ハリウッドではすべてがリブートされる、そう散々なサービスだった映画見放題サブスクMoviePassでさえも

MoviePass(ムービーパス)の2.0キックオフ記者会見は、ふわさしく不安定なスタートとなった。近日公開の映画の予告編をモンタージュしたエネルギーにあふれる紹介の後、創業者で新オーナーのStacy Spikes(ステイシー・スパイクス)氏が、音声の問題がある中で登壇し、最終的にはハンドマイクに切り替えることとなった。

スパイクス氏は、これまでの苦労をどうこういうよりも、物事を(少しは)笑い飛ばすことを学んだようで、これまでの経緯の表現として後ろのスライドにある「The Hindengurg(ヒンデンブルグ号)」の画像をすぐにクリックした。

リンカーン・センターで行われたイベントの最初の数分間は、この企業で何が問題だったのかを説明することに費やされた。「まず、基本的に何が起こったかを話します」と彼は笑いながら説明した。スライドは、MoviePassのCEOであるMitch Lowe(ミッチ・ロウ)氏とHelios and Matheson(ヘリオス・アンド・マシソン)のCEOであるTed Farnsworth(テッド・ファーンズワース)氏が笑顔でMoviePassカードを掲げているページに進んだ。スパイクス氏は、和やかな会場からの野次のようなものを振り払った。

「多くの人がお金を失い、多くの人が信頼を失いました。傷つき、失望した人々がたくさんいました。私もその1人でした」と説明した。買収から3年足らずで、Helios and Mathesonは連邦破産法第7条の適用を宣言し、MoviePassの運命はその過程で決まってしまった。

画像クレジット:MoviePass

2022年のスタートアップにふさわしい展開として、スパイクス氏は、MoviePassが再び市場に戻ってきたことを、同社の壮絶な盛衰を描いた映画を制作しているドキュメンタリークルーから知らされたという。入札から21日後、破産裁判所が買収を承認した。2021年11月、このニュースが流れた直後にスパイクス氏に話を聞いたところ、彼はアプリの技術的な問題について、次のような非常に率直な評価をしていた。

あれは技術的な問題ではなく、意図的なものでした。私がCEOだったとき、MoviePassのアプリはちゃんと動いていました。機能していたんです。人々は、そのサービスの使いやすさを気に入っていました。行きたいところどこにでも行けるし、どの映画館にも歩いていけます。私たちは、Fandango(ファンダンゴ)とMovie Tickets(ムービーチケット)を合わせたよりも大きなフットプリントを持っていました。おそらくドライブインやキャッシュオンリー以外ならどの映画館でも、MoviePassを使うことができたのです。その使い勝手の良さとシンプルさは完璧でした。そのために、私たちは何年も働きました。その後の展開は、すべて意図的なものでした。技術的な問題ではありません。AMCシアターの撤退を決めたのも、アプリが完全に動作しないのも、技術的な問題ではなかったんです。

その古傷が一夜にして癒えるものではないことは明らかだが、今日のイベントは、2022年の夏にローンチする(と予定されている)MoviePass2.0の形についてのものだった。また、スパイクス氏が再始動に際して株式クラウドファンディングの呼びかけを行っていることもわかった。同サービスのサイトには、出資に興味のある人向けの登録フォームがある。十分な資金を使えば、生涯会員になることができる。

ある意味、オリジナル版は自身の成功の犠牲者であり、持続不可能な速度で成長していた。スパイクス氏のプレゼンは、控えめな成長計画と、2030年までに全劇場販売数の30%を促進するという「ムーンショット」の間をいこうとするものだった。

画像クレジット:MoviePass

この新サービスの核となるのがクレジットシステムであり、その基盤はWeb3の技術によって培われているという(この点については、あまり詳しい説明はしていない)。例えば、ある映画を火曜日の午後に見るか、金曜日の夜に見るかなど、さまざまな変数に応じて、映画の料金は異なるクレジット数になる。クレジットは、月単位で翌月に繰り越され、取引も可能だ。また、クレジットを消費して友人を連れてくることもできるという。

MoviePassは、これを「暗号資産」と呼んでいる。スパイクス氏が設立したPreshow(プレショー)上で流れる広告を閲覧することで、ユーザーが獲得できる通貨だ。TechCrunchのAnthony(アンソニー)は、2019年に行われたこの機能のデモについて、このように説明していた

スパイクス氏は先週、私のためにこの機能のデモを行い、彼の顔がPreshowアプリのロックを解除する様子を見せてくれました。彼が観たい映画を選ぶと、その映画に合わせて特別に選ばれた動画広告が表示され、彼が画面から目をそらしたり、携帯電話から離れすぎたりすると、広告の再生が停止されるんです。(ユーザーからのフィードバックにより、感度を上げたり下げたりすることができるようだ。)

ユーザーが見るのを止めた瞬間に広告が止まるというビジュアルは、確かに衝撃的であり、すでにディストピアとの比較もされているようだ。しかし、ここで少し正直にいうと、これは広告マネタイズの未来でもあるのだ。さらに、新MoviePassは、このサービスと提携する映画館の登録も開始している。現在、ニューヨークのAngelika(アンジェリカ)をはじめ、いくつもの映画館が参加しているという。

画像クレジット:MoviePass

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)