AIで求職者の人柄と社風の“相性診断”、「mitsucari」が1.5億円を調達

写真左からウィルグループの森雅和氏、ミライセルフ代表取締役会⾧の井上真大氏、同社代表取締役社長の表孝憲氏、ウィルグループの坂本竜氏

AIが企業の社風と応募者の相性を診断する「mitsucari適性検査」や、自分に合った社風の企業がレコメンドされる求人サービス「mitsucari」を運営するミライセルフ。同社は11月29日、ウィルグループのCVCファンド、京都大学イノベーションキャピタル、ハックベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により、総額1.5億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達はミライセルフにとってシリーズBラウンドにあたるもの。同社はこれまで2015年7月に日本ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家から5000万円、2016年12月に京都大学イノベーションキャピタルから7000万円を調達している。

ミライセルフでは調達した資金を活用してmitsucariのプロモーションや機能改善を進めるほか、これまで適性検査サービスを通じて蓄積してきたデータなどを活用し、企業向けの新規事業にも取り組む計画だ。

適性検査を通じてカルチャーフィットを実現

ミライセルフが現在展開する2つのサービスは“適性検査”という仕組みと、そこから得られるデータを活用することで「カルチャーフィット」を重視した採用や転職をサポートするものだ。

2016年から提供するmitsucari適性検査は企業が「会社や部署に合った人材を見極めるための採用支援サービス」であり、2018年6月からスタートしているmitsucariは求職者が「自分の人柄にあった社風の会社を探せる求人サービス」という位置付け。どちらも適正検査の結果から企業と求職者の相性(マッチ度)を算出するマッチングアルゴリズムが軸になっている。

ミライセルフはモルガン・スタンレーMUFG証券出身の表孝憲氏(代表取締役社⾧)とGoogle出身のエンジニア井上真大氏(代表取締役会⾧)が2015年に設立したスタートアップ。もともと表氏が前職で約7年間に渡って面接官を担当する中で「面接で自社に合うと思って採用した人材が、いざ入社すると会社にフィットせずに早期退職してしまった経験」などから、面接の数値化やカルチャーフィットを見極める仕組みに興味を持ったことが背景にあるという。

2015年の資金調達時にTechCrunchでも一度紹介しているように、当初は転職マッチングサービスのmitsucariを主力事業としてスタートした。ところが実際に企業と話をしてみたところ適性検査のシーンで使いたいという要望が予想以上に多かったこともあり、企業向けのサービスから先に本格化する方向に転換。2016年2月にmitsucari適性検査を始めている。

独自のアルゴリズムで企業と求職者の相性をスコア化

mitsucari適性検査では導入企業の社員と応募者の双方が独自の適性検査を受験。これを通じて企業の社風や応募者の人柄を可視化した上で、双方の相性を診断する。適性検査の内容は企業文化論や社会心理学を軸としてもので、全72問5択の選択形式。回答時間の目安は10分程度、スマホやタブレットでも受験できる。

ポイントは応募者だけでなく企業の社員も実際に同じ検査を受けること。これによって応募者の人柄や価値観のみで適正を診断する従来の適性検査とは異なり、あらかじめデータ化した社風と各応募者の人柄を照らし合わせることができる。つまり適性検査を展開する既存のプレイヤーが持っていないデータを集め、そこから独自の相性診断ができるということだ。

受験結果は「面接用シート」としてすぐに出力。マッチ度が数値化されるほか、人物像を類似している社員に例えながら表現する機能や、面接で優先的に聞くべき質問事項と質問例を提示する機能も備える。

企業と求職者という大きな枠組みだけでなく部署や職種ごとの判定も行うので、配属先や人間関係のミスマッチを防ぐことができる点も特徴だ。

2018年1月に導入社数が1000社、11月には2000社を突破。パナソニックや日本たばこ産業、毎日放送といった大企業への導入も進んでいて、業種もITやWeb系だけでなくメーカーや人材・教育、サービス業など幅広い。

導入企業としては入社後の配属も含めてミスマッチを防ぐことで離職率を減らしたいというニーズはもちろん、リクルーターやメンターとして適切な人を紹介したいという目的や、社内で活躍している人材の傾向を分析したいという用途で使われることも増えてきているそうだ。

「(カルチャーフィットの度合いを診断することで)採用を成功・効率化したいというだけでなく、離職率や内定辞退率の高さを課題に感じて導入に至るケースが増えてきている。たとえばメンターやリクルーターを決める際やサービス業などで配属店舗を決める際に、算出したデータを基に価値観や人柄の合ったメンター・店長をマッチングするようなことも可能だ。離職率に関しては新卒の離職が半分近くまで減った事例や、25%から5%まで削減したような事例も出てきている」(表氏)

初期費用および社員の受験費用は無料で、社外の応募者1人ごとに800円の受験料金が発生するシステム。ミライセルフとしては適性検査の受験料金のほか、取得したデータの活用をサポートするスポットのコンサルティングと、後述する求人マッチングサービスの成功報酬が主な収益源となっている。

適性検査のシステムを軸に、求人マッチングサービスも本格展開へ

ここまで紹介してきたmitsucari適性検査のノウハウやマッチングアルゴリズムを求人サービスの形に落とし込んだのが、6月に正式ローンチしたmitsucariだ。

同サービスでは人材を採用したい企業と求職者がそれぞれ事前に適性検査を実施。その結果と求職者が入力した勤務地や職種などの希望条件を基に、各求職者に合った求人情報だけがレコメンドされる。

「スキルフィットに着目した求人サービスは多いが、カルチャーフィットに着目したものはまだ少ない状況。かつそれを主観的な判断や根拠のないデータではなく、適性検査の結果を基に算出したマッチ度合いを通じて実現しようというのがmitsucariのアプローチだ」(表氏)

現時点ではmitsucari適性検査を活用している企業の一部などが導入している状況。基本となる機能の開発や検証を済ませ、これから本格的にプロモーションなどを実施していく予定だ。

そのほか調達した資金を用いてセールスや開発など組織体制の強化を進める方針。同社の事業にとってコアとなるマッチングアルゴリズムの精度向上に取り組むことに加え、適性検査を通じて蓄積してきたデータやノウハウなども活かした企業向けの新規事業も準備していくという。

人工知能による転職マッチングサービス「mitsucari」を展開するミライセルフが5000万円を調達

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ミライセルフ ミツカリ

新卒時の就職でもキャリアを発展させるための転職でも、自分の価値観に基づいた働き方を実現できる企業を見つけることは難しい。企業にはそれぞれの組織文化があるが、面接などの選考プロセスを通してもそれらは実際に働いてみるまで見えづらいものだからだ。ミライセルフがベータローンチした人工知能による転職マッチングサービスのmitsucari(ミツカリ)は、価値観に基づくマッチングで働く人と企業とのミスマッチを解消しようとしている。ミライセルフは先日、mitsucariの正式ローンチに向けた開発、日本国内と海外企業へのセールス活動、アプリ対応を図るため、日本ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家から5000万円を調達した。

ミライセルフはカリフォルニアと大阪に拠点を持つスタートアップだ。カリフォルニア大学バークレー校でMBAを修了したCEOの表孝憲氏とGoogleマウンテンビュー本社でソフトウェアエンジニアとしてトップ5%賞を受賞した経験を持つCTOの井上真大氏が2014年8月にカリフォルニアで創業した。

彼らがベータローンチしたmitsucariは、人工知能により個人と企業の共通する要素を見つけ、似た価値観の転職者と企業をつなげる。潜在転職者は全48問のキャリア志向、心の知能指数、パーソナリティ、シンキング力に関する質問に回答する。それらの結果を元に、人工知能が企業との「マッチングスコア」を算出し、転職者との一致率の高い企業を導き出す。mitsucariの一番の特徴は、一般的な転職マッチングサービスとは異なり、心理学の研究に基づいた価値観や人柄を重要視している点だ。例えば、質問には人の顔の写真から感情を読み取る問題など、感覚的に回答するものも多く含まれている。48問と問題数を多く設定しているのは、十分なデータ数を集計することで、より最適な企業とのマッチングが行うためだとCEOの表氏がTechCrunchの取材に答えた。

彼らのアルゴリズムは人生を良くするための「AIoL (Artificial Intelleigence of Life)」であると話した。人が一日に判断できる情報量は増加していないにも関わらず、接する情報量は増え続けている。彼らは、アルゴリズムに大量のデータをインプットすることで、今まで人間が認識することができなかった切り口で人と企業との共通点を導きだし、最適なマッチングが提供できるようになると言う。

今回調達した5000万円はmitsucariの開発、日本国内及び海外企業へのセールス活動、英語対応やアプリ対応に充てられる。mitsucariのサービスは現在ベータローンチの段階だが、9月半ばを目処に正式ローンチの予定だ。

カリフォルニアに拠点を置いていることから、潜在転職者は日本企業のみならず海外企業とのマッチングも可能となる。日本企業、海外企業といった枠を超えて、自分が活躍できる企業を探している海外大学に留学中の日本人学生や海外でのキャリアパスを考える転職者にとってこのサービスは自身の価値観や働き方を再考し、それを実現できる企業を特定するきっかけとなるかもしれない。

創業からわずか1年足らずでの5000万円の調達は、比較的規模の大きい資金調達ラウンドと言えるだろう。人工知能による人材採用の分野にはTalentBaseといったスタートアップや大手のリクルートも人口知能研究所「Recruit Institute of Technology」を創設して賑わいを見せている。人工知能で人の価値観や考え方が数量化され、それを持って企業との相性が分かり、個人と企業のミスマッチが少なくなる未来が近づいてきているのかもしれない。