リモート投資とビッグデータがカギ、パンデミック中に誕生したMoonfireが初となる65億円規模のシードファンドを設立

Moonfire VCのチーム

パンデミック渦中、ベンチャーキャピタルがZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールを用いて起業家からピッチを受ける「Zoom投資」なるものが台頭した。そして今、ヨーロッパの新たなシードファンドがこの方法を活用し、自らのモデルに組み込もうと目論んでいる。

Atomicoの元共同創業者であるMattias Ljungman(マシアス・ユンマン)氏は、2019年12月に同社を去った後Moonfireを設立したが、この新事業の詳細についてはこれまでほとんど明かされていなかった。先日、Moonfireは6000万ドル(約65億円)規模のシードステージの「データ駆動型」ベンチャーキャピタルとなることを明らかにした。リモートワークの新たな利点を活用して起業家らにもそれに適応させていくようだ。

正直なところ、ユンマン氏にはさほど選択の余地があるわけではなかった。2020年1月からファンドの設立、調達、クローズ、そして投資までのほとんどすべてをリモートで行った同氏。しかし、同氏によるとこれは裏を返せば「ニューノーマル」を継続することができるという証であるという。「Zoom投資を行っています。地理的制限がなくなり、またこの方法が皆にとって違和感のないものになりました」と同氏はもちろんZoomで話す。

Moonfireの第1号ファンドは、機関投資家、起業家、VCといった幅広い層のLPから資金を調達しており、米国のシードファンド投資会社であるCendanaがアンカーインベスターとなっている。加えてユタ州のSITFO(学校および機関投資家向け信託ファンド事務局)やReference Capitalなども参加。同社によるとこのファンドには上限を超過する応募申し込みがあったという。

同社は健康と福祉、仕事と知識、ゲーム、コミュニティとレジャー、資本と金融などの幅広い分野に焦点を当てていく予定だ。ヨーロッパにおける直近の投資先にはHumaans、Electric Noir Studios、Skunkworks、Pento、Awell Health、Mindstone、Business Score、Homerun、HiPeople、LoveShark、WillaPay、Oliva、Equifyなどが名を連ねる。

経験豊富なユンマン氏はAtomicoの共同設立者として、20年にわたってKlarna、Supercell、Viagogo、Climate Corpなど、テック系スタートアップからユニコーンになった多数の企業への投資実績を持つ。

Mike Arpaia(マイク・アルパイア)氏とCandice Lo(キャンディース・ロー)氏がユンマン氏とともにパートナーになる。元コンピュータサイエンティストのアルパイア氏は、Etsy、Facebook、Kolide、Workdayでの経験を活かしてMoonfireに参画。起業家としての経験もあるロー氏は、オペレーターから投資家に転身し、ヨーロッパと中国のUberでの経験や、英国のBlossom Capitalでのアーリーステージの投資家としての経験も持つ。

データこそが同ファンドの土台となるとユンマン氏は話す。「ベンチャーは人との関わりがポイントとなるビジネスですが、企業の発掘、スクリーニング、評価、創業者へのインサイトの提供などすべての作業を強化して最適化するためには、データやソフトウェア、機械学習がフル活用されるべきです。それにより従来のテーマ型投資を強化し、意思決定をより迅速かつ効果的に行うことができます」。

当然のことながら、最近ではどのVCもデータを駆使して投資を行っている。例えばロンドンのInreach Venturesはこのアイデアを見事に活用している数多くのVCの1つである。

これに対してビデオ電話でユンマン氏は次のように反論している。「至るところでソフトウェア、自動化、機械学習が活用されています。どの業界を見てもソフトウェアで溢れており、ソフトウェアは企業の発掘から管理、評価、サポートに至るまでプロセスのあらゆる要素に関わっています。我々はテーマを中心としたアプローチを続けていますが、それをソフトウェアと組み合わせることにより、まるでバイオニックスーツのように我々がやっていることを補強し、拡大し磨きをかけるのです」。

「現在、ヨーロッパのエコシステムは非常に大きくなっており、直感や人間関係、ネットワークに頼るというだけでは効率的ではありません。我々にとってはソフトウェアの活用が非常に重要です。弊社のデータベースにはすでに140万人が登録されており、こういった起業家の多くがすばらしい経歴を持っています。平均的な起業家の年齢も以前に比べてかなり高くなっています。1年に何千社もの企業を見ていると、本当の意味でのネットワーク効果を見出すことができます。データを構築すればするほど、ポートフォリオを構築すればするほど、そして投資を増やせば増やすほど、その知識が制度化されるので投資先企業への支援やサポートがより充実したものになります」。

Cendana CapitalのパートナーであるGraham Pingree(グラハム・ピングリー)氏は、声明の中で次のように述べている。「この1年間、欧州のスタートアップエコシステムの成熟と成長を見守ってきましたが、ポートフォリオの拡大を目指すMoonfireとパートナーシップを組む機会を得ることができとてもうれしく思っています。MoonfireはCendanaと同様に、創業者らを初期段階から支援することに情熱を傾けており、また新世代の創業者を育てるために必要なスキルと専門知識を持っています」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ビデオ会議投資MoonfireZoom投資

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)