世界を手中に収めたオープンソースソフトウェア

わずか5年前には、ビジネスモデルとしてのオープンソースの実現可能性について、投資家たちには懐疑的な考えが少なくなかった。よく言われていたのは、Red Hatは奇跡的な例外であり、他にはソフトウェア業界で重要な存在となるオープンソース企業は存在しないということだった。

話を現在にまで早送りしてみると、私たちはこの分野で高まり続ける興奮を目の当たりにしてきた。Red HatはIBMに320億ドルで買収された。これは同社の2014年の時価総額の3倍に相当する。 MuleSoftは株式公開した後に65億ドルで買収された。 MongoDBの価値は、現在40億ドルを上回っている。 ElasticはIPOによって、現在60億ドルの価値を持つとされている。そして、ClouderaとHortonworksの合併によって、時価総額が40億ドルを超える新しい会社が出現することになる。そして、進化の過程の成長段階を経て、さらに成長を続けるOSS企業の一団もある。たとえば、ConfluenceHashiCorpDataBricksKongCockroach Labsなどだ。ウォールストリートや個人投資家が、これらのオープンソース企業について見積もっている相対的な株の価値を考えると、何か特別なことが起こっていることはかなり明らかのように思える。

この、かつてソフトウェアの最先端の動きとされていたものが、なぜビジネスとしても注目を集めるようになったのか? それには、オープンソースのビジネスを推し進め、市場での展望を増大させる、いくつかの根本的な変化があったのだ。

M写真はDavid Paul Morris/Getty ImagesのBloombergから

オープンソースからオープンコアへ、さらにSaaSへ

当初のオープンソースプロジェクトは、実際にはビジネスというわけではなく、クローズドソースのソフトウェア会社が享受していた不当な利益に対する革命だった。Microsoft、Oracle、SAPといった企業は、ソフトウェアに対して「モノポリーのレンタル料」のようなものを徴収していた。当時のトップクラスのデベロッパーは、これを普遍的なものとは考えていなかった。そこで、進歩的なデベロッパーが集り、通常は非同期的に協力して、最も広く利用されているソフトウェアのコンポーネントであるOSとデータベースを皮切りに、素晴らしいソフトウェアの一群を作成した。そうしたソフトウェアは、単にオープンというだけではなく、彼らが付け加えたゆるい管理モデルによって改善され、強化されたことは誰の目にも明らかだ。

そうしたソフトウェアは、もともとデベロッパーによって、デベロッパーのために作成されたものだったので、最初はあまりユーザーフレンドリーとは言えないものだった。しかし、それらは高性能かつ堅牢で、柔軟性も兼ね備えていた。こうしたメリットは、ソフトウェアの世界にだんだん浸透し、10年ほどの間に、Linuxはサーバー用として、Windowsに次いで2番目にポピュラーなOSとなった。 MySQLも、Oracleの支配を切り崩すことで、同様の成功を収めた。

初期のベンチャー企業は、これらのソフトウェアのディストリビューションに「エンタープライズ」グレードのサポート契約を提供することによって、こうした流れをフルに活用しようとした。その結果、Red HatはLinuxの競争で、MySQLは、会社としてデータベースでの勝者となった。ただし、そうしたビジネスには明らかな制約もある。サポートサービスだけでソフトウェアを収益化することが難しいのだ。しかし、OSとデータベースの市場規模が非常に大きかったため、少なからぬ困難を背負ったビジネスモデルにもかかわらず、かなり大きな会社を築き上げることができた。

LinuxとMySQLの手法が成功したことによって、第2世代のオープンソース企業のための基盤が整備された。その世代のシンボルが、ClouderaとHortonworksだ。これらのオープンソースプロジェクト、そして同時にビジネスは、2つの観点で第1世代とは根本的に異なっている。まず最初に、これらのソフトウェアは主に既存の企業の中で内で開発されたもので、広い、関連の薄いコミュニティによって開発されたものではない。現にHadoopは、Yahoo!の中で生まれたソフトウェアだ。2番めに、これらのビシネスは、プロジェクト内の一部のソフトウェアのみが無料でライセンスされるというモデルに基づいたもので、別の部分のソフトウェアについては、商用ライセンスとして、顧客に使用料を請求することができる。そしてこの商業利用は、エンタープライズの製品レベルを意識したものなので、収益化が容易なのだ。したがって、これらの企業は、彼らの製品がOSやデータベースほど訴求力がないものであっても、多くの収益を上げる力量を備えていたことになる。

しかしながら、こうしたオープンソースビジネスの第2世代のモデルには欠点もあった。1つには、こうしたソフトウェアに対する「道徳的権威」を単独で保持する企業が存在しないため、競合する各社がソフトウェアのより多くの部分を無料で提供することで、利益を求めて競い合うことになった。もう1つは、これらの企業は、ソフトウェアのバージョンの進化を細分化することによって、自らを差別化しようとするのが常態化したこと。さらに悪いことに、これらのビジネスはクラウドサービスを念頭に置いて構築されていなかった。そのために、クラウドプロバイダーは、オープンソースソフトウェアを利用して、同じソフトウェアベースのSaaSビジネスを展開することができた。AmazonのEMRがその典型だ。

起業家のデベロッパーが、オープンソース企業の最初の2世代、つまり第1世代と第2世代に横たわるビジネスモデルの課題を把握し、2つの重要な要素を取り入れてプロジェクトを展開したとき、新しい進化が始まった。まず第1に、オープンソースソフトウェアの多くの部分を企業の内部で開発するようにしたこと。現在では、多くの場合、そうしたプロジェクトに属するコードの90%以上が、そのソフトウェアを商品化した会社の従業員によって書かれている。第2に、それらの企業は、ごく初期の段階から彼ら独自のソフトウェアをクラウドサービスとして提供するようにしたこと。ある意味では、これらはオープンコアとクラウドサービスのハイブリッドビジネスであり、自社製品を収益化するための複数の道筋を備えている。製品をSaaSとして提供することによって、これらの企業はオープンソースソフトウェアと商用ソフトウェアを織り交ぜることができるので、顧客はもはやどちらのライセンスに従っているのか心配する必要がない。Elastic、Mongo、およびConfluentなどの企業は、それぞれElastic Cloud、MongoDB Atlas、Confluent Cloudといったサービスを提供しているが、それらが第3世代の代表だ。この進化の意味するところは、オープンソースソフトウェア企業が、今やソフトウェアインフラストラクチャの支配的なビジネスモデルとなる機会を持っているということなのだ。

コミュニティの役割

それらの第3世代の企業の製品は、確かにホスト企業によってしっかりと管理されてはいるものの、オープンソースコミュニティは、オープンソースプロジェクトの作成と開発において、いまだ中心的な役割を果たしている。1つには、コミュニティはもっとも革新的で有用なプロジェクトを発見し続けている。彼らはGitHub上のプロジェクトにスターを付け、そのソフトウェアをダウンロードして実際に試してみる。そして優れたプロジェクトだと感じたものは拡散して、他の人もその素晴らしいソフトウェアの利益を享受できるようにする。ちょうど、優れたブログ記事やツイートが感染のように広まるのと同じで、素晴らしいオープンソースソフトウェアもネットワークの効果を最大限に活用している。その感染を発生させる原動力となっているのがコミュニティというわけだ。

さらにコミュニティは、事実上それらのプロジェクトの「プロダクトマネージャ」として機能しているようなものだ。コミュニティは、ソフトウェアに対して機能強化と改良を求め、欠点も指摘する。製品に付随するドキュメントには、要求仕様書こそ含まれていないが、GitHubにはコメントスレッドがあり、Hacker Newsというものもある。そうしたオープンソースプロジェクトがコミュニティに誠実に対応すれば、やがてそれはデベロッパーが必要とする機能と性能を備えたものに、自然となっていくのだ。

またコミュニティは、オープンソースソフトウェアの品質保証部門としても機能している。ソフトウェアに含まれているバグや欠陥を指摘し、0.xバージョンを熱心にテストし、何が動いて何が動かないかをフィードバックする。そしてコミュニティは、すばらしいソフトウェアに対しては肯定的なコメントによって報いる。それによって、利用者数の拡大を促すことになる、

しかし、以前と比べて変わったことは、ソフトウェアプロジェクトの実際のコーディングについては、コミュニティはそれほど関与しなくなったこと。こうした傾向は、第1世代と第2世代の企業にとっては障害となるとしても、進化し続けるビジネスモデルの不可避な現実の1つなのだ。

Linus Torvaldsは、オープンソースのオペレーティングシステム、Linuxの設計者だ

デベロッパーの台頭

こうしたオープンソースプロジェクトにとって、デベロッパーの重要性が高まっていることを認識することも大切だ。伝統的なクローズドソースソフトウェアの市場開拓モデルは、ソフトウェアの購買センターとしてのITをターゲットにしていた。ITは、いまでもそのような役割を果たしているものの、オープンソースの本当の顧客はデベロッパーなのだ。彼らは、ソフトウェアを発見し、ダウンロードして開発中のプロジェクトのプロトタイプバージョンに組み込む、ということを普段からやっている。いったんオープンソースソフトウェアに「感染」すると、そのプロジェクトは、設計からプロトタイプ作成、開発、統合とテスト、発表、そして最終的に製品化まで、組織的な開発サイクルに沿って進行し始める。オープンソースソフトウェアが、製品に組み込まれるまでに、置き換えられるということはめったにない。基本的に、そのソフトウェア自体が「販売」されるということは決してない。それは、そのソフトウェアを高く評価しているデベロッパーによって選定されるのだ。それは彼ら自身の目で確かめ、実際に使ってみての判断であり、経営者の決定に基づいて決められたものではない。

言い換えれば、オープンソースソフトウェアは真のエキスパートを介して普及し、選択のプロセスを、これまでの歴史には見られなかったような民主的なものにした。デベロッパーは、自分の意志に従って行動する。これは、ソフトウェアが伝統的に販売されてきた方法と好対照を成している。

オープンソースビジネスモデルの美点

その結果、オープンソース企業のビジネスモデルは、従来のソフトウェアビジネスとはまったく異なって見えるものになった。まず最初に、収益ラインが違う。比べてみるなら、クローズドソースのソフトウェア会社は、オープンソース企業と比較して単価を高く設定できる。しかし今日でも、顧客は理論的には「無料」のはずのソフトウェアに対して、高額の対価を支払うことに、ある程度の抵抗を感じている。オープンソースソフトウェアは、単価は安くても、市場の弾力性を利用して全体としての市場規模を確保しているのだ。ものが安ければ、より多くの人が買う。それこそが、オープンソース企業が大きな規模で、かつ急激に製品市場に適合できた理由だ。

オープンソース企業のもう1つの大きな強みは、はるかに効率的かつ感染性の高い市場開拓の動きにある。中でも第1の、そしてもっとも明白な利点は、ユーザーはお金を払う前から、すでに「顧客」になっているということ。オープンソースソフトウェアの初期導入の大部分は、デベロッパーがソフトウェアを組織的にダウンロードして使用することによるものであるため、販売サイクルにおいて、市場への売り込みと概念実証の両方の段階を、企業自体が迂回できるのが普通だからだ。セールトークは、「あなたは、すでに私たちのソフトウェアの500のインスタンスを、あなたの環境で使用しています。エンタープライズ版にアップグレードして、これらの付加機能を入手されてはいかがでしょうか?」といったものになるだろう。これにより、販売サイクルが大幅に短縮され、顧客担当者1人あたりに必要なセールスエンジニアの数を大幅に減少させることができる。そして、販売費用の回収期間も大幅に短縮できるわけだ。実際、理想的な状況では、オープンソース企業は顧客担当者に対するシステムエンジニア数の比率を好ましいものに保って業務を遂行でき、四半期以内にセールスクオリファイドリード(SQL)から商談成立まで持ち込むことができる。

このようなオープンソースソフトウェアビジネスの感染性は、キャッシュフローの面でも、従来のソフトウェアビジネスよりはるかに効率的でいられるようになる。最高のオープンソース企業の中には、中程度の現金バーンレートを維持しつつ、3桁の成長率でビジネスを伸ばすことができたところもある。そんなことは、伝統的なソフトウェア会社では想像するのも難しい。言うまでもなく、現金の消費が少なければ、創業者にとっては希薄化も少ないことになる。

写真はGetty Imagesのご好意による

オープンソースからフリーミアムへ

変化し続けるオープンソースビジネスにおいて、詳しく説明する価値のある最後の様相は、真のオープンソースからコミュニティに支援されたフリーミアムへの緩やかな移行だ。すでに述べたように、初期のオープンソースプロジェクトは、コミュニティをソフトウェアベースへの重要な貢献者として活用していた。その際には、商業的にライセンスされたソフトウェアの要素がわずかでも混入すると、コミュニティから大きな反発を受けた。最近では、コミュニティも顧客も、オープンソースビジネスモデルについてより多くの知識を持つようになった。そしてオープンソース企業は「有料コンテンツの壁」を持つことで、開発と革新を続けていけるのだ、という認識も広まった。

実際、顧客の観点からすれば、オープンソースソフトウェアの価値を決める2つの要素は、1)コードが読めること、2)それをフリーミアムとして扱えることだ。フリーミアムの考え方は、それを製品として出荷しなければ、あるいはある一定数までは、基本的に無料で使用できるということ。ElasticやCockroach Labsのような企業は、実際にすべてのソフトウェアをオープンソース化するところまで踏み込みつつ、ソフトウェアベースの一部に商用ライセンスを適用している。その論拠は、実際のエンタープライズ契約の顧客は、ソフトウェアがオープンかクローズドかにかかわらず料金を支払うが、実際にコードを読むことができるのであれば、商用ソフトウェアを利用する意欲も高まる、というものだ。もちろん、誰かがそのコードを読んで、わずかな修正を加え、亜流を配布するという危険性もある。しかし、先進国では、すでにさまざまな分裂が生じているが、エンタープライズクラスの企業が模倣者をサプライヤーとして選ぶことなどありそうもない。

このような動きを可能にした重要な要因は、より現代的なソフトウェアライセンスにある。そのようなライセンスを最初から採用してた企業もあれば、時間をかけて移行してきた会社もある。Mongoの新しいライセンス、そしてElasticやCockroachのライセンスは、その良い例だ。10年ほど前に、オープンソースプロジェクトの原点となったApacheのインキュベートライセンスとは異なり、これらのライセンスははるかにビジネス向きで、モデルとなるようなオープンソースビジネスのほとんどが採用している。

(関連記事:MongoDBがそのコードのオープンソースライセンスを改定、オープンソースの“食い逃げ”に むかつく

将来は

4年前に、このオープンソースに関する記事を最初に書いたとき、私たちは象徴的なオープンソース企業が誕生することを熱望していた。Red Hatという1つのモデルしかなかった頃には、もっと多くのモデルが登場すると信じていた。今日、オープンソースビジネスの健全な一団を見ることができるようになったのは、非常にエキサイティングなことだ。これらは、オープンソースの遺伝子プールから登場してくるのを目にすることになる象徴的な企業のほんの始まりに過ぎないと、私は信じている。ある観点から見ると、何十億ドルもの価値があるこれらの企業は、このモデルの力を立証するものだ。明らかなのは、オープンソースはもはやソフトウェアに対する非主流のアプローチではないということ。世界中のトップクラスの企業がアンケート調査を受けたとき、その中核となるソフトウェアシステムを、オープンソース以外のものにしようとするような企業はほとんどないだろう。そして、もしFortune 5000の企業がクローズドソースソフトウェアへの投資をオープンソースに切り替えれば、まったく新しいソフトウェア企業の景観を目の当たりにすることになる。そしてその新しい一団のリーダーたちは、数百億ドルもの価値を持つことになるのだ。

もちろん、それは明日にも実現するようなことではない。これらのオープンソース企業は、今後10年間で、成長、成熟し、自社の製品と組織の開発を進める必要がある。それでも、この傾向は否定できない。そして、ここIndex Venturesでは、この旅の初期に、私たちがここにいたことを光栄に感じている。

画像クレジット:aurielaki

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

MuleSoftは上場初日に46%アップで終わる、エンタープライズ系テク企業への市場の信頼厚し

今年最初のエンタープライズ系テクノロジー企業のIPOは、レースの始まりを告げた。

MuleSoftは企業顧客、たとえばNetflixやSpotifyなどが、いろんなサービスやアプリケーションのAPIを統合的に使って自らのビジネスニーズを満たすタスクを助けている。その同社は今日、17ドルのIPO価格に対して24ドル75セント、46%のプレミアムで引けた。その17ドル自体も、予想レンジの14-16ドルより上だった。

同社はIPOで2億2100万ドルを調達できたが、17ドルではなく20ドルだったらもっと調達できただろう。銀行家たちは通常、初日のご祝儀として20-30%の短期上昇を期待する。同社の価格が低すぎたら、彼らはお金を“テーブルの上に残した”(持ち帰らなかった)ことになる。

Snapの場合も同様で、やはり17ドルのレンジを超え、初日には大きく上がった。しかし2週間後の現在は、すでに20ドル以下になっている。

主に機関投資家と、引き受け銀行と仲の良い高資産の個人たちが17ドルでアクセスするのがIPOのスタンダードだが、今日(米国時間3/17)のMuleSoftは24ドル25セントで明けたから、24ドル75セントの仕舞いは、ふつうの投資家にとってかなり小さな儲けだ。

MuleSoftは金曜日(米国時間3/17)に、“MULE”というチッカーでニューヨーク証券取引所に上場した。NYSE(ニューヨーク証券取引所)にとってそれは、Snapの上場に続く再度の勝利だ。

MuleSoftは昨年の売上が1億8770万ドルで、2015年に対し1億1030万ドルの増、前年比では5760万ドルの増だ。純損失は4960万ドルで、前年の6540万ドルから減った。

【中略】

同社の最大の株主(17.1%)であるLightspeed Venture PartnersのパートナーRavi Mhatreによると、彼は初期からMuleSoftが良い投資対象だと認識していた。なぜなら同社は、ファウンダーたちが“明確なビジョンを”持っていたからだ。LightspeedはSnapとNutanixの最近のIPOでも投資したが、Mhatreが言う、勝者を見分けるコツとは、それが“スケーラブルで粘り強い”企業であることだ。

Battery VenturesのDharmesh ThakkerはMuleSoftへの投資の機会を逸したが、一般的にエンタープライズ系企業のIPOに対して楽観的だ。消費者向け企業のIPOと違ってエンタープライズ系のIPOは、“爆発的な上がり下がりがなくて安定成長が期待できる”からだ、と彼は言う。エンタープライズ系企業は、そのビジネスモデルに関しても、将来の予期不能の激変がないことが期待できる。だから、上場企業として適格なのだ。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MuleSoftのIPO価格は予想を上回って17ドル、エンタープライズ系スタートアップの上場ブームとなるか

エンタープライズソフトウェアのMuleSoftが明日(米国時間3/17)上場するが、そのIPO価格は17ドルとなり、提案されていた14-16ドルよりもやや高い。

明日の上場先はニューヨーク証券取引所で、チッカーシンボルは“MULE”になる。2006年に創業したMuleSoftは、いろんなところのAPIを駆使して複数のアプリケーションを統合化したい、という企業のビジネスニーズに奉仕する。

同社の獲得資金は約2億2100万ドルになり、MuleSoftは上場の一環として1300万株の普通株を発行する。これにより同社の総評価額は21億4000万ドルとなり、この前プライベートに資金調達をしたときの15億ドルを大きく上回る。

このところ、うまくいっているIPOが多いから、明日のMuleSoftも上々だろう。

Snapchatの親会社Snap Inc.は先週上場して39億ドルを発行、価格は予想を上回る同じく17ドルだった。SNAPは初日の売買で44%アップし、最近株価は下がっているものの、商い額はIPO価格より上だ。今朝はラグジャリーグッズのメーカーCanada Gooseが上場して2億2500万ドルを獲得、終値はIPO価格12ドルを25%上回った(その12ドルも予想域より高い)。

MuleSoftのIPOは、大手エンタープライズソフトウェア企業の上場としては今年初めてである。それが成功すれば、そのほかのエンタープライズソフトウェア企業も後に続くだろう。先週は消費者テクノロジー企業Snap Inc.のまあまあの成功を見ているだけに、なおさら気が逸(はや)るところだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

企業のITのために“アプリケーションのネットワーク”を作るMuleSoftが3月にIPOへ

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Webとクラウドとモバイルの時代の新しいタイプのシステムインテグレーターMuleSoft日本)が、最新の“unicorn”〔評価額10億ドル以上のスタートアップ〕としてIPOをねらっている。同社はNetflixやSpotifyのような企業にもAPIを提供しており、その財務をS-1ファイルで公開している。それによると、IPOは3月という早い時期に行われるかもしれない。

IPOの申請額は1億ドルだが、これは最終決定ではない。

上記のファイルによると、MuleSoftの昨年の売上は1億8770万ドルで、2015年にはこれが1億1030万ドル、その前年は5760万ドルだった。純損失は4960万ドルで、前年の6540万ドルから減少している。

同社はこれまで、15億ドルの評価額で2億5900万ドルを調達している。投資家は、最大株主がLightspeed Venture Partnersの17.1%、Hummer Winbladが15.8%、そしてNew Enterprise Associatesが同社の14.3%を握っている。Morgenthaler Partners, Sapphire Venture, およびBay Partnersも、大きな割合を保有している。

IPOは前から噂されていたが、最近の2年の業績不振で立ち消えになっていた。2015年には新たに上場した企業の業績が悪く、そして昨年は上場した企業がきわめて少なかった

AppDynamicsは今年のテックIPOの先鞭をつけると期待されたが、土壇場でCiscoにさらわれた。今、耳目が集まっているのはSnapだが、こちらは3月の初めに上場すると予想されている

2006年に創業された同社は、本社がサンフランシスコにある。上場はニューヨーク証券取引所で行われ、ティッカーは“MULE”の予定だ。

CrunchBase entry for MuleSoft

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

一枚岩的な巨大アプリケーションのITは終わり、多様なサービスを自在に組み合わせる時代に…それを手伝うMuleSoftが急成長

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いろんなソフトウェアやサービス、データソースなどを統合して一本化するプラットホームMuleSoftが今日、1億2800万ドルという巨額な資金調達を行った。

そのシリーズGのラウンドを仕切ったのはSalesforce Venturesで、ServiceNowとCisco Investmentsが参加した。またそのほかに、Adage Capital Management、Brookside Capital、Sands Capital Venturesなど、主に上場企業を対象にしているファンドも加わり、さらにこれまでの投資家NEA、Lightspeed Venture Partners、Meritech Capital Partners、Bay Partners、Hummer Winblad Venture Partners、Morgenthaler、およびSapphire Venturesも加わった。

投資家の数がとても多くて、その顔ぶれもさまざまだ。これで同社の総調達額は、2億5850万ドルという途方もない額になる。これだけ大きな資金調達は、通常、IPO近しの兆候だ。

MuleSoftのCEO Greg Schottはこう語る: “公開企業向けの機関からの投資を受け入れる決定をしたのは、そういう関係を築きたかったし、公開市場の投資家たちのやり方を知りたいと思ったからだ”。

彼によると、確かに規模的には公開企業になってもおかしくないし、今回の資金調達をその方向へのステップと取られてもしょうがないが、当然ながらその日程等を今明らかにすることはできない。彼曰く、“Q1の決算からの予測では、今年の年商は1億ドルに達するだろう。うちは急成長しているし、上場してもよい規模だ。すでにその気はあるから、残る問いはそのタイミングだ”。しかし現時点では、プライベートラウンドで資金を調達して成長を継続するべき、と彼は判断したのだ。

MuleSoftは、さまざまなアプリケーションやデータやデバイスを結びつけるプラットホームを提供している。確かに、今、そういう需要は多い。今回のように多数かつ多様な投資家が、同社の継続的な成長に関心を示すのも、当然だ。

Schottによると、20年か30年ぐらい前までは、企業は一枚岩的なアプリケーションを作って、それにありとあらゆる複雑なことをさせていた。でも今では、あらゆるものが細切れになっている。そういう細片をうまく糊付けして使うのが、今のやり方だ。各細片は、どこかのSaaSのこともあれば、何かのアプリケーションのこともあり、あるいはインターネットに接続されたデバイスのこともある。非常に多様だ。

同社が急成長している理由も、いろんなものを互いに接続して使うという需要が、今はものすごく大きいからだ。MuleSoftのプラットホームを利用すると、それが簡単迅速にできる。各部を結びつけるためにいちいちコードを書かなくても、MuleSoftがすべて、面倒を見てくれる。

ServiceNowやSalesforceのようなSaaS企業がMuleSoftに関心を持つのも、そのためだ。彼らは、顧客がさまざまなサービスを縫い合わせることの重要性を、よく理解している。オープンなAPIがあるだけでは、それらを使いこなす仕事がたいへんになるが、MuleSoftのようなミドルマンがいれば、複数のサービスをまとめてくれるのだ。

“うちはAPIも提供しているから、コードを手書きする必要がない。それによってITのコストが下がり、顧客企業内の開発過程もスピードアップする”、と彼は述べる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今、起こりつつあるAPIエコノミーとか何か?

何という2週間だったろうか。しばらくの間くすぶって何かが起こった。API市場が爆発したのだ。IntelはMasheryを1.8億ドル以上で買収し、CAはLayer 7を買収した。3ScaleJavelin Venturesから450万ドルの資金を新たに調達した。MulesoftはProgrammable Webを買収した。そしてついにFacebookもこれに加わりParseを買った。

これらの買収や出資は、アプリケーション界に広がるAPIの遍在によって、ある市場が成熟しつつあることを暗示している。それは決して新しい市場ではない。この分野は過去数年間に構築されたAPIをてこにしてきた企業に埋めつくされている。むしろこれは、変曲点というべきだ。主要APIディレクトリーのProgrammable Webによると、現在APIは3万種以上ある。Javelin Venturesのマネージング・ディレクター、Noah Doyleは私のインタビューに答えて、アナリストらはAPI市場が今後5年間で5~10倍に伸びると予測していると語った。

こうしたAPIの規模拡大によって、魅力あるアプリとAPIを作るデベロッパーにとって好循環が生まれる。APIは分散データネットワークの一部となることによってアプリのリーチを広げる。そのAPIを使う人が多くなるほど、アプリ開発者はより多くのデータを生み出す。データの利用範囲が広がればそのサービスはAPIになる可能性が高まる。

Facebookは、新たなデジタル製品を送り出し続けるために新しいデータの流れを必要としている。Parseのような〈サービスとしてのバックエンド〉プロバイダーは、デベロッパーが基本データタイプや位置情報、写真などを保存するインフラストラクチャーにアクセスするSDKとAPIを提供する。どうやってFacebookがこのデータを利用するかは未だに疑問だ。しかしそれでも、ParseはParseプラットフォーム上でAPIを使用するアプリに育まれた活気ある安定データ源としての役目を果たす。今後このデータをどのようにパッケージ化、セグメント化し、その10億ユーザに対して効果的な広告を送り出すかを決めるのはFacebookだ。

APIは接着剤のようなもの

APIはインターネットの接着剤になる、とProgrammable Webのファウンダー、John Musserは言う。Musserは、Doyleと同じくこれを、モバイル端末の需要から生まれ様々な面で新しいクライアント・サーバーの役割を演じる新しい世代のAPIとして期待している。それらのアプリは、クラウドサービスでホスティングされ、モバイル端末に配信されデータを読み書きし、情報を送受し、API経由で互いにつながりあう。

第一世代では、MasheryやApigeeなどの会社がAPI管理分野の先陣を切った。Twitterをはじめとするウェブ企業が第2世代を形成した。第3の波では、IntelやCAといったエンタープライズ企業がこの大きな動きを察知し、ハードウェアとソフトウェアシステムをつなぐべく市場に参入した。

今やAPIの動きはアプリケーションや機械レベルの下方に向かっているとDoyleは言う。それは〈物体のインターネット〉が出現するレベルにまで来ている。あらゆるものがプログラム可能になり、データの送受信、統合、そして動作のトリガーが可能になる。

3Scaleが提供するAPI管理システムでは、デベロッパーがその上にロジックを作ることできるとDoyleは言う。これを使うとデベロッパーは、あれこれ手を加えることなく、APIにそのままデータセットやサービスを追加できる。

APIエコノミー

この動きの高まりは、Apigeeの戦略担当副社長、Sam Ramjiが提唱に一役買った用語、〈APIエコノミー〉を象徴している。Ramjiは、APIとAPIインフラに注目する人々の数はこの一週間で2倍になったかもしれないとメールに書いた。「APIを持っていない会社のCIOやCTOがニュースを読めば、こう自問するはずだ、『わが社もやらねば』と」

そして、彼らにとってAPIを構築するならMashapeWebshellなどのサービスを使う方が簡単だ。Doyleは、自ら立ち上げたKeyholeが買収された後の3年間をGoogleで過ごした。Googleでは、Google EarthとGoogle Mapsの開発に関わった。

「われわれは地図を軽量なJavaScriptとして公開した」とDoyleは言った。「一種の埋め込みコードのようなものだと考えた。クールですばらしいと思っていたが、あまりの普及の早さにショックを受けた。」

Google Mapsを広く利用されたのは、使いやすかったからだとDoyleは言った。デベロッパーが洗練されたアプリを簡単に作るしくみを組み込んでおくことは、今や最良の慣行だ。

複雑さは避けられない

しかし何もかもが簡単とはいかない。開発が複数のAPIにわたるにつれ複雑さが待ち構えている。MuleSoftはこの穴を、同社のAPIhubで埋めようと考えている。

先週私が書いたように、MuleSoftにとってProgrammable Webとの提携は、同社が〈APIのためのGithub〉と呼ぶAPIhubをProgrammable WebのAPIデータベースと統合し、関連市場でメディアの注目を集めるための好機だ。Programmable Webにとっては、同社のAPIデータベースをMuleSoft APIhubプラットフォームを使ってアプリを開発するコミュニティーへと広げ安定した環境を作り出すことができる。この統合プラットフォームによって、APIの組み込みを容易にしコミュニティーでの協業を促進できると同社は期待している。

アプリケーション・ライフサイクル管理(ALM)のインテグレーター、Tasktop Technologiesは、ソフトウェアのライフサイクル管理プロセスの中で異質なツール群を結び付ける、Software Lifecycle Integration(SLI)というオープンソースの取り組みを開始した。このプロジェクトはオープンソース・プロジェクトのEclipse-Mylynの一部となりM4と呼ばれている。

TasktopのCEO・共同ファウンダー、Mik KerstenはSLIについて、異なるツール間でのリアルタイム同期を可能にする汎用データメッセージバスとして機能し、コードに問題が発生した時にはすぐに対応できる、と評価している。APIエコノミーの発展と共に生まれてくるのが、下支えとなるこうした統合プラットフォームだ。過去2週間にわたる数々の買収と出資は、モバイル機器だけでなくわれわれの生活にある物事ともつながるアプリの開発を真に簡単にするためには、この複雑さを解決する必要があることを示唆している。

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(翻訳:Nob Takahashi)