評価が分かれる自動運転車初期のパイオニア、その最新ムーンショットは暗号資産を利用したピア・ツー・ピアの通信ネットワーク

ウェブサイト、Medium(ミディアム)の投稿、ホワイトペーパー、専用のsubreddit(サブレディット)、Discord(ディスコード)チャンネルという5つの要素を伴って、新しいモバイルデータネットワークが米国時間2月1日の夜遅くにサンフランシスコでひっそりとローンチされた。従来の通信事業者に頼らずに匿名で高速に、しかも安価にデータを交換する新しい方法が約束されている。Pollen Mobile(ポーレン・モバイル)と呼ばれるこのピアツーピアのオープンソース無線ネットワークは、サービスが最初に開始されるベイエリアで、ユーザーに暗号資産でインセンティブを与え、ミニ基地局の運営とネットワークカバレッジの構築を促していく。

Anthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドフスキ)氏の自動運転車テクノロジースタートアップ、Pronto AI(プロントAI)がこのプロジェクトを立ち上げた。評価が大きく分かれる人物で、自動運転車業界の初期のパイオニアであるレヴァンドフスキ氏は、企業秘密を盗んだという罪で18カ月の禁固刑を受けた後、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領から2021年恩赦を受けた

なぜ自動運転車のスタートアップが、暗号資産によってインセンティブが与えられる分散型テレコムを作っているのであろうか?Pollen Mobileのきっかけは、Prontoの自動運転車に信頼性が高く手頃な価格のモバイル接続が必要だったことにある、とProntoのCEOであるレヴァンドフスキ氏はTechCrunchとのテキストメッセージで語った。Prontoは何カ月も前から自社のAVにPollenを採用している。

「理由はシンプルです。AVに信頼性が高く手頃な価格のモバイル接続を必要としていましたが、適切なものを見つけることができませんでした」と同氏は書いている。「そこで独自のものを構築し、それが他の人たちからも求められるものになるかもしれないと認識したのです」。その後に同氏は「必要は発明の母」と付け加えた。

数日中に最初のローンチを予定している分散型のPollen Mobileネットワークは、無線タワー、接続確認デバイス、携帯電話というデータ送信機のネットワークに依存している。それらは、やや奇妙に聞こえるが、flower(花)、bumblebee(マルハナバチ)、hummingbird(ハチドリ)といった呼称が付けられている。

Mediumへの投稿によると、2020年にFCC(米国連邦通信委員会)の規則が変更されたことで、自社の自動運転車が走行しているサイト向けに独自の基地局を建設し、小型モバイルネットワークを構築することが可能になったという。

「私たちは、人々が既存のモバイル企業に対して好ましく思っていない、他のすべてのことについて考えるようになりました。そして真に革命的な何か、つまり、私たちがモバイルネットワークの『黙示録の四騎士』と捉えている課題に立ち向かう何かを構築する機会を見出しました」とMediumのブログ投稿には記されている。ここでいう「黙示録の四騎士」とは「プライバシーと匿名性の欠如」「カバレッジの低さ」「コストの高さ」「ユーザーの声の欠落」である。

「flower」と呼ばれる小さな基地局は、ピザの箱ほどの大きさから高さ6フィート(約183cm)のものまであり、数ブロック(数百メートル)から1マイル(約1.6km)までの範囲をカバーしている。これらは「flowerのオーナー」が自宅やオフィスに設置し、インターネットに接続することで、他のPollenユーザーにカバレッジを提供する。同社がDiscordチャンネルに掲載した情報によると、flowerのオペレーターは、そのカバレッジ領域、サービス品質、送信データ量に応じて、ユーザーのコミュニティからPollenCoin(PCN、ポーレンコイン)を得る。

オペレーターは、この物理的なデータ送信ハードウェアの初期費用を負担する。最も安い(そして最も小さい)flowerで999ドル(約11万円)、最大かつ最もパワフルな送信機は1万ドル(約115万円)を超える。この高い初期費用を正当化するには、オペレーターがネットワークの成功を信じ、PCNの固定供給の価値が高まることを確信することが求められるだろう。

画像クレジット:スクリーンショット/Pollen Mobile

誕生したばかりのこの取り組みに対する多くの疑問点の1つは、ISPがどのように対応するか、あるいは対応するかどうかということだ。分散型ネットワークは、flowerのオペレーターの自宅のインターネットに乗って、それらのネットワークを通じてピアツーピアのデータを転送することになるのだろうか。

同社のネットワークトラッカーによると、同ネットワークは現在、ベイエリアで10を超える無線タワーを運用しているようだ。

Pollen Mobileは「bumblebee」と名付けられた小さなデバイスを提供しており、これによりネットワークカバレッジの強度に関するデータを収集する。これらのデバイスは「flower」のカバレッジを証明するもので、ユーザーが所有し、自身のクルマやドローン、自転車に搭載することもできる。Bumblebeeのオーナーは、毎日提供される独自のカバレッジ検証の数字に基づいて、PCNを獲得する。

最後に、Pollenネットワークを使用するモバイルデバイスである「hummingbird」が用意されている。同ネットワークに接続するにはeSIMをダウンロードする必要があり、ノートPCなどのデバイスは専用のアダプター(「Wing」と呼ばれる)を介して接続できると同社は述べている。ユーザーはPCNを使って接続料金を支払う。

最終的には、データネットワークの初期段階で料金を支払う意思のあるユーザーのネットワークを構築する上で、顧客データを販売したりログに記録したりしない、より匿名性の高いモバイルネットワークというビジョンを売り込む必要があるだろう。データ専用ネットワークでは通話もSMSメッセージもできないし、料金を支払っても電話番号はもらえない。

Pollenはこれまでのところ、Prontoの子会社として内部的に運用されている。レヴァンドフスキ氏によると、Pollenは自律分散型組織であるeDAOに移管される予定で、独立して運営されるようになるという。この組織が最終的に、ネットワークがどのように進化し、ユーザーがどのように、どこでカバレッジを構築するインセンティブを与えられるかを決定することになる。

「私たちはflowerの行き先を制御していません」とレヴァンドフスキ氏はTechCrunchに語った。「コミュニティと市場の力が報酬の流れる先を決定できるように、このネットワークを設計しました」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Kirsten Korosec、Lucas Matney、翻訳:Dragonfly)

【コラム】所有の新しいかたち、P2Pファイル共有から音楽NFTまで

Outkast(アウトキャスト)の海賊版が販売されていた2003年に、そのMP3のコピーを所有することでロイヤリティー(著作物使用料)を得られる世界を想像できただろうか。

NFT(非代替性トークン)やWeb3への批判が高まる中、ヒップホップ界のレジェンドでありイノベーターであるNas(ナズ)は、自身のシングル2曲をNFTでリリースしている。ファンはこれを購入することにより、ストリーミングのロイヤリティを得ることができる。音楽NFTの人気の高まりにより、次のような非常に興味深い議論に注目が集まっている。ブロックチェーンは、トレントの自由でオープンであるという利点に相反するものだろうか。ブロックチェーンは、コンテンツの違法コピー製作者と同じように、ゲートキーパーを排除しようとしているのだろうか。

アーティストとファンの対立

デジタルエンターテインメントの歴史の中で最も対立が激しかったのは、Napster(ナップスター)が登場してきた時期と、2000年代、BitTorrent(ビットトレント)が広く普及した時期だ。この時期、音楽業界、映画業界が大きく変わり、アーティストとファンが対立した。2000年代の終わりには知的財産権の行使が急増し、同時に、Spotify(スポティファイ)、Netflix(ネットフリックス)、Apple Music(アップルミュージック)などに代表されるような、デジタル商品の消費者向けオプションが大幅に拡充した。

Web3への移行が始まり、デジタル所有権、知的財産マネジメント、クリエイターの権利といった概念に再び注目が集まっている。Web3を批判する人たちはトレントの特性と比較して否定することが多い。トレントは「知的財産権への革新を求める抵抗」の表れで、コンテンツがよりオープンで自由で利用しやすいインターネットを生み出したのに対し、ブロックチェーンはその逆のことを行っている、というのがその言い分だ。

これには的外れな点がある。まずユーザーがトレントを利用する理由として、金銭面の節約という人もいたが、多くの人にとっては公式の有料コンテンツに比べて利便性が圧倒的に高いからというものだった。トレントの動きは、急速な技術革新によって引き起こされた、時代遅れのビジネスモデルに対する消費者の反発と捉えると、非常にわかりやすい。その意味で、Web3はまさにトレント時代の精神を継承したと言える。

もう1つの問題は、Web3を批判する人たちが当時の実際の論点を忘れてしまっていることだ。哲学的な考えを持った当時の違法コピー製作者たちは、その行為の大義名分として、アーティストは中間業者のせいで不利益を被っていると指摘していた。

「アーティストはツアーで稼いでいるから問題ない」というのがその時の目立った主張で、大規模な音楽出版社はたいてい悪者とされた。実際には、トレントがレコードの売上に影響を与え、音楽出版社とアーティストの両方の利益が損なわれた可能性が高い。トレントの動きをWeb1.0支持者によるWeb2.0移行への反発としてのみ捉え直すのは、コンテンツの違法コピーにより不利益を被る人たちを無視する「バラ色のメガネ」をかけた楽観主義だ。

また、自らの権利を主張し、音楽出版社側に付いていたと思われる多くのミュージシャンもファンの反感を買ったが、これによりトレントの道徳的優位性が高まるということはなかった。

一方、Web3では、コンテンツへのアクセスだけでなく、そのコンテンツで何ができるかということも重要視されている。言い換えれば、コンテンツの実用性と価値、とりわけこの問題の中心であるクリエイターにとってのそれが重要になる。ゲートキーパーを排除しようとする点では、Web3の構築者とトレントのサービス提供者は多くの同じ目標を共有している。

しかしWeb3は、強力な希少性、透明性、完全な所有権、明確な出所など、トレントよりはるかに優れた武器をこの戦いのためにクリエイターやファンに提供する。アーティストが自分のコンテンツを直接所有し、自分のコミュニティとのつながりを維持することは、これまで以上に容易になってきている。Web3はある点ではトレントに敬意を表しつつ、アーティストとそのファンにとってより有意義で、彼らに経済的な力を与えることのできるインフラを提供している。

ゲートキーパーの排除

トレントとブロックチェーンは、どちらもピア・ツー・ピアの分散型テクノロジーであるという点で類似している。また、NFT人気の高まりにより、ブロックチェーンはコンテンツを配信するためのより一般的な方法になりつつある。コンテンツ配信はビットトレントが手がけるサービスでもある。これらのテクノロジーの大きな違いの1つは、知的財産権に対するそれぞれのユーザーのアプローチだ。

トレント時代、Web3時代のどちらにおいても常に認識されているのは、創作活動は難しく、楽しく、利益や称賛に値するという事実だ。知的財産権は、このような創作活動が継続的に行われることを保証する1つの方法である。これまでの知的財産権の制度では、創造活動の価値は、ゲートキーパー、レントシーカー(既得権者)、中間業者によって圧倒的に掌握されていた。こうした枠組みでは、中間業者は価値を「発掘」するための手段に過ぎないということが見逃されている。

私と同じようにシャワーを浴びながら好きなように歌う人たちには好感しかないが、アーティストが何もない部屋に閉じこもって創作活動をしても、家賃を支払う助けにはならない。そのために、音楽出版社、レーベル、管理会社、代理店などが登場してきたのだ。賛否両論あるものの、こういった中間業者は、テクノロジーや配信手段の特質を考えると、非常に長い間、信じられないほどの成功を収めてきた。それでも、決して価値の発掘が大きな問題としてなくなったわけではない。もっと詳しいことが知りたい方には「shill on Twitter(Twitter上のサクラ)」の部屋がある私のNFT Discord(ディスコード)を紹介したい。

ともあれ、トレント時代に激しい対立が生まれた要因は、これらの中間業者が、支援するべき才能あるクリエイターが手にするよりはるかに大きな力と価値を持つようになったと考えられたことにある。とりわけ急速に技術革新が進む時代にありながらである。

Web3の大きなゴールは、トレントのサービス提供者が追い込んできたゲートキーパーを根本的に排除することだ。Web3に問題があるとすれば、その1つは、ゲートキーパーが数多く存在するということだ。このような透明で分散化されたツールを使えば、自分が苦労して稼いだお金が支援したいクリエイターやプロジェクトに直接使われているのを実感できることが増えていく。

オープン台帳やスマートコントラクト、ホワイトペーパーは、かつてクリエイターが強制的に結ばされていた不可解で機密性の高い契約とは際立って対照的だ。これまでは知的財産権がクリエイターを保護してきたが、これからは新しいメカニズムがその役割りを果たすことが期待されており、利益を得るのはクリエイター自身であると確信できるようになった。あるアーティストの言葉を借りれば、このテクノロジーによって「クリエイターを増やし、音楽を増やし、そして人間としての体験を増やしていく」ことが可能になるのだ。これを「昔は知的財産権は悪だったが、今は知的財産権は善だ」とまとめては、両者の動きの核心を完全に理解していないことになる。

権利を求める戦い

NFTは、アルバムや物理的なアートと完全に置き換わるものではない。音楽を聴いたり美しいものを集めたりするのに、暗号資産ウォレットは(おそらく)必要ないだろう。NFTはファンに新しい体験を提供すると同時に、権利設定とクリエイターの自活能力の両方に大きな影響を与える。

私は4年以上かけてTwitch(ツイッチ)の音楽サービスを構築し、そのうちのかなりの時間をDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の調査に費やしたため、米国のデジタル知的財産権の行使には頭痛がともなうをことをよく知っている。

NFTは、それよりはるかに明確で、透明性が高く、相互運用性があり、効率的なビジネス手法だ。すべての所有権の詳細は法律用語に埋め尽くされることなく、単純なコンピューターでも理解できる言葉で書かれている。さらにこれらの契約がシンプルであれば、ライセンスの利用が大幅に促進される。これは、購入しやすいMP3への移行が音楽ストリーミング産業の始まりとなった流れと同様だ。人々はやるべきことをしたいと考えており、それを容易にかなえられる製品があれば、それを実行に移す。

つまり、NFTはコラボレーションへの障壁を下げ、ファン自らもクリエイターを志せるきっかけなるということだ。ファンがアルバムを所有すれば、そのアルバムを使ってリミックスやサンプリングができるようになるだけでなく、ストリーミングしたり、バーで流したり、映画やポッドキャストのサウンドトラックに入れたりする権利も得られるというのであれば、それはとてもすばらしいことだ。

当然のことながら、NFTの利用に際して譲渡される権利はアーティストが所有しているか、権利者により譲渡される必要がある。これが独立系アーティストがこの領域でのイノベーションと早期導入を後押しする理由だ。彼らは自分たちのために公正な権利プロファイルを保持しており、そのおかげで活動の余地がさらに広がる。

契約を結んでいるアーティストにも参加のチャンスはある。自分の肖像や制作したアートをベースにしたアートやコレクター向けのNFTを発行することができるだろう。私は、クリエイターがNFTをメリットバッジやコンサートなどのライブイベントへのアクセスパスとして活用しているを見るのが好きだ。多くのミュージシャンがこのような新しい手法を使い、自分たちのファンクラブを変えることに成功している。そこでは、完全な所有権と、一緒にコミュニティを構築する機会を得られる。

訴訟ではなく、コラボレーション

ブロックチェーンのテクノロジーは、自分のファンを把握する、中間業者を介さずにファンに物を贈ったり売ったりする、共有されたアーティファクトやシグナルでコミュニティを形成することなどを可能にして、アーティストがファンとのコミュニティを構築するための直接的な方法を提供する。

こういった活動を組み合わせることで、アーティストは20年前(特にファンを訴えていたころ)をはるかにしのぐコミュニティ形成力が得られる。そしてこれらのことはすべて、かつて消費者へのアクセスを管理していた中間業者を介さなくとも実行可能だ。

さあ、一息ついて、クリエイターたちにこの新しい領域を開拓する余地を与えよう。そして、これから構築される新しい物事を保護するために知的財産法が役立つのであれば、それを称えよう。私たちは、近年の技術的な動きにおいて最も重要な原則が、いまだ有効であることを喜び、そして理解することができる。その原則とは次のようなものである。「作品を生み出すというのはたいへんなことであり、クリエイターとその作品は保護されるに値する」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Chris Fortier、翻訳:Dragonfly)

カーシェアリングのTuroがユニコーンになり秘かにIPOを申請

ピア・ツー・ピアのカーシェアサービスTuroが、秘密裏に米国証券取引委員会(SEC)にIPOを申請した。

このIPOの発行株数や価格範囲は未定、と同社は声明で述べている。TechCrunchにも、それ以上の情報は明かしていない。

創業11年になるTuroのマーケットプレイスはAirbnbと似ており、クルマのオーナーがTuroのアプリやウェブサイトで自分のクルマの貸出を公示する。現在、Turoのカーシェアを利用できる都市は米国、カナダ、英国の計5500都市あまりだ。Turoは元々、Daimler AGのカーシェア子会社Crooveの買収と投資から生まれたドイツの企業だが、今はドイツにはない。

同社は2019年7月にシリーズEで2億5000万ドル(約276億6000万円)を調達し、それが同社をユニコーンに押し上げ、CEOのAndre Haddad(アンドレ・ハダド)氏はブログで「評価額が10億ドル(約1106億3000万円)のラインを超えた」と言っている。Turoは2月に、そのフォローアップとして3000万ドル(約33億2000万円)の拡張ラウンドを調達し、調達総額は5億ドル(約553億1000万円)を超えた。

Turoはパンデミックの間に、BirdやGetaroundなど、その他の交通系スタートアップと同様、かなり苦しんだ。2020年の3月には従業員の30%、108名をレイオフしたと調査会社Layoffs.fyiはいう。

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P2P方式レンタカーのGetaroundがワシントンD.C.の司法長官から1.1億円の罰金

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:カーシェアリングピア・ツー・ピアTuroIPOユニコーン企業

画像クレジット:Turo

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

P2P方式レンタカーのGetaroundがワシントンD.C.の司法長官から1.1億円の罰金

Getaround(ゲットアラウンド)は、ワシントンD.C.の司法長官事務所から、無免許営業などの違反行為に対して約100万ドル(約1億1000万円)の罰金を科された。同社がいう「政治的に動機づけられた申し立て」に対する和解の一環だ。

司法長官室は、Getaroundのプラットフォームに掲載されているクルマが盗難されたとの報告を受け、2020年初めから同社の調査を開始した。米国時間7月23日に発表された和解案では、Getaroundが市に95万ドル(約1億450万円)を支払うことに加え、プラットフォームに掲載していたレンタル車両が盗難や破損にあった顧客への賠償金の支払いなどの変更を実施することが求められている。

Getaroundは、2011年にDisrupt NYCで開催されたTechCrunchのStartup Battlefieldで優勝した企業で、個人の自動車所有者がウェブサイトやアプリを利用して、1時間または1日単位で自動車をレンタル貸しすることができる。このサイトは、競合他社のTuroや、家をレンタルするアナログのAirbnbとよく似た方法で仲介を行っている(そして上前をはねている)。同社は多くの投資家の関心を集めており、最近では1億4000万ドル(約154億円)をシリーズEで調達し、ベンチャー企業としての資金調達額は6億ドル(約660億円)に達した。

今回の和解は、いわゆる「自主的なコンプライアンスの約束」であり、罪を認めるものではない。和解文書では、Getaroundが消費者保護法や税法への違反を否定していることが明確にされている。

「ギグエコノミー企業は、実店舗を持つ企業と同じルールを守らなければなりません」とKarl Racine(カール・ラシーン)司法長官は声明で述べた。「特にサービスの安全性について、消費者に明確で正確な情報を提供しなければならず、他の人々と同様に自らが払うべき税金を公正に支払わなければなりません」。

司法省は、GetaroundがワシントンD.C.で無免許で営業し、サービス内容を偽り、レンタカーサービスの安全性について「虚偽または誤解を招くような表示」をしたと主張している。和解の一環としてGetaroundは、車両の損傷や盗難に関するユーザーからの苦情について、ユーザーが問題を報告する方法を含め、書面で方針を作成しなければならない。また「Enhanced Security」ソフトウェアなどの安全機能の限界を明確に開示しなければならない。このソフトウェアは同社のウェブサイトで、使用していないときに車を固定することができると説明されている。また、同社は保険の適用条件をより明確に示す必要がある。

司法省はまた、Getaroundが自社で所有・運営しているクルマの所有者プロフィールを偽装して消費者を欺いたと主張している。同社は今後、保有しているクルマをリストに明記しなければならない。

Getaroundの広報担当者はTechCrunchに対し、司法長官の申し立てに「断固として同意しない」と話した。

「司法長官が認めているように、安全とセキュリティに関しては、GetaroundがワシントンD.C.の特定の車両に影響を与えるセキュリティの問題について通知を受けた後、直ちに是正措置を講じました」と広報担当者は述べた。「Getaroundは、これまで通り損害賠償を請求した車の所有者に補償します。最後に、Getaroundはこの和解案に基づいて支払う租税債務に異議を唱えたことはありません。Getaroundは、ワシントンD.C.に対し、また事業を展開するすべての管轄区域において、適用される税金を引き続き支払います」。

広報担当者は次のように続けた。「司法長官は政治的なポイントを稼ぐことに集中していますが、Getaroundは安全、便利で手頃な価格の自動車を、生活や仕事に必要な地域住民と結びつけることに注力し続けます」。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:GetaroundワシントンD.C.P2Pレンタカーカーシェアリング

画像クレジット:Photo by Smith Collection/Gado/Getty Images / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドを使わずドキュメント共同編集機能を実現するP2Pソフトウェア「Collabio」

クラウドレスでの共同編集を可能にするオフィススイートアプリCollabio Spacesをご紹介したい。データや変更履歴の管理を確実に行いながら、ドキュメントの共同編集を可能にするというものだ。

モバイルデバイスやデスクトップコンピューターから、複数人がローカルネットワークで共同編集できるようになるというこのP2Pソフトウェア。Googleドキュメントのような共有文書機能を使用している場合には必ずつきまとう、機密情報をクラウドにアップロードする際のリスクや、複数人にドキュメントをメール送信し、編集済みファイルが返信された後に手作業で変更点を照合する、などという面倒な作業をこのソフトウェアが解決してくれるようだ。

Collabioの機能は今後さらに強化されていくという。将来的には、ローカルネットワークだけでなくどこからでもドキュメントの共同作業ができるようになる。2021年4月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介して動作するP2Pコラボレーションが追加される予定だが、それもリモートサーバーを介すことによるプライバシーリスクを回避している。

同アプリは今のところMacOSとiOSのみに対応しているが、Android版とWindows版も2021年中のリリースを予定しているという。

現在サポートされているテキストフォーマットは、DOCX、ODT、XLSX、ODS。Collabioオフィススイートには、カメラを使ってテキストや画像をスキャンして認識する機能、PDFに注釈やコメントをつける機能(音声入力も含む)、テキスト文書やPDFに電子署名をする機能、プレゼンテーションを表示する機能なども含まれている。

画像クレジット:XCDS/Collabio

英国のロンドンに本社を置き、チェコ共和国のプラハに研究開発拠点を持つXCDS(eXtended Collaboration Document Systems)が同アプリの製作会社だ。同社は約10年前から事業を行っているが、CTOのEgor Goroshko(イーゴル・ゴロシュコ)氏によるとオフィスツールの開発は7年ほど前から行っており、同氏はCollabio自体をスタートアップとして見なしているという。

このアプリは(非公開の個人投資家から非公開額の)資金提供を受けているが、チームは近い将来、開発を継続して製品を強化するためのさらなる資金調達を計画している。

新型コロナウイルスにより過去12カ月間でリモートワークが急速に広まったが、これを機会にコラボレーションツールや生産性向上ツールは大きな改善を遂げ、またオフィス勤務者が同じスペースで働かなくなった事によって直面したワークフローの障壁を安全に取り除けるようになった。現在のCollabioはリモートコラボレーションではなく近距離で働く者同士のためにデザインされているため、次のメジャーリリースがどのようなものになるのか非常に興味深い。

Collabioの初期チームには、Quickofficeの開発者で2012年の買収時にGoogleに移籍しなかったメンバーも含まれている。彼らはドキュメント関連製品のユーザーエクスペリエンスを向上させる方法を考えることに注力し、その結果、長年開発してきたP2Pドキュメントコラボレーション製品を2020年秋にようやく市場に出したのである。

「Collabioの開発を開始したときから長期戦を覚悟していました」とゴロシュコ氏はTechCrunchとの対談で当時を振り返る。「独自のアイデアを開発し始める前に、(オフィススイートソフトの)ユーザーが普段慣れ親しんでいるほとんどの機能を実装する必要があると確信していました」。

「簡単にいうと、弊社のクラウドレスコラボレーションは、クラウドのものとまったく同じように機能します。当然ドキュメントへの接続方法には多少の違いがありますが、それ以外はクラウドで作業する際とまったく同じ体験ができます」。

「2020年9月にiOSアプリからスタートし、10月にはmacOSバージョンを導入しました。初期のリリースでは主に実際のユーザーでアプリを検証し、私たちのアイデアを証明することにフォーカスしています。ローンチして以来約1万5000件のインストールがあり、ユーザーが何を必要としているのか、何を改善すべきなのかなど、貴重なフィードバックを得ることができました。2021年2月から集中的に市場に投入し、この1カ月間で1000人以上のユーザーを獲得することができました」。

CollabioのP2Pクラウドレスコラボレーションと、典型的なサーバーへのアップロード型コラボレーションとの間には、注目すべき重要な差がある。

その1つに、共同執筆や共同編集をしているドキュメントに、他者が常にアクセスできないという点がある。自分のデータへの共同アクセス権を厳密に管理したい場合には、こういった制限が役に立つかもしれない。

「Collabioではクラウドを使わない共同編集を『アドホックコラボレーション』と呼んでいます。クラウドなしでは常にドキュメントにアクセスすることはできないため、時折行われるドキュメントに対する議論や更新には最適です」とゴロシュコ氏。

もう1つの重要な違いは、共有されたドキュメントは所有者のホストデバイスにしか残らず、コピーは所有者しか保存できないという点が挙げられる(少なくとも現時点では)。

「共同作業者はセッションドキュメントにアクセスはできますが、デバイスにファイルをアップロードしたり転送したりすることはできません。セッションはホストがドキュメントを開いている限り続きます。ドキュメントを閉じた時点で他の参加者はアクセス権を失い、またドキュメントをローカルネットワークに保存することはできません。これはプライバシー保護のためですが、今後接続している相手にドキュメントのコピーを保存させるオプションをユーザーに提供するかどうかを現在検討中です」。

すべてのドキュメント作業はローカルネットワーク上のデバイスで行われるため、Collabioを使ったコラボレーションにインターネット接続は必要ない。安定したインターネット接続の確保が容易ではない出張などの状況で、これは非常に役立つと同チームは考えている。

ゴロシュコ氏によると、CollabioはこのローカルP2P接続が「より高い品質を達成できるよう」Wi-FiとBluetoothの両方を使用しているという。「これはAirDrop技術などでも採用されている一般的な手法です。相手のアドレスが特定されると、アプリケーションはWi-Fi経由で接続を確立し、データ交換の速度と品質を向上させます」。

「すべての作業はローカルネットワーク上のデバイスでのみ行われるため、アドホックコラボレーションにインターネットは必要ありません。AirDropでファイルを交換する際にインターネットが必要ないのと同じです。AirDropと同様に、Collabio Spacesには特別な設定は必要なく、すべてが自動的に行われます。セッションを開始すると同僚が自分のデバイスでそれを見ることができ、選択したドキュメントに接続するだけで、コードを知っていればドキュメントを編集することができます」。

Collabioチームは、Appleのテクノロジーと同社の「It just works(それだけで機能する)」という哲学に影響を受けているとゴロシュコ氏はいう。それでも、同製品をApple以外のプラットフォームにも提供できるよう取り組んでおり、年内のリリースを目指している。

「大規模かつ複雑で野心的なプロジェクトですが、我々が革新的なアプローチをもたらすことができると信じています。Officeソフトの市場はかなり保守的ですが、新しいソフトに対する市場からの期待値は高く、そのため公開までにかなりの時間を要しました。しかし参入障壁が高く、ドキュメント管理や編集の分野で革新が遅れているからこそ、そこに大きなチャンスが隠れているのです」。

従来の製品にコラボレーション機能を追加しなければいけなかった通常のオフィススイートとは違い、Collabioは「概念実証の最初の段階から共同編集を念頭に置き」ゼロから開発を行ったため効率化を図ることができたのだと同氏は考えている。そのため、共同編集アルゴリズムの実装が「携帯電話の最小限のリソース消費」でも可能になるというわけだ。

ゴロシュコ氏によると、Collabioのユーザーがモバイルデバイスを使ってコラボレーションセッションを開始した場合、最大5人のメンバーが同時に接続することができ、また全参加者がドキュメントを編集することができるという(デスクトップであればさらに大人数が同時に接続可能だ)。

「蜂の巣型のアイコンからコラボレーションセッションを開始すると、Collabio Spacesアプリがインストールされた周辺のデバイスに共有ドキュメントが表示されます。AirDropによるファイルの共有やAirPlayによるオーディオやビデオのストリーミングと同じように作動し、近くにいる人はセッションに割り当てられたセキュリティコードを知っていれば、編集に参加することが可能です」。

このP2P接続は「標準的なエンド・ツー・エンドの暗号化」によって暗号化されているとゴロシュコ氏はいうが「インターネットにアクセスすることなく、ローカルネットワーク内で信頼できる接続を許可するためのトリック」があると認めた上で「最初はこれで十分だと思いますが、将来的にはこの方法を改善することになるでしょう」と語っている。

独立したセキュリティテストを受けていないどんな初期製品にも同じことがいえるが、前述の理由から、これからCollabioによるこの斬新な製品を利用しようと考えているユーザーは、共同編集の目的で共有するデータの機密性を考慮しながら慎重なアプローチをとるべきである。

一方、同スタートアップはリモートワークでより効率的に仕事をしようと四苦八苦しているオフィスワーカーのニーズに応えることができれば、大きな成長が期待できると感じている。

「チームワークに特化したエディターを作り、コラボレーションを最大限に活用できるようにすることが我々の目標です。他のメンバーとともに仕事ができればメリットも大きいですが、他人と同期するためにはある程度の労力をともないます。プランニング、トラッキング、ディスカッション、レビューなどのこういった作業のほとんどは通常ドキュメントとは別に行われるか、ドキュメントの中での作業になっています。このギャップを埋め、ユーザー間でコラボレーションがスムーズに行えるようにしたいと考えています」。

「弊社にとって市場には大きく分けて2種類の競合が存在すると考えています。1つ目のMS Office、Googleドキュメント、Libre Officeのような大手のオフィスドキュメント編集スイートは、あまりにも膨大な機能を備えているため直接的な競合だとは思っていません。多くの人がほとんどの機能を使いこなせていないのが現状です」。

「そして、2つ目のNotionやAirtableのような新しい製品が登場し、ドキュメント編集プロセスをビジネスに統合するスマートな方法を紹介しています。我々はこの2種類の中間あたりに位置していると考えています」。

Collabioを使用するにはサブスクリプションの購入が必要となるが、1週間までの無料トライアル版が用意されている。

また、コラボレーションセッションのホストになることはできないが、ユーザーとしてドキュメントを閲覧したり編集したりすることはできる無料のオプションもあると聞いている。

2021年5月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介してどこからでもP2Pコラボレーションができる機能が追加され、またリモートサーバーの必要がなくなるなど、リモートワークの普及に対応して実用性が大幅に拡大される予定だ。

こういった新機能の仕組みは、ひと言でいうなれば「数学」である。ゴロシュコ氏によると、このシステムは共同編集中「常に」ドキュメントの一貫性を保つためのOperations Transformation(操作変換)アルゴリズムに依存しており、リアルタイム操作の必要性がないようになっている。

「共同編集者が最後に何を入力しようと、最終的には必ず同じ内容になります。このアルゴリズムによって必ずしもすばらしいドキュメントができ上がるとは限りません。複数人が同じ場所に入力すれば、訳のわからない言葉になるでしょう。ただし、全参加者の間ですべての変更が同期された後は皆、同じ訳のわからない言葉が並べられたドキュメントを見ることができます。Operations Transformationではリアルタイム操作が必要とされないため、変更が早くても遅くても、最終的には他の変更と一致するように変換されます。つまり、クラウドまたはクラウドレスのコラボレーションモードどちらであっても、共同編集をサポートするための特別なインフラや高速処理が必要ないのです」。

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画像クレジット:Aksonsat Uanthoeng / EyeEm / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)