Visaによる買収が破談になったフィンテックPlaidが約467億円調達

消費者の銀行口座を金融アプリにつなげるユニコーン企業Plaid(プレイド)がシリーズDで4億2500万ドル(約467億円)を調達した。米国4月7日朝に同社が発表した。Altimeter Capitalがリードした本ラウンドのPlaidの評価額は約134億ドル(約1兆4716億円)だとTechCrunchは理解している。

消費者クレジットカード大手Visaの買収対象だったPlaidがさらなる資金を調達するのは驚きではない。Visaによる53億ドル(約5820億円)でのPlaid買収が2021年1月に破談になった後、Plaidが親会社なしの自社の将来を描くことは明らかになっていた。

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VisaとPlaidの取引が規制当局の精査に直面して最終的に中止に追い込まれたとき、スタートアップやベンチャーの関係者の間では買収の立ち消えは良いことだとささやかれた。なぜか。Plaidの2020年はすばらしいもので、同社の価値はVisaが支払うことに同意した額よりもずいぶん大きいというのが一般的な見方だったからだ。

PlaidのシリーズDの評価額がこの見方を裏づけている。この新たな評価額でPlaidに喜んで出資したのはAltimeterだけではなかった。新規投資家としてSilver Lake PartnersRibbit Capitalも加わった。Silver Lakeは何百億ドル(何兆円)も運用している巨大プライベートエクイティであり、一方のRibbitは数多くのフィンテックに投資していることで知られている。

つまり、Plaidは1つのラウンドでレイターステージのガイダンスとフィンテックの洞察を得る投資家の組み合わせを選んだ。多くの既存投資家もシリーズDに参加した。

今回のラウンドについてTechCrunchはPlaidのCEOであるZachary Perret(ザチャリー・ペレット)氏に話を聞いた。同氏は短い電話の中で、他のオプションもある中で、消費者向け金融サービスの未来に関して考えが同じだったAltimeterがリード投資家として選ばれた、と語った。新規投資家3社から学ぶことを楽しみにしていて、これはPlaidの長期的運営に役立つはずだとも付け加えた。

ペレット氏はまた、今後のIPOについてもわずかに言及したが、ここしばらく可能性が取り出されているIPOを実際に進めるとは筆者には思えない。しかしながらCEOの口から財務面での将来の目標を持っていることを聞けたのは新鮮だった。

調達した額について、ペレット氏は同社がチームとプロダクトラインナップを拡大できる「正しいレベル」の資金だと述べた。同氏はまた、資金により同社が活動の機会を狙えるようになるとも話した。

Plaidにとって、過去12カ月は忙しいものだった。同氏はインタビューの間、この時期のことについて何回か言及し、2020年消費者向けの金融サービスのデジタル化がいかに急速に進んだかを説明した。

最後に、成長について。Plaidが成長について積極的に共有したのは、2020年に顧客数が60%増えたということだけだった。ペレット氏はこの数字は前年からの加速を示していると述べた。同氏によると、現在の従業員数は約650人だが、第1四半期に約20%増えたとのことだ。

Plaidはフィンテックブームの中心的な存在で、TechCrunchは過去数四半期Plaidをかなり取り上げた。外部信号に関する限り、Plaidの顧客ベース拡大を部分的に構成する企業をウォッチするのが他の成長メトリクスを得ることになるようだ。その特定の信号はPlaidにとって良い前兆となっている。

Plaidがいかに米国内外での競争をかわすか、様子を見ることにしよう。同社は今、そうするための資金をもちろん持っている。

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タグ:Plaid買収

画像クレジット:Plaid

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

Visaによる買収が未遂に終わったPlaidが無名のフィンテック企業家を支援するインキュベーターを立ち上げる

Plaid(プレイド)は、バックグラウンドがよく知られていないアーリーステージのフィンテック起業家を対象とする9カ月間のインキュベーター「FinRise(フィンライズ)」を起ち上げた。2020年の夏、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)抗議活動の中で行われた社内ハッカソンに触発されたこのアクセラレーターは黒人、先住民、有色人種(BIPOC)が主導するスタートアップを明確に探している。

PlaidのグロースマネジャーであるNell Malone(ネル・マローン)氏と、デザインマネージャーのBhargavi Kamakshivalli(バルガビ・カマクシバリ)氏が、このプロジェクトの先頭に立っている。

このインキュベーターでは、ベータ段階の製品を持つポストシードおよびプレシリーズBのテック系スタートアップを、3社から5社ほど募集していると、マローン氏はTechCrunchに語った。応募には最低2人の従業員と1人の創業者が必要だ。また、明らかにフィンテック分野で活動中のスタートアップであることも条件で、具体的には消費者ビジネスのファイナンスデータに焦点を当てた事業を行っている必要がある。

この最後の前提条件は、Plaidの事業と正確に一致する。Plaidは、消費者の銀行口座とフィンテックアプリ間の結合組織として機能するソフトウェアのスタートアップ企業だ。ゆえにFinRiseは、これらの統合の創造的な延長線に感じられるが、単に新規顧客を獲得することよりも、創業者の起業を支援することに重点を置いている。

合格したスタートアップは、Plaidのリーダーからメンターシップを受け、製品の洞察を助ける専任のアカウントマネージャーと、ブートキャンプのセッションでアドバイスを受けられる起業家のネットワークを得ることができる。このインキュベーターは、Y CombinatorやTechStarsのような通常3カ月間のアクセラレータープログラムよりも長いが、そこまで集中的ではない。

「3日間のバーチャルブートキャンプは、FinRiseプログラムの中で最も集中的な部分になります」と、マローン氏は述べている。「ワークショップの後、参加者は専任のアカウントマネージャーと一緒に仕事を行い、継続的なプログラミングサポート体制を受けることになります。【略】私たちの目標は、9カ月にわたるプログラムの間、参加者にあらゆる段階で継続的なサポートを提供することです」。

奇しくも今回の発表は、Visaが規制上の問題からPlaidの買収を断念したと発表してから、わずか1週間後に行われたものだ。発表当時に買収額53億ドル(約5500億円)といわれていたこの契約は、フィンテックの創業者たちやベンチャーキャピタルから楽観的な見方をされていた。この買収を断念の発表は、民間のフィンテック企業が成長を続ける中で、政策的な問題に対処しなければならないことがいかに増えているかも明らかにしている。

3日間のブートキャンプでは、金融サービス分野における規制や法的な圧力に、スタートアップ企業がどのように対処すべきかという焦点から、このダイナミックな動きに取り組む計画だ。その他の論題としては、情報セキュリティ、エンジニアリングの実践、ユーザー中心の設計などが予定されている。

無名な起業家にとってハードルとなるのは、メンターシップではなく資金調達へのアクセスとなる傾向がある。今のところ、FinRise自身が株を取得したり資金を提供することはないが、小切手帳を持っているVC企業やアクセラレーターのネットワークに紹介することを、このインキュベーターは約束している。

もちろん、Plaidがこれらのスタートアップ企業のどこかに投資を検討するという、古典的なコーポレートベンチャーキャピタルのアプローチを取ることもあり得る。その可能性を尋ねられたマローン氏は「現在のところ、それは我々の計画には入っていません。まだこれからですから。今はプログラムを試験的に実施して、どうなるかを見るのを楽しみにしているところです」と答えた。

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タグ:Plaidアクセラレータープログラムインキュベーター

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

報じられているようにVisaはフィンテックスタートアップPlaidとの買収交渉を打ち切った。すでに両者の間では合意があったが、これも無効とされた。消費者向けクレジットカードの大手がフィンテックのAPIを構築しているスタートアップをグループに組み込む可能性はなくなった。

合併に関して当初両者の合意が発表されたとき、買収額は53億ドル(約5510億円)とされた。買収交渉が行われていることを我々が報じたのはちょうど1年前、2020年1月13日だった。しかし2020年11月、米司法省はこの合併に反対した。司法省は「この買収は、在来の貯蓄口座およびさらに進歩的なオンラインデビットカードサービスの分野で、現在生じつつあるライバルを排除することになる危険性がある。したがってこの合併はライバル企業ならびに消費者の利益に反する」と主張した。

当初、VISAは「政府の見解は誤っている」と主張し、争う姿勢を見せていた。

しかし2021年1月12日になって両社は買収合意が正式に解消されたことを確認した。プレスリリースの中でVisaは「最終的には買収を実行できたかもしれないが問題の複雑性を考慮し、(訴訟になれば)解決まで長時間を要することになるのは不適切だと考えた」と述べている。

要するにVisaは手間がかかりすぎる、と嫌ったわけだ。

これに対してPlaidはもっと強気で社内向けのメモに「昨年には、Plaidを利用したサービスに対する需要が前例のないレベルに高まった」と書いている。2020年に始まったフィンテックブームによって一般消費者が無料の株取引アプリや「ネオバンク」に殺到したことを考えれば、昨年のPlaidの成長は驚くべきことではない。結局、PlaidのプロダクトであるAPIは消費者とフィンテック企業を仲介する位置にあるため、両者がいっそう緊密なトランザクションを望むならAPIスタートアップには強い追い風となる。

【更新】Plaidに取材し、今後、独立企業としての計画と、2020年に具体的にどれほどのスピードで成長したかを尋ねた。PlaidはTechCrunchに対して「2020年にはクライアントが60%増加し、4000を超えた」と回答している。顧客ベースの純ドル保有率が中程度だと仮定した場合、Plaidは昨年数百パーセントの成長を遂げた可能性がある。

VisaのPlaid買収は単に1つの取引の中止であることには違いないが、資金力豊富な既存大企業への買収という有利なエグジット(現金化)を狙っていたフィンテック分野のスタートアップやユニコーン企業は失望を隠せない。つまり米司法省による反トラスト法を根拠とした主張で買収が不可能になったわけでないが、大企業はスタートアップの買収により慎重にならざるをない。金持ちの大企業への売却というエグジットを考えていたフィンテックスタートアップ関係者にとって都合のいい話ではない。

これにより、今後、フィンテックスタートアップの買収金額は下がることになると予想される。フィンテックに重点をおくベンチャーキャピタルの意欲を削ぎ、スタートアップの資金調達にも逆風となる可能性がある。フィンテック関係者は、VisaのPlaid買収における高額の企業評価額が、ベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資ラウンドでの評価額にも反映すると期待していた。つまり買収がなくなればその逆、ということになるわけだ。

【Japan編集部】日常用語ではタータンチェックのような格子をPlaidと呼ぶためトップ写真はその模様の布地になっている。

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画像クレジット:Sarah Wardlaw / Unsplash

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米司法省が阻止しようとするVisaとPlaidの合併問題を理解するための「火山モデル」

米国時間11月5日、米司法省は切迫状態の続くVisa(ビザ)とPlaid(プレイド)の合併阻止する行動に出た(未訳記事)。

契約が発表されたのは2020年の始めであり、11月になってこの合併を断念させようとする政府の決定は、大きな苛立ちを両社にもたらした。両社はこの約1年間、取引をまとめ承認を得るために曖昧な状態で運用を続けてきたが、あらゆる困難を耐えてきたことがこれで無駄になるかもしれない。

しかし、この取引きで次に何が起きるにしても、政府自身によるこの訴訟は、それ自体が不朽の名作といえる。そこでは反トラストについて多くを語っていないが、2020年にはどんなことでも可能だ。

状況をマンガにしてみた。

画像クレジット:DOJ

テキスト部分に書いてあるのは、Plaidは火山でありそこから類推するにVisaは水面上のどこかでビジネスをしながらPlaidが噴火して現在Visaが運用している環境を変えてしまうことを恐れている。

概念フレームワークとしては、ガートナーの市場調査レポートである「magic quadrant(マジック・クアドラント)」よりずっと良くできているが、この「Magic Volcano(魔法の火山)」はあまりおもしろくない。Visa VenturesのファウンダーであるPeter Berg(ピーター・バーグ)氏がこの落書きについての説明(Twitter投稿)をまとめている。

初心者には噴火している火山に見えるだろう。B2B2Cワールドで長い時間過ごした人には、水面下の数多くの「目に見えない」重要インフラが見え、その結果水面より上にある(消費者の)可能性がいっそう明瞭に見えてくる

バーグ氏のアナロジーによれば、この火山はむしろ氷山だ。つまりVisaはタイタニックのような船ということになる。

これを「ビザタニックの悲劇」とまとめるのは簡単だが、どうやら政府はPlaidが確実に乗船できないようにしているようだ。

海洋のテーマにこだわると、もしこの火山 / 氷山取引が止められた時、Plaidは海賊旗を掲げてどこか別の船を探しにいくのだろうか?ひとつ、すぐ思い浮かぶところがある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米司法省がVisaによる5540億円のPlaid買収を反トラストの疑いで捜査中

米司法省から反トラスト捜査の目を向けられているのは大型テック企業だけではない。

米国時間10月26日の午後遅く、米司法省はVisa(ビザ)によるベンチャー支援企業のPlaidに対する53億ドル(約5540億円)の買収提案を捜査中であることを明らかにした。Plaidはアプリケーションがユーザーの銀行口座と連携できるようにするサービスだ。

これは数多くの新たなフィンテックサービスを可能にするものであり、この買収契約が今後さまざまなスタートアップから生まれてくる新たな金融サービス市場にどのような影響を与えるか、司法省はこの1年をかけて調査していたようだ。

司法省がこの取引に注目していることがわかったのは、VisaのPlaid買収を手配したコンサルタント会社のBaidに対して、当局の民事調査請求(CID)に応じるよう求めたマサチューセッツ州地区連邦地方裁判所に提出された請願書からだった。

司法省は、Bainが文書について何らかの特権を持っていたと主張して提出を拒否し、結果的に司法省の捜査を引き伸ばしたと主張している。

「米国消費者は反トラスト局が迅速かつ徹底的に合併を捜査することを望んでいます」と司法省反トラスト局のMakan Delrahimk(マカン・デラヒム)局長は声明で語っている。「関連する第三者の種類とデータを収集することが、本局が一連の取引を分析する上で不可欠です。こうした要望を無視することで本局が関心を失い、捜査目標を他の案件に移すと期待している第三者があまりにも多い」。

司法省は2020年6月に初めて、Bainに対してVisaの価格戦略と他のデビットカードネットワークに対する競合に関連する書類の提出を求めた。当局はその情報を使ってVisaが計画する買収が金融サービス市場全体に与える影響を分析するつもりだった。Bainはその情報を部外秘であるとして書類作成を拒否した。

司法省が注目している大型フィンテック買収案件はVisaのPlaid買収提案だけではない、とThe Wall Street Journalは報じている。規制当局はMastercard(マスターカード)によるフィンテックスタートアップであるFinicityに対する10億ドル(約1040億円)の提案や、Intuit(インテュイット)のクレジットスコア情報スタートアップであるCredit Karma(クレジットカルマ)買収の70億ドル(約7310億円)の提案にも注目している。

「本局のBainに対する請願は、関連書類を確保し、我々が発行するCIDの期限と仕様を第三者に守らせる意志を明確にすることが目的です」とデラヒム氏はいう。「Bainをはじめとする第三者は、当局の民事調査に関わる要求に完全かつ迅速に従って、我々が職務を果たし、国民のために尽くすのに必要な書類とデータを提出するべきです」。

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アプリに銀行口座を連携させるPlaidがインターフェイスを改良、銀行決済をカードのように簡単に

アプリやサービスと銀行口座を接続できるユニバーサルバンキングAPIを開発するPlaidが、Plaid Linkをアップデートした。Plaid LinkはVenmo、Acorns、ChimeといったPlaidを利用しているアプリやサービスに銀行口座を追加する際に表示されるインターフェイスだ。

現在、3000ものアプリがPlaidを利用しているため、おそらくPlaidを目にしたことがあるのではないだろうか。同社によると、米国では4人に1人がPlaidを使ってアカウントの連携を行っているという。

そして、米国時間10月2日のアップデートは、複数のアプリでPlaidをより使いやすくするものだ。初めて銀行口座に接続するときは、銀行を検索して認証情報を入力してログインする。

2回目にアプリやサービスへ銀行口座を登録する場合、Plaidは以前に追加した銀行口座を表示する。金融機関のリストをスクロールして自分の銀行を探し、またユーザーIDなどを入力する必要はない。ただし、Plaidがパスワードやワンタイムパスワードの入力を再び求めることはあるかもしれない。

画像クレジット:Plaid

eコマースプラットフォームで買い物をする場合、カードを保存しておけば、その情報を再度入力する必要はない。本日のPlaid Linkのアップデートで、同社は銀行口座情報についても同様のことを行っている。

ペイメントカードは、銀行口座に接続して送金するよりもカードでの決済の方がはるかに簡単であるため流行している。Plaid Linkが使いやすくなったことによって、フィンテックのスタートアップがユーザーの口座に接続するときの面倒が減るだろう。

またPlaidによると、さらにPlaid Linkはやや速くなったという。各パネルの読み込みが30%速くなった。現在、銀行のリストはユーザーの場所に応じて表示される。地元の銀行がリストの一番上に表示されるため、スクロールする必要もなくなった。

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タグ:PlaideコマースAPI

画像クレジット:Sarah Wardlaw / Unsplash

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa