「AnyPay」を立ち上げた連続起業家・木村新司氏がTC Tokyoに登壇、スマホ時代の決済サービスとは

AnyPay代表取締役の木村新司氏

今、決済サービスに携わるスタートアップの動きが活発になっている。スマートフォン時代の“新しい決済”を実現すべく、さまざまなプレーヤーがしのぎを削っている状況だ。11月17〜18日開催のTechCrunch Tokyo 2016では、そんな決済の領域に挑戦する連続起業家であり、AnyPay代表取締役の木村新司氏が登壇することが決定した。

木村氏はドリームインキュベーター、シリウステクノロジーズを経て、広告配信事業を手がけるアトランティスを創業。同社をグリーに売却したのちにエンジェル投資家としてスタートアップを支援。投資先のGunosy(のちに共同経営者となり、退任)は2015年にマザーズに上場。またその他にも多くのスタートアップを支援してきた。AnyPayはそんな木村氏が新しく立ち上げたスタートアップだ。

ここであらためて決済領域のスタートアップの直近の動きを振り返ってみると、まずスマホ向けのカード決済からスタートしたコイニーが、オンライン決済ページ作成サービスの「Coineyペイジ」を発表。また、フリマアプリ「フリル」運営のFablicは楽天傘下に入ったが、今後は決済領域に進出する予定だという。さらに買収元であるスタートトゥデイからMBOしたブラケットも、「STORES.jp」に関連して決済サービスを強化するとしている。さらにBASEも15億円の大型調達を実施し、決済事業「PAY.JP」を推し進めていくことを発表した。

こういった各社の動きがある中、木村氏率いるAnyPayは果たしてどのようにしてサービスを拡大していくのだろうか。AnyPayの正式ローンチ時、木村氏はTechCrunchに対して、個人間送金やデビットカードについて興味を持っている旨を語っていた。つまり単純にスマートフォン向けの決済サービスを提供するだけでなく、その先に“新しいお金のやり取り”そのものを考えているということだろう。

木村氏が登壇するのは11月18日午後の予定。ステージでは、AnyPayのこれから、そして決済サービスのこれからについて聞いてみたいと思う。

FinTechスタートアップのカンムがVISAプリペイドカードを発行へ、その意図は?

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CLO(Card Linked Offer)事業を展開するFinTechスタートアップのカンム。同社は7月11日、VISAのプリペイドカード「Vandle」を今夏中にも発行することを明らかにした。クレジットカードの加盟店で利用できるプリペイドカードは、KDDIの「au WALLET」(Master)やLINEの「LINE Pay カード」(JCB)などの登場によってユーザーの認知も高まっている存在。スタートアップがこれを提供する意図はどこにあるのだろうか。

その前にカンムについてご紹介しておこう。同社の設立は2011年。シード期に独立系ベンチャーキャピタルのEast VenturesおよびANRIから、2015年末にアドウェイズ、iSGSインベストメントワークス、フリークアウト、三菱UFJキャピタル、TLMから合計1億2500万円の資金を調達している。

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンムでは2013年からは大手クレジットカード会社のクレディセゾンと提携してCLO事業を展開してきた。CLOとは、クレジットカードの利用履歴をもとに、カード会員の属性に最適な各種の割引情報や優待情報を提供するというもの。現在は大手小売店やEC、保険などの領域のクライアントを中心に取り扱い、送客手数料や送客後の成果報酬によって収益を得ている。カンム代表取締役社長の八巻渉氏によると、すでに事業単体で単月黒字化を達成している状況という。

だが一方で課題もある。提携カード会社と直接契約している加盟店以外はCLOを利用できない(ざっくり言うと、カード決済において、イシュアー(カード発行者)とアクワイアラ(加盟店)が異なる場合は、決済に関する情報の一部を確認できないことがあり、最適なオファーを提案できない)ほか、オファーUIをカスタマイズできない(クレジットカードのオンラインサービス上で固定のバナーを提供する程度)という課題があった。これを解決するためには自らが決済情報を把握でき、かつさまざまな形でカード会員にオファーを提案できるプラットフォームを築く必要がある。これがカンムがプリペイドカード発行に至る経緯だ。

Vandleは、あらかじめ金額をチャージしておけば、VISAのカードが使える店舗・インターネット決済どこでも利用可能なプリペイドカードだ。あらかじめチャージする必要があるため、年齢制限や与信審査も必要ない。専用のアプリをインストールし、会員登録さえすればすぐにカード番号をが付与されてECの決済に利用できる。決済情報はリアルタイムに通知されるほか、今日いくら使ったか? 今週いくら使ったか?といったデータをアプリ上で表示する機能も用意する。

「Vandle」のアプリやその上でのCLOイメージ

「Vandle」のアプリの利用イメージ

アプリ上からはバナー広告を一掃。CLOを用いて、ユーザーが興味あるであろう情報だけを提供するという。具体的には、行ったことある店舗の情報が関連付けて表示される、そのカードが店舗のポイントカードの代わりになるといったようなものになるという。

また、Vandleは企業などが独自ブランドでプリペイドカードを発行することも可能となっている。あくまで例だが、出資するiSGSインベストメントワークスの親会社であるアイスタイルが、「@cosmeプリペイドカード」を発行することだって可能なわけだ。さらに言えば、自社サービス上で提供するポイントと、Vandleを通じた独自プリペイドカードを組み合わせることができれば、ネットとリアル両方で利用できる新たなポイントサービスを生み出し、また裏側では様々な決済データをもとに、より精度の高いCLOを実現できる。どこまでの範囲での話かはさておき、カンムではすでに複数の大手企業との提携を進めているところだという。

カンムではまた、今回の発表に合わせて、決済やマーケティング関連の3つの特許も取得している。今後はCLOで培ってきた決済データ解析の強みを活かして、自社で与信モデルを開発。独自のクレジットカードも発行する予定だという。この新しい与信モデルでは、既存の与信方法ではカードを作れなかった層にもクレジット機能を提供していく予定。

BASE、オンライン決済サービス「PAY.JP」上でID決済の「PAY ID」を開始

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BASEは6月27日、自社で展開するオンライン決済サービス「PAY.JP」にて、ID決済の「PAY ID」の提供を開始した。

ID決済とは、あらかじめID情報と紐付くクレジットカード情報を登録しておけば、IDだけでスムーズにオンライン決済が可能なサービス。国内ではPayPalやLINE Pay、Yahoo!ウォレットや楽天ID決済、Amazonログイン&ペイメントなどの他、モバイルキャリア各社が同様のサービスを提供している。PAY IDでは複数のクレジットカードを登録可能で、目的によってカードを使い分けることができる。

BASEでは、ECサイトプラットフォームの「BASE」を展開。現在では個人や法人、行政機関などが合計20万店舗のECサイトを開設しているが、ここにPAY ID決済を順次導入する。ローンチしたばかりのID決済サービスではあるが、最初から20万店舗の加盟店舗持つことになる。なお、BASEのスマホアプリ(iOSおよびAndroid)でもPAY IDによる決済が可能だ。

「BASEで利用できるID決済だが、『BASE PAY』というブランドではなく、『PAY.JP』という決済サービスのブランドで展開することにはこだわった」——BASE代表取締役の鶴岡裕太氏はこう語る。

例えば大手のプラットフォーマーがID決済を提供する場合、そこで狙うのはユーザーの決済簡略化だけではない。IDと結びついた購買データを取得することで、ユーザーに最適な購買施策を行うことも重要になるのだ。だがPAY IDで狙うのは、あくまで質量を持った「現金」をリプレイスしうるプラットフォームを拡大するということなのだそうだ。PAY.JPはBASEが2015年に買収したサービスだが、その際にも鶴岡氏は「個人の与信をもとに、価値と価値の交換をなめらかにする」と話していた。

 

BASEがオンライン決済サービス「PAY.JP」を開始、EC事業者をメインターゲットに

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

ネットショップ開設サービス「BASE」を提供するBASE。同社は今年の2月、オンライン決済サービス「Pureca」を開発するピュレカを買収し、自社で決済事業を行う発表していた。当初今春にもリリース予定としていたそのサービスがいよいよスタートした。同社は9月7日、決済サービス「PAY.JP」を公開した。

PAY.JPは、ウェブサイトやネットショップがクレジットカード決済機能を無料で簡単に導入できる開発者向けのサービス。審査の後、サイト上にコードを加えることで導入が可能。

世界でサービスを展開する米PayPalや今秋にも日本で正式にサービスを開始する予定のStripeのほかGMOペイメントゲートウェイをはじめとする国内の大手事業者、さらにはメタップスのSpikeなどがいる領域だが、PAY.JPのウリはサービスの使いやすさ、審査の速さ、導入の手軽さなどだという。初期費用および月額手数料は無料。決済手数料はVISAおよびMasterCardが3.0%、AMEX、JCB、Diners Club、Discover Cardは3.6%。2016年5月末までにサービスを導入した個人および法人を対象にした決済手数料無料キャンペーンも実施する。2月の発表以降、ウェブサービスを中心にしてすでに2000店舗の申し込みがあった。

PAY.JPのトップページ

PAY.JPのトップページ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏は、立ち上げたときから一貫してBASEについて「(ITリテラシーが低いという意味で)お母さんでも使えるサービス」をコンセプトにしていると語っていた。BASEのショップ開設数は2年半で17万店舗。現在も毎月1万件ペースで店舗が増えているという。この成長はそれはそれですごいと思うが、決済は「BASEというプラットフォームの規模に適さない(より大きな)ウェブサービスをやっていく人に向けて提供するサービス」なのだそう。「BASEはネットもままならない人に『商売』のサービスを提供するというものだが、PAYではよりモノを簡単に買えるようにする。ずっとやりたかったサービス」(鶴岡氏)

鶴岡氏いわく、Stripeは自らもプログラムに参加していたY Combinator発のスタートアップが手がけるサービスをはじめとして、ウェブサービスでの決済で成長してきた。しかし日本ではスタートアップが手がけるウェブサービスの課金というのは米国ほど大きいとも言えない。さらには既存の決済事業者も居る状況。そういう状況もあって、PAY.JPでは当面はウェブサービスよりはECの事業者をターゲットにするという。「大手事業者のクライアントを(PAY.JPに)ひっくり返していくのでなく、例えば5年後に『ZOZOTOWN』のように成長しているような新興ECサイトへの導入をいかにできるか。料率だけでもPAY.JPはいいと思うが、料率だけならば(競合と)たたき合おうと思えばたたき合える。どうユーザーをサポートしていくかが重要」(鶴岡氏)

PAY.JPの事業は2〜3年後の黒字化を目指す。同社はBASE事業の売上について詳細を公開していないが、「BASEも売上を意識するフェーズになってきた。PAY.JPは当面コストがかかるので、それを支えるサービスにしたい」(鶴岡氏)としている。

カード決済だけやるのではなく、金融システムを作りたい—メタップスが電子マネーを提供する理由

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2月に43億円の資金調達を実施し、人工知能によるデータ解析を元にしたアプリの分析・広告配信事業を展開しているメタップス。今では広告のほかに宇宙やロボット、オンライン決済などの事業を展開している。

そのオンライン決済プラットフォームである「SPIKE(スパイク)」に関するアップデートがあった。メタップスは6月2日、SPIKE上でプリペイド型電子マネー「SPIKEコイン」の提供を開始したことを発表した。

SPIKEは、ウェブサイトにリンクを設置するだけで利用できるオンライン決済サービス。月額100万円までの決済であれば無料で利用することができる。2014年3月にクローズドベータを開始。同年4月から一般公開をしている。

SPIKEコインはそのSPIKEユーザー向けの電子マネーとなる。大きな特徴は、毎年保有額の1%の電子マネーをユーザーに付与すること。また、SPIKEで決済した金額の最大5%の電子マネーが付与されるという。

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カード決済をしたいのではなく金融のシステムを作りたい

さてここまでが昨日発表されたリリースの内容。それではなぜメタップスが電子マネーを提供するのか? 代表取締役の佐藤航陽氏に聞いたところ、「そもそもSPIKE自体、決済だけをやりたかったのではない。金融のシステムを作りたかった」という答えが返ってきた。

SPIKEを立ち上げた際にも、「現在の『お金』が作り出した世界全体の矛盾を解消するのが目的」「通貨や経済システムも競争にさらされたほうが切磋琢磨してより健全になると考えていた」と語っていた佐藤氏。決済サービスは、そんな世界を実現するための第一歩だったのだという。「ポイント・電子マネーは加盟店が大事。まずはカード決済でその面を取れないか考えた。加盟店も増え、そろそろ(SPIKEコインの提供に向けて)いい時期になった」(佐藤氏)

メタップスがSPIKEで考えている金融のシステムだが、楽天の掲げる「楽天経済圏」のようなモノを作ることが当面の目標のようだ。加盟店の決済をおさえ、ポイントで顧客を囲い込みをする。顧客は共通のIDで、さまざまなサービスを利用していくというものだ。

とはいえ、SPIKEコインを提供する理由はそんな構想をぶち上げるためだけではない。SPIKEコインの流通によって、決済手数料が削減できるというメリットがあるという。通常カード決済を行うのであれば、トランザクションごとにカード会社の手数料がかかる。しかしそれがポイントに置き換われば同社のサーバ上での処理で済むため手数料がかからなくなる。

またメタップスでは、SPIKEコインで商品を購入したり、商品購入時にSPIKEコインが付与される「SIPKEマーケット」も立ち上げている。現状では商品数が20点もなくて寂しい状況なのだが、今後は希望があればSPIKE加盟店の商品も販売していく予定だ。「集客に困っている店舗もいる。店舗が希望すればその支援もしていきたい」(佐藤氏)

見落とされているApple Payの本当の価値

編集部注この原稿は濱崎健吾氏(@hmsk)による寄稿である。濱崎氏は開発者向けクレジットカード決済サービスを提供する「WebPay」の開発者。WebPayは2015年2月にLINEの子会社であるLINE Payに買収されている

SuicaやEdy、WAONなどICカード、あるいはケータイやスマホのおサイフケータイで当たり前のように決済をしている日本人の私たちにとっては、2014年9月のWWDCでのApple Payの発表は拍子抜けだったかもしれない。また新たなNFCを使った決済の1つにすぎない、おサイフケータイと何が違うのか――、そうした記事を多く見かけた。

ネット決済が革新的に変わる

確かにiPhoneのおサイフケータイ対応が発表されたわけでもないから、日本市場から見ると特におもしろみがないように見える。

しかし、Apple Payには見落とされている大きな価値があると私は考えている。それはオンラインの非対面決済にある。レジ打ちの現場での対面決済ではなく、むしろ非対面の決済こそがApple Payの最大の活用の場となり、オンライン決済、ネット上の決済が革新的に変わっていくだろうと思う。そして、これは日本市場にとっても重要な意味を持つ。こういう問いを考えてみてほしい。「SuicaでECサイトの買い物ができますか?」と。

この記事では改めてApple Payの発表を振り返りながら、そこで多くの人が見逃していただろう重要なポイントを説明したい。

ティム・クックが唯一、甲高い声でアピールした点

Apple Payの発表はあっさりしたものだった。iPhone6/6 plusと、Apple Watchを前後に置いたApple Payの初お披露目の中、洋服屋のレジでの短い動画の後にティム・クックが”That’s it!”と声をあげた。短いのでもう一度と同じ動画を流して“It is so cool!”とレジでの決済の体験を革新するかのような紹介をしていた。

ティムが発表の中であんなに甲高い声を出したのはここだけだったので、ここがApple Payの最も本質となる部分であると誰もが認識したことだろう。

加えて、技術的には指紋認証とNFC、Secure Elementと呼ばれるチップ内にカードの代替となる情報を保存するのでセキュアであり、さらにSDK (API)も公開し誰もが自分のアプリケーションに組み込めることにも触れた。

また、AppleはApple Payによる一切の取引に感知しないので、山ほどいるiPhoneオーナーの動向を観察することもないという点も強調していた。

さらに、様々な発行会社のカードがPassbookに結び付けられるようになり、様々な店舗で使えるようになると、その数を強調し、いつものWWDCらしく開場に拍手を呼び起こしたところでApple Watchへの話題へと移り変わっていった(直近の2015年3月9日の発表会でもApple Watchを使った決済体験の様子も含め、その数の増加を印象づけるように語っていた)。

「新しいいい感じの対面の決済方法が出るからよろしくね」とでも言っているのだと、聴衆は受け取っていることだろう。

直後にウォールマートをはじめ、店舗での決済にApple Payを使えないようにし、独自の決済方法をユーザーに提案するという動きもあり、世の注目はさらに対面の決済の方を向いていってしまった。

しかし、筆者はじめ決済に関わる人間の受け止め方は違った。われわれには少しだけ裏側が分かっているため、恐ろしいことに気がつくのである。それは、セキュリティとAppleの関与の仕方だ。

長らく決定打のなかったカードのセキュリティ

ウェブ上で誰もがクレジットカードで決済を行うようになって久しいが、決済の世界にとってセキュリティは常に重要な課題だ。15、6桁のカード番号と4桁の有効期限、3、4桁のCVC(セキュリティコード)だけの情報で誰もがネット上で決済を行えてしまう。これだけの数字群では別にどこかの会社のミスでカード情報が漏洩しなくても、もともと漏洩しているようなものだ。50年を越える歴史がありながら、とティムも嘆いていた。

購入者にとってはカードの不正利用に遭遇することは滅多にないかもしれないし、カードホルダーは常に守られる側にあるので、大したことではないと思われるかもしれない。しかし、不正利用による損害というのは、カード会社、もしくは販売者が常にその損害額を被る形となっている。その被害総額は、実に100億円近くにものぼっている。(日本クレジットカード協会による調査)。

年々減少傾向にはあるものの、今もカード会社と不正利用の戦いは続いていて、いくつかセキュリティを高める手段がある。

アメリカでは主にカードに結びつけているカードホルダーの住所(Billing Addressと呼ぶ)を、日本やヨーロッパでは3Dセキュアというカード会社や決済代行業者が準備する別サイトに遷移してパスワードによる認証をするといった追加の手段はある。しかし、Billing Addressは入力項目が増える上、他者が知り得る情報であり大してセキュアにもなっていない。3Dセキュアはたまにしか使わないパスワードを要求されるため、これは決済を利用する事業者にしてみれば無視できない離脱ポイントとなってしまう。何故、善良な購入者が不正利用回避のために手間を負わねばならないのか。こうしたことから、クレジットカード決済の世界では数字だけによる決済の不正利用を防ぐ決定打がない状態が続いている。

そこに現れたのがApple Payだ。Apple Payは、本物のクレジットカードの情報を保存しない。カード情報の代わりにトークンを使用する。しかもその代替するトークンでさえ丁重に守るという強固な仕組みとなっている。その上、指紋による認証とiPhoneが揃っている前提で行われる決済なので、これは今までと違う次元で本人確認が行われているということでもある。購入者の負担が減って、セキュアになっているというのは、この問題がずっと解決されていなかったことを考えると魔法と言っても過言ではない。

そして、実はカード情報を代替するトークンの仕組みはApple独自のものではない。

Apple Payでは Visa,、MasterCard、 American Expressのカードが使えるとロゴが見せられていたが、元々それぞれのカードブランドが展開を準備していたセキュリティ向上のための施策なのである。

加えて、本来その代替トークンはクレジットカードのICチップに埋められ(厳密にはカードのICチップに埋められている情報とApple Payで用いられるトークンは異なるものである)、レジの端末にかざしたり、挿し込んだりすることで決済が可能になるものだったのだ。つまり、Apple Payによる決済を受け付ける端末は既にカードブランドが準備していたものを使うのだ。

カードブランドはApple Payの普及とともに、自ら準備していた端末が世に広がり不正利用の抑制が実現され、自分たちが準備してきた仕組み以上に不正利用に強い決済方法が利用されるのだから、泣いて喜ぶに決まっている。

Appleが決済を感知しないこと

Appleは決済のトランザクションについて感知しないことを平然と述べていたが、決済業界からすると、これはわけが分からない。誰が決済の処理を行うのか。

カード決済が行われる仕組みは複雑すぎて、また別の記事が書けてしまうボリュームなので割愛するが(手前味噌だが弊社ブログの記事を参照されたい )、カード決済を行うには、カード会社へ決済のリクエストを送り、購入者ともやり取りを行い、販売の管理を行う「販売者」というポジションが必要になる。

しかし、Appleが決済を感知しないとなると、彼らは販売者や決済代行業者になるつもりがないということを示す。順当に行くと、アプリケーションに組み込むお店や開発者がその役割を担うことになるのだが、それぞれが独自にカード会社と接続して決済機能を準備するとは考えにくい。

発表の中でこれは触れられなかったが、誰がカード決済を行うのかという問いに対する答えは、開発者向けのApple Payのドキュメントページのトップに行って知ることになる。Appleはこの部分の処理を、Stripeをはじめとする決済代行業者に譲っていたのである。

つまり、AppleはApple Payという仕組みを提供するが、その仕組みを使った決済の世話は他社に全部任せてしまうということだ。

逆にStripeをはじめとした決済代行業者は、これまで抱えてきた分はもちろん全てのユーザーにApple Payによる決済という選択肢を提供できるようになった。素晴らしい決済方法がいくらかの開発で自分のサービスを更に良くしてくれるのだから喜ぶほかない。筆者が開発、運営に携わっているWebPayでも技術的な検証は終えており、日本でクレジットカードがPassbookに結び付けられたのなら、すぐにでもユーザーに提供していただろう。

ちなみに現状のIn App Purchase(アプリ内課金)やApp Storeでの決済はAppleが販売者として決済代行業者を通しているかは定かではないが、どこかのカード会社や銀行に接続して決済を行っている、ということも付け加えておこう。

突如、決済業界にデビューして独自のポジションを築いたApple

こうしてAppleはウェブの決済において、カードブランド、カード会社、決済代行業者、販売者、購入者の全てに喜ばれる仕組みを生み出し、突然決済業界に独自のポジションを築くことになった。

Appleはカードブランドが販売者から徴収しているフィーの一部を、カード会社とシェアしているという噂もある。これが事実なら、Appleは誰もが喜びスケールしていくApple Payの普及によって淡々と儲けられることになる。

セキュリティを中心に決済におけるユーザー体験も向上したこの仕組みは、今はまだiOS向けアプリに留まるが、いずれウェブ上では当然の選択肢となるだろう。もしかしたらラップトップでの決済を手元のiPhoneで行う、なんてことが実現しているかもしれない。ラップトップでオンラインショッピングをしているときに、iPhoneで指紋認証をしてPassbookに登録してあるクレジットカードを使って購入する、ということだ。そうなれば、ウェブの便利すぎる決済体験を対面でも行いたくなるだろう。その準備はAppleが発表している通り、山ほどサポートされている店舗のレジで待ち構えてくれている。オンラインで多くの人が使い始めたApple Payは、対面というオフラインの世界にも一気に広がっていくのだろう。


ネットショップ開設サービスのBASEが決済に参入–「PAY.JP」を今春提供

ウェブの知識をあまり持たないユーザーでも、メールアドレスを持っていればネットショップを無料で開設できるサービス「BASE」。同サービスを提供するBASEが、オンライン決済事業を今春から提供する。同社はすでにオンライン決済サービス「Pureca」を開発するピュレカを2014年12月に買収しており、「PAY.JP」の名称で今春にもサービスを開始する。

今夏にはID決済も提供

PAY.JPでは当初、米国のStripe、国内のYahoo!ウォレットFastPayWebPayなどと同様にウェブサイトにコードを埋め込むことで、クレジットカード決済を導入できる決済サービスを提供する。なお、BASEの決済についても今春PAY.JPに変更される予定。PAY.JPの決済手数料などは現時点では公開されていないが、「どこと比較しても分かりやすいもの、選ばれるものにする」(BASE代表取締役の鶴岡裕太氏)ということ。

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

PAY.JPでは、まずはEC事業者向けにカード決済サービスを提供するが、今夏をめどにEC利用者向けのID決済サービスも提供していくという。PayPalなどを利用していると想像できると思うが、PAY.JPの決済サービスを導入するしているECサイト上では、PAY.JPにログインするだけで、(あらかじめ登録しておいたカード番号や住所を使って)決済が可能になるというものだ。

実はBASEの競合サービスであるブラケットの「STORES.jp」は、2014年にIDサービスを導入している。このIDサービスを利用する意味はいくつかあるのだけれども、その1つにSTORES.jp上で商品購入をする際、都度クレジットカード番号や住所を入力することなく決済できる、ということがある。

PAY.JPも同様の機能を提供することになるが、その機能はBASEで作ったショップに閉じたものではなく、PAY.JPの決済サービスを導入するすべてのECサイトに対応するものになる。ただしBASE内のショップに限定して、早期にサービスを導入する予定だ。「BASEは簡単にショップを作ることができるという世界を作ってきたが、PAY.JPでは簡単にモノを買うことができる世界を作っていきたい」(鶴岡氏)

BASEが買収したピュレカは2012年7月の創業。代表取締役の高野謙一氏は決済関連のスタートアップに携わったのちに起業。Purecaは国際セキュリティ基準(PCIDSS)に準拠した決済サービスで、まもなく正式リリースだったそうだが、もともと面識があった鶴岡氏の率いるBASEに合流してサービスを提供するに至ったそうだ。

BASEは「単なるショッピングカート」を目指していない

創業期からこれまで、鶴岡氏は一貫して「単なるショッピングカートを目指していない。決済までをやっていきたい」ということを取材の際に話していた。今回その決済サービスを提供することになったが、今後はどんな目標があるのだろうか。鶴岡氏は「個人の与信情報をためて、個人をスコアリングすることで、価値と価値の交換をなめらかにする。オンラインで行う経済活動のプラットフォームになりたい」と大きな構想を掲げる。

とはいえ、決済はスタートアップにとって非常にハードルの高い事業だと聞く。鶴岡氏も「既存事業者が強いのか、スタートアップの信頼性がまだまだないのか…」とその理由を分析するが、僕も実際に先行する決済関連スタートアップが苦戦している話はよく聞くし、鶴岡氏自身も「なぜ決済をやるのか」と問われることが多いのだそうだ。

だが鶴岡氏はこう語る。「決済は難しい。それは理解しているが、『こういう世界になるよね』と描けるところに挑戦するのが一番楽しい。BASEもサービス開始時点では、決済手数料も含めてまったく利益はなかった。でもここまで来れた。PAY.JPもいろいろ言われるが、まずはやってみないと分かからない。BASEの事業がある程度伸びることが見えたのなら、チャレンジしないと後悔する」

BASEの流通総額は年間数十億円後半に

なおBASEは現在年間の流通総額が数十億円後半、数カ月以内には100億円も見込める数字になる状況だという。店舗数は15万店舗で月間で1万店舗ほど新規ショップも増加している、現在カードの決済手数料のみをユーザーから取っているが、「リッチな機能を提供して課金するなど、収益化しようと思えばできるフェーズにまできている」(鶴岡氏)。


街でApple Payを試してみた

AppleがiOS 8.1をリリースした。これよりiPhone 6および6 PlusでApple Payが利用できるようになった。近くの店舗にでかけて、実際にAppleのNFCを利用したモバイルでの支払いシステムを試してみることとした。出かけたのはWalgreensとMcDonaldだ。

6 PlusでApple Payが使えるようにする準備には1分もかからない。Passbookアプリケーションを開いて「Add」ボタンをタップする。そしてiOS 8.1になって登場した「Credit / Debit Card」メニューを選ぶ。そこにカード番号や有効期限、そしてセキュリティコードを入力する。カード情報についてはカメラを使って情報をスキャンさせる方法もあり、実際にはこちらの方法を試してみた。スキャンにかかる時間は1秒ほどで、あとはカード裏面にあるセキュリティコードを入力してセットアップは完了だ。ちなみにApple Payを使う際にPassbookを開く必要はない。上のビデオではPassbookを開いているが、これは動作の様子を見るためにやってみたことだ。

Walgreensでの買い物についていえば、Apple Payを使う時間よりも、商品を選ぶ方に時間がかかってしまった。支払い準備が整ったら、iPhoneを支払い端末にかざし、Touch IDを親指(他の指で登録したのならもちろんその指)でタップして完了だ。

支払い端末で支払いをするのには、WalgreensでもMcDonaldでも1秒足らずしかかからない。但し、これが支払いシーンを全く変えてしまうというわけでもない。ドラッグストアでの買い物をしたときには、やはりサインを求められる。またファストフード店でオーダーした品物を受け取る際には、支払い時に受け取ったレシートを見せる必要がある。

試してみた2店舗では、店員の方もApple Payについては知っていて、戸惑うようなことはなかった。もちろんそうした店ばかりではないという話も耳にした。しかしApple Pay対応の店舗では、徐々に従業員も仕組みに慣れていくことだろう。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


iWatchにNFCが組み込まれるなら支払だけでなくすべてのAppleデバイスのハブとなる

Wall Street Journalの記事によると、AppleはいわゆるiWatchにNFC(近距離無線通信)を組み込み、支払いデバイスにするかもしれないということだ。しかしNFCのiWatch(とiPhone 6)への組み込みが事実とすれば、単に支払いだけでなく、消費者に「これなら欲しい」と思わせるような多くの便利な機能への扉が開かれるはずだ。

WSJの記事は、来週のイベントで発表が噂されている時計タイプのウェアラブルデバイスにNFCが組み込まれるなら、それはAppleが支払サービスに本格的に参入を開始することを意味すると推測している。業界ではAppleは遅かれ早かれ、その膨大なiTunes Storeアカウントをデジタル・コンテンツの販売以外に利用することになると見てきた。iWatchに支払機能が組み込まれるというのは当然すぎる方向だろう。

またiWatchには2種類のサイズが用意され、曲面ディスプレイとヘルス関連の多数のセンサーが内蔵されるものと見られているが、New York Timesの記事によれば、iWatchに装備される歩数計、心拍計はこれまで市場に出回っている同種の製品よりはるかに精度が高いという。またフレキシブル・ディスプレイとワイヤレス充電機能が備えられるとも観測している。

その他多くの報道もNFCなどiWatchの基本的な機能に関してはほぼ一致している。私は当初、Appleが支払サービスに参入する理由を理解するのに苦しんだ。しかしNFCと支払機能がiPhoneだけでなくウェアラブルデバイスにも組み込まれるということになれば、なるほどきわめて強力なセールスポイントになる。

iWatchがNFCでMacとiOSデバイスと通信して、ユーザー認証を行ってくれれば、いちいちパスワードを手で入力する必要がなくなる。これだけでもユーザー体験の画期的な進歩だ。これまでにもBionym Nymiなどの専用認証デバイスは存在したが、Appleならこれを実用的な多機能ウェアラブルデバイスとして実現できる。iWatchによってユーザー体験がスムーズ化されるのは店舗での支払だけでなく、(iOS 8のHomeKit機能を通じた)iOSデバイスのコントロール、さらにはPassBookを利用したポイントカード入力や切符、チケットの購入まで幅広い。

Android Wearを利用したスマートウォッチが次々に市場に出ている中、iWatchが基本的にそれと同じ機能なのであれば(iPhoneと連携できるにせよ)さほどの魅力はない。 スマートウォッチが本当にマスマーケットに普及するためには、すべての普及しつつあるスマートホームデバイスも含めたすべてのデバイスのコンパニオンとして利用できるような機能を備えていなければならない。現在市場に出ているウェアラブルデバイスは程度の差こそあれ、いずれもあまり使いやすいとはいない。もしAppleがあらゆるAppleデバイスをコントロールできる機能をこれまでのプロダクトのようにシンプルなユーザー体験で提供できるなら、ウェアラブル市場の勝者となることは容易だろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


レストラン予約サービスのポケットコンシェルジュ、Uberライクなスマート決済を実現

12億ドルの超大型調達をはじめとして、最近何かと話題に上がる「Uber」。そのビジネスの話は置いておいて、実際にユーザーとして使ってみると分かることがある。降車の際にいちいち財布からお金を出して会計しなくとも、そのまま車を出て、あらかじめ登録しておいたクレジットカードで自動で決済できるという快適さだ。僕もまだ2度ほどしか使っていないが、想像以上に使い心地がいい。

そんな快適な経験をレストランでも味わえるようになるのが、ポケットメニューが手がけるレストラン予約サービス「ポケットコンシェルジュ」の新機能「ポケットエクスペリエンス」だ。

ポケットコンシェルジュは、会食や接待などにも使える厳選されたレストランを予約できるサービスだ。現在は東京を中心に150店舗ほどのレストランが登録されており、客単価は1万3000円程度。1年前の時点では高所得者層を中心に約1万人が利用していると話していたが、現在のユーザー数に関しては詳細は公開していない。

実際僕も利用したことがあるが、通常紹介がないと入れないようなところも含めて、ポケットコンシェルジュでないとオンライン予約できないようなレストランが中心となってラインアップされている。店舗数こそまだ少ないがそのグレードは既存のレストラン予約サービスとは一線を画している。また、会食での利用を想定していることもあって、レストランへの要望や利用用途なども登録できるようになっている。

今回発表されたポケットエクスペリエンスだが、あらかじめクレジットカードを登録して、予約の際にカードでの支払いを選択しておけば、当日レストランで会計をすることなく、自動でカード決済されるというもの。会計の内容は会計後にメールで送信される。ユーザーのサービス利用は無料。ポケットメニューは店舗側への手数料と、カード会社への手数料の差額で収益を上げるモデルとなる。

お酒の追加などで金額が変わることもあるため、基本的にはコース料理とペアリング(コースのひと皿ごとに合ったお酒を提供する)、コース料理とドリンク1杯のセットといったようなパッケージを店舗が用意し、追加注文については加算して決済するという仕組みにする。1ユーザーが登録できるカードは5枚となっており、法人カードと個人カードを登録して使い分けることもできる。

店舗にも大きなメリット

このポケットエクスペリエンス、ユーザーにとっては会食での話の腰を折らずにスムーズな会計を実現できるというメリットがすぐに想像できると思うが(デートなどでおごる際にも有効ではないかという話も出たが)、実はそれ以上に大きいのは店舗側のメリットだそうだ。

ポケットメニュー代表取締役社長の戸門慶氏は6年間板前として修業をしたのち、飲食店のコンサルティングを手がけていた人物。同氏の話によると、実は会計のたびにスタッフが伝票を取ってレジに移動して…という作業はいつ発生するか分からず、なかなか面倒なモノだそうだ。それがポケットコンシェルジュの管理画面1つで、しかも多少の時間差はあっても処理できるようになるのは、ユーザー以上にありがたい話なのだそうだ。

現時点でポケットエクスペリエンスに対応するのは全レストランのうち15店舗ほど。同社ではこれを月内にも30店舗程度まで拡大し、最終的には全店舗への導入を目指すとしている。またこれにあわせて、7月末にもポケットコンシェルジュの有料会員モデルをやめ、無料利用、決済手数料でのマネタイズというビジネスモデルに移行するとしている。今秋にはスマートフォンアプリも提供予定だ。


手数料無料の決済サービス「SPIKE」、いよいよオープンベータ版を公開

2013年にメタップスが発表した手数料無料の決済サービス「SPIKE」が本格始動する。4月14日より日本でオープンベータ版の利用が可能になる。

SPIKEはクレジットカード決済機能のついたリンクを作成することで、手軽に決済を実現できるサービス。同様のサービスには米国では「Stripe」、国内では「WebPay」やヤフーの「Yahoo!ウォレットFastPay」などがある。

無料と有料の2つのプランを用意する。個人事業主や小規模事業者向けの「フリープラン」は、初期費用、月額費用、決済手数料が無料。月間100万円までの決済が利用できる。今後は月間の決済上限額を引き上げていき、最終的に完全無料での提供を目指すという。

中規模事業者向けの「ビジネスプレミアム」は月額3000円。月間1000万円までの決済については手数料が無料となっており、月間1000万円を超える部分に関しては2.5%の決済手数料と30円のトランザクションフィーで利用できるという。また今後は、開発者向けにAPIの提供も予定する。

なお現在はオープンベータ版につき、「フリープラン」のみの提供になるほか、決済に対応するのは日本円とUSドルのみとのこと。今後は対応する通貨も拡大する。2016年に年間2兆円の決済額を目指す。

当初は「昨年夏以降に公開予定」としていた同サービスだが、特許やリスクマネジメントへの対応・仕組みの構築と、各国でのサービス提供のためのレギュレーションや法律上の調整などにかなり時間がかかったという。メタップス代表取締役の佐藤航陽氏によると、「世界中で使われるサービスの提供をしたいと考えていた」とのことで、米国、欧州、日本など主要先進国でリリースに向けた事前の準備に相当時間をかけていたそうだ。

フリーミアムモデルでスモールビジネスの無料化を実現

サービスの発表当初から言われていた「完全無料」のサービスは、現在発表されている限りはいわゆるフリーミアムモデルとなる。メタップスではSPIKEによって「カード決済を導入できなかったスモールビジネスを支援する」としているが、継続可能なビジネスとして、どうやって無料化を実現するのだろうか。

佐藤氏は「決済のトランザクションは、上位1割が全体の9割のボリュームを稼ぎ、その他9割が1割のボリュームを稼ぐ非対称性を持つケースが多い」と説明する。SPIKEでは、今後開始する予定のビジネスプレミアムでその“上位1割”からフィーを得るほか、そこから派生する付加価値の提供によって無料サービスを進めていくという。「そこから派生する付加価値」については詳細が明らかにされなかったが、国内ではベリトランスやカンムなどが決済データを利用したマーケティングサービスを展開しているが(詳細はこちらの記事を参考頂きたい)、そういったサービスも予定されているのかもしれない。

メタップスはアプリのリワード広告事業を手がけるスタートアップ。スタートアップとは言っても2007年創業で当初はコミュニティサービスを運営していた。その経緯についてはこちらの記事に詳しい。最近ではLINEのリワード広告「LINEフリーコイン」の販売パートナーとなっている。

実はこのサービス、メタップスのシンガポール法人からのリリースとなる。アジアでは、国によってはカード決済がまだ主流となっていないケースも少なくない。メタップスでは今後、カード決済以外のモバイル決済の展開も視野に入れているとのことで、サービスの拠点にシンガポールを選んだという。実はメタップスのアプリ広告事業も、もともとシンガポールからアジア全土に展開していったそうで、そのノウハウも生かしたいとしている。

アジアの決済領域というと、たとえばGMOベンチャーパートナーズなどもアジア特化のファンド「GMO Global Payment Fund」を設立して、モバイル決済サービスを展開するアジア企業に出資していたりする。余談にはなるが、先日その理由について現在シンガポールに拠点を置くGMO-VPの取締役 Founding Partnerの村松竜氏に尋ねたところ、「日本人であればカード決済が主流になっていなければ『どうカード決済を拡大させるか』と考える。だが現地で生活してみれば、モバイル決済でも、ATM決済でも、『利用されている決済サービスをどう拡大するか』と考えるようになる」と語っていたのが印象的だった。このあたりはまた別の機会に紹介したい。

現在の「お金」の矛盾を解消したい

話をメタップスに戻すが、僕は佐藤氏が1月に書いたブログエントリー「グローバル化とインターネットのその先にある世界:あらゆる境界線が見直される10年間」を読んで、これまで自分で取材してきた企業、サービスがどのように世界を変えていく可能性があるのか、ということを考える際のヒントをもらった気がしていた。

ブログ内で「テクノロジーが境界線を引き直す」「『営利と非営利』ではなく『価値』がとらえられる社会になる」といった持論を展開していた佐藤氏が、そもそもなぜ手数料無料の決済サービスを開始したのか。「会社の代表者としては、現在の経営資源を活用して大きく成長できそうな分野だと感じたから」とした上で、佐藤氏は次のように答えてくれた。

「創業者のエゴとして言えば、現在の『お金』が作り出した世界全体の矛盾を解消するのが人生の目的。私は、通貨や経済システムも競争にさらされたほうが切磋琢磨してより健全になると考えていた。独占が起こると進化が止まってしまうので、経済の根底の仕組みそのものをテクノロジーで民主化できる方法を探していて、SPIKEはその仮設が正しいかを実世界で実証するための試み。現実世界の経済と仮想世界の経済の接合点である「決済」は最初におさえておきたかった」(佐藤氏)。以前のブログでも、その詳細が語られている。

 


ジャック・ドーシーのSquareがメール送金サービス、Square Cashを開始―現在は招待のみ

Squareはビジネス・ユーザーだけでなく、個人もターゲットにするつもりのようだ。このほど「招待オンリー」で“Square Cashというサービスが登場した。まだ詳しいことはわかっていないが、われわれはSquareにコメントを求めている。

アップデート: Squareの担当者からSquare Cashについて次のような回答があった。「Square Cashの公開を始めることができてうれしく思っています。この数週間でさらに多くのユーザーを招待する予定です」

派手なアニメのスプラッシュ・ページにはメールのCCにpay@square.comを入れて、タイトルに$25と記入することで友だちと飲んだときの割り勘の金を支払うという例が表示されている。

いまのところ、これはデモに過ぎないが、近くこの送金機能がSquareのネーティブ・アプリに組み込まれるのだと予想してもいいだろう。.

こうした個人向けのメールによる送金サービスはVenmoやPayPalがすでに提供している。Googleも最近、GmailとGoogle Walletを利用した送金サービスを計画している。Visaでさえ以前そういう計画を持っていた。しかし、メールによる個人間送金は誰もが望むサービスであるにもかかわらず、まだ誰も本格的には実現していない。Squareのような有力な支払いサービスがこの分野に参入しようと考えるのは当然だろう。

デモ・ページによれば、相手がSquareにユーザー登録していない場合でも受け取り人のデビット・カード口座への振込という形で送金ができるという。初めて送金を受けたユーザーは通知されたリンクを辿ってデビット・カードをSquareに登録する。これは新たなSquareユーザーを獲得するのに大いに役立つだろう。

現在、招待は厳密にSquare側の選択によって行われており、ユーザーはメールアドレスを入力することもできない。別途設けられているヘルプ・ページによると、送金1回ごとに50セントの手数料が送金者に課金される。送金者には1回ごとに明細書が発行される。

Squareは最近ビジネス・ユーザー向けにフル機能の新しいiPadキャッシュ・レジスターをリリースしたばかりだ。しかしSquareは個人のポケットから出入りする金の処理も獲得しようとしているのは間違いない。

ファウンダー、CEOのジャック・ドーシーが最近TwitterとVineを利用して謎めいた投稿をしているが、ひょっとしてこの「ちょっとしたお祝い」はSquare Cashに関係があったのかもしれない。

われわれのところに招待が届いたらさらに詳しいレポートをお送りする予定だ。しかし招待はまずSquareとTwitterの関係者が優先されるようだ。