消費者/労働者保護のオピニオンリーダーElizabeth Warrenが“いわゆるギグ・エコノミー”について語る

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Elizabeth Warren上院議員が、New America Foundationの今年の年次大会の木曜日(米国時間5/19)のスピーチで、Uber, TaskRabbit, Alfredなどの“いわゆるギグ・エコノミー(gig economy)”を構成している企業に関して、言葉を選びながら述べた。彼女は決してそれらの企業を否定する者ではないが、しかし企業と政治家の両方に対して、労働者指向の変化を促した: “いかなる労働者も、クラック*に落ちて這い上がれない状態になるべきではない”。〔*: クラック, cracks, 登山用語で深い岩の割れ目(救助が難しい)。〕

スピーチの中で上院議員は、産業を進歩させ新しい課題に挑戦していくテクノロジーの役割を称賛したが、まさにその直後に、彼女の本当に言いたかった言葉が続いた:

[真の問題はこうだ: イノベーションは生活の質を高め、新たな富を作り出す。しかし労働者がその富に与れるのは、そのための政策や方針〔政治と企業の〕があるときのみだ。]

“LyftやUberのような企業は、日々彼らの業績に貢献している労働者と同じ労働者たちが、その労働によって稼ぎだした富の、より大きな配分にアクセスしようとする努力に、しばしば抵抗してきた”、とスピーチの書き起こしにある。“彼らのビジネスモデルには、運転者の極端な低賃金に依存している側面がある”。

彼女の言う“低賃金”は、もちろん、他と比較した場合のことだ。Uberのドライバーは平均して1時間に15ドルから20ドルぐらい稼ぐが、ガソリン代や車の修理費などは自分持ちだ。良い商売、である場合もあるが、売上増など業績アップの余地はほとんどない。この問題がほかの方法で解決されるまで、客は彼らにチップを払わざるをえない

さらに彼らには、福利厚生も失業保険もない。だからその“雇用”は、真の雇用からほど遠いものに見えてくる。でもそれは、決して新しい問題ではない。Warrenはこう指摘する:

これらの問題のどれも、ギグ・エコノミーが発明したものではない。むしろ、ギグ・エコノミーは、弱い労働市場において生活を支えることのできない一部の労働者のための、一時しのぎになっている。ギグ労働の柔軟性や独立性、クリエティビティなどの美徳が派手に賞賛され、それは一定の条件下における一部の労働者には真実かもしれないが、しかし多くの労働者にとってギグ・エコノミーは、福利厚生が上位10%の労働者にしか提供されていない世界で何らかの経済的安定を得ようとする、徒労な努力の連鎖の、一歩であるにすぎない。

上院議員はこれに続けて、非正規雇用の仕事を二つとか三つ抱えて生きている大量の労働者を救うための、提案を述べている。いずれも、ギグ・エコノミーがもたらすとされるポジティブな効果やイノベーションを、大きく失うことはない、とされる施策だ。以下は、それらの提案の、ぼく自身(の無償労働!)による要約だ:

まず、正社員に提供されている“安全ネット”を、非正規〜臨時雇用者にも部分的に提供すること。

  • 臨時雇用、時給制労働者、パートタイマーなどすべての労働者が社会保障費を支払うこと。給与天引きをルールとし、雇用者がその事務を行う。
  • すべての労働者が自己を名義人とする高額医療費保険に加入すること。“すべての、とは、文字通りすべての労働者であり、障害者認定に至らない実質的障害者も含む。また、従来的な労働者災害補償の対象外の労働者も含む”。
  • すべての労働者に有給休暇があること。その具体的な条件等は今後の検討課題だが、全員に完全自由休日が与えられ、また家族の問題や医療にあてる休日も、リーズナブルな量、与えられること。
  • 医療や退職等に関わる福利厚生が、できるかぎり、複数の雇用者にまたがってポータブルであること。それに関し、被雇用者自身の事務負担等が極力少ないこと。

次は、労働法の改善と強化だ:

  • 労働の分類に錯誤や抜け穴があって、雇用者の無責任が許される状態がないこと。
  • 労働者の定義が単純明快であること。安全ネットの普遍化は、(区別が不要になるので)単純化を助ける。保険や福利厚生の要素で違いがあるのではなく、労働そのものの違いに焦点が当てられるべきである。
  • “すべての労働者に組織化の権利があること(例外なく)。正社員、パートタイム、一時雇用、ギグ労働者、契約社員、などなど、労働を提供する者全員が集団交渉の権利を持つべきであり、そのことは、労働条件をコントロールする者が誰であっても変わらない。またそれによる報復や差別から、労働者は保護されなければならない”。

スピーチの初めの方で彼女は、産業革命の初期にも、工場に対する規制がなく、労働者は死と隣り合わせの劣悪な条件と環境で働かされた、と述べた。そして、ちょっと気を利かせて、TaskRabbitのワーカーはこれまで、それほど苛酷な条件で働かされたことはないだろう、とも述べた。Warrenは、機は熟している、今こそ規制は、これらの新しい業態に適合するとともに、そこで働く労働者を保護するためにも、大幅に変わらなければならない、と語った。

“この国が100年前に行ったこととまさに同じように、今は労働者と企業との基本的な契約関係を再考すべきときである”、と彼女は語る。“新しい技術によってより大きな富が生まれているとき、その経済を支える労働者がその富を確実に共有できるために、私たちは何を為すべきか?”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Stuartはeコマースの「最後の1マイル」問題を解決するフレキシブルな配送サービス

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今日(米国時間4/18)正式に運営をスタートさせたStuartはオンデマンド配送サービスだ。パリでの半年間に渡る実験で「何万回もの配送に成功」したと発表している。Stuartはパリより小規模だがロンドンでもプライベート・テストを行ってきた。スペインのバルセロナでもスタートの予定だ。

StuartはClement Benoit(レストランのデリバリーサービスのResto-Inのファウンダーで最近までCEOを務めていた)とBenjamin Chemla (Citycake.frの共同ファウンダー、元CEO。同社はResto-Inが2014年に買収)が2015年に創立した。

このスタートアップはeコマースの「最後の1マイル」というロジスティクス上の難問に画期的な解決法を与えるのが目的だ。同社では優れたテクノロジーと優秀な自転車クーリエの部隊の活用により、カバーする地域での即日配達を実現するという。

ユーザーはStuartをウェブとモバイルアプリで利用できる。これは小規模ビジネスやレストランなどのカジュアルな利用を急速に増加させるために理想的だ。StuartはAPIも公開しており、eコマース・ビジネスの運営者は独自の無印版の即日配送サービスを公開できる。

オンラインとオフラインのコマースの間に存在するギャップを埋めようとするオンデマンド配送サービスは世界中の大都市でありとあらゆる新しいスタートアップと激しい競争を生んでいる。ロンドンのJinnやアメリカのPostmatesなどはi消費者向けアプリで、「オンラインで注文した商品がすぐに届く」ことを目標にしている。レストランの出前など分野を絞ったスタートアップも多い。

StuartはAmazon Primeの配送システムの小規模ビジネスをターゲットにしたローカル版というのが近いだろう。Amazonの場合、商品は郊外のフルフィルメント・センターのようなロジスティクス拠点から配送しなければならないが、Stuartは「最後の1マイル」問題だけに特化しており、活動も特定の年に絞っている。.またStuartはを自転車、手押し車、バンなど多様な配送手段を用意しており、荷物のサイズや重量についての柔軟性が高い。【略】

共同ファウンダーのBenjamin Chemlaは「熱い料理の配送はきわめて限られたピークタイム(つまりランチとディナー)があり、十分な数の配送要員と安定した契約を結ぶのが特に困難な分野だ」と言う。

Stuartは他の種類の配送と同時に料理の配送という課題にも取り組んでおり、パリのピザハット、ロンドンの寿司ショップと共同で実験を行っている。料理、食品の配送サービスでは、Delivery HeroやValk Fleetや Delivery Cubeが運営を停止しているので、Stuartはこれによって生じた真空を利用できるかもしれない。

Stuartのビジネスモデルは他のライバルより堅実で、単に配達の件数をカウントするのではなく、配達ごとに距離、重量、配達手段などによる独自の方式で料金が計算される。これによりそれぞれの配送でコストを回収できるのだという(マーケットのサイズについてはJinnの最近の統計が参考になるだろう)。

Stuartの投資者リストは印象的だ。昨年11月、運営を開始する前に私はStuartが2200万ユーロを調達したことを報じている。このラウンドはフランス大手配送サービスのLe Groupe La Posteの子会社、GeoPostがリードしたもので、他の投資家にはJ.D. Blanc(Allociné)、 J.A. Granjon(Vente-privee.com)、O. Mathiot(PriceMinister)などが含まれる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ストレスのないパーキングを目指して

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パーキング。それは車を所有する人たち全員にかかわる問題だ。ふだん考えたり話したりすることはないかもしれないが、日々のストレスを生む苛立ちの原因であることは間違いない。

従来、ドライバーはブロックを周回して路上駐車場所を見つけたり、妥当な料金の駐車場を探したりしてきた。しかし、駐車には、白線やガレージや駐車場以外の要素がある。

パーキング業界は25年以上にわたって変化を拒んできたが、この巨大市場 ― 全世界で1000億ドル ― は変わりつつある。投資家はオンデマンドサービスに40億ドル以上を注ぎ込んでいるが、消費者輸送市場の中立な立場に変わりはない。モバイル技術の発展は、輸送経済のあらゆる分野で破壊が可能であることを証明し、パーキングも例外ではない。

破壊の準備が整った業界

この業界の真の破壊は、〈つながっている〉自動車と予測可能なパーキングを融合する、単一ソースのソリューションが見つかるまで達成できない。つながっている車 ― スマートフォンの自動車版 ― は外の世界とやりとりし、独自の無線ネットワークを持ち、将来的には自立する。

予測可能なパーキングは、モバイル駐車ソリューションに弾みをつける技術であり、アプリを開くと同時にドライバーの行く先を予測し、ワンタッチで駐車場所を見つけられる。

各企業がパーキング市場の膨大な機会に気付くにつれ、決定版になることを目指す多くのライバルたちが現れた。SpotHeroやわれわれ(ParkWhiz)等のプレーヤーは、オンデマンド予約と前払いサービスを提供し、PassportやParkmobileは、モバイル支払を現実化し、LuxeとZIRXは便利なオンデマンド・バレー(代行駐車)サービスを提供する。

この市場で牽引力を持とうとするIT業界にとって、チャンスの宝庫は駐車をストレスのない体験にすることだ。現在ここ業界で現状に満足している会社はなく、究極の答となるべく範囲やサービスの拡大を続けている。あらゆる駐車アプリがその目的に向かって進んでいるが、業界全体としてすべきことは残されている。

摩擦のないパーキングを推進する

共通するゴールは、現在人々が直面している摩擦 ― 駐車場所を探し、財布の中から札を取り出して支払う、等 ― をすべて排除し、顧客の明確な利益を生む一つのスムーズなしくみを作ることだ。

消費者の行動は、既存の基準を上回る利便性が提供された時に変わる。これを実現するために必要なのは、摩擦のない体験からなる強力な消費者価値提案を生み出すことだ。

モバイル技術の発展は、輸送経済のあらゆる分野で破壊が可能であることを証明し、パーキングも例外ではない

摩擦のない駐車体験とは、ドライバーがA地点からB地点まで、何の制限も遅れもなく自由に移動できることを意味する。現在数多くの機能 ― キャッシュレス駐車、人間介入の減少あるいは完全回避、予約機能等 ― が、自分たちのニーズに最もよく合うものを探して各製品をテストしている消費者の手に届けられている。

駐車業界を推進するモバイルブームを通じて、業界を摩擦のない駐車体験へと後押しする重大な変化がいくつかある。例えば:

不透明価格から透明価格へ。駐車料金は歴史的に気まぐれであり ― 時間帯や地域のイベントによっても変わる ― 消費者は駐車場所に止めるかガレージに入る前に価格を評価することが困難である。駐車アプリの普及によって、業界は不透明から透明な価格モデルへと変わりつつあるので、ドライバーは目的地に着く前に駐車料金がわかるようになった。

現金から自動モバイル支払いへ。
駐車場の支払いボックスを探してチケットを差し込む面倒は、スムーズなモバイル支払いに取って代られる。消費者はアプリをワンタッチするだけで料金を支払える。

真の利便性を提供すべく利用範囲は日々拡大している。上で書いた通り、駐車を簡単にするためのアプリは尽きることがない。しかし残念ながら、一部のサービスは地域や時間帯によっては利用することができない。

業界はこれを消費者行動の変化を妨げる重大な問題と捉えており、各企業は施設の追加や時間帯の拡大、新規市場への進出を続けている。現在ソリューションの多くは重複しているが、いずれも消費者にあらゆる場所で24時間サービスを提供しようと競っている。

在庫管理と売上管理の欠落は、両者へのニーズに変わった。これらのアプリは消費者に大きな利益を提供するだけでなく、運営者にとっても良いニュースだ。モバイルアプリは駐車業界を収益管理モデルへとシフトさせ、駐車場オーナーや運営者の利益を促進している。

ExpediaとPricelineが宿泊業界に与えた影響を思い出してほしい。テクノロジーによって、ホテルは需要に応じて部屋の料金を様々に変化させることが可能になり(オフピーク時の大幅値引き等)、ホテルの利益は増加した。同じ方法によって駐車業界も勢いを増し、駐車場会社の利益を押し上げている。

実際のところ、この業界内で決定していることは何もないが、パーキングがストレスの素であることは、運営者もITリーダーたちも知っている ― IBMの調査によると、世界中のドライバーが平均20分、駐車場所を探すために費している。

摩擦のないサービスが頂点に達した時成功は生まれる。その時パーキング業界には、消費者の行動に大きな影響を与える波乱が起きるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ラップトップをオンデマンド方式で修理するTechy

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iCrackedのような大きな修理ネットワークは、スマートフォンやタブレットを数時間で直してくれるけど、ラップトップの場合は、修理を申し込む(待ち行列に並ぶ)、デバイスを送る、後日それを受け取りに行く、という手間が必要だ。

最近のTC Radioピッチオフで入賞したTechyは、ラップトップの修理にオンデマンド方式を導入して、この問題を解決しようとしている。

その仕組みはこうだ: ユーザが修理リクエストを提出すると、Techyが集荷人を派遣してユーザのラップトップを受け取り、それを地域の修理屋へ持ち込む。同社の現在のサービスエリアであるWashington D.C.の外に住んでる人は、自分でデバイスをTechyに送る。

修理が終わったらデバイスをユーザに送り返すが、それは同日であることが多い。

Techyの協同ファウンダYaffet Mesheshaによると、一時間足らずで解決する問題が圧倒的に多いから、同日修理が十分可能なのだ。デバイスをユーザに返す時間は、十分にある。

Techyは均一料金制で、ソフトウェアの修理は69ドル99セント、ハードウェアは99ドル99セントだ(部品代は別)。今はWashington D.C.だけだが、できるだけ早くそのほかの主要都市にも広げていく。

現在、ユーザは修理をネットまたは電話で申し込むが、もうすぐiOS用の専用アプリを提供する予定だ。

Mesheshaによると、既存顧客の半分以上が、今後そのほかの修理でもTechyを利用するから、リテンション(retention, リピーター, 固定客)率は上々だ。今はラップトップに限定しているが、いずれデスクトップやスマートフォンにも手を広げる、と彼は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

誰か、オンデマンドでない不便なサービスを作ってほしい…本当に充実した人生のために

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テク企業は今、老いも若きもオンデマンド革命を推進している。おかげで今や、家の掃除も、昼飯(ひるめし)も、いろんな製品も、何もかも、自分が欲しいと思ったときに手に入る。

もちろん、それにはコストが伴う。サービスのユーザにとってはお金のコストという意味だが、でもまず間違いなく長期的には、サービスの供給側に経済的コストが発生する。また、画面をタップすれば何でも手に入るという方式は、人間をダメにし、怠け者にするだろう。

このトレンドに対する、解毒剤を提案したい。それは、Inconvenience-as-a-service(IaaS, サービスとしての不便)、つまり、不便であることに価値があるサービスだ。自分が欲しいものに到達するために、苦労と努力と工夫が必要なアプリケーションを、誰か作ってほしい。Amazonからの配達品を受け取るためには、別の都市(まち)に車を運転して行かなければならない、なんてどうだろう。品物の購入を確認するために、“これでよろしいですか?”ダイアログを10回も15回も出すeコマースサイトもいいね。

Uberのようなタクシー呼び出しアプリも、自分の足で長時間歩かないとその車に到達しない方が健康によろしい。会員制のレシピーサービス(料理用食材セット配達サービス)も、毎週空の袋が届いて、そこには地元のグロサリーの地図が印刷されており、「今週のレシピー」というタイトルの下には大きな活字で「自分で考えろ」と印刷されている。

オンデマンド経済への移行は、不公平なゲームだ。人間のお粗末な脳は、満足がインスタントに手に入ると分かると、それには抵抗できない。でも、どんなに豪華な料理を届けてもらっても、いずれ古くなるし、飽食は快適な気分を生まない。

すばらしいディナーも、インスタントに届いてインスタントに食えば、罪の意識に駆られ、食後の散歩が欠かせなくなる。クリーニングサービスも、出来上がりを受け取るためにはいちばん近い国立公園まで20マイル歩き、ボートを漕いで島に渡り、その島のいちばん高い木の枝から取ってくるのがよろしい。テイクアウトなんか、井戸に放り込んでしまえ。Netflixを見ながら一人パーティーをやるときは、必ず最初の3時間半、”Buffering”(バッファリング中)が表示されること(上図)。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa