高知発・AI対話システム開発のNextremer、産業革新機構などから4.7億円の資金調達

AI対話システムの研究・開発を行うベンチャー企業のNextremerは8月8日、産業革新機構(以下、INCJ)および高知銀行を引受先とした第三者割当増資により、総額4億7000万円の資金調達を実施したと発表した。INCJが4億円、高知銀行が7000万円を引き受ける。また出資に伴い、INCJマネージングディレクターの鑓水英樹氏が社外取締役に就任している。

Nextremerは2012年の設立。設立当初から取り組んできた、AIを活用した対話システムの研究・開発を軸に、文字や音声も含んだ自然言語処理機能を持つ対話システム「minarai」を提供している。独自で開発した深層学習をベースに、各業界に特化したシナリオデータベースを組み合わせることで、応答精度の高い対話システムの開発を行っているという。

最近では、空港や駅の案内システムや24時間自動応答のカスタマーサポートサービスにminaraiを提供して、人とAIが協業で対話するシステムの実証実験を実施・支援するなど、公共施設を中心に大手事業会社との共同研究や開発受託を行っている。2017年2月にはHaneda Robotics Labが行った実証実験「羽田空港ロボット実験プロジェクト2016」に第1期事業者として参加。羽田空港のデジタルサイネージに対話システムを提供した。また今夏は、凸版印刷と東武鉄道が検証する訪日外国人向けの観光案内サービスにもminaraiを提供している。

同社は高知県に開発拠点や子会社を持ち、若者の雇用などを通じた産業振興に加えて、AI対話システムの社会実装にも取り組む。子会社のdataremerでは、AI技術開発のためのデータ収集と対話シナリオのプランニングを専門に行い、事業者に提供。dataremerでは2017年3月に、高知銀行、オーシャンリース、REVICキャピタルが共同設立した「こうぎん地域協働ファンド」から資金調達を実施している。

今回の調達資金でNextremerでは、高知県の開発部隊の人員を現在の30名から100名に拡大して、研究・開発体制を強化。現行のカスタマーサービスや受付案内などの対話システムの質の向上を目指すとともに、自動車やロボティクス分野への適用を進めていくという。

モビリティやロボティクス分野のAI技術活用は、8月4日にトヨタ自動車から約105億円の資金調達を実施したPreferred Networksをはじめ、ベンチャーから大手までさまざまなプレイヤーが競い合うフィールドとなっている。対話システムから始まったNextremerでは、新たなプレイヤーとしてこの分野に参画するにあたって、「自然にコミュニケーションできる対話システムが我々の強み。ゆくゆくは、ナビゲーションシステムなどへの組み込みにより、例えば渋滞情報だけでなく、代わりの立ち寄り先をプラスアルファで提案してくれるような、会話ができるシステムが提供できれば、と考えている」という。

さらにNextremerでは、少子高齢化社会における労働人口減少などの課題解決に向けたAI対話システムの社会実装モデルの構築も実現していく、としている。

出資に関して、INCJ代表取締役社長の勝又幹英氏は「Nextremerの取り組みは、人と協業するAI対話システムの社会実装モデル構築へのチャレンジ。AI関連サービス事業の拡大やAI技術搭載製品の普及は労働人口減少、インバウンド需要等への対応として非常に重要であり、同社の今後の成長を期待するとともに、継続的な支援を行う」とコメント。

また、高知銀行取締役頭取の森下勝彦氏は「AIを高知の新産業とするNextremerのビジネスモデルに共感するとともに、今回の投資を通じて成長をさらに後押しできることを大変嬉しく思う。人とAIの協業によるサービスや製品が社会に実装されていくことが、人口減少最先端にある高知県における雇用の創出ひいては地域経済の活性化につながるものと大いに期待している」と述べている。