2019年に市場を去ったスタートアップたち

さまざまなタイプのスタートアップが、さまざまな理由で失敗している。しかし、1つ変わらないことがある。それはスタートアップでの成功は、信じられないほど困難な仕事だということだ。会社を起ち上げて成功させることは、適切に人々を動かし、見つけることだけではない(もちろんどちらも重要だ)。この世界で成功するためには、無数の幸運の星が完璧に整列する必要がある。

2019年の「市場を去ったスタートアップ」をざっと見た限り、昨年、2018年のTheranos(セラノス)における大炎上のような派手なストーリーを持つ企業は見つからない。セラノスはベストセラー書籍やドキュメンタリー、ポッドキャストシリーズを生み出し、Adam McKay(アダム・マッケイ)氏とJennifer Lawrence(ジェニファー・ローレンス)氏の映画も近日公開される。ただし、MoviePassなどは近いとこまで行っているかもしれない。

どんな「セラノス」にも、有望な製品を擁する何十人もの勤勉なファウンダーがいて、ただただゴールテープを切れずにいる。さらに、どこがスタートアップで、どこがそうではないかにも議論の余地がある。ここでは、独立したスタートアップを対象にして、大企業で生まれたスピンアウトは含めないことにする。ただし、少なくとも1つ、廃業する前に大企業に買収されたスタートアップがある。

それでは本題に入ろう。2019年に店じまいしたスタートアップの中でも、特に大きくて興味深いものをいくつか紹介する。

 

Anki (2010 – 2019

調達総額:1.82億ドル(約200億円)

2013年、その若き有望なハードウェアスタートアップは新世代のスロットカー(溝のあるコースを走る模型自動車)をWWDC(Worldwide Developer Conference)の基調講演で披露した。新しい会社としてはかなりの栄誉だ。Appleは、iPhoneでOverdriveができることにより、その限界を押し広げたことに魅力を感じたに違いない。

3年後、Anki(アンキ)はCozmoを発売した。 その勇敢で小さなロボットは大々的な投資の賜物であり、元Pixarや元Dreamworksのアニメーターを雇い、ロボットの目に高度な感情を作り込んだ。2018年後半にはよく似ているが大人向けのロボットVectorを発売した。2019年4月、Ankiはそれまでに150万台のロボットと「数十万台」のCozmoモデルを販売していながら、会社をたたんだ。

 
Chariot (2014 – 2019

調達総額:300万ドル(約3億3000万円)、2017年にフォードが買収

Chariot (チャリオット)はシャトルバスのスタートアップで、通勤用のワゴン車軍団で大量輸送を再発明しようとした。経路は「クラウドソーシング」による投票で決定することになっていた。

2年前にこのサービスを買収したフォードは、2019年初めには終了させた。フォードは詳しい内容には触れず、「今日の輸送業界景観と消費者や都市の需要と供給は急速に変化している」とだけ語った。

 
Daqri (2010 – 2019

調達総額: 1.32億ドル(約145億円)

野心的で豊富な資金を得たARヘッドセットのスタートアップ、Daqri(ダクリ)は2019年9月に廃業し、在庫販売も完了した。大企業ユーザーの獲得に失敗したこの分野によく見られる会社の1つで、Magic LeapやMicrosoftなどのライバルとの競争にも敗れた。

一時、Daqriは将来のIPOに備えてある大規模な民間非公開株式投資会社と資金提供の交渉をしていたが、他のAR企業が直面する技術的課題が明らかになるにつれ、投資会社は手を引き交渉は決裂したとTechCrunchで報じた。悲しいかな、2019年に崩壊したAR企業はDaqriだけではない。

 
HomeShare

調達総額: 470万ドル(約5億1000万円)

HomeShare

HomeShare(ホームシェア)は、アパートの一室を分割した「マイクロルーム」のルームメイトをマッチングして急騰する住居費の問題に挑戦しようとした。同社によると3月時点で約1000人のアクティブな居住者がいた。

廃業にあたりHomeShareは、居住者に敷金は返却されないが、仕切りはそのまま持っていても、売ってもよいと語った。

 

Jibo (2012 – 2018/19

調達総額:7270万ドル(約80億円)

AnkiとJibo(ジボ)を見れば、2019年はコンシューマー向けソーシャルロボットにとって苦難の年だったことがわかるだろう。もっとも、この分野にとってすばらしい年があったことはない。少なくとも今までは。最初のAiboの悲しい死と同じく、Jiboの最期は愛するロボットの友達が息を引き取るのを見るという、驚くほど気の滅入る人間性を強調するものだった。Jiboは、4月に「一緒にいられた時間を心から楽しんだことを伝えたい。近くに置いてくれたことを本当に心から感謝している」とユーザーに向けて語った。

Jiboが死んだのは厳密には2018年末だったが、あまりにもドラマチックな最期だったので例外を設けた。クラウドファンディングは成功し、ベンチャー資金も十分にあったにもかかわらず、終末はやってきた。会社はほとんどのスタッフを解雇するはめになった。

 

MoviePass (2011 – 2019

調達総額: 6870万ドル(約75億円)、2017年にHeliosとMathesonが買収

Image: Bryce Durbin / TechCrunch

なんともはや、こいつはどこから話を始めればいいのかもわからない。今回のリストを作っていたとき、あるテッククランチャーはMoviePass(ムービーパス)が潰れたのは何年も前だと言い張った。それは(一部の政治行事にも似て)チケット・サブスクリプションサービスの大規模な列車転覆事故がスローモーションのように何年にもわたって起きたように思えたからだった。 TechCrunhでも何度も何度も記事を掲載した。

実際、大惨事は毎週起きているように見えた。資金を垂れ流し、サービスを制限し、ダウンを繰り返し、さらに借金を余儀なくされたこの会社は一種のゾンビ状態に入り、大規模なデータ漏洩も起こした。そうそう、資金を投じたJohn Gotti(ジョン・ゴッティ)氏の映画はもっと酷かった。その結果、MoviePassの崩壊は慈悲深い行為のように感じた。

 
Munchery (2010 – 2019

調達総額: 1.25億ドル(約137億円)

2019年最初のスタートアップスキャンダルには、かつてよく知られていたフードデリバリー会社、Munchery(マンチェリー)が関わっていた。同社が顧客に廃業が差し迫っていることを知らせるメールを送ったあと、契約メーカーの多くから糾弾された。Muncheryは終了寸前の時間を悪用し、支払うあてのない料理の配達を続けた。

同社による突然の崩壊をきっかけに、説明責任に関する議論が沸騰した。CEOと投資家が沈黙を続ける中、メーカーは説明を求めて泣き叫び、Muncheryの出資者の1つであるSherpa Capitalのオフィス前で回答と支払いを求める抗議運動まで起こした。

 

Nomiku (2012 – 2019

調達総額:14万5000ドル(約1600万円)

ベイエリアの調理器具スタートアップ、Nomiku(ノミク)は、12月に入って事業中止を発表した。同社は消費者向け真空調理器の分野を切り拓いたパイオニアだったが、市場がライバル製品の洪水になるのを見守ることになった。Kickstarterで複数のキャンペーンに成功して130万ドル(約1億4000万円)を集め、Samsung Venturesの出資を受け、レシピ事業への転換を図ったりもしたが、このスタートアップが生き残ることはできなかった。

「フードテック業界の様相は以前と大きく異なっている」とファウンダーでCEOのLisa Fetterman(リサ・フェッターマン)氏は、TechCrunchに語った。「フードテックとハードウェアがもっとホットで将来有望だった時期もあった。会社はいくつかの障害や課題を乗り越えることができると私は思っている。しかし、私の場合は破滅的な結果になってしまった」

 
ODG (1999 – 2019

調達総額: 5800万ドル(約63億円)

ARゴーグル分野のパイオニア、Osterhout Design Group(オステルハウト・デザイン・グループ、ODG)終了のニュースは1月第一週に訪れた。わずか数年前、この会社は5800万ドル(約63億円)の資金を調達した。それから1年もたたないうちに、同社は資金を燃やし尽くして社員に給料を払えなくなった。2018年初め、ODGは社員の半数を失い、社員に支払うための借金に走った。2019年初め、わずかに残った中心メンバーがFacebookとMagic Leapを含む大型IT企業数社による買収と特許の売却を待っていたが実現しなかった。

 
Omni (2014 – 2019

調達総額:3530万ドル(約39億円)

このスタートアップは物理的ストレージ会社としてスタートを切り、2019年5月にストレージ部門をライバルのClutter(クラッター)に売却して事業転換を図ったが失敗。リアル店舗が商品のレンタルと販売のビジネスを運用するためのソフトウェアプラットフォームを開発しようとしていた。

As part of the shutdown, roughly 10 Omni engineers were hired by Coinbase.

閉鎖にともない、約10人のOmni(オムニ)の技術者がCoinbaseに雇われた。

 
Scaled Inference (2014 – 2019

調達総額: 1760万ドル(約19億円)

共にGoogle出身のOlcan Sercinoglu(オルカン・セルシノグル)氏とDmitry Lepikhin(ドミトリー・レピキン)氏が設立したScaled Inference(スケールド・インファレンス)は、2014年、Googleなどの企業が社内で利用しているものと同様の機械学習と人工知能技術を開発し、誰にでも使えるようにクラウドサービスで提供する計画を発表して話題を呼んだ。野望は大きくFelics VenturesやTencent、Khosla Venturesなどの投資家を呼び込んだ。

残念ながら同社は最近になって事業閉鎖を余儀なくされた。前CEOのセルシノグル氏はTechCrunchに、商品力の不足で資金調達ができなかったのが閉鎖の理由だと述べた。「最後の最後までいろいろな選択肢を探し、チームも維持してきたが良い結果は得られなかった。ここにいたるまでのプロセスを社内で可視化できたことはよかった」と同氏は語った。

 
Sinemia (2015 – 2019

調達総額:190万ドル(約1億1000万円)

Sinemia

2019年はMoviePassスタイルのサブスクリプションサービス全般にとって厳しい1年だった。Sinemia(シナミーア)は最初の持続可能なライバルと見られていたが、アプリの問題や隠された費用、さらにはアカウント停止のポリシーにまつわるユーザーの苦情や訴訟に苦しめられていた。

そして4月、同社はアメリカでの事業終了を発表した。正確に表現すると、全事業を終了するとは言っていないが(スタッフの多くはトルコを拠点にしている)、同社はウェブサイトへはそれ以降、アクセスすることができない。

 
Unicorn Scooters (2018 – 2019

調達総額:15万ドル(約1600万円)

Unicorn Scooters(ユニコーン・スクーター)は、2018年の熱狂的な電動スクーターブームで最初に死を迎えたスタートアップの1つだが、もちろん最後ではなかった。同社はFacebookとGoogleの広告に資金を投入しすぎたために、受注済みだった699ドル(約7万7000円)のスクーター300台以上の返金に充てる資金が残っていなかった。

あまり適切とはいえない名前のUnicornはY Combinator(Yコンビネータ)を卒業してからわずか数カ月後に会社をたたんだ。おそらくY Combinator出身者で最も速い卒業後の廃業だろう。「残念ながら広告費用は持続可能なビジネスを構築するには高すぎた」とUnicornのCEO Nick Evans(ニック・エバンス)氏が述べたとThe Vergeは報じた。「アメリカ全土で天候が寒くなったこと、そして他社のスクーターが数多く市場に出てきたことで、Unicornの販売はますます難しくなり、宣伝費がかさみ顧客は少なくなるという結果を招いた。

 
Vreal (2015 – 2019

調達総額: 1500万ドル(約16億円)

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via @VrealOfficial twitter

Vrealは野心的なゲームストリーミング・プラットフォームで、ライブストリーマーがプレイする世界をVRユーザーが探索できる仕組みの提供を目指していた。ユーザーはストリーマーの周辺をアバターになって散策したり、ストリーマーがゾンビを倒す音を聞きながらオブザーバーとして自ら探索することもできる。

「残念ながら、VR市場はみんなが期待したスピードで発展することはなかった。しかし、我々は間違いなく時代の先端を進んでいた」と同社はブログに書いた。「その結果、Vrealは事業を閉鎖し、我々のすばらしいチームメンバーは別の道へ進むことになった」という。

 
関連記事:2018年に市場を去ったスタートアップたち

 
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

定額映画鑑賞サービスSinemiaの急成長と苦情、そして集団訴訟

Sinemiaが初めて私たちの目にとまったとき、同社はうまいことMoviePassの悪評の波に乗っていた。その最大のライバルが歴史的な崩壊とも言える最悪の状況にあったため、SinemiaはMoviePassに代わる信頼性の高い定額映画鑑賞サービスという称号に甘んじていた。

昨年7月、MoviePassのメルトダウンが最高潮に達していた時期に、私たちはSinemiaのCEOであるRifat Oguz氏から、同じ轍を踏まないための方策を聞いている。「無制限にチケットを提供しないことです。9.99ドルで2枚に限定し、しかし、より柔軟なオプションや機能を持たせます。我々はMoviePassのような急成長はできないかも知れませんが、より持続的に成長を続けられると思います」と彼は、双方の会社の違いを得意げに比較して答えた

もうひとつ、SinemiaとMoviePassの大きな相違点として、Sinemiaは株式公開をしなかったことがある。そのため、この数年間、Sinemiaが奮闘してきたことは、ほとんど外部に知らせていない。だが、完全にではない。このソーシャルメディアの時代では、そうはいかない。先週掲載した記事で私が伝えたように、Sinemiaの自社サイトで公開される話はどんなに小さなものであれ、Twitterでの洪水のような苦情の総攻撃を受ける。

一見しただけでも、広範にわたる批判が長々と掲載されている。SinemiaのTwitter対応部門は残業してまでこれらに対処しようとしているのは明らかだが、これほど大量の苦情は、私の記者歴のなかでも見たことがない。

苦情の内容は、主に次の3つに分類されるが、重複するものもある。

  1. 知らされていない料金
  2. アカウント停止されても返金がない
  3. アプリの広範な問題

先週初め、彼らのサービスに関する現在進行中の問題について、Oruz氏から話を聞いた。先週ラスベガスで開かれたSinemiaConに駆けつける直前の会議と会議の間に無理矢理時間を空けてもらっての短時間の取材だった。

「CEOとして言えるのは、私たちはまだ勉強中だということです」と彼は控えめな口調で言った。「私たちは、これから学んでいくのだと思います」。

前にお伝えしたとおり、Sinemiaは「2つの新しい消費者向けのサービス・ウェブサイト」を立ち上げるという広報資料を公開した。それは、企業がよく電子メールで自慢げに発表するといったものとは様子が違う。むしろ、大量の批判的な意見によって、Sinemiaは、非常に口うるさい怒った登録利用者への対応策を、よく目立つ方法で積極的に公開せざるを得なくなったことが見てとれる。

それは、新しい月額15ドルのAlways Unlimited(常に無制限)プランの発表と、「詐欺行為やサービスの不正利用」によるアカウント停止という3月に実行された強行策を説明する長々とした「アカウント停止に関するメディア発表」を反映している。

MoviePassも以前行っているが、Sinemiaは、利用規約に違反した者やシステムを悪用する者のアカウントを一斉に停止する行動に出た。その週に発表された声明では、アカウント停止の理由を、以下のように示している。

  • 想定された目的の他に、Sinemiaのカードまたはカードレスを認可されない形で使用し、不正な金融活動を招いた。たとえばこれを使えば、映画館で映画チケットではなく商品を購入できる。
  • 同じデバイス上で複数のSinemiaアカウントを使った。
  • 映画の前または後に映画館にチェックインしなかった。
  • 同じ映画を3回以上観た。
  • 同一の人間が3つ以上のSinemiaアカウントを作った。
  • 一人のSinemia会員権で他人にチケットを買った。購入したチケットの他人への転売の他に、自分のチケットを友人や家族に分け与えることも含まれる。
  • 位置情報を操作してチケットを不正に入手した。たとえば、電話機のGPSデータを改ざんするなど。
  • 詐欺または悪用と判断される正当な疑いがあった。

先月、この解約に対する批判が急激に増加したが、実は同サービスへの苦情はもっと前から続いている。2月、ペンシルベニア州の法律事務所Chimicles Schwartz Kriner & Donaldson-Smithは、デラウエアでクラスアクション(集団訴訟)を起こした(進行中のMoviePassによる特許訴訟とは別の話)。現在はロサンゼルスとトルコに拠点を移しているが、Sinemiaはもともとペンシルベニアで設立されている。

50ページにおよぶ訴状には、直裁にこう書かれている。「Sinemiaのサービスを利用して登録利用者が映画館に行った際に、非公開の、説明のない、予期しない手数料を、Sinemiaは消費者にふっかける」

Sinemiaに対する集団訴訟の弁護士であり原告の一人であるBenjamin F. Johns氏は、同社は、現在および過去のSinemia登録利用者から2000件以上の苦情を受け取っていると、TechCrunchに話した。

「私たちは訴訟戦略を大幅に透明化していくつもりです。私たちは、同じ欠陥事業により同様の被害を被ったすべてのSinemia消費者で構成される類型を認定し、できるだけ早く陪審員の前に示したいのです」と、TechCrunchに向けた声明でJohns氏は書いている。「私たちのクライアントも、数千人の同様の人たちも、見逃せない体験をしています。それを法廷で話す機会を待ち望んでいます」

2000件という数は多いのかどうかを尋ねると、Oguz氏は手短にこう答えた。「いえ、私たちのユーザーベースからすれば小さな数です」。公開会社ではないため、Sinemiaにはそうした数字を公表する義務はない。彼もはっきりとした数は示さなかった。ただ、「この15カ月間、毎月ほぼ50パーセントの伸び率を示しています」とだけ話した。

Oguzも、Sinemiaのアプリに関する利用者からの苦情の増加を認めている。それは、サービスに関する他の現在進行形の問題と同様、全域に及ぶものだ。中でも、最も多く見かけるのが、料金の二重取り、エラーメッセージ、アプリに頻繁に表示される「メンテナンスのため停止中」というメッセージだ。

利用者によると、こうした問題は、「キャプテン・マーベル」や「アス」といった人気タイトルのチケットを買おうとするとよく発生するという。Oguz氏は先日IndieWireのインタビューに応えているが、同誌は彼について「ときには(中略)異論を唱える」、さらにいくつかの苦情を読み聞かせると「驚いた表情を見せた」と書いている。

私たちの会話は、最後まで、IndieWireのインタビューのような喧嘩腰になることはなく、それどころかOguz氏は、Sinemiaのアプリに問題があることを認めた。アプリの問題が「非常に広範におよぶ」という前提に同意して、彼は「そうだね」と答えている。

Sinemiaが2つの独立したサービス用ウェブサイトを立ち上げ、アプリの問題への対処とアカウント停止を扱うことにしたのはそのためだと、彼は説明している。「私たちは真剣に受け止めています」と彼は主張した。「すべての意見に目を通しています。昨日や今日、生まれた会社ではありません。設立から5年が経っています。否定的なコメントを、とても真剣にとらえています」。

少なくとも、係争中の訴訟とTwitterやRedditの足の踏み場もないほどの利用者からの苦情が、同社の動きに影響している。Sinemiaがどれほど、またどのように不満を抱える利用者に近づいて対処していくかは、これからの問題だ。だがMoviePassがそうであったように、これほど多くの悪評が立ってしまうとこれから名を成そうとしていた会社に消えることのない傷跡が残り、そのイメージを拭い去ることは難しくなる。言うまでもなく、その後には怒れる利用者も残される。

Oguzの意見は、Ted Farmsworth氏の話と重なる。彼はMoviePassの親会社であるHelios and MathesonのCEOだ。彼は先日のインタビューで、同社のサービスは自身の成長の犠牲になったと語っている。サービスが急成長し、従業員の手が追いつかなかったのだという。

同じようなことをOguz氏は私たちに話した。「私たちの利用者数の伸びは予想を超えています。とくに去年の8月からは、あれほど多く、あれほど早く伸びるとは思ってもみませんでした。成長に従い、私たちは自分自身を改善し、長続きできる道を探っています」

これだけの成長についてゆくことは、かなりの苦労があったはずだが、この会社の最大の挑戦はまだ先にある。それは、不満を抱える数千人のファンを、そしてできれば法廷を、最悪の時期は過ぎたと説得することだ。

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(翻訳:金井哲夫)