米宇宙軍のスペース・フェンス衛星追跡システムが正式運用開始

米国宇宙軍は新しい軍だが、そのリソースの中にはすでに稼働しているものがある。USSF(米国宇宙軍)は先週後半、スペース・フェンスと呼ばれるレーダーシステムが正式に運用可能になったことを発表した。ちょっと奇抜な呼び方だが「スペース・フェンス」というのが間違いなく正式な名称だ。スペース・フェンスはレーダーシステムで商用衛星、軍事衛星、宇宙ゴミなど軌道上の物体を精密にモニターする。

スペース・フェンスの主要システムは太平洋のマーシャル諸島にあるクェゼリン環礁に置かれ、現在、「初期運用・システム受け入れ」の段階にある。現行の宇宙監視ネットワーク(SSN)は2万6000個の軌道上物体を追跡しているが、新しいスペース・フェンスは独自の機能追加によりSSNのモニター能力を大きく拡大するとUSSFは期待している。

地球低軌道上の物体を詳細に追跡するためにロッキード・マーティンが開発したレーダーシステムは、最終的にはビー玉サイズの物体を認識できるようになるという。このレベルの観測能力があれば、軌道上にあるほとんどの物体のカタログを作ることができる。これには観測衛星、通信生成、軍事衛星(可能なものも含む)などあらゆる軌道上のアイテムが含まれるはずだ。

状況を正確に把握することは、軍にとって作戦を成功させるためのカギとなる。スペース・フェンスが正式に稼働することは宇宙軍にとって大きな一歩となる。先週、宇宙軍として最初の衛星打ち上げが行われた。これは米国軍の作戦にミリ波帯域で安全性の高いコミュニケーションを提供する先進EHF通信衛星システムを構成する衛星の6基目だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NORADのサンタクロース追跡サービスは政府が閉鎖しても継続する

60年以上前から、NORAD(North American Aerospace Defense Command, 北米航空宇宙防衛司令部)とその前身CONAD(Continental Air Defense Command, 米国本土防空軍)は、12月24日に世界中でサンタの飛行を追跡してきた。

そしてそのオペレーションセンターは金曜日(米国時間12/21)のツイートで、政府による閉鎖にもかかわらず今年も続ける、と語った。

[このツイートの概要は以下の記事に]

NORADによると、NORADのサンタ追跡(Santa tracker)は、約1500名のボランティアが支援し、電話やコンピューターを使って世界中の子ども(と大人)たちからの質問に答えている。

そのリアルタイムのアップデートは、WebサイトNORAD Tracks Santaや電話、およびメールで得られる。言語は、7か国語に対応している。Twitter上のアップデートもある。

ここでもフォローできる。

この伝統のすべては、ある新聞に載った広告の中の電話番号の誤植から始まった。その広告の中ではサンタが、“さあ、子どもたち、私に直接電話しなさい、番号を間違えないようにね”、と言っていた。1955年の12月24日にある子が電話をしたら、コロラド州コロラドスプリングスにあるCONADのオペレーションセンターにつながった。

その夜、宿直を担当していたのHarry Shoup大佐が、電話に答えた。しかしその夜電話をしたのは、その子だけではなかった。Shoupはオペレーターたちに、サンタクロースの位置を見つけてそれを電話してきたすべての子どもに伝えるよう命じた。そして、その、毎年の伝統が始まった。

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Googleがアメリカの退役軍人の就職や起業/企業を助けるための機能集合を展開

Googleは、アメリカの退役軍人が円滑に市民生活に戻れるために、彼らの職探しや起業および企業経営を助けるツールを提供しようとしている。

そのひとつが、同社のキャリア開発プログラムGrow with Googleの新しい機能だ。それは、彼らが従軍の期間に身につけたスキルを活かせる仕事を探す機能で、まずGoogleの検索で“jobs for veterans”と彼らの軍務を表すコード(military occupation code)を入力する。求人企業や求人求職サイトは、GoogleのCloud Talent Solutionという、機械学習による求職求人プラットホームを使って、自分のサイト上でその機能を有効にする(検索結果に現れるようにする)。

Googleの発表の中で、Google Cloud事業のマネージャーで、イラクとアフガニスタンで計3回も従軍した元空軍の土木技師Matthew Hudsonが、退役軍人は機会を逃しがちである、と述べている。それは、物理的にはまったく同じ仕事でも、民間世界の企業と元軍人の頭の中とでは、その理解、認識、言葉などがまったく違うからだ。だから求人側と求職側が、互いの目の前に求める技能や職種があっても、そのニーズがマッチしない。そのため退役軍人の三人に一人…年間およそ25万人発生している…は、自分の技能レベル以下の仕事しか得られていない。

企業を起こしたり経営しようとする退役軍人のためにGoogleは、Google My BusinesとGoogle Mapsとモバイルの検索に、新しい属性を加えた。Googleのデータサイエンティストで元アメリカ陸軍の二等軍曹だったSean O’Keefeが、アメリカの企業の250万社以上が、その過半数オーナーが退役軍人だ、とブログに書いている。そこでGoogleの企業一覧には、“Has Wifi”や“Family Friendly”などと並んで“Veteran-Led”(退役軍人が経営)という属性バッジがつくようになる。

またGoogleのチャリティー部門Google.orgは、慰安団体United Service Organizations(USO)に、退役軍人のための初歩的なIT教育と、その卒業者へのサポート職資格認定Google IT Support Professional Certificationを賦与するための事業をやってもらうために、250万ドルを助成する。

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アメリカ空軍のドローンのドキュメンテーションがダークウェブで200ドルで売られていた

ダークウェブ(dark web, 闇ウェブ)の上には、あなたが想像すらしなかったものがある。6月にはセキュリティ調査企業Recorded Futureの危機情報(threat intelligence)チームInsikt Groupが、ダークウェブのマーケットプレース上の犯罪行為をモニタしているときに、アメリカの機密軍事情報が売られていることを発見した。

Insiktの説明によると、一人の英語を話すハッカーが、無人航空機MQ-9 Reaperのドキュメンテーションがある、とほのめかした。そして驚いたことにそのハッカーは、それを150ドルか200ドルで売る、と言うのだ。

Insikt Groupによると、そのドキュメントは極秘扱いではなかったが、いくつかの機密資料を含んでいた:

  • M1 Abramsメンテナンス・マニュアル
  • 戦車小隊訓練教程
  • 搭乗員生存教程(サバイバルコース)
  • 簡易爆発物対抗戦術

Insiktは、そのほかのドキュメントもアメリカ陸軍の職員やペンタゴンから盗まれたようだ、と言っているが、しかしその情報のソースは確認されていない。

そのハッカーは、フォーラムに参加してこれらのドキュメントをあからさまに売るつもりだったようで、米軍の不注意な職員からそのほかの軍事文書を入手したこともある、と認めた。Insikt Groupが調べていくと、ハッカーはドキュメントを、不正な構成のFTPログイン認証情報を使い、Netgearのルーターにアクセスして入手したことが分かった。ハックしたドローンのドキュメントのソースについて尋ねると、その犯人はMQ-1 Predatorドローンからの撮影記録にもアクセスした、と認めた。

彼の手口はこうだ(出典–Insikt Group):

犯人は、Webサイトだけでなくコンピューター本体を検索できる検索エンジンShodanを使ってインターネットを広範囲にスキャンし、著名なサイトで標準的なポート21(FTP)を使っている構成不良なルーターを見つけ、そこから侵入したマシンから貴重なドキュメントをハイジャックした。

上記の方法でハッカーはまず、ネバダ州クリーチの空軍基地にある第432航空機メンテナンス中隊Reaperドローンメンテナンス担当部隊の大尉のコンピューターに侵入し、機密ドキュメントのキャッシュを盗んだ。その中には、Reaperのメンテナンス教本やReaperメンテナンス部隊に配属された航空兵の名簿もあった。教本のたぐいは極秘文書ではないが、敵対勢力の手に渡ると、そのもっとも技術的に高度な航空機〔Reaperドローン〕の技術的能力や弱点を探る手がかりになりえる。

Insikt Groupによると、ハッカーが軍事機密をオープンなマーケットプレースで売ることは“きわめて稀”である。“平凡な技術的能力しか持たないハッカーが単独でいくつかの脆弱な軍部ターゲットを見つけ、わずか1週間で高度に機密的な情報を気づかれずに取り出せたことは、もっと高度な技術と豊富な財政力を持つ確信犯組織だったら何ができるだろうか、という怖ろしい想定にわれわれを導く”、と同グループは警告している。

画像クレジット: Andrew Lee/アメリカ合衆国空軍

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Google、国民の反発を受け軍との契約を解除へ

議論を呼んでいるGoogleの米軍との契約は、内外からの反発を受け来年以降の更新はなくなりそうだ。Gizmodoが報じた。この契約自体はとりたてて嫌なものでも実入りのいいものでもなかったが、 同社にとって政府の仕事を増やすための大切な足掛かりだった。

Project Mavenとして知られるこのプログラムは、Googleが軍との共同作業によって、紛争地域をドローンで撮った極秘映像などの画像分析を行うものだ。

少数だが主張の強いある従業員グループは、事実上戦争に直接参加するこの行為はお馴染みの(しかし廃れる可能性もある)”Don’t be evil” のモットーに反すると繰り返し糾弾した。何千人もの従業員が、プロジェクトの終了を求めて署名し、抗議の退社をしたものも何人かいた。

Should AI researchers kill people?

しかし、それ以上に打撃だったのはGoogleに対する世論だ。かつて同社はこのプロジェクトについて、小規模であり実質的にはオープンソース・ソフトウェアの管理に協力しているだけだと言ったが、世間からの当然の反応は「それならなぜやめないのか?」だった。

明快な答は、これは小さなことではなく、些細なサポート作業だけではないということだ。事実、過去数カ月の報道によると、Mavenは政府との他の契約を獲得するきっかけとなるパイロットプロジェクトらしいことがわかった。

ゴールの一つは、機密取扱者の人物調査の手続きを早めてデータのアクセスを得ることで軍関連事業を改善することだ。ペンタゴン高官との約束は、ありふれたAI関連作業とはかけ離れている

Gizmodoの情報筋によると、Google CloudのCEO、Diane Greeneは今日のミーティングで、反発があまりにも大きいため同社の軍関連作業の優先度が変更されたことを社員に伝えた。

Project Mavenの終了によって、Googleの軍および政府との関わりが大きな影響を受けるかどうかは未だに不明だ。あの機密情報利用資格が無駄になるのはもったいない、と思っているマネジャーたちもいることだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国海軍がレールガンの艦載に成功?――リーク写真に議論百出

シュワルツネッガーの『イレイザー』が公開されて以来、誰もがレールガンを欲しがるようになった。どうやら中国海軍もその一員だったらしい。中国の最新兵器開発の動向に詳しいDafeng Caoのツイートによれば、揚陸艦に中国独自の電磁レールガンとおぼしき巨大な砲填兵装が搭載された写真が発見された。

レールガンは2本の導体間に大電流を流して中間に置かれた実体弾を加速する兵器で、火薬を推進薬に利用する従来の砲と比較して何倍ものスピードを弾頭に与えることができる。その速度はマッハ6以上になるようだ。アメリカは長年この兵器の開発を続けており、しばらく前に下のようなクールなデモビデオも公開されている。しかし実際に艦載されたということは聞いていない。

さすがシュワルツネッガー、レールガン両手撃ち

中国海軍は何も発表しておらず、今のところすべては推測にすぎない。ただし中国もレールガンの開発に努力していたことは公然の秘密だった。それにこの写真の砲はきわめて異例の形状だ。

まず砲身が長さに比べて太い。また砲塔内にかなりの部分が隠れているように見える。この部分に加速装置が隠されているとすれば、アメリカが開発したレールガンの形状に近い。

4000トン級の揚陸艦にこのような大口径砲を装備すれば安定性に悪影響が出る。通常の艦載砲であるとは想像しにくい。

次に搭載されている艦は中国海軍が新兵器をテストする際に標準的に使われている種類、909型ではないという点だ。Dafeng Caoは元中国海軍の将校の発言として「909型の発電能力はレールガンを運用するのに必要な大電流を発生できないからだろう」と引用している。

3番目に、砲塔の直後に海上コンテナがいくつか見える。レールガンは大電流を必要とするので発電装置やコンデンサーなど運用のインフラを必要とする。これらは非常にかさばるので砲塔内に収めるのは難しいが、コンテナ内なら可能かもしれない。

写真の赤い横断幕には「世界一流の海軍兵装を提供し世界一流の海軍を建設しよう」とある。非常に断定的かつ野心的なスローガンだ。

Dafen Caoがツイートしているようにこの野心的な宣言のバナーが艦上に掲げられている。 海軍記念日その他の祝日に新型砲をみせびらかすというのはクールだが、カモフラージュ・ネットをかけたままでは実際の発砲はできないだろう。

レールガンは桁外れに重く、かさばる兵器なので、中国が本当にレールガンの艦載に成功したのであれば、小型化とモジュラー化でアメリカに比べて飛躍的な進歩を遂げたことになる。実際レールガンが近く実用化されるという話はまったく聞いていない。火薬を利用する従来型の砲の方が今のところはるかに現実的だ。 アメリカのレールガンは鳴り物入りで登場したものの、このままお蔵になるかもしれないという報道も出ている。

US Naval Research

画像: Dafeng Cao / Twitter

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

軍人向けSNSのSandboxxが、IT企業への就職を支援

現役および退役軍人に特化したSNSのSandboxxは、コミュニティーのメンバーを専門家とつなぐことで、就職の準備に役立てようとしている ―― そして最終的には就職先を見つけることを目標としている。

世界的な職業斡旋会社のBetts Recruitingは、「軍事メディア・テクノロジー企業」を名乗るSandboxxと協力して、兵役経験者がIT業界で職を見つけ、独自の価値を就職先候補に示す手助けをする。

「わが国でもっとも優秀な才能を持つ現役および退役軍人たちを、成長著しい先進企業と結び付けるために、Sandboxxは最適なパートナーだ」とBetts RecruitingのCEO、Carolyn Betts FlemingがTechCrunchに話した。「Bettsは、さまざまな障壁を取り除くことで多くの兵役経験者がすばらしい機会を得る手助けをできることを誇りに思う。コミュニティーの期待にこたえために、当社では兵役経験者が彼らの軍隊経験を、IT企業の仕事に役立つスキルへと変換するのを手伝えるよう、リクルーターのチームを訓練している」。

この取り組みでは、Sandboxxのネットワークを全体で、プッシュ通知、アプリ内通知、メールによるニュースレターなどを用いて専門的能力開発についての会話を促進する。効果的なLinkeInプロフィールの書き方や、面接スキルの向上などの話題だ。

Sandboxxのファウンダー・CEO、Sam Meekは、兵役経験者は様々な分野でユニークな才能を持っていると強調する。

「今の兵士が備える独特の弾力性はIT業界で十分役立つ」とMeekは言った。「その好奇心とミッション遂行の義務感を武器に、彼らは軍事的スキルを存分に職場で生かすだろう」

Meekによると、軍隊組織では兵役経験者がIT企業に必要なスキルを身につけるための時間を設けている。「一般市民のライフスタイルに移行するためには数か月から1年にわたる準備が必要だ」とMeekは言う。「モバイル技術者になったり大企業の売上を改善する能力を学ぶために必要な時間を、軍が準備している。これは軍に従事するうえでもっとも見過ごされている恩恵だ」

Bettsは面接方法の相談を受けるほか、採用担当者や就職希望者と話して最適なキャリアを見つける手助けをする。Bettsは2016年11月に兵役経験者の支援を公式に宣言しており、Everstring、MuleSoft、EatClub、Dynamic SignalなどのIT企業と兵役経験者に特化した提携をすでに結んでいる。

多くの会社が営業開発部門や経理部門に兵役経験者を雇っている。いずれも「弾力性と勤勉さを大いに必要とする」職務であり、年俸は6万5000ドルから8万5000ドルにわたる。経験の長い兵役経験者は、営業リーダー職に就き、給料は12万ドルから17万ドルだという。

「ペースの速い企業は若手の兵役経験者を求めている。彼らは粘り強く貪欲で使命を果たすことの価値を知っている」とMeekは言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプ大統領、マクマスター陸軍中将を安全保障補佐官に―未来志向の学者肌だが大のスライド嫌い

2017-02-22-national-security-advisor-mcmaster

マイケル・フリンの突然の失脚から1週間後、トランプ大統領は新しい国家安全保障担当補佐官を任命した。大統領は各方面との関係修復を図るつもりなのか、新補佐官は、少なくとも前任者よりも多くの人々に受け入れられそうだ。

ハーバート・マクマスター陸軍中将は戦士にして学者とももっとも珍しい種類の軍人とも評されてきた。セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と会談していたことに非難が高まる中で辞任したフリンが断固たる信念のタイプだったのに対してマクマスターは正反対だ。

マクマスターはよく「軍を代表するフューチャリスト」と呼ばれるが、テクノロジーに対する態度は複雑で、単純な擁護者ではない。マクマスターはテクノロジーが戦争さえ解決するという「テクノロジー万能の傲慢」に陥ることを強く批判する。マクマスターは2013年のニューヨークタイムの意見コラム(op-ed)欄に「テクノロジーによって迅速、安価に勝利をもたらすことができるから戦争をその政治的本質から分離できるというコンセプトは強く疑うべきだ」と書いている。この記事、The Pipe Dream of Easy War〔安楽椅子の戦争〕では次のように続く。

アフガニスタンやイラクの戦争はリモコンで操作することはできない。予算削減の圧力とテクノロジーの魅惑は一部に「われわれが知っていた戦争は終わりを告げた」という主張を呼び起こしている。先進テクノロジーは戦争に勝つための不可欠の要素ではあるが、テクノロジーを賞賛するあまり、精密攻撃であるとか外科手術的作戦であるとかテクノロジーによって敵を局限できるという幻想は軍事の本質を混乱させ、より大きな戦争目的の達成を妨害するものだ。

テクノロジーに対する深い考察はマクマスターの著書、Dereliction of Duty〔責任の放棄〕という議論を巻き起こしたものの全体として高い評価を受けた本にも反映されている。この本は ベトナム戦争の拡大に関して当時のアメリカ指導部、特にジョンソン大統領、マクナマラ国防長官、統合参謀本部の責任を分析している。マクマスターのこうしたアカデミックな気質は前任者のフリンと鋭い対象をなしている。フリンはイデオロギー的であり、反イスラム過激派感情が強すぎると批判されていた。

陸軍の改革に関して、 2015年4月のシンポジウムでマクマスターは軍事テクノロジーに依存しすぎることから生ずる危険について講演した。「われわれが直面することになる最大のリスクは、必ず長引くことになるという戦争の本質に矛盾するコンセプトの拡大だ。戦争の複雑な本質を単純化して将来の戦争を攻撃対象を選択する演習のようなものにしてしまおうという動きをわれわれは目撃している。次世代テクノロジーは次の戦争をこれまでの戦争と本質的に異なるものにしてくれるに違いないという考え方だ。

その数ヶ月後、ロンドンにおける防衛問題のカンファレンスでマクマスターはテクノロジーの進歩は伝統的なマンパワーを代替するものではないと述べている。派手な新しいテクノロジーは短期的なメリットしかもたらさないとして次のように強く警告した。「将来の戦争では[次世代テクノロジーが]決定的役割を果たすというのは幻想にすぎない。…テクノロジーはわれわれが敵に優越する要因のごく一部だ。しかもテクノロジーは敵もわれわれと同様に使いこなすことになる可能性がもっとも高い要因だ」

マクマスターはもちろんテクノロジー恐怖症ではない。しかし楽観的なテクノロジー万能論をを強く拒否する。マクマスターは「将来の戦争からその政治的本質、人間性、不確実性、勝利への決意を切り離そうとすることは間違いだ」という。

もう一つ興味深いのはマクマスターが心底PowerPointを嫌っていることだ。 「PowerPointは〕状況を理解しコントロールしているというありもしない幻想を作り出すので危険だ」とマクマスターはニューヨーク・タイムズで述べている。「ある種の問題はブレット印を打ってリスト化できはしない」というのはトランプ大統領にも念を押しておいてもらいたい。

トランプ政権でマクマスターがどういう役割を果たすことになるのかを知るにはまだ時間がかかるだろう。トランプの最側近サークルというよりその外側のサークルの一員に落ち着くのかもしれない。しかしマクマスターが著書でも示したような安全保障問題に関する国家の指導部の責任を厳しくチェックする態度は今後とも重要なものとなるだろう。

元アメリカ陸軍将校であり中東専門家のアンドルー・エクサムはAtlanticに次のように書いている。

マクマスターの著書で特に注目すべき点は、ケネディー、ジョンソン政権における国家安全保障政策の決定がきわめてずさんに行われていたという指摘だ。この傾向は特にケネディー政権で顕著であり、政策決定は大統領側近のごく少数のグループに委ねられていた。ここでは本来大統領を補佐すべき堅牢な政策チェックの過程が失われていた。

マクマスターのようなアメリカ軍を代表する思想家にとって、外部の意見に耳を傾けず側近政治に傾斜する大統領は批判の対象になるはずだ。トランプがマクマスターの考えを受け入れるか、それとも多くの共和党人脈の有力者同様、高い地位に就けて塩漬け状態にしてしまうのかは今後を見守る必要がある。

どういう役割を果たすことになるにせよ、ジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ケリー国土安全保障長官、そしてハーバート・マクマスター大統領安全保障担当補佐官といういずれも尊敬される軍人だった3人が新政権の安全保障政策を形づくることになる。

画像: National Infantry Museum/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

飛行中のドローンを空中で捕まえるポータブルな離着陸装置DARPAのSideArm

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軍用機のような形の固定翼ドローンは、離陸は容易だが着陸が難しい。そこでDARPAは、高速で飛行しているドローンを空中で捕まえるポータブルなドローン捕捉システムSideArmを開発した。

SideArmの基本的なアイデアは、航空母艦の甲板にあるフックシステムと似ている。あれを、上下逆さにしたような装置だ。

SideArmは輸送用コンテナに収まり、2人〜4人で組み立てられる。ドローンは同システムの水平状のレール・カタパルトを使って飛び立ち、着陸するときはレール下部にある捕捉機が、その真下を飛ぶドローンを捕まえる(下図)。

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ドローンの背中に出ているフックがワイヤにかかり、機を減速させると同時にネットの位置まで浮上させる。そして鼻部の突起が機体を正しい姿勢で捉える。

この装置のコンセプトとテストを、このビデオで見ることができる:

DARPAのGraham Drozeskiが、プレスリリースで述べている: “SideArmは航空母艦の機能を真似て、ドローンを安全に加速し減速させる。装置はポータブルで低コスト、どんなミッションにも使用でき、地域の特性などに制約されない。現行機だけでなく、将来の無人機でも使えるだろう”。

このシステムはDARPAと海軍の共同プロジェクトTernの一環で、艦船に高価で不可逆的な改造を加えなくても実現可能な、無人航空機システムを目指している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

カナダ陸軍、膝機能を強化するウェアラブルのテスト導入を開始

Major Toppa (right) receives a knee brace from Rebecca (left) one of the representatives from knee brace manufacturer Spring Loaded Technology which travelled to the Army Headquarters at 110 O'Connor in Ottawa, Ontario, to demonstrate and test their knee braces on July 12, 2016. LF03-2016-0114-002

カナダのハリファックスに拠点をおくSpring Loaded Technologyが、カナダ陸軍のために開発した膝の機能強化を行う支持具の出荷を開始した。ぜんぶで190セットを予定しているうち、まずは60セットを納めたのだそうだ。陸軍との間で交わされた、総額100万ドルの契約の一部だ。

プロダクトの名前はUpShotsで、以前から開発を行なっている動作補助用ウェアラブルのミリタリーバージョンとなる。液体スプリング(liquid spring)を用いて、過去最高レベルの効果を発揮するものなのだそうだ。

UpShotsを装着することで、運動能力を高め、かつ筋肉疲労や膝の怪我を防ぐことができるらしい。重たいものを持ち上げたり運んだりすることの多い陸軍隊員にとっては、防護服やヘルメットなみに重要な装備品となるかもしれない。

Spring Loaded Technologyは、さまざまなタイプの膝用装具を扱っている。今年はじめにIndiegogoのキャンペーンを成功させたLevitationというプロダクトはプレオーダーを受け付けていて、9月の出荷を予定しているとのこと。片足分の価格が1750ドルとなっている。今回の軍用プロダクトの一般販売価格は3800ドルで、スキーヤー専用モデルは1850ドルで提供している。

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(翻訳:Maeda, H