2014年の米国テック業界M&Aまとめ、今年の注目は自動車とヘルスケア

編集部注:この原稿はScrum Venturesの宮田拓弥氏による寄稿である。宮田氏は日本と米国でソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、その後mixi America CEOを務める。2013年にScrum Venturesを設立。サンフランシスコをベースに、シリコンバレーのスタートアップへの投資、アジア市場への参入支援を行っている。また、最近サンフランシスコでコラボレーションオフィス、 ZenSquareを開設した。連絡先はこちら(Facebook / Twitter )。

2014年の米国テック業界では、日本円にして2兆円を超えるFacebookのWhatsApp買収を筆頭に、Nest(32億ドル / Google)、Beats Music(30億ドル / Apple)、Oculus VR(20億ドル / Facebook)など、1000億円を超える大型買収が相次ぎました。

詳細な統計データが出てくるのはもう少し先だと思いますが、引き続き盛んであった2014年の米国テック系M&Aを振り返り、その傾向の考察と、2015年に向けての展望を考えてみたいと思います。

まずは時系列で振り返る

筆者が運営するScrum Venturesでは、投資活動の一環として、米国におけるスタートアップの資金調達、M&A、IPOの情報を毎日収集し、分析しています。下記はその中からピックアップした2014年の注目すべきM&A案件のリストです。

新しい「プラットフォーム」の獲得

上半期で注目すべきは、Facebookによる「WhatApp」(関連記事)と「Oculus」(関連記事)の2つの大型買収です。

WhatsAppは、LINEと同じメッセンジャーの会社で、当時4.5億人のユーザを抱えていました。LINEとは異なり、ユーザーに年間1ドル課金をしているため、2000万ドル程度の売上があると言われていましたが、それでも、190億ドルというのは破格の買収額です。

一方のOculusは、Virtual Reality(VR)用のプラットフォームを開発する会社です。Mark Zuckerbergよりも若い22歳のCEOが立ち上げたばかりのスタートアップに20億ドルの値段がついたことは大きなニュースとなりました。

この2つのM&Aに共通するのは、Facebook自身が巨大なプラットフォームでありながら、今後成長が予想される「新しいプラットフォーム」を獲得しにいったということです。

メッセンジャーに関しては、その成長は明らかで、買収時に4.5億人だったWhatsAppのユーザー数はわずか1年弱で7億人まで成長しており、本体のSNSを凌駕する勢いです。

一方で、VRに関しては、まだ正式な製品リリース前ですが、買収時のポストでZuckerberg自身がコメントしているように、次のプラットフォームとしてかなり期待しているようです。モバイルに関しては、どこまでFacebookが成長してもAppleとGoogleのOSの制約から逃れられない立場であるため、ハードそしてOS全てを自由にデザインできる自分たちのプラットフォームを手にしたいと考えているのでしょう。今後の「VRプラットフォーム」の行く末には注目したいです。

買収で加速するGoogleのIoT戦略

もう一つ、上半期での注目はGoogleによるスマートホームデバイス「NEST」の買収です。AppleでiPodやiPhoneを手がけたメンバーが立ち上げたNESTは、2011年に発売した「スマートサーモスタット」が大ヒット。その素晴らしいUXが話題となりました。

Googleは、このNESTを自社のIoT戦略の核と位置づけています。先日オフィスを訪問して来ましたが、社員数は急拡大しており、現在800人(!)にまで膨れ上がっているということでした。NESTはこの買収直後に “Works with NEST“ というパートナープログラムを発表しており、様々なスマート家電がNESTと連携して動くアライアンスを進めています。

NESTを核としてM&Aも進めており、6月には家庭用監視カメラメーカーであるDropcamを買収しています。Android社の買収によってスマホプラットフォームとしての座を築いたのと同様に、IoTの分野でこの買収がどのような成果を上げるのか注目をしたいです。

止まらない「動画」の拡大:広告、ゲーム、 MCN

また、年間を通してみられた大きなトレンドは「動画」です。

Facebookによる動画広告プラットフォームLiveRailの買収、Amazonによるゲーム動画プラットフォームTwitchの買収、Disneyによる大手MCN(複数のYouTubeチャンネルと提携し、効果的なチャンネル運営や視聴者獲得のためのサービスを提供する組織)、Maker Studioの買収など例を挙げればきりがないほど、動画系のM&Aは花盛りでした。

これまで動画というと、長くYouTube一強時代が続いていましたが、インターネットの高速化、スマホの普及などにより、作成、共有、視聴、広告などバリューチェーン内のあらゆる分野でのイノベーションが期待される分野です。

コンサバ企業のM&A:Eコマース企業を買った老舗百貨店

もう一つ、ユニークなM&Aの事例をご紹介します。TrunkClubという男性向けEコマースのサービスを、全米最大の百貨店 Nordstromが3.5億ドルで買収しました。TrunkClubは、2009年創業の「スタイリストが選んでくれた洋服が自宅に届き、その中で欲しいものだけ購入し、残りは返す」という「キュレーション型富山の置き薬」と言えるサービスで、ビジネスは結構順調だったようです。日本ではまだあまり目にしない「巨大市場の老舗企業による新興企業の買収」ですが、ネットビジネスのさらなる拡大に伴い、ある種の防衛策として今後ますます増えるカテゴリーのM&Aだと考えています。

2015年のM&Aを占う

最後に、2015年の米国のM&Aの動向を予想してみたいと思います。2014年同様、2015年も引き続き活発なトレンドは変わらないと思います。小さなAcqui-hire(人材獲得型M&A)から大きな戦略的M&Aまで、様々なM&Aが起きて行くものと思われます。その中で筆者が、注目しているカテゴリーは「ヘルスケア」と「自動車」の2つです。

「ヘルスケア」は、現在米国で最もVC投資が集まっているカテゴリーの1つで、2013年は総額200億ドルの投資額だったものが、2014年は2Qまでの上半期だけで230億ドルと、ほぼ1年間で倍増しています。8000万人を超えるデータを持つ電子カルテスタートアップ、Practice Fusionなど今年IPOが予想されている企業も多く大きな動きがありそうです。中でも、ウェアラブルデバイスの普及等により今後急激に拡大する「ヘルスケアデータ」を取り巻くM&Aに注目しています。遺伝子解析サービスの23andMeがPfizerなど製薬会社12社とデータ提供のパートナーシップを結ぶなど、カジュアルなダイエットのようなものからシリアスな医療、研究開発の分野に至るまで目が離せません。

「自動車」は、今月開催されたCESでも注目のカテゴリーでありましたが、スタートアップ関連の動きも非常に面白いです。独BMWは、CVCであるBMW iVenturesを通して、運転データ解析のZenDriveやテレマティクス関連のChargeMasterなどに積極的に投資をしています。一大ロジスティクスインフラになりつつあるUBERや自動運転領域で最先端を行くGoogleが、コネクテッドカー、自動運転などの本格商用化に向けて、どのようなM&Aをしかけてくるのかに注目したいです。


サーモスタットのNest、Google Nowから音声制御が可能に


家の中は寒い、しかしサーモスタットは〈はるか遠く〉にある。

サーモスタットまで歩いていって温度を上げることはできる、しかし、〈歩く〉なんて。もしあなたがNestを持っていれば、アプりを開いて設定できる、しかし、〈アプリを手で立ち上げる〉なんて。これっていつの話、2007年?

今日の午前をもって、Nestはあなたの声で制御できるようになった。

今年行ったあの32億ドルの買収を活用するべく、GoogleはNestの機能をGoogle Nowに統合した。暖かくしたい?「OK Google、温度を24度に変更」とスマホに言うだけでいい。

さらにGoogle Nowは、Nestの自動制御設定が開始されるたびにカードを表示する。もし、あなたの帰りを迎えるためにNest自身が温度を上げることにすれば、Nowカードをポップアップさせる。

いくつか注意点を:

  • Google Nowを利用しているため、音声機能がシステム全体で働くのは今のところAndroidだけだ。iOSでも音声コマンドは使えるが、Googleアプリを通じてのみになる。
  • 重要な(当然だと思いたい)ことだが、これをするためにはNestが設置されている必要がある。他のサーモスタットでは使えない。しかし、使えると言って誰かが家の中で叫ぶところを見るのも面白いかもしれない。
  • 音声コマンドを使うためにはNestアカウントで設定を有効にする必要がある。もしGoogleがこれをデフォルトでオンにしたら、びっくり仰天する人が出てくるだろう。

オーケー、Google。こんどは「紅茶、アールグレーのホット」に答えてくれるよう、わが家に教えてほしい。

[via AndroidPolice]

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Google、スマートサーモスタットNestをハブとするホームオートメーション・プラットフォームを発表

「オーケーGoogle、部屋の温度を下げて」と言うとエアコンがそのとおりに動作するという時代がすぐそこまで来ている。

Nestのスマートサーモスタットを設置した家庭ではGoogle Nowを通じてエアコンを操作できるようになる。しかもそれはほんの手始めだ。

GoogleはNest Learning Thermostatをスマートホームのハブに据えようとしている。Googleは今日(米国時間6/24)、Works with Nestというデベロッパー・プログラムをスタートさせた。これによってガジェット、自動車、リモコンなどがブランド、OSを問わずNestのサーモスタットと会話し、連携動作することが可能になる。スマートホームが一気に身近なものになってきた。

スマートホームの普及の上で大きな問題は、フラグメンテーションだった。スマートライトからウェブ接続家電までそれぞれが独自の規格、閉鎖的なアプリで作動し、互いに会話ができない。複数のブランドのガジェットに協調動作をさせようという試みはあったが、そのためには橋渡しをする別のガジェット、別のアプリが必要になり、問題をますます複雑化させる結果になっていた。

しかしWorks with Nestプログラムの登場で、いまやGoogleのスマートサーモスタットがスマートホームのデファクト標準となりそうだ。

このプログラムではサードパーティーのガジェットがNest内蔵の各種センサーに加えて機械学習、音声認識、ジェスチャー認識などの機能にアクセスし、活用することができる。

Works With Nestというエコシステム

すでにLIFX、Logitech、Chamberlain、Whirlpool、メルセデス・ベンツといった世界的なブランドがNestプログラムに参加している。Whirlpoolの場合、Nestがユーザーが家を離れていることを感知すると、「送風フレッシュ・モード」で乾燥機を作動させる。これでユーザーが帰宅して乾燥機から衣類を取り出すまでシワにならないようにするわけだ。LIFXの場合は、Nest Protect火災ガス警報器が一酸化炭素を検出するとウェブに接続した赤色の照明が点滅して危険を知らせる。 メルセデス・ベンツの一部の車種は車内からNestに対してエアコンの作動を命令できる。

またNest ProtectとNestサーモスタットはIFTTTをサポートしており、ユーザーが独自の動作を設定できる。たとえば、「もしNest Protectが煙を感知したら、次のテキストメッセージを隣人に送信する」とか「もしNestサーモスタットが摂氏22度以下になり、かつエアコンが作動中なら、以下のTwitterDMを私宛に送信する(そんなにエアコンを強くするなと子供を叱るため)」といった動作をプログラムできる。

また今年の秋にはGoogle Nowが正式にNestと連動する。ユーザーはAndroidスマートフォンさえ持っていればどこにいてNestに命令することができるようになる。

またGoogleはJawboneと共同でUP睡眠モニタをNestのエコシステムに取り入れようとしている。

スマートホームのハブへ

32億ドルでのNest買収はGoogleを一気にスマートホームのリーダーへと押し上げた。一方Appleもこれに対抗して今月、HomeKitというスマートホーム・プロジェクトを発表した。TechCrunchのMatthew Panzarino編集長の記事にあるように、HomeKitはデベロッパーがBluetoothを通じてさまざまなデバイスに対して命令を出せるようにするフレームワークだ。

HomeKitはスペック上はWorks with Nestよりも多機能だ。しかしHomeKitはGoogleのプロジェクトに比べるとまだ開発の初期段階にある。AppleのHomeKitが実際に作動するようになるには数ヶ月はかかるだろう。

Googleといえどもホームオートメーションのすべての要素を自製することは不可能だ。しかしNestをデファクト標準化し、協調動作することが確認されたデバイスにNest認証を与えることはスマートホーム実現に向けて非常に有効な戦略だろう。スマートホーム市場に参入する企業にとってはNest認証を受けることが大量普及への最良の道となるなら、Googleの立場は極めて強いものになる。

Works With Nest紹介ビデオ

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Nestの家庭用スモークアラーム、「手を振ってアラーム解除」機能の問題で発売一時停止

先ほどNest CEOのTony Fadellは、消費者向けに告知を行い、スモークアラーム製品、Protectの「手を振って解除」機能を無効にするよう奨励した。同社がテストしたところ、誤って解除され、警報が遅れる場合があることがわかった。

Nest Protectの発売も中止された。

同氏は利用者に対して、解除機能を当面停止することを推奨しており、正しく動作するよう機器をアップデートすることを約束した。なお、Nest ProtectがWiFi経由でインターネットに接続されている場合は、自動的に解除機能が無効になる。

修正が施されるまでの間、利用者はユニットのボタンを押すことでアラームを止めることができる。

「Nestでは、厳格なテストを定期的に行い当社製品を最高品質を保っている」とFadellは言う。「最近のNest Protectスモークアラームの実験室試験で、ある固有の条件が組み合わさった場合に、Nest Wave(手を振ることによってアラームを停止する機能)が意図せず有効になることがわかった」

Fadellによるとテストには2~3ヵ月必要で、その後アップデートを提供していく。

「この問題で迷惑をかけ大変申し訳ない。会社を挙げて各家庭に届けられたNest製品に責任を持ち、お客様に100%の満足と安全を与えることがわれわれの使命だ。Nestチーム全員と私はこの問題に全力を注ぎ、現在の当社製品を改善し続けていることにあらゆる手段を尽くしているをご理解いただきたい」

本件に関するFAQによると、Nestはこの問題をテスト中に発見したが、利用者からの報告は一件もない。ユニットがネット接続されていない場合に機能を無効にする手順も説明されている。

告知文には、Nest Protectを返品したい利用者には全額返金することも書かれている。Nest Wave機能がProtectユニット最大の宣伝文句だったことを思うと、何とも皮肉な結果である。

良い知らせは、デバイスの内蔵ソフトウェアはネット接続するように作られているため、ソフトウェア関連の問題はリモートアップデートできることだ。しかし最近、Nest Thermostatのソフトウェアアップデートが、一部ユニットのWiFiおよびバッテリーに問題を引き起こし、われわれの安全を守る環境システムを支えるソフトウェアの脆弱さが浮きぼりにされた。

Nest Protectは、Nest Thermostatに続く同社第2弾の製品だ。Nest社は、現金32億ドルでGoogleに買収される計画を1月に発表した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


GoogleのNest買収で儲かったのは誰だ?―クライナー・パーキンスの投資は20倍に、シャスタには過去最高のヒット

ご承知のようにGoogleはNest32億ドルのキャッシュで買収した。そこで初期の投資家であるKleiner Perkins Caufield ByersとShasta Venturesは大儲けをした。複数の情報源から聞いたところでは、Kleinerは2000万ドルを投資し、買収で4億ドルを得たという。20倍になったわけだ。

NestはシリーズA、シリーズBのラウンドでの投資家も投資金額も明らかにしていない。そのため今回スマート・サーモスタットとスマート煙探知機の買収で誰がどれだけの利益を得たかを正確に判断するのは難しい。

とりあえず分かっていることを確認すると、ShastaとKPCBでNestの2010年9月のシリーズAを全額引き受けている。これはNestが創立されてわずか数カ月後のことだった。次に2011年8月のシリーズBにも両社は参加しているが、このときはGoogleVentures、Lightspeed Venture Partners、Intertrust、Generation Investment Managementも加わっていた。

複数の情報源によると、Kleiner PerkinsはシリーズAとBを合計して2000万ドルを投資しており、Nestの最大の投資家だという。 Googleが払った32億ドルはKPCBの投資を20倍にしたとFortuneのDan Primack記者は聞いたそうだ。この資金は2010年に組成された6億50 00万ドルのKPCB XIVファンドから支出されたものだ。つまりKleinerはNestへの投資だけでこのファンドの60%の利益を出した計算になる。これでNestへの投資を主導し、取締役にもなっているKPCBのパートナー、Randy Komisarの地位も一段とアップすることだろう。

Kleiner Perkins Caufield Byersは1990年代末のインターネット時代の初期にGoogle、 Amazon、AOL、Intuitなどに投資するというホームランを連続して放った。最近ではFacebookとTwitterの株式上場で成功を収めている。またSquareやSpotifyにも投資している。しかしこれらはかなり後になってからの投資で、そう高い倍率は望めない案件だった。しかしNestの場合、KPCBは最初期から関与していたため、久々に非常に高い利益率を得ることができた。

左はShasta VenturesのマネージングディレクターでNest投資への投資を主導したRob Coneybeerだ。

[アップデート: 事情に詳しい情報源によると、今回のGoogleのNest買収で、Shastaは2億5000万ドルのShasta IIファンドの「大半を取り戻した」という。つまりShastaは2億ドル以上を得たもよう。]

CitrixのZenprise買収、IntuitのMint 買収などでShastaはこれまでも成功を納めているが、今回のNest買収は桁違いの利益を生んだもようだ。これで今後投資パートナーからベンチャー資金を募るのが楽になるだろう。

シリーズBとCをリードしたGoogle Venturesがおおきな利益を計上したことも間違いない。Tony FadellMatt Rogersの二人の共同ファウンダーも同様だ。

ベンチャーキャピタル全体として考えると、Nest買収はハードウェア起業家への強い追い風となる。Googleのような巨大企業が何十億ドルもの金をソフト企業ではなく家庭ハードウェアを製造する誕生したばかりのスタートアップに投じたことは、ハード起業家が資金を集めることを大いに助けるだろう。

[本記事の調査にはKim-Mai Cutlerが加わった]

Googleのネスト買収の詳細については下の画像をクリック:

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Nestの買収は、Googleが未来のハードウェアへ向う幸先よいスタート

CESは終り1年後までやってこないが、ショウ最大のテーマの一つ ― どんなものでも(車、時計、鏡、テーブル、等々)「ハードウェア」になれる ― は始まったばかりだ。そして今日(米国時間1/13)のGoogleがNestを32億ドルで買収したニュースは、Googleがどれほどハードウェアの中心プレーヤーになりたがっているかを如実に示している。

GoogleがNestを買収しても、Nestのアプリ、サーモスタット、煙検知器等に渡る全データを検索の巨人がアクセス可能になるわけではないが、Googleは別の何かを手にする。それは次期先端ハードウェアの一流デザイン知識 ― Apple出身のハードウェアのベテランで、うち一人はiPodの父という2人が集めたチームを通じて。

これはGoogleにとって非常に大きな節目だ。

現在まで、検索の巨人はビジネスの要所 ― デスクトップ・インターネット、モバイル・デバイス ― をソフトウェアを通じて支配し、これらの市場をデータ ― 具体的には広告データ ― によって収益化してきた。

それは、プラットフォームとその上で動くサービスのみならず、動作するためのハードウェアも支配する(そしてそれによって高級な製品から高い利幅を得ている)垂直統合企業、Appleとは根本的に異なるアプローチである。

NestはGoogleに、全く新しい市場 ― つながれたホームデバイス ― に垂直的アプローチで立ち向かうことによって、収益を多様化する機会を与えるだろう。

「これは新しいハードウェアのムーブメントだ」とある人は説明した。「デバイス+サービス、製品と市場の一致、クラウドファンディング・プラットフォームを使った調査、提携小売販売とオンライン直販の混合等々」。

Googleにとって、Nestはとりわけ魅力的な例の一つだ。つながった家庭用ハードウェアの統合システムを作っているだけでなく、Nestは相互運用性を中心に据え、初期バージョンでは、iOSまたはAndroidスマートフォンで制御するアプリと、よく整備された直販および小売販売チャネル、および誠意に満ちたサポートによってそれを実現してきた。

いずれにせよ、それはGoogleが以前から注目していた分野であることに間違いない。例えば昨年12月にThe Informationは、GoogleがEnergySenseと呼ばれる節電を手助けするスマート・サーモスタットらしきものをテストしていることを暴露した。テストは、Nestのライバル会社、Ecobeeのデバイス上で行われたと言われているが、今度はNestのサーモスタットを使う可能性もでてきた。

「NestとGoogleの製品は相互に協力して動作するのか?」という今日の仮想 Q&A 記事の質問に対して、共同ファウンダーのMatt Rogersは、「『Nest』の製品ラインがGoogleの注目を浴びたことは間違いないので、一緒にできるクールなことはたくさんあると考えているが、今日言えることはない」と答えた。

しかし、この買収はGoogleにとって有益であるばかりではない。


この数ヵ月間、Nestは同社製品のソフトウェアにバグが多いという高まる批判に悩まされている。Googleのソフトウェア知識は頼りになるだろう(ただし、その点に関してはGoogle嫌悪者とNest愛好家の重なりが問題になるかもしれない)。

さらには、Nestの知的財産権と特許の争いもある。NestはHoneywellおよびFirst Alertのメーカー、BRKとの特許侵害裁判を抱えている。これらの戦いを有利に進め、さらに自らを模倣者から保護するために、同社は特許に関して積極的だ。すづに100件の特許が承認され、200件が申請中、さらに200件が申請準備済みで、Intellectual Venturesとのライセンス契約も進めている。ここにGoogleが加われば、同社がこれらの戦いを進める上でも予防策になる。

Nestの買収が、今後Googleの他のハードウェアに対する関心にどう影響を与えるかも興味深い。

Googleが2012年に125億ドルで買収したMotorolaは、Googleがスマートフォンとタブレットに新たな垂直型アプローチを取るための布石かと一時見られていた。結局Motorolaは他のAndroid OEMと平等なパートナーであり続け、買収の最重要部分は特許となった。果たしてNextの買収によって、Googleは新たなハードウェア製造に取り組み、Motorolaとの契約で得た知的財産と才能をそこに注ぎ込むことになるのだろうか。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Google、スマート・サーモスタットなどインターネット接続家庭用品のNestを32億ドルのキャッシュで買収

Googleはインターネットに接続される各種スマート・デバイスのメーカー、Nestを32億ドルのキャッシュで買収する。今日(米国時間1/13)、Googleはこのことをまず社員に対してメールで通知し、続いてプレスリリースを発表した

2011年にNestはベストセラーとなったスマート・サーモスタットの販売を開始した頃からGoogleはNestに注目していたようだ。同社は最近ではやはりネットワークに接続される煙警報機Protectを発売している。

Nestの共同ファウンダー、Tony FadellとMatt RogersはともにGoogleに参加する。RogersはAppleでiPhoneの開発がスタートしたとき、最初に参加したエンジニアの一人だ。一方、Fadellは「iPodの父」として知られている。

NestはGoogleの傘下に入っても独自のブランドを維持し、Fadellが指揮を続ける。買収は合意されているが、当局による承認を待っている状態だという。

Nestの共同ファウンダー、FadellとRogersはTechCrunchに対して買収に応じた経緯を説明するメールを送ってきた。

「“Googleは巨大なビジネス資源とグローバルな規模のプラットフォームを持ち、Nestの成長プロセスを大きく加速することができると考えた」とFadellは言う。

Fadellによればこの決断に至るまでには長い経緯があったという。Nestのローンチ以前、2011年のTEDカンファレンスでFadellとビジネス担当副社長のErikCharltonはGoogleの共同ファウンダー、サーゲイ・ブリンにスマート・サーモスタットのプロトタイプのデモ・ビデオを見せた。すると「サーゲイは即座に興味を示し、その後われわれがデモをしたGoogleのチームのメンバーも同様だった。2011年5月にGoogle VenturesがシリーズBの資金調達ラウンドをリードし、2012年にはやはりGoogle VenturesがシリーズCを実施した」という。

Googleは過去にインターネット接続のAndroid at Homeなどスマート家庭用品デバイスの開発を試みて失敗している。その点Nestは優れたデザインと機能のデバイスの開発、すでに市場に受けいられている。 将来Googleが必要とするに違いない分野で成功を先取りしているという点で効果的な買収だろう。

Googleは独自のスマート・サーモスタット計画を検討していたとされるが、Nestがこれを補完するのか、あるいはNestチームがこの分野を指導することになるのだろう。もうひとつのGoogleの興味あるプロジェクトである電力消費モニターのPowerMeter計画についても同様のことがいえる。

NestはQ&Aを発表し「今後共Nest製品のサポート、保証には変更がない」ことを強調した。〔Q&Aの全文については原文を参照〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+