の経緯を説明すると、DeNAは2014年9月にiemoおよびペロリを買収。加えて2015年4月にはFind Travelを買収。DeNA Paletteとして合計10のキュレーションメディアを立ち上げた(WELQに関しては2015年10月のローンチ)。

だがその後はリンクした記事にあるとおりで、WELQを中心にして医学の知識に乏しい・誤った内容や薬機法に抵触する、もしくはその可能性が高い内容の記事が掲載されているにも関わらず、専門家の監修がなかったことが発覚した。

さらにはDeNA側が既存コンテンツのリライトを指示するようなマニュアルを用意し、クラウドソーシングなどを用いて記事を発注しているといったことなどが報じられた。会見で小林氏は記事作成のプロセス(記事作成は社内のプロデューサーが指示し、実際は社外のディレクターが外部パートナーやライターには中していた)を説明した上で、その品質等について最終的な責任を負う機能が明確に存在してなかったと説明。さらに前述のマニュアルの存在についても明らかにした。

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

そこで11月29日にWELQの全記事を非公開化。12月1日にはそれに加えてMERYを除く8媒体の全記事を非公開化。MERYに関しても、12月7日をもって全記事を非公開化している。

今回の騒動を受けてDeNAでは、WELQを読んだ結果の健康被害や記事の出展などの相談を受け付ける窓口を開設。コーポレートサイトのトップページに掲載するとした。また既報の通り第三者調査委員会を設置。これと並行して社内でプロジェクトチームを発足し体制の健全化に努めるとした。

続いて南場氏が「批判が組織や企業風土のあり方にまで及んだ。取締役会長そして創業者として、責任のある立場にあり、直接おわびを申し上げたく参りました」と謝罪した。これに続き守安氏が冒頭と同じくユーザーや取引先、株主などに対する謝罪の言葉を述べた。このあと2時間以上の質疑応答が続いたが、その様子はのちほど紹介する。

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

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先日のインタビューの内容とはどうも状況が異なるようだ。キュレーションメディア「WELQ」の記事公開停止に端を発したディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」の公開停止騒動。DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏は残る8つのキュレーションメディアの記事公開停止と自身の役員報酬の減額などを発表していた。

経緯をまとめた記事はこちら

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

本件に関する守安氏のインタビューはこちら

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

当初は子会社であるペロリが運営するファッション系キュレーションメディア「MERY」に関しては、運営体制も異なるため記事の非公開は行わないとしていたが、現時点ではかなりの割合の記事が非公開化されている状況だ。そして本日12月5日、DeNAはMERYに関しても12月7日に全記事非公開とすることを発表した。加えて取締役会の委嘱を受けた社外取締役を含む外部専門家による第三者調査委員会を設置し、事実関係の調査を行なうとしている。

TechCrunch Japanでは現在改めてDeNAへの取材を打診している。状況が確認でき次第、記事をアップデートする予定だ。

[速報]DeNAがキュレーションメディアをさらに強化——Find Travelを買収、6月には自社で2サービスを開始

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これまで住まい・インテリア特化の「iemo」と女性向けファッションの特化「MERY」と2つのキュレーションメディアを買収し、さらに自社で飲食特化の「CAFY」を立ち上げたディー・エヌ・エー(DeNA)が「DeNAパレット」と銘打ってキュレーションメディアのプラットフォームを拡大する。

DeNAは4月6日、旅行特化のキュレーションメディア「Find Travel」を手がけるFind Travelを2月に買収し子会社化したことを明らかにした。あわせて男子ファッションの「JOOY」、妊娠・出産。子育ての「cuta」の2つのキュレーションメディアを6月にも立ち上げる。2015年12月末までには合計10サービスまで拡大するとしている。

DeNAは現在サービスに関する発表会を開催中。詳細は追ってレポートする。

DeNAがキュレーション事業加速、MERYとiemoのノウハウ注入で「食」分野に進出

10月1日に女性向けファッションまとめサイト「MERY」と住まいに特化したまとめサイト「iemo」を運営する2社を約50億円で買収し、キュレーション事業に参入したディー・エヌ・エー(DeNA)。次なる展開は「食」をテーマとしたキュレーションサイトだ。

12月19日に正式公開した「CAFY(カフィー)」は自宅で手軽に作れるレシピなど、食に関するテーマの情報を紹介するサイト。レシピに加えて、「クリスマスの厳選スイーツ9選」や「ホームパーティーを華やかに演出するテーブルウェア7選」など、食卓に関するリスト記事が多い印象だ。

すでに掲載されているコンテンツの一部は、外部のライターが有償で執筆したもの。今後はMERYやiemoと同様に、一般ユーザーに無償で投稿してもらう。隙間時間にスマホで雑誌をめくるような感覚で見てもらうコンテンツを充実させていく方針だ。

「50億円効果」で買収から2カ月でローンチ

コンテンツ以外で特筆すべきは、サイト立ち上げの早さだろう。CAFYはMERYを運営するPeroli、iemo、DeNAの3社連携によるサービス。10月の買収直後からDeNAのメンバーを中心にチームを発足し、それからわずか2カ月あまりでサービス開始に至っている。

具体的な連携効果としては、CAFYのターゲットでもある主婦層向けの記事を手がけるiemoが、主婦に受けがいいコンテンツの編集方法を助言するとともに、人材面でもディレクターを派遣。Peroriはサイトの見せ方をアドバイスするなど、開発面で協力している。実際にCAFYはMERYのサイト構造を移植したかのようにも見える。

「iemoとMERYが1年かけて踏み固めてきたことを端的に注入している。iemoは1年で150万MAU(月間アクティブユーザー、9月時点)、MERYは1年半で1200万MAU(同)と急成長カーブを描いているが、両社のノウハウがあればさらに短期間で成長するのでは」(iemo代表取締役CEOの村田マリ)。ノウハウについては「企業秘密」とのことだが、これを獲得するためにDeNAは約50億円で両社を買収したと言えそうだ。

激戦区のグルメ分野キュレーション、勝算は?

DeNAはCAFYによって、読者層が大きい衣食住すべてのジャンルを網羅することになる。ただ、iemoとMERYの成長の背景には、圧倒的競合が不在たったことがあるのも事実だ。グルメ分野では食べログが「食べログまとめ」、ぐるなびが「メシこれ」、クックパッドが「クックパッドニュース」を展開するなど、すでにネット大手が参入済み。ほかにも堀江貴文プロデュースの「テリヤキ」「マカロニ」といったサービスもある。

食ジャンルのキュレーションは激戦区と言えそうだが、村田マリは勝算をこう語る。「食べログやぐるなび、クックパッドは自社サイトの集客のために事業をやっている。それに対してCAFYは、iemoとMERYが成長してきたように、メディアとして読者が求めるコンテンツを作る意識が強い。ユーザーの隙間時間を獲得できるメディアを目指している。」

左からPeroli中川綾太郎氏、DeNA牛尾正人氏、iemo村田マリ氏

外部コンテンツとの提携で著作権対策

ところで、キュレーションメディアで問題になりがちなのが著作権(パクリ)だ。実際、MERYは一部のコンテンツでは、外部サイトの画像や文章を無断転載した事例もあったりする。著作権的にグレーだとしても、上場企業であるDeNA傘下となると、これまで以上にコンプライアンスの風当たりが強くなってきそうだ。

この点について、DeNAでキュレーション事業を率いる牛尾正人は、「新しいサービスなので想定外のことが起きるかもしれないが、社会のコンセンサスを得ながら進めるしかない」と説明する。その一環として外部サービスと提携し、各社のコンテンツをMERYやiemo、CAFYの記事に「お墨付き」で利用できるようにする。第一弾としては「レシピブログ」「Snap dish」「ミイル」と提携する。

キュレーションサイトで国内最大級のアクセスを誇るNAVERまとめでも、サービスの成長に伴い、著作権侵害が指摘されるようになった。NAVERまとめは人的なチェックだけでなく、ゲッティイメージズやAmazon.co.jp、食べログなどと提携し、無許諾で各社が指定するコンテンツを記事に利用できるようにしてきたが、DeNAも同様にキュレーションの著作権対策を強化する動きを見せている。

「めちゃくちゃ美しいM&A」

DeNAが2社を買収した10月以降、各社の間では活発な交流が続いているという。買収当時、社員数が8人だったiemoは、DeNAからの出向で20人に拡大。Peroriも買収当時12人だった社員が倍増している。さらに、専属ではないが、広告営業や採用、マーケティング業務もDeNAが担当していることから、「一気に組織がスケールした」と村田マリは振り返る。

組織がスケールしたことで、iemoは「マネタイズの本丸」(村田マリ)でもある、建築家やリフォーム、インテリアメーカーなどの事業者とユーザーのマッチングを前倒しできると、DeNAとの相乗効果を語る。同様に、MERYも記事で紹介した商品を購入できるECによる収益化を早期に実現できるようになりそうだ。

「DeNAの出向社員は、配属の初日からスペシャリストとして働いてくれた。数億円を調達したスタートアップでも、こんな短期間でDeNAクオリティの人材はそうそう獲得できない。その恩返しとして、iemoとMERYのようなスタートアップからDeNAにノウハウを提供できたのは、めちゃくちゃ美しいこと。一般的に『M&Aはうまくいかない』と、うがった見方をされやすいが、うまくやってやろうって思う。」(村田マリ)


DeNAがiemoとMERYの2社を計50億円で買収、キュレーション事業に参入

遺伝子にマンガ、動画ストリーミング……と、苦戦のゲームに変わる新事業を模索するディー・エヌ・エー(DeNA)が次に目を付けたのはキュレーションメディアだ。10月1日、住まいに特化したまとめサイト「iemo」を手がけるiemoと、女性向けファッションのまとめサイト「MERY」を運営するペロリの2社を合わせて約50億円で買収した。それぞれの買収金額は非公表。

自社事業との相乗効果を狙ったベンチャーへの投資に力を入れているDeNAだが、日本企業を買収するのは、実に横浜ベイスターズを95億円で買収した2011年12月ぶり。両社を傘下に収めることで、キュレーションプラットフォーム事業を始動する。収益の大半を依存するゲーム事業は引き続き注力する一方、キュレーションを新たな稼ぎ頭にしようとしている。

iemoの村田マリ氏(左)とペロリの中川綾太郎氏(右)

iemoはインテリアやリフォームに関する数万点の写真の中から、気に入ったものをクリッピングしたり、まとめ記事を作成できるサイト。「☆IKEA☆¥1000でおつりがくる?!オシャレな家具5選」「水を入れるだけなんてもったいない!製氷皿のいろんな使い道教えます。」といった「住」に関する記事が数多く投稿されている。サイトには毎月、25〜40歳の主婦を中心とする約150万人がアクセスしている。

2014年4月には建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった事業者向けの「ビジネスアカウント」を開設し、無料でiemoに自社の商品を掲載できるプラットフォームを構築。現在は約400事業者が登録している。

11月以降、ユーザーがリフォーム業者に仕事を発注できる機能をリリースする。同機能では今後、不動産販売業者とマッチングすることも視野に入れている。現在展開中のネイティブ広告に加えて、マッチングに応じて事業者が支払う報酬がiemoの収益の柱となる見込みだ。

買収後は、iemo創業者の村田マリを含めた全人員と、DeNAからの出向社員が共同で、これまで通りサービスを継続していく。

 

創業からわずか9カ月でイグジット

村田マリは、早稲田大学卒業後にサイバーエージェントの新卒1期生として入社し、新規事業を立ち上げに参画。退職後の2005年3月、1社目の創業となるコントロールプラスを設立した。結婚と出産を経て、2012年1月にソーシャルゲーム事業をgumiに譲渡し、2億円弱の売却益を得ている。iemoは、彼女がシンガポールに移住して第二の創業として2013年12月に設立した。

過去のインタビューで、スマホ向けメディアで「衣食住の『住』だけが未開拓だった」という理由からiemoを創業したと語った村田マリは、「買収までに想定外だったことはなく、完全に事業計画通り」と振り返る。創業からわずか9カ月でイグジットを果たしたのは、シリアルアントレプレナー(連続起業家)ならではの手腕と言えそうだ。DeNA傘下に入るに至った経緯については次のように語る。

「ここまでは過去の経験でやってこれても、今後、億単位の金額を投資するのは未知の領域。DeNAであれば経験も豊富で、失敗の確率も減る。私自身、IPOに夢がある経営者ではなく、サービスをたくさんの人に使ってもらい、家の作り方を圧倒的に変えたいという思いが強い。絶対にIPOをしなければいけないプレッシャーから解放され、サービスに注力できるのが魅力だった。」

月間ユーザー1200万人のMERYはEC強化へ

MERYは、ファッションに特化した女性向けまとめサイト。美容師やネイリスト、編集者をはじめとするキュレーターがまとめ記事を投稿している。2013年4月にサービス開始から1年半で、月間アクティブユーザー(MAU)は1200万人を突破。創業者の中川綾太郎によれば、ユーザー層は18〜25歳の女性が中心。夜10時以降がアクセスのピークタイムで、「雑誌を読むようなテンションで暇な時間や寝る前に見られている」という。

投稿されている記事は、「ロングブーツ履く前に!にっくき膝上の肉にさよならダイエット◎」「プチプラ&シンプルで着回し力抜群!GUデニムアイテムで一週間コーデ」といったように、ファッション雑誌にありそうな内容が多いのが特徴。「オンラインで圧倒的なファッションメディアがない中、スマホでファッション誌を読むような体験ができるのが上手くはまった」と分析する。

現時点で収益面は「広告を一応やってますという程度」だが、今後はEC化を進める。具体的には「まだモヤモヤしている」が、ユーザーが読んだ記事から商品を購入できるイメージだと話す。「ブランドを指名買いするECは発達しているが、実際のショッピングでは絶対にパンツを買うつもりでも、ニットを買っちゃうようなことが多い。そんな新しいコマース体験をやっていければ」。なお、iemoと同様、MERYも引き続きサービスを継続する。

2社のノウハウでキュレーションメディアを横展開

今回買収された両社がメリットとして口を揃えるのは、スタートアップならではの課題である採用面での恩恵だ。

「買収前のiemoは8人の会社だったが、10月1日にはDeNAからの出向を受けて20人体制になる。アプリエンジニアやデザイナーなど、不足している人材をバッと出してもらえるのはありがたい。こうした人材は簡単に取れないし、(iemoではDeNAみたいに)東大卒の人材なんていない。」(村田マリ)

「うまくいっているスタートアップでも、さらに伸びれば人が必要になる。MERYは『見てもらう』メディアの部分では順調に成長したが、今後は別領域のECを組み込んでいくことになる。DeNAからコマース経験のある人材をサポートしてもらえるのは大きい。売却思考はなかったが、理想をどれだけ早く実現できるかを大事にしたかった。」(中川綾太郎)

iemoとMERYは、「スマホでダラダラ見られるキュレーションメディア」という点で共通している。iemoは「スマホ × 住」、MERYは「スマホ × 衣」という圧倒的な勝者不在のジャンルでユーザーを増やしてきた。そして、キュレーションの枠にとどまらず、「住」と「衣」という巨大産業のECを変えようとしている。

DeNAとしては、2社の人材を抱えてノウハウを得ることで、スピーディーに他のジャンルのキュレーションメディアを構築する思惑もありそうだ。各メディアで相互送客を行い、数年後にはキュレーションプラットフォーム全体でMAU5000万人を目指すという。