RFルーカス独自開発のRFIDロケーション技術、アパレルや自動車・航空機メーカーで威力を発揮

RFルーカスは、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを活用した独自のロケーション技術を開発し、その成果物としてのハードウェアやソリューションを販売している、2015年8月設立のスタートアップだ。

RFIDタグとは、ID情報を埋め込んだICタグ(RFタグ)と電磁波を用いた近距離の無線通信を組み合わせることで、非接触で情報をやり取りする技術。特に、同じ商品であってもサイズ違い・色違いなど単品で管理しなければならない商品が非常に多い、アパレル業界などで普及している。

RFIDタグは、電磁波が照射されるとそれをエネルギー源として動作し、それぞれのタグが個体識別可能な電波を返すため、多くの製品をまとめて管理する方法として利便性が高い。ちなみに、照射するのは920MHz帯の波長で、その波をRFIDタグに数秒間に数百回当てている。

商品管理の方法としてはバーコードもあるが、スタッフが1商品ずつスキャンする必要があり多種多様な商品を扱うアパレル業界には不向きだ。ちなみにRFIDタグには、アパレル業界で使われるUHF帯タイプのほか、Suicaなどの非接触ICカード向けのHF帯タイプがある。HF帯タイプは1個百数十円のコストがかかるが、大手アパレル企業ならUHF帯タイプを1個数円で製造できる。包装紙やダンボールなどに印刷できるバーコードに比べるとコストはかかるものの、1個数円であれば使い捨てできるので使い勝手もいい。

しかし、従来のRFIDタグでの個体管理は「その商品はこのあたりにある」という情報しか得られず、「正面の棚の上から2段目の右端あたり」といった正確な場所を把握するのは難しかった。また、店舗では納品(入庫)時にRFIDタグを一斉にスキャンしたあと、顧客がそれを手に取ってレジで決済(出庫)することで在庫管理が完結する。

前述のように、アパレル製品はサイズ違い、色違いが多いため、すべての商品を店頭に並べることは難しく、大半の商品はバックヤードに収納されている。そのため、入庫時と出庫時だけで在庫管理をしていると、店頭とバックヤードにそれぞれどれだけの商品があるのかを把握しづらい。同じ商品を店頭の複数の場所に配置している大型店舗などでは、顧客が望む色やサイズの商品を探すのはひと苦労だ。RFルーカスはこのようなRFIDタグを利用した在庫管理の問題を、独自のロケーション技術で解決する。

同社が開発したロケーション技術を組み込んだソフトウェア開発キット「P3 Finder SDK」を利用することで、RFIDタグがスキャン時に発する電波の方向や強弱を専用のリーダーが解析して、RFIDタグの場所と特定する。

ここで利用する専用のリーダーは、スマートフォンを搭載するタイプで、現在のところAsReader GUN TypeとBluebird RFR900の2機種を利用可能だ。前者はiOSデバイス、後者はAndroidデバイスを装着して利用する。なお、AsReader GUN Typeは「AsTagFinder」アプリをiOSデバイスにインストールするこでRFIDタグの位置特定が可能になる。

店舗内の在庫管理については「P3 Mapper/AI」の出番。バックヤードと店頭を繋ぐ通路にRFIDタグをスキャンできる特殊なマットを敷くことで、入庫した商品がバックヤードにあるのか店頭に運び出されたのかをチェックできるソリューションだ。

単純に通過するだけなら入庫なのか、出庫なのかを判別することは難しいが、同社のロケーション技術とAIによるデータ解析によって、RFIDが発する電波の方向や強弱で、バックヤードへの入庫なのか、バックヤードからの出庫なのかを判断する。同社によるとすでに約100台が導入済みとのこと。
RFルーカスは6月に、STRIVE、りそなキャピタル、テクノスジャパン、AGキャピタル、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により2億円の資金調達を発表。現在はアパレル業界だけでなく、自動車メーカーでのPCなどの備品管理、航空機メーカーでの工具管理、さらにはデータセンターのサーバー管理にも同社のソリューションが導入されている。

そのほか、現在はバーコードで管理されている場合が多い宅配業者が取り扱う荷物についても、RDIFタグによる管理に置き換えることを目指す。すでに物流倉庫での同社のソリューションと自走ロボットやドローンを組み合わた在庫管理の検証が進められている。今後は、医療や建設などの業界への進出も考えているとのこと。

経済産業省は2017年4月に、人手不足と労務コストの上昇、食品ロスや返品などの問題を解消することを目指して「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定。2025年までにセブンイレブン、ファミリーマート、 ローソン、ミニストップ、ニューデイズのすべて取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを貼り付け、商品の個品管理を実現するとで合意している。今後、RDIFなどの電子タグの需要はさらに高まることが予想される。

同社は2019年をRFIDタグ元年と定め、これまでは通信機能の搭載が難しかったモノにまでRFIDタグを取り付けてIoT化し、作業効率の向上を目指す。