初期費用0円で自分の映画館を ― マイクロシアターサービスの「popcorn」がリリース

NetflixHuluなどのストリーミング動画サービスが普及したことで、以前より映画を観る機会が増えたというTechCrunch Japan読者も多いかもしれない。僕もその1人で、毎日のようにNetflixで映画やドラマを観ている(最近、僕はNetflixオリジナル作品にハマって夜ふかししがちだ)。

でも、「映画をみんなで観る」という体験はどうだろうか? パソコンやスマホで簡単に映画鑑賞できる時代になったからこそ、大人数で映画を楽しむことが少なくなったという人もいるだろう。例えばコメディを観ならば、1人で笑うより大人数で笑うほうがいいと思う人もいるはずだ。

そんななか、大人数で楽しむ“映画文化”を手軽に楽しめそうなサービスが誕生した。日本のポップコーンシアターが4月22日に正式リリースするマイクロシアター・サービスの「popcorn(ポップコーン)」だ。

popcornは、インターネット環境やプロジェクターなど最低限の環境さえ揃っていれば、カフェやバー、会社のオフィスなどで簡単に上映会を開催できるサービスだ。映画はストリーミング配信されるので、DVDやブルーレイディスクを返却する必要もない。機材などを別にすれば初期費用は無料だ。

これまで、カフェや個人のレベルで上映会を開催することは難しかった。個人で映画を鑑賞する場合とは異なり、公の場で映画を上映するには権利許諾が必要となるからだ。でも、いったい誰が権利を持っているのか、そして窓口はどこなのかを調べるのだけで一苦労だ。

それに、権利関係をクリアしても上映費用の問題がある。ポップコーンシアター共同創業者の大高健志氏によれば、「上映費用は『1度につき一律でいくら』という価格体系が多い。しかし、それでは人が集まらないときのリスクが大きいので、これまでは上映会が開催するのが難しかった」と語る。

そこで、popcornは入場者数に応じて上映料が発生する仕組みをつくった。このおかげで、入場者がうまく集まらなくても主催者が抱えるリスクはない。例えば、上映料が1人あたり1000円だった場合、チケット代を1500円にしておけば、たとえ集まった入場者が数名だとしても主催者が赤字を抱えることはない。また、popcornで上映できる作品はすでに権利関係をクリアしているので、主催者が個別に権利許諾を得る必要もない。

popcornを利用するためには、まず上映したい作品を選んで上映会の日時と入場料を設定する。すると、同社のプラットフォーム上に予約サイトが出来あがる。上映会の参加料はWeb上で決済され、後日主催者に送金される。同社が受け取る収益は入場者1人につき300円の手数料だ。

気になるのはpopcornで上映可能な作品数だが、取材時点では「約30作品で、今年末までには100作品くらいまでに増やしたい」(大高氏)とのこと。

ところで、ポップコーンシアターを共同創業した大高氏は、クリエイティブ系のプロジェクトに特化したクラウドファンディング・プラットフォーム「MotionGallery(モーションギャラリー)」を立ち上げた人物だ。MotionGalleryにはこれまでに1500〜2000件のプロジェクトが掲載され、カンヌ国際映画祭にもノミネートされた「Like some one in Love」など、映画作品も多く誕生した。

そして、今回リリースしたpopcornはこのMotionGalleryから生まれた映画作品の「出口」という役割ももつ。大高氏は、「クラウドファンディングで製作した映画を上映する場所はあるが、投資回収できるかどうかは別。例えば3000万円で製作しても、結局500万円しか回収できないというケースもある。popcornを上手く利用すれば、作品と出会う機会を増やせるだけでなく、息の長い投資回収もできるようになる」と語る。また、資金調達フェーズから作品公開までカバーしたサポート体制を整えることで、MotionGalleryに掲載される映画プロジェクトの数も増えるというシナジーもあるだろう。

大高氏は2011年にMotionGalleryを立ち上げた後、2016年5月に共同創業者のナカムラケンタ氏とともにポップコーンシアターを創業。同社はサービスリリースの4月22日に合わせ、全国約50〜100会場で同時オープニング上映会を実施する予定だ。

ポップコーンシアター共同創業者、大高健志氏(写真右)とナカムラケンタ氏(左)