オラクルとセールスフォースのCookie追跡がGDPR違反の集団訴訟に発展

米国時間8月14日、データブローカー大手のOracle(オラクル)とSalesforce(セールスフォース)による広告のトラッキングとターゲティングのためのサードパーティ製Cookieの使用は、英国とオランダで発表された集団訴訟(クラスアクション)形式の訴訟の焦点となった。

この訴訟では、リアルタイム入札型広告オークションを実施するためにネットユーザーを大量に監視することは、個人データの処理に同意することをめぐるEUの厳格な法律に適合するとは考えられないと主張している。

訴訟当事者によると最終的に主張が認められて勝訴すれば、集団請求は100億ユーロ(約1兆2600億円)を超える可能性があると考えている。

英国では、データの権利に関連するケースで集団的損害賠償を追求するための確立されたモデルがないことを考えると、この訴訟は法的なハードルに直面する可能性も出てくるが、変化の兆しはある。

非営利財団のThe Privacy Collectiveは米国時間8月14日、オランダ・アムステルダムの地方裁判所で1件の訴訟を起こし、オラクルとセールスフォースが第三者のトラッキングCookieにやその他のアドテクノロジーを介した人々の情報の処理と共有において、EUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していることを告発した。

このオランダでの訴訟は、法律事務所のBrandeisが主導するもので、GDPR違反に関連した集団訴訟としてはオランダ史上最大となる。この財団は、両社によって個人データが同意と認識なしに使用されたオランダ国民全員の利益を代表することになる。

同様の訴訟が今月下旬、英国・ロンドンの高等裁判所にも提出される予定で、GDPRと英国のPECR(Privacy of Electronic Communications Regulation)に言及することになっている。この裁判は、法律事務所のCadwaladerが主導する。

GDPRの下では、個人データを処理するためにEU市民に同意を得るには、必要な情報を提供したうえで、同意するかどうかを自由に選択できるようにしなければならない。この規則はまた、個人情報のコピーを受け取ることができるなど、個人情報に関する権利を個人に与えられている。

今回の訴訟では、このような要件に焦点が当てられている。テック大手のサードパーティ製のトラッキングCookieであるBlueKaiやKrux、Amazon、Booking.com、Dropbox、Reddit、Spotifyなどの人気ウェブサイトでホストされているトラッカー、その他多数のトラッキング技術が、ヨーロッパ人のデータを大規模に悪用するために使用されていることを主張している。

オラクルのマーケティング資料によると、同社のData CloudとBlueKai Marketplaceプロバイダーのパートナーは、約20億人のグローバルな消費者プロファイルにアクセスできる。なお、TechCrunchが6月に報告したように、BlueKaiはデータ侵害に遭い、数十億件の記録がウェブ上に晒された(未訳記事)。

一方セールスフォースは、そのマーケティング・クラウドが毎月30億件以上のブラウザやデバイスと「相互作用」していると主張(セールスフォースサイト)している。なお、オラクルは2014年にBlueKai(ad exchange記事)を、セールスフォースは2016年にKruxを買収(未訳記事)した。

イングランド&ウェールズの集団代表であり請求者でもあるRebecca Rumbul(レベッカ・ルンブル)博士はTechCrunchとの電話会談で、この訴訟について「オラクルとセールスフォースがウェブサイトに配置したCookieによって自分のデータが処理される方法に、普通の人が本当に十分な情報を得たうえでの合意を与えることができる方法はないと思います」と述べている。

同博士はさらに「Cookieの同期や個人データの集約など、Cookieが動作する可能性のある、おそらくは非常に悪質な方法が多数存在します。かなり深刻なプライバシーの懸念があります」と続ける。

リアルタイムビディング(RTB、Real-Time-Bidding)プロセスは、トラッキングCookieと技術の組み合わせによって、ダイナミックな広告オークションが裏で動いているウェブサイトをユーザーが閲覧しすると、個々のユーザーのプロファイルをリアルタイムにやり取りして、各ユーザーに適した広告をリアルタイムに表示するわけだ。これは近年、英国を含む多くのGDPR関連の訴えの対象となっている(未訳記事)。

これらの訴えは、RTBによる人々の情報の取り扱いが規制に違反していると主張している。なぜなら、個人のデータをほかの多くの組織に配信することは本質的に安全ではないからだ。逆にGDPRでは、そのサイトの設計および初期設定によってプライバシー保護の要件を満す必要があることが定められている。

一方、英国の政府外公共機関であるICO(Information Commissioner’s Office、情報コミッショナーオフィス)は、アドテクノロジーには合法性に問題がある(未訳記事)と1年以上前から認めてきた(未訳記事)。しかし規制当局はこれまでのところ法律に則って対処せず、訴えを放置(未訳記事)してきた。なお昨年、アイルランドのDPC(Data Protection Commissioner、データ保護委員会)は、同様の苦情を受けてグーグルのアドテクについて正式な調査を開始(未訳記事)したが、国境を越えた申し立てについては統一されたGDPRの裁決は出ていない(未訳記事)。

ルンブル博士によればRTBを標的とした今回の2つの訴訟は「セキュリティの申し立てに焦点を当てたものではなく、ユーザーの同意とデータアクセスの権利に関するものがほとんど」とのこと。同博士は、技術の巨人に対してクレームを持ち込むことの「ダビデ対ゴリアテ」(弱小な者が強大な者を打ち負かす)という事情を考慮して、自分たちの権利を行使する方法として規制当局へ苦情を申し立てるよりも、訴訟を起こすことを選択したことを認めている。

「私のような一人の人間がオラクルに苦情を申し立てるために英国ICOを利用しようとしても、オラクルのような大企業に対して一度にすべての問題を申し立てられるほどのリソースを持っているわけではありません」とルンブル博士はTechCrunchに語った。

「この問題を証明するという意味では非常に多くの労力が必要であり、その対価として得られるものは非常に少ないでしょう。集団代表訴訟を採ることで、私は英国でトラッキングCookieなどの影響を受けたすべての人を代表して訴訟を進められます」と続ける。

「今回の賠償金額は、オラクルの資金力や膨大な訴訟のコストを考えると効果があると考えています。単に賠償金を得ることが目的ではなく、このような大規模で公開された場で争うことで、願わくば個人情報の取り扱いに対する業界標準が変化させたいと思います」とルンブル博士。

「セールスフォースとオラクルが今回の戦いに破れた場合、うまくいけばアドテク業界全体に波紋が広がり、非常に悪質なCookieを使用している企業に行動を変えるように促すことができるでしょう」と同博士は付け加える。

この訴訟は、ロンドンの裁判所でのMastercardに対する4600万人の消費者を対象としたWalter Merricks(ウォルター・メリックス)弁護士の集団訴訟にも関わった訴訟ファンドのInnsworth Advisorsが資金を提供している。そしてGDPRは、個人が個人情報について法的措置を取ることを可能にすることで、英国の集団訴訟の状況を変えることに貢献しているように見える。GDPRの枠組みでは、第三者が個人に代わって救済を求める訴えを起こすことを支援することもできるのだ。国内の消費者権利法の改正も、集団訴訟を後押ししているようだ。

Innsworth Advisorsのマネージングディレクターを務めるIan Garrard(イアン・ガラード)氏は声明で「英国での集団訴訟制度の発展とEU、EEA(European Economic Area、欧州経済領域)での集団救済が可能になったことで、Innsworth Advisorsは個人データが悪用された何百万人もの個人のために裁判に訴える資金を投入することができるようになりました」と語る。

英国で進行中の別の訴訟では、グーグルに損害賠償を求めている。この訴訟は、プライバシー設定を歴史的に無視していたSafariユーザーに代わって起こされたものだが、これもまたデータの取り扱いに関連した集団訴訟型の法的措置の可能性を高めている。

裁判所は昨年に訴訟を棄却(未訳記事)したが、控訴裁判所はその判決を覆し、英国とEUの法律はデータ管理の喪失に関連する請求をするために「因果関係と結果的損害の証明」を要求しているというグーグルの主張を退けた。

裁判官は、原告は損害賠償を請求するために「金銭的損失または苦痛」を証明する必要はないと述べ、全員が同じ利益を得ることなく集団訴訟を進めることを認めた。

そのケースについてルンブル博士は「自身が関与している訴訟が英国で進められるかどうかについて、保留中の最終判決(おそらく来年)が影響を及ぼす可能性がある」ことを指摘した。

「私は、英国の司法当局がこの種の訴訟に前向きであることを大いに期待しています。なぜなら、個人情報に関する大規模な集団訴訟を起こさなければ、この種の訴訟全体の扉を閉ざしてしまうからです。この種の訴訟は進められないという法的判断が出た場合、 司法が個人情報の取り扱いについて民間企業にどのように依頼できるのか、どのように考えているかを理解したいと思います」と語る。

ルンブル博士には、アドテクに関与する非常に多くの企業があるにもかかわらず、訴訟がオラクルとセールスフォースに焦点を当てている理由も尋ねた。「私は、これらの企業が必ずしも最悪であるとは言っていませんし、このようなことをしている唯一の企業であるとも言っていません。しかし、彼らは巨大で国際的な数百億ドル規模の企業です。彼らは特に、この分野でのプレゼンスを高めるために、つまり自分たちの利益を高めるために、BlueKaiのようなさまざまなアドテクソフトウェアを買収しています」と説明する。

「一連の買収は、デジタル広告分野に進出して巨大なプレーヤーになるための戦略的なビジネス上の決断だったのです。つまり、アドテク市場においては、彼らは非常に大きなプレーヤーなのです。もし両社をこの件で責任を問うことができれば、業界全体を変えることができるでしょう。これがうまくいけば、より悪質なCookieを減らすこともできるでしょう。両社は巨額の収益を上げているので、被害を被っている多くの人を補償をする余裕があるという意味では、ターゲットにするのに適した企業です」と続ける。

ルンブル博士はまた、非営利財団のThe Privacy Collectiveがオンライントラッキングに関連した被害を経験したと感じているウェブユーザーからの話を集めようとしていることも話してくれた。

これらのCookieがどのように機能するかを示す証拠はたくさんあります(未訳記事)が、それは個人レベルで人々に酷い結果をもたらす可能性があることを意味します。それが個人金融に関連するものであれ、中毒性のある行動の操作に関連するものであれ、要するに何であってもすべて追跡可能で、私たちの生活のあらゆる側面をカバーしています」と説明する。

イングランド、ウェールズ、そしてオランダの消費者に、The Privacy Collectiveのウェブサイトを介して、この行動への支持を登録することを勧めている。

声明の中で、オランダの法律事務所のBrandeisの主任弁護士であるChristiaan Alberdingk Thijm(クリスティアン・アルバーディンク・ティイム)氏は「あなたのデータはEUのデータ保護規則に違反して、最高入札者にリアルタイムで売却されています。この広告ターゲティング技術は、ほとんどの人がその影響や、それに伴うプライバシーやデータの権利の侵害に気付いていないという点でやっかいなものです。このアドテク環境の中で、オラクルとセールスフォースは日常的に欧州のプライバシー規則に違反する活動を行っていますが、責任を問われるのは今回が初めてです。これらの事例は、人々の個人情報から莫大な利益を得ていること、そしてこの説明責任の欠如が個人や社会にもたらすリスクに注意を喚起することになるでしょう」とコメントしている。

「何千もの組織が毎週何十億もの入札依頼を処理していますが、データの安全性を確保するための適切な技術的・組織的な対策に一貫性はなく、個人データの国際的な転送に関するデータ保護法の要件をほとんど、あるいはまったく考慮されていません。GDPRは、個人の権利を主張するためのツールを提供してくれます。集団訴訟は、私たちが受けた被害を集計できることを意味します」と英国の法律事務所CadwaladerのパートナーであるMelis Acuner(メリス・アクナー)氏は、別の支援声明の中で付け加えている。

この訴訟についてTechCrunchは、オラクルとセールスフォースにコメントを求めた。

オラクルの副社長兼法務顧問のDorian Daley(ドリアン・デイリー)氏は以下のコメントを残した。

The Privacy Collectiveは、故意に事実の意図的な虚偽表示に基づいて無益な訴訟を起こしました。 オラクルが以前にThe Privacy Collectiveに伝えたように、オラクルはリアルタイム入札プロセス(RTB)で直接の役割を果たしておらず、EUにおけるデータフットプリントも最小限に抑えられており、包括的なGDPRコンプライアンスプログラムを実施しています。このようなオラクルの取り組みを説明をしたにもかかわらず、The Privacy Collectiveは悪意を持って提訴された訴訟を通じて賠償金を請求することを決定しました。 オラクルは、これらの根拠のない主張に対して強い姿勢で臨みます。

セールスフォースの広報担当者は次のようなコメントを残した。

セールスフォースでは、信頼が第一の価値であり、企業の顧客のデータのプライバシーとセキュリティほど重要なものはありません。当社は、プライバシーを最優先に考えてサービスを設計・構築しています。法人顧客には、EUのGDPRを含む適用されるプライバシー法の下で、顧客自身のプライバシー権を保護するための義務を遵守するためのツールを提供しています。

セールスフォースと別のデータ管理プラットフォームプロバイダは、The Privacy Collectiveと呼ばれるオランダのグループからプライバシー関連の訴えを受けました。この訴えは、Salesforce Audience Studioサービスに適用されるもので、ほかのセールスフォースのサービスとは無関係です。

セールスフォースは、The Privacy Collectiveの今回の申し立てに同意せず、正当性がないことを証明したいと考えています。

当社の包括的なプライバシープログラムでは、顧客のプライバシー権を保護するためのツールを提供しています。当社が法人顧客に提供しているツールと当社のプライバシーへの取り組みの詳細については、salesforce.com/privacy/products/をご覧ください。

 

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Zoomが新型コロナによる需要増対応でOracleを選択するという驚きの結果

Zoom(ズーム)は飛躍的な成長に伴う問題を解決すべく、クラウドインフラベンダーを探していた。驚いたことに、同社はOracle Cloud Infrastructure(オラクル・クラウド・インフラストラクチャー)を採用した。同社はまた、AWSとAzureの活用も暗に示した。

パンデミックにより世界の大部分が閉鎖されると、Zoomは普段使いのビデオ会議サービスになった。Zoomを使用したビデオ会議が普及し、アクティブユーザー数は2月の2億から3月は3億まで増えた。この成長がインフラに少々負担となり、Zoomは明らかに能力を増強する必要があった。

驚いたのは同社がOracleを選択したことだ。Oracleは2月に行われたSynergy Researchの最新の調査で、インフラの市場シェアの点でニッチプレーヤーとして位置づけられていた。Amazon、Microsoft、Google、さらにはIBMなどの市場のリーダーからは、かなり水をあけられている。

CRM Essentialsの創業者であるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、これはZoomが中小企業の市場にとどまらず、広く法人顧客を支援できることを示す動きだと見ている。そして法人顧客のニーズの内容も問わない。

「ZoomがOracleを採用したのは、クラウド内のOracleハードウェアで動くOracleデータベース上に構築されたミッションクリティカルなアプリに関して実績があるからだと思う。Zoomは、中小企業が通常必要とする規模を超えたスケールとデータセキュリティでも扱えることを法人顧客に証明する必要がある」とリアリー氏はTechCrunchに語った。

さらにリアリー氏は、OracleがAmazonやMicrosoftのようなライバルに勝つためには人気企業を取り込む必要があったため、Zoomに良い条件を提示したのかもしれないと推察した。

注目すべきはCNBCが2週間前に報じた内容で、Oracleの会長であるLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏がZoomは他社だけでなくOracleにとっても「不可欠なサービス」だと述べた。後から見れば、同氏にとってご褒美ともいえる顧客を賞賛したのは偶然ではなかったということだ。

AmazonのChime、GoogleのHangout、MicrosoftのTeamsのすべてと競合するプロダクトであることを考えると、そうした潜在的なライバルからZoomを遠ざけることと関係しているのではないかと推測する向きもある。ただし、Zoomがこの危機で成し遂げたのとは異なり、競合のプロダクトはオンライン会議の代名詞にはならなかった。

Zoomは昨年上場した。会社の規模拡大に伴い一連のセキュリティー問題も大きくなったものの、テレビ会議市場では引っ張りだこになっている。セキュリティー問題には現在なお対応中だ。

株式市場は明らかに今回の選択に感銘を受けていない。この記事執筆時点で株価は3.38%または5.56ドル下がっている。

画像クレジット:Olivier Douliery / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

不況を生き延びたいならプラットフォームフォーマーを目指せ!

世界で最も成功している企業たちを眺めてみると、それらは皆1つの単純なサービスではない。その代わりに、彼らは様々なサービスを持つプラットフォームを提供しており、外部のパートナーや開発者が、それに接続して、提供されているベース機能を拡張できるようにしている。

プラットフォームを目指すことと、実際にプラットフォームの構築に成功することは同じではない。すべてのスタートアップは、おそらく最終的にはプラットフォームとして振る舞いたいと思っているだろうが、実際それを実現することは困難だ。しかし、もしあなたが成功して、提供する一連のサービスが誰かのビジネスワークフローの不可欠な一部となったとしたら、あなたの会社は、最も楽観的な創業者でさえも想像できなかったほどに大きくなり、成功する可能性がある。

Microsoft(マイクロソフト)、Oracle(オラクル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、そして Amazon(アマゾン)を見て欲しい。どれもみな、リッチで複雑なサービスプラットフォームを提供している。それらはみな、例えサードパーティが宣伝のためにその会社の人気を利用するにしても、サードパーティがプラグインしてプラットフォームのサービスを使う方法を提供する。

The Business of Platforms』(プラットフォームのビジネス)という本を書いたMichael A. Cusumano(マイケル・A・クスマノ)氏、David B. Yoffie(デビッド・B・ヨフィー)氏、そしてAnnabelle Gawer(アナベル・ガワー)氏たちは、MIT Sloan Reviewに「The Future of Platforms(プラットフォームの未来)」という記事を書いた。その中で彼らは単にプラットフォームになるだけではスタートアップの成功は約束されていないと述べている。

「すべての企業と同様に、プラットフォームは最終的に競合他社よりも優れたパフォーマンスを発揮する必要があるためです。さらに、プラットフォームを長期的に存続させるには、政治的および社会的にタフである必要があります。そうでない場合には、プラットフォームは政府の規制や社会的反対運動、および発生する可能性のある大規模な債務によって押しつぶされるリスクがあるのです」と彼らは記している。

つまり、成功するプラットフォームを構築するのは安上がりでも簡単でもないが、成功したときに得られる報酬は莫大だということだ。クスマノ、ヨフィそしてガワーらは彼らの研究が次のことを見出したと指摘している。「……プラットフォーム企業は、(成功した非プラットフォーム企業の)半分の従業員数で同じ売上を達成しています。さらに従来の競合相手よりも、プラットフォーム企業の利益率は2倍、成長速度も2倍そして2倍以上の価値を達成しています」。

企業の観点から、Salesforceのような企業を見てみよう。同社は(特に初期の段階の)比較的少数のエンジニアチームでは、顧客の要求に応じたすべてのサービスを構築することが不可能であることを、ずっと以前から知っていた。

最終的にSalesforceはAPIを開発し、次に一連の開発ツール全体を開発し、API上に構築されるアドオンを共有するための市場を開設した。FinancialForce、VlocityそしてVeevaのような、Salesforceが提供するサービス上で企業全体を構築するスタートアップも存在している。

2014年にBoxWorksのベンチャーキャピタリストのパネルディスカッションで講演した、Scale Venture PartnersのパートナーであるRory O’Driscoll(ロリー・オドリスコル)氏は、多くのスタートアップがプラットフォームを目指しているが、それは傍目で見るよりも難しいと語っている。「狙ってプラットフォームを作れるわけではありません。サードパーティの開発者が関与してくるのは、十分なユーザー数を獲得した場合のみです。そのためには何か他のことをしなければならず、それからプラットフォームになる必要があるのです。プラットフォームとして最初から完成形で登場できるわけではありません」と彼はそのときに語っている。

もし深刻な経済危機の最中にそのような会社を設立する方法を考えているなら、Microsoftが不況の真っ只中である1975年に立ち上げられたことを考えて欲しい。GoogleとSalesforceはどちらも、ドットコムクラッシュの直前の1990年代後半に起業し、Facebookは2008年の大不況の4年前となる2008年に開始した。すべてが途方もなく成功した企業になった。

こうした成功には多くの場合、莫大な支出と販売とマーケティングへの取り組みが必要だが、成功した場合の見返りは莫大なものだ。成功への道が簡単であることを期待してはいけない。

関連記事:How Salesforce paved the way for the SaaS platform approach(未訳)

画像クレジット:Jon Feingersh Photography Inc/Getty Images

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(翻訳:sako)

Amazonが100以上の消費者サービスをOracleからAWSに移行

AWSOracle(オラクル)は互いにやり合うことが好きだが、このところAmazon(アマゾン)の優勢が続いているから、実はAmazonはOracleの顧客だったと認めざるをえない状況になってしまった。というのも、米国時間10月15日のAWSのブログ記事で同社は、Oracle for AWSを廃止して最後のOracleデータベースを実質的に閉鎖したと発表した。

それは具体的には、7500近くのOracleデータベースに保存されていた75PB(ペタバイト)のデータだ。この移行を発表するブログ記事でAWSのJeff Barr(ジェフ・バー)氏で「このデータベース移行作業が完了したことをご報告できてとても嬉しい。Amazonの消費者事業がついに、その最後のOracleデータベースを廃止した。ただしOracleと密接に結びついている一部のサードパーティアプリケーションは移行しなかった」と書いている。

これまで数年かけて同社はデータベースのOracle離れを進めてきたが、Amazonほどの巨大企業になると移行は容易な作業ではない。しかし、バー氏によると移行すべき理由がたくさんあったという。「何千ものレガシーのOracleデータベースを管理しスケールするために費やす時間があまりにも大きすぎた。データベースの管理者たちは、差別化のための高度な仕事ではなく、データの保存量が増えトランザクションレートが高くなると、とにかく無事に動いていることを確認するだけのために大量の時間を消費した」と彼は書いている。

100あまりの消費者サービスがAWSのデータベースに移された。その中には、AlexaやAmazon Prime、Twitchなど顧客対応のツールもある。AdTechやフルフィルメントのシステム、外部決済、発注など社内的ツールも移った。これらはいずれも、Amazonの中核を支える重要なオペレーションだ。

それぞれのチームが、OracleのデータベースをAmazon DynamoDBやAmazon Aurora、Amazon Relational Database Service(RDS)、Amazon RedshiftなどAWSのデータベースに移した。どれを選ぶかは、それぞれのニーズや要求に応じて各グループに任された。

Oracleに問い合わせたが、この件についての回答はなかっった。

関連記事:AWSはアグレッシブに世界制覇を目指す――エンタープライズ・コンピューティングで全方位路線

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オラクル控訴で米国防省1兆円規模のJEDIクラウド入札勝者発表は延期

賞金が100億ドル(約1兆580億円)の場合Oracle(オラクル)の執念深さは見上げたものだ。米国防省が計画しているJEDIクラウドの調達プロセスについて、1年以上にわたってOracleは考えられるかぎりの法的手段を使って抗議を続けてきた 。しかしそのつどプロセスに問題があることの立証に失敗している。先月もOracleの訴えを連邦裁判所は棄却したが、それで諦めるOracleではなかった。

Oracleは米国を代表するコンピューティングサービスの1つだが、自分たちの利益が不当に脅かされていると感じれば泣き寝入りする会社ではない。特に連邦政府の調達が100億ドル規模とあればなおさらだ。米国時間8月26日に発表された訴訟は連邦請求裁判所(Federal Claims Court)の上級裁判官、Eric Bruggink(エリック・ブルッギンク)判事の判決に対する控訴だ。今回、Oracleの主張は1社の総取りとなるようなJEDIの調達プロセスそのものが違法だとしている。

Oracleの主席法律顧問、Dorian Daley(ドリアン・ダレイ)弁護士は声明で次のように述べている。

JEDI入札訴訟において、連邦請求裁判所はJEDI調達プロセスが違法であると判断したにもかかわらず、Oracleが当事者適格性を欠いているという極めて技術的な理由により訴えを棄却した。連邦調達法は、特定の必須の要件を満たしていないかぎり、JEDIのような単一勝者による調達を特に禁止している。

裁判所は判決付属意見で国防省がJEDI調達においてこの必要要件を満たしていないことを明確に判断した。また意見は、調達プロセスに多くの重大な利益相反が存在することも認めている。こうした利益相反は法律に違反し、国民の信頼を損うものだ。前例を形成すべき重大な例として、我々はOracleに当事者適格がないという結論は、法解釈として誤っていると信じる。判決意見自身がいくつもの点でプロセスの違法性を認めており、我々は控訴せざるを得ない。

昨年12月にOracleは連邦政府に対し、100億ドルの訴訟を起こした。この訴えは主にAmazonの元社員であるDeap Ubhi(ディープ・アブヒ)氏の調達プロセスへの関与が利益相反だとするものだった。アブヒ氏は国防省のプロジェクトに参加する前にAmazonで働いており、国防省の調達プロセスのRFP(仕様要件)を起草する委員会で働き、その後Amazonに戻った。国防省はこの問題を2回調査したが、いずれも連邦法の利益相反であった証拠はないと結論した。

先月、裁判所は最終的に国防省の結論に同意し 、Oracleは利益相反ないし利益相反が調達に影響を与えた証拠を示すことができなかったと判断した。 ブルッギンク判事は次のように述べている。

当裁判所はまた次のように結論する。すなわち調達プロセスを検討した国防省職員の判断、「組織的な利益相反は存在せず、個別人物における利益相反は(存在したものの)調達プロセスを損なうような影響は与えず、また恣意的その他合理性を欠くなど法の求める要件に適合しない要素はなかった」という結論に同意する。このため原告の訴えを棄却する。

OracleはJEDI調達のRFP仕様書が公開される前からあらゆる方法で不平を鳴らしてきた。ワシントン・ポスト紙の記事によれば、 2018年4月にOracleのプレジデント、Safra Catz(サフラ・キャッツ)氏はトランプ大統領に会ってJEDI調達の不正を訴えたという。 キャッツ氏はこのプロセスはクラウド事業のマーケットリーダーであるAmazonに不当に有利となっていると主張した。AWSは2位の Microsoftの2倍以上のシェアを誇っている。

その後OracleはGAO(会計検査院)に対しても検査要請を行ったが、GAOはRFP作成プロセスに問題はなかったと結論した。この間国防省は一貫して利益相反を否定し、内部調査でも違法性の証拠は発見されなかったと結論している。

トランプ大統領は先月、マーク・T・エスパー国防長官に「調達プロセスが不当にAWSに有利だ」という主張を再度調べるよう命じた。その調査は現在続いている。国防省は4月にAmazonとMicrosoftの2社をファイナリストとして発表した。8月末までに勝者を指名するはずだったが、抗議、訴訟、調査が続いているためまだ決定できない状況だ。

問題が困難である理由のひとつは調達契約の性格そのものだ。国防省向けクラウドインフラの構築は、10年がかりとなる国家的大事業であり、勝者となったベンダー(ただし契約には他のベンダーを利用できるオプトアウト条項も多数存在する)は100億ドルを独占するだけでなく、連邦政府、州政府が関連するテクノロジー系公共事業の獲得においても極めて有利な立場となる。米国のすべてのテクノロジー企業がこの契約によだれを流したのは不思議ではないが、いまだに激しく抗議を続けているのはOracleだけだ。

JEDI調達の勝者は今月発表されることになっていたが、上述のように国防省の調査及び各種の訴訟が進行中であるため、勝者を発表ができるまでにはまだ時間がかかるだろう。

画像:Getty Images

【Japan編集部追記】GAO(Government Accountability Office)は「政府説明責任局」と直訳されることもあるが、機能は日本の会計検査院に当たる。日本の会計検査院が憲法上の独立行政機関であるのに対しGAOは議会付属機関であり、連邦支出に関して民間からの検査要求も受け付ける。連邦請求裁判所(Federal Claims Court)は連邦政府に対する民事訴訟を管轄する。連邦裁判官のうち65歳以上で有給退職した裁判官が復職して事件を担当する場合、Senior Judgeと呼ばれる。上級裁判官と訳されることが多いがむしろ「年長、高齢」の意味。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米国防省の1兆円超えクラウド入札に関するオラクルの訴訟が棄却

Oracleは、国防省のクラウドプロジェクトであるJEDIの100億ドル(1兆800億円)で10年契約の購買プロセスについて、昨年提案要求書が提示される前から不満を訴えてきた。そして昨年12月には裁判を起こし、購買担当メンバーの中に利益相反する人物がいる可能性を指摘した。米国時間7月14日、連邦裁判所はその訴えを退けた。

訴訟の棄却に際し、連邦請求裁判所のEric Bruggink(エリック・ブルッヒンク)上級判事は、原告は購買手続きの不備を証明できなかったと判断した。これは国防省自身が以前行った二度にわたる内部監査結果とも一致する。ブルッヒンク判事は最終的に国防省の見解に同意した。

本法廷は、組織的な利益相反は存在せず個人的利益相反は購買行動に影響を与えなかったとする契約担当官の報告に、恣意的、専断的、最量の濫用その他の違法性がなかったと裁定した。よって当該管理記録の判定に関する原告の判決申請は棄却された。

以前同社は、会計検査院を訴えた裁判で敗訴しており、そこでも購買プロセスは公正であり特定企業の優遇はなかったと裁定された。Oracleは、手続きがクラウド市場のリーダーであるAWSを優遇するよう仕組まれていたと訴えていた。

なお、問題になっている担当者が元AWS社員だったことは注目に値するだろう。AWSは裁判に被告として加わり、判決申請の際に「Oracleの訴状は具体的にAWSに関わる利益相反であると申し立てている。このためAWSには本裁判に関する直接的かつ重大な経済的利害関係があり、判決がこれらの利益を損なうことは明白である」と主張した。

本日の裁定によって、100億ドル契約の勝者が早ければ来月にも発表される見通しがたった。以前国防省は、この勝者総取り入札の最終選考対象としてMicrosoftおよびAmazonを選んだことを発表した。

関連記事:ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウドは企業たちを悩ます理由

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトとオラクルがクラウド相互接続を発表

MicrosoftOracleは今日、ユーザーがそれぞれのクラウドで作業しているものやデータをシームレスに両社のクラウドで動かせるよう、クラウドをネットワークで直接つなげるという新たな提携を発表した。この提携は単につなげるという以上のものであり相互運用性を含んでいる。

この手の提携は、本質的には競合するクラウド業界にあってどちらかといえば一般的ではない。しかしOracleはこの業界で主要プレーヤーになることを望んでいるが、AWSやAzure、Google Cloudのような規模をすぐに展開できないということを認識している。Oracleにとってこの提携は、OracleのユーザーがOracleのクラウド内にあるOracleデータベースを使いながら、Oracle E-Business SuiteやAzure上のOracle JD Edwardsのようなサービスを展開できることを意味する。そのうえで、Microsoftはワークロードを展開し、Oracleもこれまで通りのものを展開する(AzureユーザーはまたAzureクラウドの中でOracleデータベースを引き続き利用できる見込みだ)。

「Oracleクラウドは売上、サービス、マーケティング、人事、財務、サプライチェーンなどのアプリを統合した完全サービス、そしてOracle Autonomous Databaseというかなり自動化されそして安全な第二世代インフラを提供する」とOracle Cloud Infrastructure (OCI)の副社長であるDon Johnson氏は発表文で述べている。「OracleとMicrosoftは何十年にもわたり顧客である企業のニーズに応えてきた。今回の提携で、両社の顧客は再構築することなく、そして多額を投資することなくすでに抱えているアプリケーションをクラウドに統合できる」。

当面は、2つのクラウドの直接の相互接続はAzure US EastとOracleのAshburnデータセンターに限定される。2社はこの提携を将来は他の地域にも広げたい考えだが、詳細については明らかにしていない。おそらく、JD Edwards EnterpriseOne、E-Business Suite、PeopleSoft、Oracle Retail、そしてAzureのHyperionのようなアプリケーションをRAC、Exadata、 Oracle Autonomous DatabaseといったOracle データベースとのコンビネーションでサポートする。

「Fortune 500社の95%超がAzureを使っているという、企業に選ばれるクラウドとして、我々は常に顧客がデジタル移行で成功するように取り組んできた」とMicrosoftのクラウド・AI部門副社長であるScott Guthrie氏は語った。「Oracleは企業を得意としていて、今回の提携は自然な選択だ。2社が共有する顧客が企業アプリケーションとデータベースをパブリックのクラウドに統合するのを加速させるものとなる」。

今日の発表は、他の企業向けサービスを展開している大企業と提携するという最近のMicrosoftの傾向に沿うものだ。MicrosoftはこのほどSAPやAdobeとオープンデータ提携を結び、ソニーとは異例のゲーム面での提携を結んでいる。

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(翻訳:Mizoguchi)

米国防省は1兆円超のJEDIクラウドの最終候補にMicrosoftとAmazonを選定、Oracleは選外

米国防省は10年で100億ドル(約1.12兆円)を支出するJEDIクラウドプラットフォームの契約者決定にあたって最終候補、2社を選定したことを発表した。抗議声明訴訟裏口からの大統領への嘆願を含む数々の努力にもかかわらず、Oracle(オラクル)は選に漏れた。選ばれた2社はMicrosoft(マイクロソフト)とAmazon(アマゾン)だった。

TechCrunchの取材に対し、国防省の広報担当官であるElissa Smith氏は2社がMicrosoftとAmazon(AWS)であることを確認し、以下のように答えた。

各社案を検討した結果、国防省はJEDI(統合エンタープライズ国防インフラストラクチャー)クラウドの調達にあたり、合衆国の法規ならびに当省の規定に合致した最終提案の提出をMicrosoftとAmazonの両社に求めた。この両社の提案が今後の調達決定過程において考慮されることとなる。

国防省のクラウド計画が業界の強い関心を集めたのにはいくつかの理由がある。まず第一に総額の巨大さだが、それ以上に重要なのはこれが勝者総取りのプロジェクトだということだろう。

MicrosoftにせよAmazonにせよ、調達に選定されたとしてもいきなり100億ドルのキャッシュが手に入るわけではない。また10年間という期間も保証されたものではない。国防省はどの時点であれ計画を中断ないしキャンセルできる。とはいえ、単一企業が契約者となるという点は当初から参加者に緊張を強いるものとなっていた。

昨年、Googleがレースから離脱する一方、IBMとOracleは「選定過程が不公平だ」と大声で不平を並べた。またこれほど大規模なプロジェクトをジョイントベンチャーではなく単一ベンダーに任せるという決定に対する疑問の声も上がっていた。一方、100億ドルというのはたしかにバカにできない金額だがクラウドビジネスでは天文学的というほどの数字ではないが、関心の焦点は金額だけではなかった。

この契約の勝者は今後、各種の政府調達契約で優位に立てるのではないかというのが重要なポイントだった。つまりJEDIプロジェクトはディナーの前菜で、この後にメインのコースが続くはずという予想だ。合衆国政府にとってももっとも高い信頼性、機密保持能力を求められる国防クラウド計画を首尾よく運営することができるなら、連邦政府、州政府の他の大型クラウド計画の選定過程においても絶大な説得力を発揮するはずだ。

結局、関係他社の抗議にもかかわらず、国防省はことを予想どおりに進めた。ファイナリストはクラウド事業でもっともある実績がある2社で、国防省の仕様書の内容を実行できる可能性がいちばん高かった。MicrosoftはAmazonからだいぶ引き離されているとはいえ、この2社がクラウドの1位、2位の事業者である点は疑いない。この分野をモニターしている調査会社のデータによれば、Amazonは圧倒的な33%、Microsoftは13〜14%程度で、この2社で市場シェアのほぼ半分を握っている。

Microsoftの強みは非常に強力な生産性アプリケーションを擁するAzure Stack。これはプライベートなミニAzureで、軍にとってはきわめて使い勝手がいいはずだ。しかしMicrosoftだけでなくAmazonももちろん政府業務の経験は十分に積んでいる。両社はそれぞれにメリット、デメリットがあるので、どちらかを選ぶのは非常に困難な作業となる。

去る2月にはさらに別のドラマが展開した。国防省は元Amazonの社員が国防省が作成した新サービスの仕様策定に関与したのちAmazonに戻ったかもしれないという利益相反の疑いについて調査を実施したという報告書を公開した。報告書は「利益相反の事実はなかったが、倫理的行動義務の違反となるような部分があったかもしれない。この点の情報については省内の倫理行動基準を調査する部門に引き渡した」と述べた。

国防省は今月末に勝者を発表するが、その後もドラマはさらに続きそうだ。

画像:SOPA Images / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

UberやLyftのドライバーの労働環境調査の記事が3位(2018年3月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。2018年3月のアクセスを振り返ってみると、1位はサムスンのGalaxy S9が最高の評価を得たという記事だった。

Galaxyは、曲面ガラスなど他社に先駆けて導入するなど先進的なデザインが特徴。処理速度やカメラ製品もiPhoneとは遜色ないのだが、なぜか日本ではいまひとつ人気がない。そうこうしているうちにカメラ関連でライカと提携したファーウェイがSIMフリースマホ市場を席巻。いまではキャリアスマホとしても販売されている。とはいえ、そのファーウェイも米中の貿易摩擦の影響で日本でもファーウェイ製品排除の動きがあるなど先行きは不透明だ。結局はiPhone一強は今後も変わらないのかもしれない。

2位はオラクルがグーグルに裁判で勝利したという記事。グーグルのAndroidはオラクルが著作権を持つJava APIで開発されたが、これが著作権侵害にあたるという判決だ。プログラミング言語に著作権の保護は適用されるのかという論争はこのあとも続きそうだ。

TechCrunchとして注目なのは、4位にランクインしたUberとLyftのドライバーの労働環境についての記事。およそ3分の1のドライバーが、1マイル走るごとに収益を上回る費用を負担しているという。中にはスキマ時間を活用して副業ドライバーとして働く人もいると思われるが、この生産性の低さは問題となるかもしれない。Lyftの広報担当者はこのレポートを受けて「研究結果に関してはまだ精査しておりませんが、ざっとみた限りでは疑問符のつく想定が行われているように思えます」というコメントをTechCrunchに残している。

1位 Galaxy S9のディスプレイがカメラと並んで最高の評価
2位 OracleがJavaの著作権侵犯裁判でGoogleに勝利
3位 Google LensのiOS版も公開
4位 UberとLyftのドライバーたちの過酷な状況が明らかに
5位 月額750円でオーディオブック聴き放題

オープンソースのデータ管理プラットホームPimcoreが$3.5Mを調達してアメリカ進出を目指す

データとカスタマー体験を管理するオーストリア出身でオープンソースのプラットホームPimcoreが、German Auctus Capital Partners AGがリードするシリーズAの資金調達350万ドルを完了した。その資金は、同社のアメリカ進出に使われる。

Pimcoreは、データとカスタマー体験を管理したいと願っているどんなチャネルやデバイス、あるいは産業でも使える。そんなサービスはほかにもあるが、Pimcoreは、何もかも揃っていてすぐに使えるソリューションであり、唯一のオープンソースであることを主張する。対してSAPやInformaticaなどのプロプライエタリなプロダクトは、ライセンスを売るビジネスモデルだ。

PimcoreのCEO Dietmar Rietschはこう語る: “われわれの第一の目標は、エンタープライズにおけるオープンソースの採用が急増しているという今の時流に乗って、従来型のライセンス供与型のビジネスモデルをディスラプトする(破壊する)ことだ。今回の資金で、SAPやOracleなどレガシーの選手たちと戦えるだけのリソースが得られた。とくに今後は、アメリカでカスタマー体験とデータ管理の分野に変革をもたらしたい”。

Pimcoreは最近、アメリカのPimcore Global Servicesとそのデリーにあるアウトソーシングのためのインフラストラクチャのすべてを買収した。

2013年に創業された同社は、今すでに56か国に82000社の顧客がおり、その中にはAudi、Burger King、Continental、Intersportなどのグローバル企業もいる。

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Googleは元Oracle幹部だったThomas Kurianに、クラウドビジネスの舵取りを託す

Diane Greeneは金曜日に、3年にわたって務めてきたGoogleのクラウドビジネスの責任者の地位を辞することを発表した。彼女の後継者であるThomas Kurianへの引き継ぎを助けるために、彼女は来年の頭までは留まる予定だ。KurianはOracleを9月の末に辞任しているが、Oracleには20年以上在籍していた。彼の責務はGoogleのクラウド部門をより企業向けなものにすることである。この目標へはこれまで同社はあまり上手く近付けていなかった。

Greeneは、Googleのクラウドビジネスに安定と企業向けの体質をもたらすために、2015年に着任した。彼女はその道筋にそった計画を押し進め、クラウドビジネスを成長させたが、結局十分な成果を挙げることができなかったのだ。Greeneが辞任を決める迄には、何ヶ月にも渡って、様々な不満が積み上げられて来ていた。

そのため、そのバトンが、Googleとはおそらく正反対性質の企業で20年以上を過ごしたKurianに渡されようとしているのだ。彼は、従来型の企業向けソフトウェア会社であるOracleで製品を担当していた。Oracle自身もまたクラウド企業に移行するために苦労してきた、しかし9月にブルームバーグがレポートしていたように、その当時Kuranが休暇をとっていた理由の1つは、Larry Ellison議長とのクラウド戦略上での意見の相違があったせいである。そのレポートによれば、KurianはAWSやAzure(そしてGoogle Cloud)といったパブリッククラウド上で、Oracleのソフトウェアを利用できるようにしたいと考えていたようだ。どうやらEllisonはそれに同意せず、その数週間後にKkurianは辞任を発表した。

Kurianのバックグラウンドは、Googleと完璧にマッチするものだとは見えないかも知れないが、彼の考えが進んでいたことは心に留めておくことが大切だ。また彼は数多くの製品を担当し、大切なOracleのクラウドへの移行を支援していた。彼は企業たちが望んでいる製品を上手に育成した経験があり、それこそが次のクラウドリーダーに対してGoogleが探していた知見なのかもしれない。

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangによれば、Googleは企業支援についてまだまだ多くのことを学ばなければならない。そして彼はKurianがGoogleにそうした学びを行わせるための正しい人物だと信じているのだ。「Kurianは、クラウド会社が企業ユーザーたちにとって役立つためには、何が必要とされているかを知っています」とWangは語った。

もし彼が正しいとすれば、従来型の企業の幹部こそ、Googleがそのクラウド部門を企業向けの強固な組織に転換させるために求めていた人物だ。Greeneはずっと、クラウドとしてはまだ初期段階であり、Googleが未開拓の市場の一部を切り取るための時間ははまだ残されていると主張してきた。このことは金曜日の彼女のブログでも繰り返されたポイントだ。「クラウドの世界はまだ初期段階で、先々には巨大なチャンスが残されています」と彼女は書いている。

その点について、彼女は正しいのかもしれない。しかしマーケットシェアの位置付けは厳しさを増しているように見える。市場のトップを走るAWSは、大方の予測では、30%以上という巨大なマーケットシェアを握っている。Microsoftは現時点でAmazonに市場での強さで張り合える唯一の企業であり、Amazon以外で唯一の2桁の市場シェアを持つ企業でもある。事実として、Synergy Researchのデータによれば、Amazonは後続の4社を合わせたものよりも大きなマーケットシェアを握っている。

GoogleはAWSやMicrosoftと並んで、3大クラウド企業とは呼ばれているものの、およそ40億ドルの年間収益では、他の企業と同等のレベルに追いつくにはまだまだ時間が必要である。Greeneの主張にもかかわらず、勝つための時間は失われつつあるのかもしれない。おそらくKurianは、企業たちがより多くの作業負荷をクラウドに移行していく中で、未開拓の市場を手に入れる方向へGoogleを推し進める人物となるだろう。現時点では、Googleは彼がただそれを成し遂げることを期待しているのだ。

画像クレジット: Bloomberg
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(翻訳:sako)

機械学習のモデルのデプロイを標準化するツールGraphpipeをOracleがオープンソース化

オープンソースのコミュニティと仲が良いとは必ずしも言えないOracleが今日、Graphpipeと呼ばれる新しいオープンソースのツールをリリースした。それは、機械学習のモデルのデプロイを単純化し標準化するツールだ。

そのツールは、ライブラリの集合と、スタンダードに従うためのツールを合わせたものだ。

このプロジェクトは、NASAでOpenStackの開発に関わり、その後2011年にOpenStackのスタートアップNebulaの創業に加わったVish Abramsがリードした。彼によると、彼のチームが機械学習のワークフローを手がけたとき、あるギャップに気づいた。一般的に機械学習のチームはモデルの開発には大量のエネルギーを注ぎ込むが、そのモデルを顧客が使えるようにデプロイすることが苦手だ。そのことが、Graphpipe誕生のきっかけになった。

彼曰く、機械学習のような新しい技術は、誇大宣伝に踊らされてしまう部分がある。開発プロセスは改良を続けていても、デプロイに頭が向かわない人が多い。

“Graphpipeは、機械学習のモデルのデプロイを改良する努力の中から生まれた。また、この機械学習の分野全体を改良するためには、デプロイのためのオープンなスタンダードがぜひ必要だ、と考えた”、そうAbramsは語る。

これがOracleのプロジェクトになったとき、彼らは三つの問題に気づいた。まず最初に、機械学習のAPIをサーブするための標準的な方法がない。各フレームワークが提供しているものを、そのまま使うしかない。次に、デプロイのメカニズムにもスタンダードがないので、デベロッパーは毎度カスタムでそれを作らなければならない。そして第三に、既存の方法はパフォーマンスの向上に真剣に取り組んでいない。パフォーマンスが、‘ついでの問題’でしかない。機械学習にとっては、それは重大な問題だ。

“Graphpipeを作ったのは、これら三つの課題を解決するためだ。それは、ネットワーク上でテンソルデータを送信するための標準的でパフォーマンスの高いスタンダードを提供する。またどんなフレームワークを使っても、機械学習のモデルのデプロイとクエリーが簡単にできるための、クライアントとサーバーのシンプルな実装も作った”、…AbramsはGraphpipeのリリースを発表するブログ記事で、そう書いている。

同社は、これをスタンダードとしてオープンソースにすることによって、機械学習のモデルのデプロイを前進させたい、と決意した。“Graphpipeは、ビジネスの問題解決と、技術の高度化の推進という、二つの方向性が交差するところに座っている。そしてそれを進めていくためのベストの方法が、オープンソース化だと考えている。何かを標準化しようとするとき、それをオープンソースで進めなかったら、最終的にはいろんな競合技術の混乱状態になってしまう”、と彼は語る。

Oracleとオープンソースのコミュニティの間には長年の緊張があることをAbramsも認めるが、最近ではKuberenetesや、オープンソースのサーバーレス・ファンクション・プラットホームOracle FNへのコントリビューションなどを通じて、そんなイメージを変える努力をしてきた。そして彼によると究極的には、技術が十分におもしろいものであれば、誰がそれを提出したかとは関係なく、人びとはそれにチャンスを与えるだろう。そしてそのまわりにコミュニティができれば、オープンソースのプロジェクトとして自然に適応されたり、変えられたりしていく。それを、Abramsは望んでいる。

“このスタンダードが、今後幅広く採用されてほしい。実装は誰がやっても易しいから、Oracle独自の実装を広めたいとは思わない。人気の実装は、そのうちコミュニティが決めるだろう”。

GraphpipeはOracleのGitHubアカウントのGraphpipeのページで入手できる。

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OracleがJavaの著作権侵犯裁判でGoogleに勝利

Oracle vs. Googleの因縁話はとっくに終わった、と思っていた方にとっては悪いニュースだ。火曜日(米国時間3/27)に連邦控訴裁がこの訴訟に新しい命を吹き込み、GoogleがOracleのJava APIsを使ってモバイルオペレーティングシステムAndroidを作ったことは著作権法の侵犯にあたる、と裁定した。判決文の全文はここにある。

この訴訟に中心にあるのは、こんな問いだ: Javaのようなプログラミング言語に著作権の保護は適用されるのか? Oracle vs. Googleの三度目の裁判を見るかぎり、著作権の適用範囲を広げようとするこのこの論争は、まだまだ決着していない。

Googleは、同社のJavaの使用は公正使用だ、とする立場を堅持してきた。2016年の陪審は、これに合意した。Googleは、Oracleが同社を訴訟した2010年の最初のラウンドでも勝利した。そのときOracleは90億ドルの損害賠償を求めたが、この訴訟は金額だけでなく、広義のソフトウェア開発の世界にとっても、大きな意味を持っている。

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建設プロジェクトのコラボレーションプラットホームAconexをOracleが$1.2Bで買収

Oracleが今日(米国時間12/17)、建設工事におけるコラボレーションを支える、建設プロジェクト管理クラウドプラットホームAconexを12億ドルで買収することを発表した。メルボルンに本社を置くAconexは、クラウドベースのソフトウェアによって、建築工事に関わるチームのコラボレーションと文書管理を支える。買収価額は一株あたりオーストラリアドルで7ドル80セント(USドルで5ドル97セント)となり、トータルで12億ドルになる。この価額はAconesの金曜日(米国時間12/15)の終値AUD$5.29(USD約$4.05)の47%プレミアムとなる。

Oracleがクラウドベースの建設業ソフトウェアを買収するのは、これで二度目だ。昨年同社は、建設業における契約と決済を管理するプラットホームTexturaを6億6300万ドルで買収し、同社自身の建設管理ソフトウェアPrimaveraと組み合わせてOracle Construction and Engineering Global Business Unit(建設エンジニアリンググローバルビジネスユニット)と呼ばれる事業体を作った。

建設のプロジェクトは、可動部品が多い。下請けもサプライヤーも複数おり、建設関連の法規は複雑、そして山のように大量の紙の文書が作られる。それらすべてを正しく管理しようとすると、その金額費用と時間費用は膨大なものになる。しかしそのことは、テクノロジー企業にとっては機会でもある。過去数年間でも、建築産業を現代化しようとするスタートアップがFieldwire, PlanGrid, Net30, UpCodesなど続出した。

2000年に創業されたAconexは現在30か国にオフィスがあり、これまでに総額1兆ドルあまりの建設プロジェクトの管理に利用されてきた、という。これまで同プラットホームを利用して管理された建設プロジェクトはおよそ550万件、建設の進捗やさまざまな文書、安全性チェックリスト、などなどの管理がデスクトップとモバイル上で行われてきた。OracleによるとAconexは同社のクラウドベースの建設ソフトウェアの足りなかった部分を補うことになり、とくにプロジェクトの企画、管理、そして支払い決済の面でエンドツーエンドのソリューションを提供していく。買収の完了は2018年の前半を予定しているが、それ以降Acoenxは、Oracleの上述、建設エンジニアリングユニットの一部となる。

Aconexの顧客への書簡で協同ファウンダーでCEOのLeigh Jasperは、“AconexへのOracleの継続的投資により、機能性と能力容量の迅速な増強が期待される。また、Oracleのそのほかのプロダクトとのより有意義な統合や連携が可能になる”、と述べている。

世界最大のソフトウェア企業のひとつであるOracleは、1年に何度か買収を行う。Crunchbaseによると、Oracleは2017年にほかにも3社の買収の合意に達している: (1)API設計プラットホームのApiary、(2,3)デベロッパーツールのWerckerMoatだ。後者は広告のエンゲージメントを測定する。しかし昨年は93億ドルのNetSuiteやTextura(前述)など、計9社を買収しているから、もっとすごい。

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AWSがOracle Larry EllisonのRedshift批判に反論、“例によってLarry節だ”と

Oracle OpenWorlカンファレンスのキーノートでOracleのLarry Ellison会長が同社の新製品、全自動データベース(autonomous database, 自律的データベース)を発表したとき、彼は数分間にわたり、クラウド市場における同社の強敵AWSをけなした。マーケットリーダーであるAmazonをEllisonが標的にするのは当然だが、しかしAWSは今回、彼のコメントに公開の場で反論した。

AWSがとくにひっかかったのは、同社のビッグデータウェアハウスAmazon Redshiftがエラスティックでない、というEllisonの主張だ。Ellisonはこう語った: “Amazon Elastic Cloudと呼ばれているのは知っていますが、でもそれはエラスティックではありません。すなわちAmazonのデータベースRedshiftは、ワークロードが大きくなったとき自動的にプロセッサーの数を増やせません。逆にそれを、減らすこともできません。そんな能力が、そもそもないのです”。彼はさらに、Redshiftでは手作業でシステムを停止し、新しいインスタンスを立ち上げ、データベースを新しいストレージにコピーし、その後の稼働結果を古いデータベースへコピーバックしなければならない、と主張した。

これに対しAmazonのスポークスパーソンは応じた: ばかばかしい(もっと多くの言葉で)。

“まず、それは事実ではない。Amazon Redshiftでは、顧客は必要に応じてクラスターをリサイズできるし、コンピュートをストレージとは別にスケールできる。Amazon Simple Storage Serviceのデータに対してRedshift Spectrumを使えるし、顧客はストレージとは無関係に単純にクェリに対して支払うだけでよい”。

さらに彼らは、Ellison自身についても非難した: “でも多くの人は、Larryという人物をすでによく知っている。事実に基づかない乱暴な主張、そして、大量のこけ脅かしが、彼の常套手段だ”。

エラスティック(elastic, 伸縮自在)というのは、ジョブのサイズに応じて計算機資源が自動的に拡大縮小することだ。Ellisonの場合ジョブとは、データベースの運用、クェリの処理だ。

エラスティックであること、リソースの伸縮が自動的に行われることは、クラウドコンピューティングサービスの主な魅力のひとつだ。まるで、音量ボリュームのつまみを回すときのように簡単に、使用するリソースの増減ができる。自前のデータセンターだと、誰も自動的にリソースを増減してくれない。必要なキャパシティは新たに買わなければならないし、しかも今後の余裕を見て、今の必要量よりも多い買い方をしなければならない。資金の無駄遣いである。

それでもなお、ホリデーギフトシーズンのショッピングでデータ量が予想を超えてスパイクしたら、万事休すだ。リソースを、その日のうちに、しかもその日一日だけのために、買い増すことはできない。しかしクラウドなら、リソースの必要な伸縮が自動的に行われ、‘一日’という短期的なニーズにも対応できるから、リソースの無駄なアロケーションも発生しない。

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Oracleのイベントでラリー・エリソンが自律DB発表――AWSをからかう

Oracleはクラウド化の波に大きく取り残されており、ラリー・エリソン会長はそのことをよく知っている。そこでエリソンはあらゆる機会をとらえて最大のライバル、AWSに嫌味を言うことにしている。昨夜のOracle OpenWorldイベントのキーノートに登場したときも例外ではなかった。エリソンは自律的にチューニングを行う新しいデータベース・システムを紹介したが、同時にAWSを批判するという誘惑に勝てなかった。

今回発表されたスマート・データベースはテクノロジー的にみてクールなプロダクトに思える。エリソンとしては数分も割いてライバルについて論ずるより、自分たちの新しいデータベースの説明に集中したほうが効果的だったのではないか? このデータベースは、完全に自律的に作動するという。つまりチューニング、プロビジョニングを自ら実行できる。エリソンはこれを自分の自家用ジェット機の自動パイロットにたとえた(イベントの聴衆に自家用ジェットの所有者がどのくらいいたか知らないが)。つまり「今後はパイロットのエラーという事態は起きない。パイロットは乗っていないからだ。このデータベースではアドミニストレーションは完全に自動化されている」とエリソンはキーノートで述べた。

それに加えて、このデータベースには自己修復能力がある。なんらかの理由でデータベースの一部が壊れた場合、データベースは自らその部分を修復して運用を続ける。この能力があるため、Oracleは稼働率として99.995%を保証するという。エリソンはこれを「1年の作動あたり、計画的、突発的合わせて30分のダウンタイム」にすぎないと大胆に宣言した。

またエリソンは契約書にうたわれる4ナイン(99.99%)、5ナイン(99.999%)といった数字は「実質的にウソだ」と述べた。なぜならこの数字は通例ソフトウェアのバグ、セキュリティー・パッチのインストール、構成の変更などにともなうダウンタイムを除外してしているからだという。しかしOracleの新しいデータベースがいかにしてこうしたダウンタイムを一切排除できるのかについてエリソンは詳しく述べなかった。大規模なDDoS攻撃、最近アメリカを襲ったような猛烈なハリケーン、雷、それどころか単なるヒューマン・エラーも大規模なシステム障害を起こすことが知られている(昨年AWSに起きた障害がよい例だ)。

ともあれ、エリソンは何分か使ってAmazonのRedShiftを批判した。クラウドコンピューティングは非常に複雑なビジネスだが、赤丸付き急上昇でチャートのトップに立ったのはもちろAWSだ。一部の推定によればAWSのシェアはクラウドコンピューティング市場の40%を占めているという。2位のMicrosoft Azureは10%で、他はOracleも含めてこのトップ2社に遠く及ばない。

新しい自律的データベース・サービスは(18cというおよそ想像力を欠いた名称だが)、現在のOracleの強みを生かしながらクラウドでAmazonと戦おうとする試みだ。AWSはクラウド・ビジネスで何年も早くスタートを切り、巨大なシェアを誇っている。しかしOracleはデータベースを隅々まで知っており、これはクラウドに移行してもAWSより優位に立てる点のはずだ。

今回のイベントでのエリソンの発表は注目すべきものだったが、「プディングの良し悪しは食べてみるまでわからない」ということわざもある。このデータベースの能力も実際に運用されてみて初めて判明するだろう。Oracleによれば、新データベースは今年中に利用可能となるという。

画像:: Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

OracleがCloud Native Computing Foundationにプラチナ会員として参加、Java EEをオープンソースに

Oracleが今日(米国時間9/13)、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)にプラチナ会員として加わることを発表した。これによって同社は、Amazon, Cisco, Google, IBM, Intel, Microsoft, RedHatらとともに、このLinux Foundation傘下の団体に参加し、コンテナオーケストレーションプロジェクトKubernetesとその関連ツールを支えていくことになる。

CNCFへの入会はお安くない。プラチナ会員は、年会費が37万ドルだ(Linux Foundationの既存の会員には割引がある)。したがってこの団体に加わることは、その企業がKubernetesのエコシステムを支援していく意思表明になる。

Oracleは単に同団体に参加するだけでなく、Oracle LinuxにKubernetesを加え、Oracle Cloud InfrastructureのためのKubernetesインストーラーTerraformをオープンソースにする。このほかすでにOracleは、Kubernetesに多くのコントリビューションをしており、関連するコンテナツールも提供しているから、今日の正式加入は、エコシステムへのこれまでの投資を、公式化する動きにすぎない。

CNCFのCOO Chris Aniszczykは、今日の声明文でこう述べている: “Oracleには、世界クラスのエンタープライズのニーズに対応してきた数十年に及ぶ経験がある。そんなOracleをCNCFのプラチナ会員として迎えることは大きな喜びであり、同社はエンタープライズクラウドの未来を定義していくことに重要な役割を果たすと思われる”。

現時点ではKubernetesがコンテナオーケストレーションツールのデフォルトスタンダードであることに、もはや疑いの余地はなく、今やほとんどすべての企業が、お金の面やコードの寄与貢献の面でこのプロジェクトを支えている。

Oracleの加入の発表と並行してCNCFは今日、同団体が資格認定したKubernetesサービスプロバイダーの最初の一群を発表した。この分野の深い知識と同団体の公式の資格をもって企業のコンテナオーケストレーションを助けていくサービスプロバイダーは、Accenture, Booz Allen Hamilton, Canonical, CoreOS, Giant Swarm, そしてSamsung SDSである。

また今日は、二つの新たなプロジェクトが同団体のオープンソースツールの仲間に加わった。それらは、分散トレーシングシステムJaegerと、Lyftの開発チームが提供したエッジとサービスのプロキシEnvoyだ。

Oracleも今日、オープンソースの発表を行った。同社は、これまでクローズドソースだったJava Enterprise Edition(Java EE)をEclipse Foundationへ移し、そのコードをGitHubに置いた

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MicrosoftはどうやってSQL ServerをLinuxへポートしたか、ついに2017リリース候補がローンチ

Microsoftが2016年にSQL ServerをLinuxに移植すると発表したとき、それは業界全体のビッグなサプライズだった。しかし昨年の一年間で、MicrosoftのLinuxなどオープンソースのサポートはいよいよ明白になり、とにかく同社のツールはユーザーのいるところならどこへでも持っていく、という姿勢も明確になってきた。

同社は今日(米国時間7/17)、SQL Server 2017の最初のリリース候補バージョンをリリースしたが、それは、WindowsとLinuxとDockerコンテナで動く初めてのバージョンだ。Dockerのコンテナは、それだけでもユーザーが100万以上いるから、この新バージョンへの関心も大きいだろう。そしてこのニューバージョンは多くの新しい機能やスピードの改良などがあるものの、最大の見どころはやはり、Linuxのサポートだ。

MicrosoftのDatabase SysytemグループのゼネラルマネージャーRohan Kumarによると、彼はMicrosoftに勤めてすでに18年あまりになるが、最近では、ミッションクリティカルなワークロードにSQL Serverを採用する企業が増えている。しかも同時に多いのは、多くのユーザー企業のITがWindows ServerとLinuxの混成環境になっていることだ。そしてそんな企業にとっては、自分たちがかつて選んだデータベースをLinuxで使えないことが、彼らの脚を引っ張る要素になっている。

“多くの企業にとって今や、従来からのメインのデータベースをLinuxでも動かせることは、明白なニーズになりつつある”、とKumarは言う。“うちはこれまで、Windowsをもっぱらメインで使うよう、顧客に強制してきた”。最近は、これまでと違う‘別のMicrosoft’があって、それがいろんな点でポジティブな姿勢を見せているが、しかし変化は企業の基本姿勢にまで及んではいないのだ。

しかしKumarによると、最近の企業世界でもうひとつ多いのが、Oracle離れだ。そして、Linuxを動かしたいが、データベースは(オープンソースでなく)エンタープライズのサポートが充実しているブランド製品を使いたい、となると選択は自(おの)ずと限られてくる。

Kumarも言うように、Linuxのサポートを試みるのは、彼のデータベースグループにとって今回が初めてではない。“これまで二回トライしたが、会社の承認が得られなかった”、と彼は語る。“それが、うちの会社の戦略レベルの方針になりえる、という認識が当時はなかったのだ”。しかしトップがSatya Nadellaに変わった三年前に、彼のチームは再度、Linuxポートプロジェクトの社内上部売り込みをトライした。“また、すったもんだがある、と覚悟していたけど、驚いたことに、すぐにゴーサインが出た”、とKumarはそのときのオドロキを語る。

やっと会社の方針として決まったけれども、実際の作業はたいへんである。SQL Serverの何千万行ものコードを、どうやってLinuxにポートするのか? しかもKumarは、機能面での妥協はいっさいやりたくなかった。だから、100点満点の完全な移植か、無か、のどちらかだ。ただしWindows用のGUIといくつかのツールは、今のところこの原則の例外だ。

レドモンドのベトナム料理店でフォーのどんぶりをすすりながら、チームは答を見つけた。それがDrawbridgeだ。Drawbridは2011年に始まった研究プロジェクトで、小さなAPIを対外的インタフェイスとして提供するコンテナ、その中では、アプリケーションを効率的に動かせるよう構成されたベーシックなバージョンのWindowsが動く。その基本的なアイデアは、それによりもっとベターでセキュアな仮想マシンを提供することだった。OSのライブラリがアプリケーションやメモリ管理、そしてそのほかの重要な機能を動かし、その下層のオペレーティングシステムを統合する。

約2年前にSQL Serverのチームは、これをLinuxポート努力のコアにすることを決めた。“トップは適切な量の懸念を表明した”、という言い方をKumarはするが、研究プロジェクトにすぎなかったDrawbridgeの本番利用に対しては、上部の少なからぬ懸念があったことだろう。

このOSレイヤが、いろんな意味で、このプロジェクトを可能にした源泉だ。SQL Serverは、WindowsやWindows Serverにできないことを、自前でやっている。それはとくに、メモリ管理の面だ。しかしチームはすでに、標準的なOSの機能をSQLサーバーの OSレイヤに組み込んでいる。そのおかげで、Drawbridgeに収められたSQL Serverはたとえば、自分でメモリを管理できる。このやり方がうまくいったのでチームは、単純にLinux上のSQL Serverを作るのではなく、SQL OSとDrawbridgeでやった仕事を新たにSQL Platform Abstraction Layerという抽象化層へと実装し*、今ではそれがWindowsとLinuxで動く。〔*: 上図、PAL==Platform Abstraction Layer, 関連記事。〕

その結果SQL Serverのチームは、単一のコードベースから仕事ができ、コードが実際に動く対象プラットホームの違いを気にする必要がなくなった。たとえばMicrosoftのAzureでも、上記の抽象化層を持ち込むだけである。

SQL Server for Linuxは今年の後半に一般供用されるが、今日すでに、2社で本番稼働している。ハードウェアが同じなら、スピードはLinuxバージョンとWindowsバージョンで変わらない。

Kumarはすでに、最終リリースのその先を見つめている。データベースの世界もイノベーションが加速していくことは確実だが、しかし1年に一度とかもっと短いアップデートサイクルをミッションクリティカルなシステムには望まないユーザー企業もある。だからSQL Server 2016, 2017と立て続けに例年のリリースをやった次の年となる2018年は、アップデートなしという珍しい年になるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Oracleの上級社員がCEOのTrump政権移行チームへの参加に抗議して退職

Safra Catz, co-chief executive officer of Oracle Corp., gestures as she speaks during the Oracle OpenWorld 2014 conference in San Francisco, California, U.S., on Sunday, Sept. 28, 2014. Catz made her first remarks as Oracle co-CEO at the conference when she introduced Intel Corp. President Renee James, who also spoke. Photographer: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

CEOのSafra CatzがTrumpの政権移行チームに加わり、次期大統領を賛美する言葉を述べたあと、Oracleの上級社員George A. Polisnerは、自らの意思で同社を退職した

本誌TechCrunchも先週報じたように、TrumpはニューヨークのTrump Towerで、テクノロジー業界のリーダーたちと彼の子どもたちによるミーティングを召集した。

そのミーティングに先立ちCatzは声明文を公開し、その中で次のように述べた:

“次期大統領には、私たちが彼と共にあり、できるかぎりを尽くして彼を助ける用意がある、と伝えたい。もしも彼が税法を改正し、規制を減らし、より良い貿易協定を結ぶことができるなら、アメリカのテクノロジー産業は、これまでになく、強い競争力を持つことができるだろう”。

ミーティングのあと、CatzはTrumpの政権移行チームへの参加の招待を受諾した。

エンタープライズテクノロジー技術のベテランで、進歩的な政治思想の持ち主でもあるPolisnerは、これまでOracleでさまざまな職責を担当してきた。とくに1993年以降は、Oracleの製品開発や、クレーム対応、会社の事業の管理、そしていちばん最近では、クラウドサービスの管理を任されていた。

彼は退職を昨日会社に告げ、書簡をLinkedInに送ってそのことを公開した。その中で彼は、Trumpを次の点で批判している: 社会保険や医療保険制度の解体を計画; 戦死者遺族の冷遇; 有色人種やムスリムや移民に対する恐怖と憎悪と暴力の煽動; など。

私は次期大統領Trumpと考えを共にできないし、会社にとどまって彼を何らかの形で助けることもできない。というよりも、彼の政策が憲法違反と犯罪性と道徳的不正の瀬戸際にあるかぎりは、あらゆる合法的方法を駆使して彼に反対したい。

したがって私は、かつては偉大だった会社を退職する必要がある”。

Polisnerはまた、TrumpとCatzの彼の政権移行チームへの参加に対し、公然と抗議したいと考えている他のOracle社員のために、NotWhoWeAre.us(今の私たちは本当の私たちではない)と名付けた署名運動を立ち上げた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Oracle CEO、サフラ・キャッツがトランプ次期大統領の政権移行チームに参加

Safra Catz, co-chief executive officer of Oracle Corp., gestures as she speaks during the Oracle OpenWorld 2014 conference in San Francisco, California, U.S., on Sunday, Sept. 28, 2014. Catz made her first remarks as Oracle co-CEO at the conference when she introduced Intel Corp. President Renee James, who also spoke. Photographer: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

OracleのCEO、サフラ・キャッツ(Safra Catz)がドナルド・トランプ次期大統領の政権移行チームに加わることをTechCrunchはOracleの広報担当者に確認した。

昨日(米国時間12/14)、ニューヨークのトランプタワーでトランプ次期大統領は次期副大統領、息子、娘ら側近を伴い、キャッツ他多数のテクノロジー企業のトップと懇談した。会談に先立ってキャッツは「私は次期大統領を支持する。できることあればなんであれ協力したい」と公けに楽観的な見解を述べていた。

キャッツはまた「トランプ氏がテクノロジー産業の利益となるよう税制を改革し、規制を減らし、貿易を再交渉することを期待する」と付け加えた。

政権移行チームで活動する間もキャッツはOracleのCEOの職を保持する。TechCrunchは政権移行チームにおけるキャッツの責務についてOracleに質問した。なんらかの詳細が回答が判明すればアップデートする。

トランプのテクノロジー・サミットには選挙期間中からトランプを強く支持したメンバーも参加していたが、キャッツは選挙期間中は政治的発言はほとんどしていない。また連邦選挙管理委員会(Fderal Election Commission)のデータによれば、キャッツ名義でのトランプへの献金もない。ただしキャッツは議会選挙では民主党、共和党の双方に献金している。

画像:: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

〔日本版〕Oracleによるサフラ・キャッツCEOの紹介

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+