電動キックボードのLuupとmobby ride、規制緩和に向け“規制官庁の認定を受けた”シェアリング実証へ

日本で電動キックボードのシェアリング事業の社会実装を目指すLuupmobby rideの2社は10月17日、規制の見直しに向け、規制官庁の認定を受けた実証を行うことを発表した。Luupは12月までを実証期間とし、横浜国立大学の常盤台キャンパス内の一部区域で電動キックボードのシェアリング実証を。mobby rideは10月24日に九州大学の伊都キャンパス内で同社の「mobby」の実証を開始する。

この両社の実証計画は17日、「規制のサンドボックス制度」に認定された。規制のサンドボックス制度は、事業者が規制官庁の認定を受けた実証を行い、得られた情報やデータをもとに規制の見直しに繋げていく制度だ。

日本の現行規制上では、電動キックボードは原付自転車として扱われる。そのため、公道で走行するには国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動付自転車登録をし、免許証を携帯する必要がある。だが、国や地域によってルールに差があるものの、電動キックボード事業が普及し人気を集めている理由は「アプリで機体を探し解錠して乗るだけという」という手軽さだ。免許証の携帯が必要性の場合、ユーザーを限定してしまう。加えて、原付自転車としての扱いの場合、車道のみ走行可であり路側帯には入れないため、また、車と比較し速度が遅いため、安全面が懸念される。単に公道を走れる状態にした電動キックボードも販売されているが、前述の理由などから、これではいつ事故が起きてもおかしくない、との指摘もある。

一方、Luupがメインの事業として目指しているのは販売ではなく、自治体と連携し「街の機能の1つ」としての役割を果たすシェアリング事業だ。同社はテクノロジーにより「歩道か車道、どちらを走行しているか」などは検知できるが、「どのような道がどれくらい危ないか」の知見はない、と代表取締役兼CEOの岡井大輝氏は話す。だが、自治体や地元の警察はどこでどれくらいの事故が起きているかや、混雑しやすいエリアや時間帯を理解している。そのため、「望ましくない特定の状況下ではサービスを提供しない」などとし、街、そして利用者にとって安心で安全なサービスを展開するには、自治体との連携が不可欠だと岡井氏は言う。

Luup、そして同じくシェアリング事業の社会実装を目指すmobby rideの2社のテックカンパニーは、「日本における電動キックボード事業のあり方」を模索している最中だ。そのような2社にとって、これまでに行なってきた実証実験や体験会とは違った、大学構内で行う自動車や歩行者が通るなど実際の公道に近い形で電動キックボードのシェアリング事業の実証は、大きな意味を持つだろう。

Luupは「電動キックボードのシェアリング事業の安全な社会実装」にはどのような走行条件が必要なのか、走行データを取得し、主務省庁に提出する。そうした上で、関係省庁と継続的な協議を行いながら、「サービス内容や機体、走行状況のあり方」の検討を進める。mobby rideは「検証結果および関係官庁からの見解をもって、福岡市内での公道走行に向けて国をはじめとする関係各所と協議してまいります」としている。

規制のサンドボックス制度は2018年6月に施行された「生産性向上特別措置法」に基づき、「新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するため」創設された。実証後、「当該実証計画に規定された新技術等関係規定を所管」する大臣は、規制の特例措置の整備および適用の状況、諸外国における同様の規制の状況、技術の進歩の状況を踏まえ検討を加え、規制の撤廃や緩和に必要な法制上の措置やその他の措置を講ずるものとされている。

神戸メリケンパークで電動キックボードの実証実験、国内導入の弾みとなるか

神戸市mobby rideは8月9日、神戸市中央区の神戸港に面する公園「メリケンパーク」にて、電動キックボードの実証実験を開催した。mobby rideは、Gunosyの創業などに関わった木村新司氏が創業したAnyPayの新規事業で、電動キックボードのシェアリングサービス「mobby」の運営会社。mobby rideは福岡市の実証実験フルサポート事業に採択され、同市での実証実験も進められてきた。

今回の実証実験に使われたのは、mobby rideが海外で展開しているセグウェイ製の電動キックボード。GPSとLTE通信機能が備わっており、アプリの設定によって最高時速や使用範囲を変更できる。この電動キックボードの最高時速は25kmだが、今回は最高時速を10kmに制限したうえで、メリケンパークの一部地域を有効エリアに設定、指定エリアから出るとエンジンがかからないようにしたうえで実証実験が行われた。

というのも、時速10〜25km程度で走行できる電動キックボードは、国内では現在のところ原付(原動機付き自転車)に分類されており、そのままでは公道を走行できない。現在でもネット通販を中心に手軽に購入できるが、私有地以外ので利用は道路交通法違反になるので注意してほしい。どうしても公道で走りたいなら、バックミラーなど原付の走行に必要な装備を施したうえで車両登録を済ませ、キックボードにナンバープレートを装着しなければならない。もちろん、公道を走るには原付免許が必要で無免許では乗れない。

実証実験は10〜16時に開催され、100名程度が集まった。キックボードは赤信号での急発進といった誤操作を回避するため、停止状態からはエンジンがかからないようになっている。手動でキックボードを強く前に蹴り出したあとにエンジンがかかる仕組みだ。この感覚を掴むまで少し時間がかかった参加者もいたが、多くの参加者はスタッフの説明を受けただけですぐに乗りこなせていた。

実際に乗車してみたところ、見通しのいい場所での時速10km程度の走行であれば安全性はある程度確保できると感じた。急停止にはブレーキレバーを使う必要があるが、通常はエンジンレバーの調整で速度を落とせるし、片足を地面につけてキックボードを駐めることも簡単だ。自転車に乗り慣れていない人は、乗車時にバランス配分に慣れる必要があるので少しの練習が必要だが、シニアでも十分に乗りこなせるのではないか。

写真に向かって左側の赤いレバーがブレーキ、右側の緑のレバーがエンジン( アクセル)。レバーを押し込み強弱でスピードを調整可能だ

市関係者によると、神戸では市が所有している大きな公園や施設を数多くあり、電動キックボードなどのマイクロモビリティを広範囲で実証実験するには便利な場所とのこと。神戸市は坂道も多いので、利用範囲が広がれば市内移動の利便性は高まる。一方で、今回の時速10km制限の電動キックボードであっても下り坂ではそれ以上のスピードが出てしまうし、大きな荷物を持った状態で運転すると事故になる確率も上がる。

LTE通信やGPSなどを内蔵

自転車より速くて原付より遅い、この乗り物を国内で普及させるには、現在は自転車用として都市部を中心に整備されている車道脇のスペースを活用するか、交通量の少ない特定地域の移動に限定するといった落とし所になるかもしれない。

市関係者は、電動キックボードをシニアの移動手段としても考えているとのこと。時速6km以下に制限しつつ、転倒の確率が下がる三輪仕様として、免許やナンバープレートなしで利用できる電動自転車として活用方法もあるのではないかと語る。スマートフォンを活用するシェアリングモビリティをシニアが使いこなせるかという問題はあるが、高齢ドライバーの自動車事故が大きな社会問題になっている中、新たな移動手段の開発は急務だ。

欧米では、まずはサービスを開始し、そのあとに発生した問題について法整備を進めて行くスタイルだが、日本ではさまざまな規制をクリアにしてからでないとサービスを開始できない難しさがある。一方で、米国などで大きなシェアをもつLimeが、デジタルガレージと共同で日本市場に参入することを発表。今後各社がのような形態で電動キックボードを国内導入していくのが注目だ。

なお8月下旬から9月上旬にかけて、福岡市では住友商事やKDDI、デジタルガレージが主体となって、LimeとBirdの電動キックボードの実証実験を開催予定だ。西鉄バスを中心に政令指定都市ではバスにいる公共交通網が群を抜いて発達している福岡では、市内の道路の交通渋滞が大きな問題。実証実験を重ねることで、こういった問題の解決策が生まれるかどうか期待したい。

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電動キックボードシェア「mobby」が神戸メリケンパークで実証実験

電動キックボードのシェアリングサービス「mobby」(モビー)を展開するmobby rideは7月9日、神戸市が主催するスタートアップ提案型実証実験事業「Urban Innovation KOBE+P」に採択されたことを発表した。8月9日に市内のメリケンパークにて体験会を開催する。Urban Innovation KOBE+Pは、起業やスタートアップを支援することによって神戸経済の活性化、社会・行政課題の解決を目指す神戸市の事業だ。

mobbyは、国内外でペイメントやカーシェアリングの事業を展開しているAnyPayの新規事業として立ち上がり、6月1日にmobby rideとして分社化。日本国内でのシェアモビリティ事業の拡大を目指す。昨年12月にはAnyPayとして、福岡市が主催する「実証実験フルサポート事業」に採択されており、同市での実証実験も進めている。

電動キックボードは欧米では手軽な移動手段としてさまざまな地域でサービスが展開されているが、日本国内では道路交通法の規定により公道の走行には一定の制約がある。神戸市ではmobbyの実証実験によって、電動キックボードも含めた次世代のモビリティ導入による回遊性や経済波及などの効果検証を進めていく。

体験会の詳細は以下のとおり。

場所:メリケンパーク(兵庫県神戸市中央区波止場町2−2)
日時:8月9日(雨天の場合は日8月10日)
開催時間:10時〜16時の間
料金::無料
身長制限:20cm~200cm
体重制限::25~100kg
年齢制限:16歳以上~60歳未満推奨
服装:キックボードに乗るうえで安定性が保たれるもの(ヒール、サンダル等は禁止)