開発者向け動画プラットフォーム「Mux」が約115億円調達しユニコーンに

わずか8カ月ほど前に3700万ドル(約40億4000万円)の調達ラウンドを完了したビデオAPIのMuxが、さらに1億500万ドル(約114億8000万円)を獲得した。

そのシリーズDはCoatueがリードしたが、そのとき同社の評価額は10億ドル(約1093億円)を超えていたと思われる(Muxは金額を非公開)。既存の投資家であるAccelやAndreessen Horowitz、そしてCobaltも参加し、また新たな投資家としてDragoneerが加わった。

共同創業者でCEOのJon Dahl(ジョン・ダール)氏によると、同社はさらに多くの財源を必要としていたわけではないが、会社の上部と引き続き縁のあったCoatueとその他の投資家たちにその気があり、結局彼らが「ビデオの転換期」においてより迅速な成長を支援するにはさらなる投資が必要、と決めてしまった。

a16zの共同創業者Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)が流行らせた言葉を借りてダール氏は「10年前にソフトウェアが世界を食べていたのと同じように今は、ビデオがソフトウェアを食べている」と述べたた。つまり、それまではデスクやソファーの上で視るものであった動画が、今や至るところにあり、ソーシャルメディアのフィードをスクロールしても、Pelotonでエクササイズをしても必ず動画がある。

「現在は今後5年か10年かかる大きな移行期の最初期です。その間にビデオはあらゆるソフトウェアプロジェクトのメインのパーツになっていきます」とダール氏はいう。

ダール氏によるとMuxはこの移行期によくなじんでいる。なぜなら同社は「ソフトウェアの開発者のためのビデオプラットフォーム」であり、API中心のアプローチによりビデオを迅速にリリースでき、視聴者から見てストリーミングの信頼性も高い。同社の最初のプロダクトはMux Dataと呼ばれるモニタリングとアナリティクスのツールであり、その次がストリーミングビデオのプロダクトMux Videoだった。

ダール氏はこう説明する。「動画プラットフォームを作ってそれをデータファーストで運用したければ、大量のデータとモニタリングとアナリティクスが必要です。私たちはまず最初にデータのレイヤーを作り、次にストリーミングのプラットフォームを作りました」。

同社の顧客にはRobinhoodやPBS、ViacomCBS、Equinox Media、VSCOなどがいる。ダール氏によると、創業した2015年からMuxはデジタルメディア企業の仕事もしているが「メインの市場はソフトウェアだ」と話していた。その頃、動画はほとんどニッチであり「ESPNやNetflixのような企業にしか必要ないもの」だった。しかし2年前からは「動画がコミュニケーションを支える重要な部分」になり「すべてのソフトウェア企業が動画をプロダクトの主役」と考えるようになった。

Muxの創業者たち、Adam Brown(アダム・ブラウン)氏、Steven Heffernan(スティーブン・ヘファーナン)氏、Matt McClure(マット・マクルーア)氏、そしてジョン・ダール氏(画像クレジット:Mux)

当然ながらパンデミックの間、需要が急増した。この1年でMuxのプラットフォームを利用するオンデマンドのストリーミングは300%成長し、ライブのストリーミングは3700%成長、そして売上は4倍に増えた。

「大量の仕事です。2020年の大半は、顧客の急増と会社の規模拡大とプラットフォームへの投資に追われていていました」とダール氏は笑顔でいう。

今回のシリーズDで調達総額が1億7500万ドル(約191億3000万円)になるMuxは、投資をさらに続けるつもりだ。たとえばダール氏の計画ではチームを今の80名から200名に大きくし、買収も検討することになるという。

CoatueのゼネラルパートナーであるDavid Schneider(デビッド・シュナイダー)氏は、声明でこう述べている。「Muxが開発者のコミュニティに的を絞っていることはすばらしい。そして私たちの目に強い印象を残す顧客の維持拡大の様子は、同社のソリューションが強力な価値を提供していることを表しています。この投資でMuxは同社の顧客中心のプラットフォームの構築を継続でき、そして私たちは、ハイブリッドな未来への道を先導するMuxのパートナーであることを誇りとするものです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Mux資金調達ユニコーン動画制作API

画像クレジット:valentinrussanov/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)