初期費用約1万円のデバイスで自動車のビックデータ解析 ― スマートドライブが10億円調達

自動車のビックデータ解析を手かげる日本のスマートドライブは4月5日、複数の事業会社および既存株主の産業革新機構、その他銀行系VCを引受先とした第三者割当増資を実施し、約10億円を調達したと発表した。これが同社のシリーズBラウンドとなる。今回の調達ラウンドは将来的な事業提携を視野に入れた戦略的投資だと見られるが(すでに数社とは業務提携を締結済み)、代表取締役の北川烈氏は「まだ発表していない大きな業務提携に関わるため、現段階では会社名を明かすことはできない」としている。

スマートドライブは自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開している。現在、同デバイスは大手コンビニの配送車両をはじめとする1万台以上のクルマに装着されているという。

この専用デバイスを取り付けるのは「OBD-Ⅱ」と呼ばれるコネクターだ。これは車両の自己診断用に搭載されたコネクターで、ここから車速やエンジン回転数など様々なデータを取得することができる。日本では2010年9月以降に販売されたすべての自動車(輸入車含む)への搭載が義務化されている。

スマートドライブは2015年10月よりクラウドファンディング・プラットフォームのMakuakeでデバイスの先行販売を開始。現在はOBD-Ⅱコネクタに装着する2つのタイプ(3G接続、Bluetooth経由でスマホと接続)と、シガーソケットに装着するタイプの計3種類のデバイスを用意している。デバイス本体は約1万円で購入することができ、月額でかかる費用も1500円〜と比較的リーズナブルだ。

価格を低く抑えることができた理由として北川氏は、「デバイスの販売で利益を得るのではなく、そこから得たデータを解析して付加価値を提供するビジネスモデル」だからだと語る。

その例として、同社は2015年に業務提携したアクサ損害保険と共同で「テレマティクス保険」を開発している。これは、スマートドライブが取得したデータによって運転の安全性を判断し、それをもとに掛け金が変動する仕組みの保険商品だ。

その他にも、走行データの可視化サービスを法人向け「DriveOps」と個人向け「DriveOn」のそれぞれに提供している。

つい先日もYahoo! Japanが自動運転車のSBドライブに出資するなど、日本でも「クルマを賢くしよう」とする動きが盛り上がりを見せている。そんな中、約10億円という大規模な資金調達を完了したスマートドライブ。今後の展望を北川氏に聞いた。

それによれば、まず同社は2017年度中に交通渋滞の予測など公共性の高いデータを地方自治体などに販売開始するという。

また、2017年夏ごろにはドライブレコーダーの動画データを解析するサービスを公開する予定だ。GfKジャパンの調査によれば、2015年度におけるドライブレコーダー保有率は16%とまだ低いものの、販売台数は前年比42%増の61万台と上昇傾向にある。需要は少しずつ増えているようだ。しかし、企業の営業車にドライブレコーダーが導入された場合、取得した動画データをすべて目視で確認するのは難しい。そこで、スマートドライブはデバイスから得たデータ(急なハンドル操作など)を組み合わせて解析することで、危険な運転があった箇所だけをサマライズできるクラウド解析サービスを提供していく。

スマートドライブは2013年10月の設立。同社はベンチャーキャピタルのANRIからシードマネーを調達後、2015年8月には産業革新機構から最大で6.6億円を調達すると発表した。北川氏によれば、助成金や借入金も含めた累計調達金額は約20億円だという。