ハーバード大学とMITのMOOCs受講者数がほぼ半減 ― 無料の修了書発行を取りやめたことが原因か

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HarvardとMITが公開した大規模オープンオンライン講座(MOOCs)についての内部調査資料によれば、同校のMOOCs受講者数が急激に減っているようだ。2016年には前年の半数近くまで受講者数が減ってしまっている― おそらく、同プログラムが無料の修了書発行を中止したことが原因だ。

MITのIsaac ChuangとHarvardのAndrew Hoが行った今回の調査は、受講者数や彼らの修了講座数、出身地などをまとめた調査で、毎年発表している。そういった統計を記録し始めたのは2012年7月のことで、今年(2016年秋)の統計は開始以来4年目のデータセットとなる。

この調査を注意して見てみると、興味深いデモクラフィック・データがたくさんある;この世界規模のクラスには実にさまざまなバックグラウンドをもつ生徒がいるのだ。

しかし、今年の受講者数は大きく減少している:HarvardとMITは今年新たに40の授業を追加し、合計の授業数は132を数えたにもかかわらず、その受講者数は昨年よりも減り、修了する生徒はそれよりももっと少ない数だった。

2015年、この2つの大学が提供するMOOCsの受講者数はそれぞれ80万人程度だった。これは2つの大学ともに過去最大の数字だった。しかし、今年の受講者数は急激に減り、HarvardXでは54万人、MITでは67万人だった。

授業数は増加していることを踏まえると、授業あたりの受講者数は過去最低レベルまで落ち込んでいることになる。修了者数も過去最低となっているが、それでも2016年の修了者数は初年度のそれを上回っている。

サーティフィケートをもらうために受講する生徒と、単なる聴講に留まる生徒や途中でリタイアする生徒の割合は昨年と同程度だったことには注目しておく必要がある。今年から追加された授業は、それまでの授業と比べて単に魅力的でなかったのかもしれない ― もちろん、新しい授業はまだ実験的なフェーズではあるが。

受講者が急減したのは、おそらく、この2つの大学が無料で修了書を発行するのを2016年初頭に取りやめたことが大きな原因だろう ― これを決断した運営陣も、受講者数にネガティブな影響が出ることは当初から理解していた。そうだとしても、この数字はあまりにも残念なものだったのだろう。この件に関してコメントを頂くため、私はこの調査を実施した者の1人に取材を試みている。

今回の調査レポートはここから無料でダウンロードできる。

Databricksの無料Spark学習コースにオンラインのマイクロインスタンスCommunity Editionが補助教材として加わる…受講者10万超をねらう

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Apache Sparkオープンソースプロジェクトの商用実装をビジネスとするDatabricksが今日(米国時間2/17)、Sparkの使い方を人びとに教えるための、無料のCommunity Editionをリリースした。それは、同社が昨年作った無料のオンラインコースMOOCs〔複数形〕)の教材として利用される。

この無料バージョンは有料のエンタープライズバージョンにある高度な機能はなくて、Sparkによるビッグデータ処理の初歩を、小さな単一のSparkインスタンス(“マイクロインスタンス”)で学んでいく。

同社のMOOCsは驚くほど好評で、これまで50000名が受講、演習やテストを含め全課程を終了した者は20000名に達する。DatabricksのCEOで協同ファウンダーのAli Ghodsiが、そう説明した。

Sparkを学びたいという関心がこれほどまでに大きいことを見た同社は、コースの補助教材としてCommunity Editionを作ることにした。Community EditionとMOOCsを結びつけることによってDatabricksは、地球上のへき地に住む低所得の人たちにも、データサイエンスの初歩とSparkを教えることができる。つまり、コンピュータとインターネット接続と、コースを完了する意志さえあれば、誰でもコースを受講できる。

学習者はDatabricksの基礎的な機能にアクセスして、マイクロクラスタの作り方とか、クラスタ管理ツールの使い方、ノートブックやダッシュボードの作り方を学ぶ。もっと大きなクラスタの作り方や高度な機能を会得したければ、クレジットカードをスワイプして本格的なビジネスコースへ進めばよい。

Databricksに投資しているAndreessen Horowitzの協同ファウンダーでパートナーのBen Horowitzによると、Community Editionによってビッグデータとその分析の敷居が、きわめて低くなり、誰もが気軽に学べるものになった。

“それまでは自分でクラスタを作るか、あるいは大学のコースなどに毎月何千ドルも払って、データサイエンスや高度なデータ分析、機械学習などを本格的に勉強する必要があった”、とHorowitzは声明文の中で言っている。

安上がりをねらった同社は、まず、学習者がクラスタの構築や保存のために使うコンピューティングリソースとして、Amazon Web Servicesを利用している。その高度な共有環境を同社が細心の注意をもって管理することにより、低コスト化に成功している。

“仮想マシンを共有することにより、コストを大幅に下げることができた。同じリソースを複数の学習者が再利用していくから、無駄が生じない。その方法をMOOCの一つで試してみて、意外なほどうまくいったんだ”、とGhodsiは語る。

もちろんこれは、慈善事業ではない。たくさんの人間にSparkと関連ツールの使い方を無料で教えれば、その後、その中の何人かが必ず有料の顧客になる、と同社は確信している。同社はすでに、MOOCsでそんな経験をしている。Community Editionが加われば、それがもっと増えるだろう。

“これはとても優れた見込み客生成プロジェクトだ。うちの企業経営に大きく貢献するだろう”、と彼は語る。

DatabricksのMOOCは、今年もっと増える。そして来年には、受講者数を10万人以上にもっていきたい、という。無料のCommunity Editionが好評なら、それも夢ではないだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Pixarなども顧客とするクリエイティブ教育のDigital-Tutorsがデベロッパ教育の大手PluralSightに買収

【抄訳】

PluralSightはソフトウェアのプロフェッショナルたちのための教育訓練企業として2004年に創業、2008年にオンライン化したが、近く、クリエイティブ方面の教育訓練サービスDigital-Tutorsを4500万ドルで買収する、と発表した。

Digital-Tutorsを買収することによってPluralSightには、これまでなかったメディアやデザイン関連のコースがおよそ1500ほど加わる。現在のPluralSightには、プロのデベロッパ向けの教育訓練モジュールが3000あまりある。

このところソフトウェアの教育訓練という業種分野には合従連衡のブームがあり、買収等を通じて、今までよりも大きくなって市場を有利に支配したいという動機が伺える。買収に動くのは主に、これまですでに資金状態が良くて大きくなっていたところである。

ソフトウェア技術の世界は技術の革新や変化が常時激しいので、プロたちもコンスタントに勉強せざるをえない。そこで情報技術のための教育訓練サービスが、ビッグビジネスになるのだ。Global Industry Analystsの予想によると、ソフトウェアと情報技術に関してプロたちを教育訓練するための支出は、2015年には1070億ドルに達する。

PluralSightと似た動きを見せているのが、今月初めにカナダのオンラインプログラミング学習サービスCompilrを買収したLynda.comだ。Lyndaもオンライン学習サービスの大手だが、これまで同社になかったプログラマ~デベロッパを育てるコースを、この買収により手に入れたのだ。

“この業界の最近の傾向は、投資家にとっても、また市場の顧客にとってもより明確で分かりやすい業態に脱皮することだ”、とPluralSightのCEO Aaron Skonnardは語る。“今はMOOCが注目を集めているが、その多くは収益化で苦労している。そして、財務基盤が堅固で良いアイデアを持っているところが、そうでないところを取り込んで、より肥大しようとしている”。

PluralSightにとってオクラホマシティのDigital-Tutorsは、ここ8か月で4つめの買収だから、上述のSkonardの言葉も真に迫っている。Digital-Tutorsの顧客には、PixarDreamWorks Animation、 and Rockstar Gamesなどの企業や、大学、そして個人のプロフェッショナルたちが顔を揃えている。なお、今回の買収により両社の既存のユーザは、お互いに相手企業の教材に現在の料金のままでアクセスできる。Digital-TutorsのファウンダでCEOのPiyush Patelは、Pluralのクリエイティブ担当VPになる。

PluralSightがこのところ総額1億ドル近くを投じてかき集めた4つの買収企業のうち、残る3社は、デベロッパにオープンソース関連のコースを提供しているPeepCode、スクリーンキャストを利用してプログラマを教育していたTekpub、そして企業のITスタッフを育てるTrainSignalだ。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


リクルートが”日本語訳付きMOOCs”提供へ–米UDACITYと協業

MOOCs(Massively Open Online Course:大型公開オンライン課程。大学などの講義の動画をインターネット上で配信するサービス)のプロバイダである「UDACITY」。1月には有料の統計学課程をローンチした彼らとリクルートがタッグを組んだ。

リクルートホールディングスは3月13日、UDACITYとの協業契約を結んだと発表した。今後は両社で日本でのUDACITYの普及活動を進める。

これまでもリクルートは、MOOCs情報サイト「Edmap」を立ち上げて関連情報を配信するなど、MOOCsの啓蒙に積極的な姿勢を見せていたと説明する。協業の発表にあわせて、Edmap上に「UDACITY on Edmap」を立ち上げており、すでに6つの講座を日本語字幕対応にしている。今後はその他の講座についても翻訳を進める。またEdmaps上で、UDACITYの講座情報(シラバス)を日本語で紹介していく。


既存大学そのままオンライン化の限界を悟ったUdacityが, 企業人を先生とするデータサイエンス課程を開始

インターネットの上には、その気になればビジネスに活を入れることのできる貴重なデータがたくさんあるので、今企業は、それらのデータの中からデジタルの金塊を発見できる統計家を熱烈に求めている。ホワイトハウスもデータサイエンティストの増員が必要と言い出した昨今、MOOC(Massively Open Online Course, 大型公開オンライン課程)のプロバイダUdacityが、有料の統計学課程をローンチした。

“すでに相当大きな需要がある。このオンライン課程により、求人者と求職者とのあいだのスキルギャップを解消したい”、とUdacityのファウンダSebastian Thrunは言っている。

“探査型データ分析(Exploratory Data Analysis)”と題されたそのコースは、 月額150ドルで3月に始まり、Facebookのエンジニアが授業を担当する。また、今日(米国時間1/22)始まる”データサイエンス入門(Intro to Data Science)”(同じく月150ドル)は、小売業向けの小さなアフィリエイト企業Yubのエンジニアが教鞭をとる。

受講期間は受講者のペースにもよるが、およそ2週間から2か月である。

しかしこのオンライン教育を、大学のオンライン課程に比べるとどうだろうか。UC Berkeley(カリフォルニア大学バークリー校)は、学費6万ドルで2年がかりのオンラインデータサイエンスコースを開始した。Udacityのコースに比べると、期間も学費も相当大きい。

今のところ、Udacityがバークリーに比べて良いとか悪いとかは言えないが、ぼく自身はかつて、ふつうの大学で統計学の修士号を取得した。そこで、ぼくの過去の学習体験と、CourseraでJohns Hopkins大学が無料で提供しているデータサイエンスコースを比較してみた。

率直に言って、Couseraはなかなか良い。授業内容はぼくが大学で受けた講義や演習などとほとんど変わらないが、教え方のテクニックは最新だ。

Udacityのは、先生が企業人だ。だから教材として使用されるデータ集合は、ぼくが大学の統計学で使ったものよりも、ずっと実用価値が高いだろう。

Udacityのビジネスとしては、どうなるのか、そこがまだはっきりしない。同社はこれまで、総額で2000万ドルの資金を獲得したし、ジョージア工科大学のコンピュータ科学の学位を6000ドルで提供している。カリフォルニア州立サンノゼ大学との実験的な提携がうまく行かなかったので、今多くの大学がオンラインコースの提供開設をためらっている。しかしThrunは、学習資源を既存の大学以外にも広げていきたい、と言っている。だから今回は、企業人の先生に教わるのだ。

今後は、このようなノン大学のコースを、コンピュータ科学Web開発、そしてモバイルWeb開発でも始める予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Twitter世代向けに、数分間単位のごく短い教育ビデオを提供するCoursmos

Dave McClureのみならず、シード投資家に売り込みをかけるときは、相手を惹きつけることのできる内容から始めるべきだ」。

これを実践してまずCoursmosというiOSアプリケーションをリリースして、少なからぬ人の注目を集めることに成功したスタートアップがある。

そのスタートアップは、ロシアに拠点をおいている。彼らは、既存Eラーニングの問題点を突いて、より効果的な学習環境を提供するのだと主張している。長い時間(最低でも数週間)をかけて学習を行う従来型MOOCと異なり、Coursmosはレッスンをより細かい、把握しやすい規模に分解する。たいていは数分程度のビデオにまとめられていて、たとえば職場に向かうバスの中などでの利用を想定しているわけだ。

これは言うならば「Twitter世代に向けたEラーニング」といったところだ。マイクロブロギングサービスのように、教育コースを短い制限時間内で提供しようという試みだ。気を散らしやすい世代(Generation Distracted)向けの教育環境とも言えるのかもしれない。

「人々は学びたいと思っています。ただ、現在のMOOCは従来型のオフライン教育のやり方に拘り過ぎていると思うのです。もちろん、オンラインコースでも従来と同じクオリティを保とうと考えてのことなのでしょう。しかしひとまとまりの長さを小さくすることで、レッスンを受ける前に時間についてあれこれと悩む必要もなくなるでしょう。世に広がっているMOOCでは、受講前にかなりの覚悟が必要となってしまうのです」と、共同ファウンダーのPavel Dmitrievは言っている。

「Coursmosのマイクロコースフォーマットは、さほど時間をとることなく、簡単に内容を把握できるようになっています。3分間を確保できるのなら、レッスンをひとつ受けることができます。繰り返しておきますが、30分でなく3分でワンレッスンを完了することができるのです」。

ワンレッスンの長さを短くしようとする狙いを実現する意味もあって、CoursmosはモバイルファーストでまずはiOSアプリケーションをリリースすることとした。Androidアプリケーションも現在準備中だ。Dmitrievによれば、ウェブプラットフォームも構築する予定であるとのこと。6月の設立以来、これまでにシード資金として15万ドルを調達している。出資しているのはロシアのエンジェル投資家の他、ウクライナのテック系インキュベーターであるHappy Farmなどだ。

Coursmosはレッスン自体をどこから入手するのか。それはクラウドからだ。今のところ、講座の数はまだまだ非常に少ない。そして大方の予想通り、品質的にもばらつきが大きい。しかしこれは、新たなプラットフォームを開拓しようとする際にはよくあることだとも言える。

しかし、実はこの記事自体、500 StartupsのメンターであるVitaly Golombの作成したマイクロコースをきっかけに執筆にいたっているのだ。但しぱらぱらと他のコースを見てみたところでは、それほど面白いと思うものには出会えなかった。短いのだから全てのコースが簡潔にまとめられているというわけでもないようだ。

UGC(User Generated Content)というのが広く受け入れられるようになっており、Coursmosとしては「レッスン」についてもクラウドから良いものが出てくるはずだという信念を持っているのだろう。アプリケーションの中でも「フィーチャードコンテンツ」として、品質の高いコンテンツをまとめて提示することができるようになっている。そうした形で紹介できるほどに、たくさんのコンテンツが生まれてくるのであれば、なるほど面白いプラットフォームとして機能することになるのだろう。

また、アプリケーションには講義をカテゴリ毎に分類して表示する機能もある。カテゴリはアートや料理からコンピューター、工芸、健康、ビジネスなどの多岐にわたっている。購読するコースは「Your classes」タブにまとめておくことができ、簡単に見なおしてみることもできる。さらにすべてのレッスンには「mark completed」(完了マークを付ける)ボタンが用意されていて、「Your classes」タブ内のレッスンを全て受講したかどうかなど、簡単にチェックすることができる。

仕組みとしてはきちんとしていると思う。ただ、こうした仕組みの「中身」を埋めるのは、講義ビデオと同じような「短い間の苦労」では済まないかもしれない。今のところはコンテンツが登録されていないカテゴリもかなり存在するのだ。

確かに、YouTubeなどでも、シナモンパウダーにむせ返らない方法など、さまざまな知識を無償(ないしはほんの少しではあれ、ネット上でのウケを獲得するために、それとももしかすると広告収入でリッチになるという実現可能性の低い目的)で公開してくれる人がいる。そういう意味でCoursmosも、クラウド経由によるコンテンツの充実を願っているのだろう。ただ、YouTubeは多くのオーディエンスの獲得を期待できる大きなプラットフォームであり、また何ら「教育的」でなくてもコンテンツをアップロードすることができる。そういう意味でみるとCoursmosのハードルは少々高めに設定されていると言うこともできよう。

もちろんCoursmosも、ただ手をこまねいてコンテンツの充実を願っているわけではない。講座を有料にするオプションも提供して、口座開設のモチベーションをあげようと努力もしている。ちなみに有料化した場合は9%がCoursmosの取り分となり、それによりマネタイズの途も確保しようという考えだ。但し、同時に有料化する講座は少ないだろうとも予測しているようだ。既存MOOCでも大学レベルの教育プログラムを無料で提供しているわけで、3分の講座を有料で提供するには、相当に特殊かつ充実した内容でなければ難しいはずだと考えているわけだ。また、気を散らしやすい世代は、なかなか財布の紐を緩めないものだという認識もある。実際問題として、さくらんぼの柄を口の中で結ぶという難しい技も、YouTubeで無料公開されたりしているのだ。

無料で学ぶための方法として、MOOCが最大の関心を集めているのは間違いのないところだ。しかしCoursmosも、YouTubeで公開されているチュートリアルなどとは充分に競合していけるという目論見をもっている。誰もが自由にコンテンツをアップロードするのではなく、組織的な管理を行って、利用者側も体系だって閲覧できる仕組みを提供することにより、変わった猫のビデオなどよりは人気がでるはずだと考えているのだ。

「Coursmosは組織的に、教育分野に注力することで、より多くの人に学習環境を提供していきたいと考えているのです」とDmitrievは述べている。

本稿の執筆にはTechCrunchのSteve O’Hearも協力している。

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(翻訳:Maeda, H