犀角を人工合成したPembientの協同ファウンダGeorge Bonaciが動物の器官の3Dプリントについて語る

動物の遺伝学的に本物と同一の器官を作るPembientは、本誌が取り上げて以降、人気と話題が爆発した。ファウンダのところには次々とリクエストやツイートが殺到し、先月のローンチ以降しばらくは、Redditのいくつかのスレッドでトップの話題だった。

人気の源泉は、野生動物の不法交易をやめさせようとする同社の高邁な目標にあった。数種類の犀が絶滅の危機に瀕しているが、それは角(つの)に治療効果があると信ずる人たちからのお金儲けをねらった密猟に原因がある。密猟された犀は、角だけを取られて、死体は放置される。

Pembientは3Dプリントと遺伝子配列技術を利用して、犀角や象牙など、絶滅危惧動物の器官を短時間で合成し、一般市場で安く売ろうとしている

同社は動物の器官を人工合成するだけでなく、最近では非営利団体New Harvestと、ワシントン大学のInstitute for Stem Cell and Regenerative Medicine(ISCRM)とパートナーして、Experiment.comで黒犀の全遺伝子配列を求めるための、クラウドファンディングキャンペーンを開始した。

西部黒犀は今では公式に絶滅しており、世界に残る黒犀の個体数はわずかに5000頭あまり、と言われている。遺伝子配列事業によって、将来、種が復活するかもしれない。

キャンペーンは締め切りが迫っているが、まだ目標額までは5000ドルあまり足りない。志(こころざし)のある方は、ぜひこちらで寄付を。

Pembientは全体として本当にクリエイティブな仕事を成し遂げ、バイオテクの分野と、それを超えた世界に、強い感銘を与えた。協同ファウンダGeorge BonaciのラボはSOS Venturesの次世代バイオテクアクセラレータIndieBioの中にあり、私は最近そこで彼にも会うことができた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

バイオテクノロジのPembientが3Dプリントで犀角を制作…物質的に本物と同じ

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Pembientというスタートアップがサンフランシスコの端っこの方で、犀の角を3Dプリントしている。本物の犀角のような角(つの)の形をしたものはなくて、遺伝学的に犀の角と同じ物質だそうだ。といってもPembientは、それを作るために本物の犀の角を必要としない。

世界中に今やほとんどいなくなった犀にとっては良いニュースだ。北白犀は5頭しか残っていないし、西黒犀は2006年に絶滅したと思われるようになり、今では公式に絶滅している

この定住地のない美しい巨獣を密猟者たちが長年殺しまくり、ついにこの惑星の上からほとんど消し去ってしまった。目的は、彼らの角だけだった。犀の角はイエメンでは短剣として使われ、中国では薬効があると信じられてきた。

これを見て犀角ではないと言った人は一人もいない。
— Matthew Markus

Pembientの協同ファウンダMatthew Markusは職業はソフトウェアエンジニアで、90年代の終わりごろからいろんなスタートアップで仕事をしてきた。でも彼は、犀など世界中の野生動物に今起きていることが、嫌で嫌でたまらなかった。

“犀について読んだのは2006年だったが、それに対してテクノロジで何かができるまでには、かなり待たなければならなかった”、と彼は語る。

今となると、実験には安い共有スペースを利用できる。クラウドコンピューティングと3Dプリントがあり、ほかにもバイオテクノロジの費用を下げ、出力を早くする数々の技術がある。彼は遺伝工学のエンジニアGeorge Bonaciに協同ファウンダになってもらい、遺伝学的には同一の、安価な犀角をつくるという、突飛なアイデアに挑戦した。

彼の犀角の主原料は、ケラチンと呼ばれる蛋白質だ。Pembientは遺伝コードを見つけ、3Dプリントのテクニックをで、ケラチンから角を再生することに成功した。

これは、必ずしも新しいアイデアではない。同じく生物学的な素材から、試験官の中で肉を培養したスタートアップもいる。CADソフトの老舗Autodeskはサンフランシスコに研究所を設け、さまざまな器官を3Dプリントで作ろうとしている。

Markusは、自分の技術で犀角の値段を劇的に下げて、密猟者が野生の犀を殺すことに経済的動機を持たないようにしたい、と考えている。

野生動物の不法取引には200億ドルの闇市場があり、それはドラッグ、武器兵器、人身売買に次いで4番目に大きい。しかも世界の犀の人口は最盛時の95%に減少しているから、その将来は危うい。

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Markusは彼が作った犀角を見せてくれた。小さくて硬くて茶色のものが手作りの箱に入れられて彼のデスクの上にある。これは本物の犀の角のサンプルか、と問うと、彼は笑って、3Dプリントで作ったもので本物ではないが、本物と違う点は何一つない、と言った。

“物理的/物性的には、違いを見出すことはできない。これを見て、犀角ではない、と言える人はいない。あらゆる利用意図や目的から見ても、これはまさに本物の犀角だ”、と彼は語る。

彼は今後、犀だけではなく、象牙やセンザンコウの鱗、虎の骨など、闇市場で高価に取引されている野生動物の器官にも挑戦する気でいる。

“ピアノの鍵盤用の象牙は、うちで作って提供したいね”、とMarkusは述べる。

“最初はどうしても、犀の角でなければならなかったんだ”。彼が次の課題に着手したら、また本誌で取り上げよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa