アドビがウェブ版AcrobatにPDF内のテキストと画像を編集する機能を追加

Acrobat(アクロバット)は長年、PDFを扱うための、特に編集するための、Adobe(アドビ)の主力デスクトップアプリだった。近年、AdobeはAcrobatをウェブ上で使えるようにしたが、デスクトップ版ほど機能が充実していたわけではなく、多くのユーザーが求めていた機能の1つであるPDF内のテキストや画像の編集機能は、デスクトップ専用の機能のままだった。それが変わりつつある。Adobeは、ウェブ版Acrobatの最新のアップデートで、まさにこの機能をオンラインサービスに導入した。

「ブラウザを使って仕事をする人が増えてきているので、(Acrobat Webは)戦略的に重要です」と、Adobeのドキュメントクラウド担当副社長であるTodd Gerber(トッド・ガーバー)氏は語る。「彼らの1日は、G Suiteであれ、Microsoft Office 365であれ、ログインすることから始まります。ですから、私たちは人々が仕事をしているすべての面に係わりたいと考えています」。チームは最初にPDFを作成して変換する機能を導入したが、ガーバー氏が指摘するように、ある程度のパフォーマンスでリアルタイムにPDFを編集できるようになるまでには時間を要した。「もっと早く導入することはできたかもしれませんが、高速、軽快、高品質という基準には達していなかったでしょう」。この機能をオンラインで利用可能にする上で、チームが直面した困難な問題の1つは、フォントを扱うことだったと、ガーバー氏は特に言及している。

人々はPDFをAdobeのフォーマットと考えがちだが、PDFはオープンスタンダードであり、多くのサードパーティツールがPDFを作成できることもガーバー氏は指摘した。このような大規模なエコシステムでは、実装間でばらつきが生じる可能性があるため、Adobeにとって編集機能を備えることがより難しくなるということだ。

今回の発表にともない、Adobeは新たにブラウザベースで利用できる機能として、PDFを保護する機能、2つに分割する機能、複数のPDFを結合する機能も追加する。Adobeは2020年に、Google(グーグル)と協力して、同社が提供するショートカットドメイン「.new」を使ったいくつかのショートカットの提供を始めたが、現在はさらに「EditPDF.new」のような新しいショートカットも使用可能になる。Adobeは2022年に向けて、これらのショートカットをさらに導入していく予定だという。

Adobeによれば、既存のショートカットを合計すると、約1000万回のクリック数を記録したとのこと。それだけ多くの人が毎日PDFを変換したり署名を入れたりしているということだ。

ガーバー氏が指摘するように、潜在的なユーザーの多くは必ずしも最初にAcrobatを使おうと考えるわけではない。彼らがやりたいことはPDFを圧縮したり、変換したりすることなのだ。Acrobat Webと .new ドメインは、新たなユーザーを同社のプラットフォームに呼び込むのに役立っていると、ガーバー氏は考えている。

「これによって、最初はAdobe製品を使うことを考えていなかった新しいユーザーを開拓することができます。彼らはPDFについて考え、それを使って何をする必要があるのかをということを考えています。彼らが探しているものを見つけて、最終的に処理を行うまでの間に関係性を築くことで、我々は顧客基盤を拡大することができるのです。Acrobat Webの展開は、実はこの考えから始まりました。ブランドを特定しないニーズを狙おう、ということです。

Adobeはもちろん、ユーザーが明示的にAcrobatを探している場合には、Acrobatデスクトップアプリに誘導するが、よりカジュアルなユーザーには、サービスにサインアップする必要さえなく、目的のアクションを簡単に実行できるAcrobat Webを案内する。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AdobeのドキュメントサービスでデベロッパーはPDFが扱いやすくなる

この1年、Adobe(アドビ)はデベロッパーが自分のアプリでPDFを使うためのツールを、静かに拡張してきた。2020年4月には、現在PDF Embed APIおよびPDF Tools APIと呼ばれている(Adobeブログ)ものを発表し、それと共にAdobe Document Servicesプラットフォームも公開した。狙いは、アプリケーションとワークフローにPDFを組み入れるための使いやすいツールをデベロッパーに提供することにある。米国時間12月16日、同社はMicrosoft(マイクロソフト)と新たな提携を結び、Document Serviceをマイクロソフトのローコードワークフロー自動化プラットフォームであるPower Automateと統合することを発表した。

「このビジョンは1年半ほど前、『自分たちのアプリを便利にしているものをサードパーティーアプリにも提供するというのはどうだろうか』と話したときに始まりました」とアドビのDocument Service担当上級マーケティングディレクターであるVibhor Kapoor(ビブホル・カプール)氏はいう。「Acrobatの機能をマイクロサービスに分解し、APIとしてデベロッパーやパブリッシャーに提供しようというごく単純な発想で、なぜなら、正直なところデベロッパーやパブリッシャーにとってPDFは、よくいっても苦痛だったからです。それでこうしたサービスを公開することになりました」。

開発チームは、PDFをウェブ体験に埋め込む方法を改善することなどに取り組んだ(そしてカプール氏は、これまでのデベロッパー体験は「あくまでも次善の策」であり、ユーザーにとっても直感的な体験とはいえなかった、と率直に語った)。これからはDocument ServiceとEmbed APIを使えば、JavaScriptを数行書くだけでPDFを埋め込める。

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カプール氏は、一連の機能をSDKやAPIで公開することはちょっとした挑戦だったことを認めた。理由は単純で、もともとチームはこうした利用場面を考えたことがなかったからだ。しかし、技術的課題に加えて、これは発想自体を変える問題でもあった。「私たちはこれまでデベロッパー指向の製品を提供したことがなく、それはデベロッパーを理解し、これらのAPIをどうやってパッケージにして公開するかを考えるチームを作らなければならないことを意味していました」。

新たなPower Automateとの統合によって、PDFを中心とした20以上の操作がPDF Tools APIからマイクロソフトのプラットフォームで利用できるようになる。その結果ユーザーは、たとえばOneDriveフォルダーにある文書からPDFを作ったり、画像をPDFに変換したり、PDFにOCRを適用したりできる。

アドビがこのプラットフォームを公開して以来、約6000のデベロッパーが利用していて、カプール氏によると、使われているAPIコールの回数は「著しく増加」している。ビジネス面では、Power Automateの追加が、新たなデベロッパーを呼び込む新たな経路になることは間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook