スマホ1台で完結する写真・動画加工アプリ「Picsart」はデジタル化が進むこれからのクリエイティブを支えるツールになる

YouTubeやSNSの成熟が進み、クリエイターが個人として活動する機会が増えている。それまで無名だったクリエイターがひと晩で有名になるといった話も珍しくない。インターネットの世界で一旗揚げたい若い世代のクリエイターに選ばれるサービスがPicsart(ピクスアート)だ。

Picsartは写真や動画の編集、加工ができ、サービス上で作品のシェアも可能。さらに他のSNSで投稿することができるサービスだ。すべてをスマホアプリ(もしくはウェブブラウザ)上で完結するのが特徴であり、AIにより誰でも簡単に作品づくりができるだけでなく、他のクリエイターの作品を「Remix(再編集)」して自分の作品をつくることもできる。

現在もZ世代を中心にユーザー数を増やしているPicsartを提供する同社の日本・韓国担当のゼネラルマネージャー石田直樹氏にサービスの現在、そしてクリエイターを支えるサービスであるPicsartのこれからについて話を聞いた。

現在、Picsartはどのような時期になるのでしょうか?新型コロナウイルスの影響は受けましたか?

「アプリは2011年に登場、日本には2019年に上陸しており、現在は成長フェーズ、投資モードにあります。新型コロナの影響もあり、アクティブユーザーが増えました。メインはやはり趣味のためのユーザーですが、クリエイターやインフルエンサーをはじめオンラインビジデスでビジュアルが必要な方も増えました。また、美容師の方がInstagramにアップする写真をPicsartでつくるといった例もあります。ビジネス目的で利用される方が増えており、戦略的にはそんな『プロスーマー』を取り込もうとしています」。

ビジネス目的ではあれば、有料ユーザーも増えているのですか?

「そうですね、たしかに有料率は上がっています。しかし、無料であってもPicsartのメインコンテンツであるパワフルな写真や動画編集のツール、そしてフリー画像やテンプレートが使えるためそれで満足している方がやはりほとんどですが、さらに豊富なストック画像を利用でき、ライセンスも増やすことができる有料版にバリューを感じていただき契約していただいている方も増えています」。

画像クレジット:Picsart

写真・動画加工アプリはたくさん存在していますが、強み、選ばれる理由は何でしょうか?

「Picsartには3つの特徴があります。1つはテクノロジー。背景除去や人物のキリヌキ、レタッチなど現在、AIを利用した機能が3000以上も用意されています。会社には800名以上の社員がいますが、その70%となる大量のエンジニアが、日々、スピード感を持って新しいツールや機能を開発しています。

2つ目がコンテンツ数で、Picsartにはすでに3億以上もの作品があります。それらは眺めて楽しいのはもちろんですが、ただ参照してアイデアの素にするだけでなく「Replay(リプレイ)」で、その編集手順を自動で再現できるので、次々に新たな作品が作れます。ユーザーが簡単にその作品をベースにした自分の作品をつくれるので、ブームも起きやすい。さらにステッカーやテンプレートも豊富です。

3つ目がコミュニティ。Picsartはコンテンツを共有する場でもあり、そのままシェアできます。ユーザー数も増えているので、反響も大きい。もちろん他のSNSなどに作品を投稿することができます」。

どのようなツールが人気ですか?

「人物や顔、服、空など、AIを活用し対象を指定するだけできれいに処理される自動切り抜きツールはよく使われています。フィルターは100以上も用意されており人気です。また、フォントも人気ですね。日本語フォントはかっちりしたものから手書きっぽいものまで、30種類以上用意されています。色を変更したり立体感を出したり、文字列をカーブさせたりする機能などもあり、こちらも人気です」。

やはりZ世代のユーザー向けのサービスなのでしょうか。

「たしかにZ世代はコンテンツの消費と生産の垣根が低い人たちで、スマホ1台で制作から共有まで完結するPicsartは親和性が高いサービスだと思います。そのためZ世代のユーザーも多い。しかしPicsartは『Z世代ありき』のではありません。私たちは、もっと広くビジュアルコミュニケーションで使われるサービスでありたいと考えています。モバイルアプリだけでなくウェブブラウザも提供しています。ビジネスでコンテンツを作る人「プロスーマー」に支持してもらえるツールを目指しています」、

日本と海外でユーザーに違いはあるのでしょうか。

「InstagramやYouTube、TikTokiがあるのでユーザーの情報量も同程度になり、流行の時差はほぼありません。ただし国が違えば好みも違うため、例えば一時、被写体の顔を隠すためにうずまき加工を行うというブームがありましたが、これは日本だけのものでした」。

画像クレジット:Picsart

写真・動画編集アプリ、サービスは今後、どう進化していくのでしょうか?

「人々の活動は現在よりもさらにオンライン上に移っていきます。そこで生まれるのではデジタルな写真・動画へのニーズであり、クリエイターへの需要も増え、その数も増えていくと思います。NFTなど新たな技術の上にあるサービスも登場し、デジタルなビジュアルがマネタイズできる機会も増加します。そこで活躍するクリエイターにPicsartは選んでもらえるツールになっていければと考えております。

Picsartが得意なことはもっと得意に。機能の豊富さがPicsartの特徴ですが、それらはさらに増やしていき、寄せられるユーザーからのニーズは大量のエンジニアたちの力で迅速に応えていきます。また、AIに注力しているため、今後、AIで強化された機能が増えていくでしょう。

たくさんの機能があれば、私たちが意図していなかった使い方をしてもらい新たなクリエイティブが生まれる機会も増えます。Z世代を含む、これからのクリエイターを支えるサービスを提供していきます」。

写真やビデオのデジタル創作プラットフォームPicsart、新APIで開発者向けにクリエイティブツールを提供

デジタルクリエイションプラットフォームであるPicsart(ピクスアート)は、新しいAPIプログラム「Picsart for Developers」を開始したと米国時間2月9日に発表した。Picsartは、消費者とプロフェッショナルの両方を対象に、写真やビデオの編集をより楽しく、より身近にするためのデジタル制作・編集ツールを提供している。同社によると、世界中の消費者がカスタムビジュアル製品や体験をビジネスに求めている中、PicsartはAPIの新規提供により、あらゆる規模の企業がそのニーズに応えられるよう、同社の技術にアクセスできるようにしているという。

これらの新しいAPIにより、企業はPicsartのAIを活用したクリエイティブツールを自社のプラットフォームに直接実装できるようになった。AIを活用したAPIには、背景除去機能、品質を落とさずにコンテンツを拡大・強化するアップスケール機能、任意のソース画像の見た目を転送してスタイルを格上げするスタイルトランスファー機能などが含まれる。画像処理APIには、写真を際立たせるためのフィルターや、明るさやコントラストなどの設定を変えることができるアジャスト機能がある。また、画像処理を高速化するアップロード機能も搭載している。

Picsart for Developersは、デジタル広告、ウェブサイト構築、カスタムマーチャンダイジングなどのクリエイティブ企業を含む8社のパートナーとともに開始される。パートナーは、Photobook(フォトブック)、TPS Engage(TPSエンゲイジ)、Clos(クロス)、Amaze(アメイズ)、Make Your Move(メイク・ユア・ムーブ)、The Flat Lay(フラット・レイ)、Etch4U(エッチ・4U)、Smiley(スマイリー)の8社。Picscartによると、これらの企業との統合は現在稼動している。今後数カ月の間に、招待制でさらに多くのパートナーを追加する予定だ。

「私たちのビジョンは、あらゆるクリエイターをエンパワーすることであり、Picsartは革新的なAI、写真、動画編集機能で市場をリードしています。APIを通じて当社の技術を開発者に提供することは、活況を呈するクリエイター経済を支援できるエキサイティングな方法です」と、Picsartの創業者兼CEOであるHovhannes Avoyan(ホバナス・アボヤン)氏は述べた。「デジタル創作のスピードや、特にジェネレーションZからのコンテンツをパーソナライズし、他と差をつけたいという要望は、より深いクリエイティブな体験を提供することが、あらゆる企業に求められているということを意味します。我々のAPIはそれを可能にします」。

画像クレジット:Picsart

Picsartは2018年にEFEKT(旧D’efekt)を買収して動画市場に参入し、動画を活用するソーシャルメディアクリエイターやeコマースショップを中心に、近年利用者が急増している。2021年12月、Picsartはアプリ内で編集された動画が1億8000万本以上となり、前年比70%増を記録したと発表している。

今回の発表は、Picsartが先日、研究開発会社のDeepCraft(ディープクラフト)を買収したことにともなうものだ。この買収は、現金と株式の両方を組み合わせたもので、7桁台の金額(数億円)だが、正確な条件は明らかにされていない。Picsartは、DeepCraftのAI技術人材と、コンピュータビジョンと機械学習におけるその躍進が、Picsart自身のAI技術を強化し、同社のサービスにおける最近の動画作成の増加をよりよくサポートするのに役立つと述べた。また、同チームは、PicsartのAI研究開発部門であるPAIR(Picsart AI Research)にシニアリソースを追加することで、Picsartを補完することができる。

Picsartは2021年8月、ソフトバンクのVision Fund 2(ビジョン・ファンド2)が主導する1億3000万ドル(約150億円)のラウンドを調達したと発表し、ユニコーンの地位を獲得した。この資金注入により、同社の評価額は10億ドル(約1154億円)の大台に乗った。PicsartのCOOであるTammy Nam(タミー・ナム)氏はTechCrunchに対し、同社には数百万人の加入者がおり、このプラットフォームが成長する余地はたくさんあると語っていた。

画像クレジット:Picsart

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

ソフトバンク出資のユニコーンPicsArtがR&D企業DeepCraftを買収、AI・動画編集機能の強化狙って

ソフトバンクが出資しているデジタルクリエイションプラットフォームで、2021年8月にユニコーン企業の仲間入りを果たしたPicsArt(ピクスアート)は、米国時間12月2日、R&D企業であるDeepCraftを買収することを発表した。今回の買収は、現金と株式の組み合わせで、7桁(数百万ドル、数億円)規模の金額とのことだが、正確な条件は公表されていない。

PicsArtは現在、コンシューマーとプロ両方に向けて、写真やビデオ編集をより楽しく、親しみやすいものにするためのさまざまなデジタル制作・編集ツールを提供している。PicsArtは、DeepCraftが持つAI技術分野の人材と、同社のコンピュータービジョンおよび機械学習(ML)における画期的な技術が、PicsArtのAI技術を強化し、近年のPicsArtのサービスにおける動画作成の成長をサポートするものと考えている。また、チームは、PicsArtのAI研究開発部門であるPAIR(PicsArt AI Research)にシニアレベルのリソースを追加して補完するのにも役立つとしている。

アルメニアに拠点を置くDeepCraftは動画・画像処理に特化した企業で、2017年に設立された。ちなみに、PicsArtは同国初のユニコーンだ。DeepCraftの共同創業者であるArmen Abroyan(アルメン・アブロヤン)CEOとVardges Hovhannisyan(ヴァルジス・ホフハニシャン)CTOは、AIと機械学習に20年以上を費やしており、その専門性は地元コミュニティでよく知られている。アブロヤン氏はこれまで、アルメニア共和国ハイテク産業省の副大臣、RedKiteのリードAIアーキテクト、Synopsys(シノプシス)のシニアソフトウェア開発者などを歴任してきた。一方、ホフハニシャン氏は、Synopsysで13年間、シニアR&Dエンジニアとして活躍した。

DeepCraftでは、Krisp、PatriotOne、さらにはアルメニア政府など、多くのクライアントと契約ベースで仕事をしていた。これらの仕事は終了し、チームはエレバンにあるPicsArtのオフィスで仕事を始めることになる。今回の買収により、DeepCraftの機械学習および映像分野のシニアエンジニア8名が、PicsArtに正社員として入社する。

PicsArtは、2018年にEFEKT(旧D’efekt)を買収して動画市場に参入し、近年、利用者が急増している。特に、動画を利用するソーシャルメディアのクリエイターやECショップに同社のアプリが採用されている。2021年、PicsArtのアプリで編集された動画は1億8千万本を超え、前年比で70%増となっている。現在、数千種類のエフェクトと数十種類の動画編集ツールを提供しており、AIやクラウド技術の進化に合わせてこのラインナップを増やしていく予定だという。

PicsArtは、DeepCraftのスキルセットと技術的な専門知識が、2022年に重要な焦点となるであろう動画のサポートを前進させるのにどう役立つかに特に関心を寄せている。

ただし、PicsArtは、今回の買収でDeepCraftから特定のIPを取得するわけではない、と同社はTechCrunchに語っている。

PicsArtは、DeepCraftとはさまざまな技術開発で協力関係にあったため、今回の買収に先立ち、すでに関係を築いていた。

PicsArtの共同設立者兼CTOであるArtavazd Mehrabyan(アルタバズド・メフラビヤン)氏はこう述べている。「DeepCraftはユニークで高度な技術を持つエンジニアのチームであり、当社はすでに1年以上彼らと協力して当社のコア技術を構築してきました。当社の動画機能を進化させるためにさらなる投資を行うにあたり、DeepCraftのチームが動画の未来を築く上で重要な役割を果たすことを確信しています」。

DeepCraftとの取引は、8月に同社がソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)主導で1億3000万ドル(約146億9000万円)のシリーズCラウンドを調達して以来、PicsArtにとって初の買収となる。そのラウンドにより、同社は2019年に約6億ドル(約678億円)だった評価額からユニコーンの地位に引き上げられた。

画像クレジット:PicsArt

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)