通信衛星オペレーターの英OneWebがソフトバンクなどから約1450億円調達

破産を申請し、英国政府とBharti(バーティ)から救済の資金提供を受けるなど波乱の1年を乗り越え、2020年12月に一部の衛星打ち上げで再浮上したロンドン拠点のブロードバンド衛星オペレーターOneWeb(ワンウェブ)は米国時間1月15日、14億ドル(約1450億円)の資金調達をクローズしたと発表した。第1世代衛星648基の残りを打ち上げるのに十分な額だと同社は話している。

2020年12月にOneWebは新たに36基の衛星を打ち上げ、現在軌道にある衛星の数は110基になった。つまり、打ち上げる第1世代衛星はまだ500基超残っていることを意味する。

同社は野心を削ぎ落とし続けている。米国時間1月11日の週の初めOneWebは「コンステレーションを合理化」し、その結果米当局に出していたライセンスのリクエストを減らしたと発表した。元々同社は米連邦通信委員会にマーケットアクセスのために衛星4万7884基を申請していた。いまその数字は6372基に減っている。

SoftBank(ソフトバンク)グループとHughes Network Systems(ヒューズ・ネットワーク・システムズ)が資金を提供すると、OneWebは述べた。1カ月前にOneWebは3回目となる打ち上げで衛星36基を軌道に乗せた。当時、同社会長のSunil Bharti Mittal(スニル・バーティ・ミタル)氏は4億ドル(約415億円)調達に向け順調だと話していた。それが実現したようだ。

「OneWebのミッションはすべての人、すべての場所をつなぐことです。11月の連邦破産法11条から脱却して以来、我々は事業を再出発させるべく飛躍的に進歩を遂げました」と同社のCEOであるNeil Masterson(ニール・マスターソン)氏は声明文で述べた。「目標達成に向けて進歩していることの証拠としてのソフトバンクとHughesによる投資を、当社は歓迎します」。

OneWebは、バリュエーションを公開しないと広報担当は筆者に語った。今回のラウンドにより、同社の累計の調達額は約45億ドル(約4668億円)になったようだ。ただし、破産はかなりの資本増強と事業の再評価を意味し、そしてそうした数字にはリストラする前からの資金が含まれている。

ソフトバンクとHughesはどちらも過去にOneWebに投資し、パートナーでもあった。そのため今回の投資は以前の投資が完全に無駄にはなっていないことを確かめる保険証券のようなものだ(少なくともその一部は報道されている。ソフトバンクは数年前に部分的にOneWebへの投資のために240億ドル、約2兆5000億円という目を見張るような損失を計上した)。

一方のHughesは親会社EchoStar(エコースター)を通じて投資し、2017年にOneWebと同社の衛星と連携する地上インフラを建設する契約を結んだ。衛星テクノロジーの世界での建設と展開は何年もかかり、往々にして遅延に直面する。そのため3年間(あるいはそれ以上)契約から何も得られないというのはさほど驚くことではない。

OneWebは、投資家との長期の付き合いを受け入れ、地上ネットワークがまだHughesによって建設中であることを認めた。

「ソフトバンクとHughesから投資を受けることをうれしく思います。両社とも当社の事業に精通しており、未来に向けた当社のビジョンを共有しています。そして両社のコミットメントにより今後の急成長する機会に投資できます」とミタル氏は声明文で述べた。「両社の経験と能力から得るものがあり、当社は他に類を見ないLEO(地球低軌道)ネットワークを世界に提供します」。

Hughesは元々、最初のサービスを2019年に開始する計画だった。しかしそれはOneWebと同社のLEO衛星がまだかなり輝かしいアイデアで、ベンチャーファンディングで17億ドル(約1764億円)を集めたころのことだ。

最初のアイデアはいつでも素晴らしい。しかし、ムーンショット(壮大な挑戦)でもある。LEO衛星は他の手法ではリーチできない多くの遠隔地に地上波ネットワークがブロードバンド接続を提供するのを支え、有用なものであることがすでに証明されている。OneWebのアイデアはサービスを便利なものにし、400Mbpsという約束で地上のかなり多くのユーザーに使われるようにするというものだった。

その間にブロードバンド使用は爆発的に増えた一方で、OneWebがおそらく想定していなかったのは接続を提供するための非衛星システムの構築がネットワークの進歩において進むだろうということだった。あるいは、衛星を約束したタイムラインで打ち上げるためにどれくらいかかるのか、どのくらいの資金調達が必要なのかということだった。

高まる5Gユビキタス、IoT、接続生のニーズは全体的にまだOneWebのアプローチの力強いユースケースだと同社は話す。そこには「グローバル・ゲートウェー・ステーションのネットワークと、異なる顧客マーケットにリーズナブル価格で速く、広帯域、そして低遅延のコミュニケーションサービスを提供できる広範のユーザーターミナルが含まれます」と話す。

英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)長官のKwasi Kwarteng(クワシ・クワーテング)氏は声明文で以下のように述べた。「OneWebへの我々の投資は英国の宇宙部門への継続的な取り組みの一環であり、最新の技術進歩の最先端に英国を押し出すものです。今日の投資によりOneWebはグローバルなブロードバンド接続を人々、事業者、政府に提供するというミッションの達成に一歩近づきます。その一方で英国においては新たな研究、開発、製造の機会を生み出すものになる可能性があります」。

ソフトバンクは今回のディールでOneWebに役員を1人送る。

「OneWebがキャパシティを増やし、商業化に向けて加速している中で、同社をサポートすることに興奮しています」とソフトバンクのCEOである孫正義氏は述べた。「世界中のインターネットアクセスを変革するというOneWebのミッションの達成をサポートするためにBharti、英国政府そしてHughesとの提携を継続することに胸躍らせています」。

Hughes社長のPradman Kaul(プラドマン・カウル)氏は次のように述べた。「OneWebは引き続き業界をインスパイアし、LEOコンステレーションの実現に向けてともに力を合わせるために業界におけるベストプレイヤーを引きつけています。Hughesとソフトバンクによる今日の投資は、世界中のブロードバンド需要に応え、そして加速させるという点において弊社の静止衛星サービスを補強する複数のトランスポートサービスでもって、企業、政府、モビリティの顧客をつなげるというOneWebのあらゆるポテンシャルの具現化をサポートします」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:OneWebSoftbankHughes Network Systems資金調達

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(翻訳:Mizoguchi

2020年春の破産申請を乗り越えて通信衛星企業OneWebが36基の衛星をロシアで打ち上げ

積極的な打ち上げへの復帰において衛星コンステレーションオペレーターのOneWebは、軌道上の既存の宇宙船群に加えるため36個の新しい衛星を送り出した。2019年に6機、2020年の2、3月にそれぞれ34機の人工衛星を打ち上げ後における3回目となる同社の大規模打ち上げだった。前回の打ち上げ後、OneWebは財政難に陥り2020年3月に破産保護を申請したが、英国とBharti Globalが一部資金提供する契約のおかげで7月に破産から脱却した。これがOneWebにとってのこの1年間だ。

米国時間12月18日の打ち上げは、ボストチヌイ宇宙基地で行われ、ロシアのソユーズ2.1 bロケットが使用された。これはボストチヌイ宇宙基地で行われた最初の商業打ち上げになるが(以前、ロシアの国営宇宙開発企業Roscosmosが行っていた商業打ち上げはバイコヌール宇宙基地で行われていた)、OneWebの目標軌道との相対的な位置関係のため、34機ではなく36機の衛星を打ち上げることができた。

OneWebは、地球を拠点とするネットワークで使用するための広帯域接続を提供する低軌道衛星群を構築している。最終的には648基の衛星を軌道上に乗せることを目指しており、2022年までの目標達成に向けて打ち上げペースの加速を図り、顧客にグローバルなネットワークを提供できるようとしている。

OneWebが提供するサービスから収益を得られるようになるためには、運用を開始することが鍵となる。

同社はまた、SpaceX(スペースX)とAmazon(アマゾン)の両社が構築している資本力のある大規模なLEOネットワークとも競合している。しかし、先週行われた「TC Sessions:Space」で聞いたところによると、世界規模での高品質な接続性に対する需要には事欠かないため、LEOブロードバンド市場ではAmazonのDave Limpをはじめ複数の勝者が存在する余地は十分にあるという。

OneWebは英国とBharti Globalの提携で倒産から抜け出したが、、Bhartiのファウンダーで会長であるSunil Mittal(スニル・ミタル)氏は先週初め(SpaceNews記事)に、同社のコンステレーションを終えるためには総額25億ドル(約2580億円)を調達する必要があるだろうと述べている(その半分は英国とBhartiコンソーシアムから提供される)。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

倒産から再起したブロードバンド通信衛星企業OneWebが12月17日に打ち上げ再開

ブロードバンド通信衛星企業のOneWebが米国時間11月20日、連邦倒産法11条による保護状態を脱したと発表した。これより同社は、英国政府とインドのBharti Globalによるコンソーシアムが保有する企業になり、これまでのAdrián Steckel(アドリアン・シュテッケル)氏に代わってNeil Masterson(ニール・マスターソン)氏がCEOになる。なおシュテッケル氏は、同社取締役会に顧問として留まる。

OneWebは、650の人工衛星から成る衛星コンステレーションのための積極的な衛星打ち上げ事業に復帰したいようだ。次の打ち上げは12月17日と予定されている。同社がこれまでの3度の打ち上げですでに軌道に乗せた衛星は74基で、打ち上げは同社が3月に破産する前までに行われた。

OneWebの、英国政府とBharti Globalの合同による買収は7月に明らかになり、10億ドル(約1038億6000万円)の株式投資により、財務的苦境に立たされていた同社に復帰のめどが立った。今回の新たな契約により、同社は英国の企業として主に同地で操業を続け、同国を宇宙部門のリーダーおよびイノベーターとして位置づけるための重要な礎石になる。

同社はまた、Airbusとのジョイントベンチャーであるフロリダの生産施設が稼働を再開して、今後の打ち上げのための宇宙船の生産を継続すると発表した。計画によると衛星の打ち上げは2022年まで行い、さらに2021年の後期には一部地域への商用サービスを開始する。サービスのグローバルな拡張は、2022年を予定している。

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(翻訳:iwatani、a..k.a. hiwa